MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

後裔記 第1集 No.147

#### ワタテツの{後裔記|147}【実学】{寒生|かんせい}な女の奇態【格物】四苦八苦を{背負|しょ}い込む{訳|わけ} ####

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。
 門人学年 **ワタテツ** 齢16

実学
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寒生な女の奇態

 マザメの捜索に一週間近くも掛かった{経緯|いきさつ}を書き{綴|つづ}ることは、言い{訳|わけ}以外の何物でもない。{故|ゆえ}に、委細は省く。
 {然|しか}しながら、居場所は、直ぐに判った。十二名の予測が、完全一致したのだ。だが、あるはずの林道は、影も形も無く、在るか無いさえ定かではない場所へと、隠れ潜みながら野宿の連続の捜索は、実に困難を極めた。
 前置きは、以上。

 知命を志した自然人とは言っても、そこはまだ育ち盛りの人間……{所謂|いわゆる}、少女。しかも、一〇〇パーセント天然の生身。野生の{鳥獣|トリケモノ}とは、訳が違う……が、実際問題、かなりの部分が似通っているのではあるが……まァ、話がややこしくなるので、それはそれとしてここに置き去りにして、次を急ぐ。

 人間……喰わねば{飢餓|きが}の毒牙が、正気を{蝕|むしば}む。枯れた肉体は、意にそぐう{所作|しょさ}を{阻|はば}む。マザメ自身も、それを自覚したものとみえる。掘り終えて解錠された炊事場は、一体の{重篤|じゅうとく}を知らせるに充分な様相を呈していた。引き開けられた焼杉の木戸の{軋|きし}む音の波が、その*一体*の透けた肉体を{射|い}たのだった。
 マザメが、目覚めて言った。なんとッ! 生きていたのだ。その一大事に気を取られて、その言葉の異常さに気づくのに、数秒を要した。{斯|こ}うだ。
 「あたいが、正気を失わぬように、何か{兵糧|ひょうろう}を{施|ほどこ}して{賜|たも}れ」
 その*数秒*ののち、銘々が、独り{言|ご}ちた。
 「今は、何も{訊|き}くまい」と、ムロー先輩。
 「てか、一人で掘ったんかい!」と、日焼けした青年、ジュシさん。
 「スッゲーぇ!!」と、サギッチ。
 ……と、沸いて出た{呟|つぶや}きの数々は、枚挙に{暇|いとま}がない。無論、この女の短所は目に余るけんども、長所は、それにも{況|ま}して、桁外れなところがある。
 {千辛万苦|せんしんばんく}の浮沈を{舐|な}めようとも、この{娘|こ}は、決して、自ら{胸襟|ちょうきん}を開いたりはしない。{赤裸々|せきらら}な自己を、決して他人に見せたりはしない。{正|まさ}しく、自然児。人前で、{帯紐|おびひも}を決して{緩|ゆる}めぬ女。その{形|なり}は、ヨレヨレで疑いようのない、{正|まさ}に*寒生*。
 そんな、そのまんまの異星人のような一個体の形が、そのとき正に、俺たちの面前で、横たえていたのだった。その{様|さま}のどこに、{安穏|あんのん}を期待して安き思いを抱けようかッ!

 昼どきかどうかまでは定かではないが、太陽は、今まさに高いところに昇って、地球に照りつけている{筈|はず}だ。だが現実は、{蔓|つる}植物が網を張った雑木林に覆われて、深い夕闇のような薄暗さだった。{建屋|たてや}の四方の頭上のあちこちで、小さな{鳴管|めいかん}が、チウチウと細やかな音を奏でている。
 マザメを預かる予定になっていたクーラーボックスのモクヒャさんが、ふと我に返ったような顔を、「ブルン」と左右に数回振ってから、斯う言った。
 「電気は無いし、ガスのボンベも撤去されてるだろうって思ったもんでさァ。冷たくても胃気が上がりそうなものを、詰め込んできたんだ。まァ、俗に言う保存食っていうか……今どきの宇宙食より味は落ちるかもしれんが、{兎|と}にも{角|かく}にも、先ずは、胃袋を動かさんとなッ♪」
 ヨッコと、{渡哲|ワタテツ}サングラス若い女……ファイの二人が、マザメの両脇に{片膝|かたひざ}をつくと、ゆっくり、ゆっくりと、マザメを、抱き起した。そして、マザメが、口を開いた。

 「{忙裏|ぼうり}の{小閑|しょうかん}は、命より尊しさ。{一喫|いっさつ}の茶で礼をするところだけど、この{有様|ありさま}さ。許して賜れ。時令が許せば、あたい自慢のカンイチゴ・ティーで持て成すに値する{施|ほどこ}しだよ。オッチャンの長所は、女を見る目があることさ。惜しいかな、オッチャンとの交わりの日々のあまりにも短きことよ……。
 でもさァ。たとえどんなに滞留が短かろうと、それがどんなに遠い{昔日|しゃくじつ}のことになろうとも、断じて、約束を{違|たが}えたりはしないから。礼は、必ずするよォ♪」
 無論、そこに居た十二人の誰もが、礼など望んではいなかった。異星から落下して来た星の王女様「マザメ」の生態を、無言で見守っているだけだった。その奇怪な生命体の一挙手一投足を観察しながら、銘々が、己の脳裏に浮かび上がって来る{某|なにがし}かの推測を、どうにか{現|うつつ}の空間で確信に変えたいと願い、焦り、躍起になっていたのだ。

 暫く、モクヒャさんがクーラーボックスの中をガサガサと{掻|か}き回す音だけが、炊事場の薄暗い空間を漂っていた。そして、思い立ったかのように、理論派の細長顔の中年のオッチャン……テッシャンが、言った。それこそ正に、独り言ちるかのように。
 「言葉は失礼千万で、森の{狼|オオカミ}に育てられたような野性的で粗暴な自然児少女なのに、この{娘|こ}の{語韻|ごいん}の{清々|すがすが}しさは、どういう{訳|わけ}なんだろう。その言葉の終わり方は、いつも、低くもなく、高くもなく、強いわけでもなく、弱いわけでもない。だのに、アジサイのような、梅雨どきの{潤|うる}んだ鮮やかさを感じさせる。正に、香気のある響きとなったような余韻だ。
 きっと、この娘は、自分に関わったすべての生きものを、じっくりと煮込んで、死滅させてしまうんだろう。この娘はまだ、そのことに気づいていない。その点、俺たちは、自然界の様々な、あらゆる野生の能力が、退化してしまった。
 この娘も、{何|いず}れは、俺たちと同じ道を、辿るのかもしれない。もし、そうだとしても、俺たちは、誤りを正すべきなんだろう。俺たちは、神話も、様々な伝説のあれこれも、それらすべてを、無闇……闇雲の{下|もと}に、{猥雑|わいざつ}な作り話として、片づけてしまったんだ」

 マザメが、はたと気づいたような顔をして、不思議そうな目を、テッシャンに向けた。その口が、無言で物語る*食欲*は、{既|すで}に、マザメが魔性の{鮫|サメ}{乙女子|おとめご}に戻っていることを、静かに無音で物語っていた。

格物
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四苦八苦を背負い込む訳

 人間には、様々な苦がある。その代表選手が、生きていることの苦だ。それは、大概、他者と自分の対立によって生じる。誰かに憎まれても、逆に、誰かを憎んでも、どちらの場合も、双方に苦が生まれてしまうのだ。そうこうしている間にも、病の苦、老いの苦……と、様々な苦が押し寄せて来て、{挙句|あげく}、最後には必ず、死の苦が、待ち受けている。
 生苦、老苦、病苦、死苦……{所謂|いわゆる}これが、{四苦|しく}だ。これに、更に四つの苦を加えると、{八苦|はっく}となる。仏教でお馴染みの「しくはっくする」の、語源だ。
 {因|ちなみ}に、残りの四つの苦とは……。
 {愛別離苦|あいべつりく}……愛する者とも別れなければならない苦しみ。
 {怨憎会苦|おんぞうえく}……会いたくない人とも会わざるを得ない苦しみ。
 {求不得苦|ぐふとっく}……欲しい物が得られない苦しみ。
 {五陰盛苦|ごおんじょうく}……心身の苦悩。

 {何故|なぜ}人間は、好むと好まざるに関わらず、盛りだくさんの四苦八苦を背負い込むのか。それは、そこには必ず、「自分」{或|ある}いは「モノ」が存在するからに他ならない。
 *自分*が、この世から消え去ってゆく。
 *自分*は、死んだら、地獄に落ちるのではないか。
 *自分*は、不治の病で、余命いくばくもない。
 ここから、**自分**を、抜き去ってみる。すると、当然と言えば当然なのだが、苦しみは、跡形もなく消え去ってしまう。

 次に、「モノ」とは……。
 金銀財宝、肉体、愛する心、憎しみの情動、地位、名誉……これらすべてが、「モノ」なのだ。{故|ゆえ}に、これら「モノ」に執着すれば、例外なく苦しみを味わうことになる。正に、欲しい物が得られない苦しみ……求不得苦というものだ。
 何かが欲しい、何かに成りたい……と、それ自体は立派な目標意識なのだろうが、それが{叶|かな}わなければ、「副産物として、苦しみが生成される」と、いう訳だ。
 そこで、*自分*の事例に{倣|なら}い、これら「モノ」を、消し去ってみよう……と、理屈では、そんな展開になるだろう。
 原始仏教由来の{唯識|ゆいしき}の論によると、これを、「唯識{無境|むきょう}」という。「境」というのが、正に「モノ」であり、{唯|ただ}、識があるだけで、{境|さかい}はない……{況|いわん}やッ! 「ヒトという一己の生命の外側……外界には、何も無い」……{則|すなわ}ち、「モノは、存在しない」と、いう訳だ。

 自分の中に、自分は、存在せず。
 自分の外に、モノは、存在せず。

 これを、この星の万人が、理解することができたなら、この世から、すべての{闘戦|とうせん}が、消えて無くなってしまうことだろう。
 正にそこが、「世のため人のため」を目指してきた原始仏教大乗仏教が、成就するところなのだ。

_/_/_/_/ 『後裔記』 第1集 _/_/_/_/
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名

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未来の子どもたちのために、
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然修録 第1集 No.143

#### オオカミの{然修録|143}【座学】第一等のクソガキ【息恒循】〈二循の格〉知命 ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 学徒学年 **オオカミ** 少循令{石将|せきしょう}

座学
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第一等のクソガキ

 奇跡、快挙、{神業|かみわざ}……等など。
 これらを{為|な}した人間は、「天才!」などと呼ばれる。
 言うなれば、天才のみが、奇跡を起こし{得|う}る。
 では、天才とは、何か。
 人間は、みな、天才の{種|たね}である*美質*を、生まれ持っている。
 その美質の感性を磨きながら、ただひたすらに、努力をする。
 それが、子ども……{美童|ミワラ}の仕事だ。
 {則|すなわ}ち、天才とは、「特別ではない」……「普通の人間だ」と、いう{訳|わけ}だ。

 では{何故|なぜ}、天才は、「特別だ」と誤解されてしまうのだろうか。化学の実験のあれこれが、「特別ではない」ことを、証明してくれている。
 例えば……。
 眠っている子どもに、音楽に載せて、教えたいことを語り聴かせる。
 翌日、昨夜語り聴かせた子どもにも、聴かせていない子どもにも、同じように、昨夜聴かせた同じ内容を、言い聞かせる。
 さて、どちらがよく覚えるかァ! と、いう実験。
 その結果は、{画然|かくぜん}とした差が表れた。前の晩、寝ている間に聴かされた子どものほうが、非常によく覚えるのだ。
 他にも、{胎児学|エンプリオロジー}……{所謂|いわゆる}胎教とか、{素読|すどく}とか、様々な実験が、行われている。これは、「子どもに限ったことではない」ということ……胎児も大人も、美質を磨く能力と機会を、平等に与えられているということなのだ。則ち、「人間の*能力*というものは、平生平素、{暗々裡|あんあんり}に受け取っておくということが、効果を上げる、たいへん良い習慣なのだ」と、いうことだ。

 今でこそ、胎児学だの胎教だのと、大それた呼び方をしているが、腹の中の子どものために、母親自ら勉強をしたり、本を読んだりということは、{古|いにしえ}より風習として根づいていることであり、それを、近年になって、「非科学的である」と、闇雲にただただ、騒いでいるだけのことなのだ。

 その証しが、正に、ムロー先輩が然修録に書いていた……陽明先生の、{復誦|ふくしょう}ではないかッ!

 素読、{然|しか}り。
 子ども*だから*、難しい本は、与えない?
 馬鹿なァ!
 読み仮名を振って、素読をさせればいいのだ。子どもだからこそ、鋭い感性と、まだ熱い生まれ持った美質で、その{文言|もんごん}や語録の真理を、感じ取ることができるのだ。感じて{胆|きも}に入るからこそ、根から吸収された栄養が、花となり実となるように、様々な{智慧|ちえ}や行動となって、実を結んでくれるのだ。
 維新期、まだ少年に過ぎなかった志士たちが、難しい本や、外国の本の原書を読み解いていたことは、今更言わずもがなの事実であり、永遠に動かざる岩盤のようなもの……正にそれが、「真実に違いない!」と、思うのである。

 陽明先生、十歳のころ……{既|すで}に、その気概や{鋭鋒|えいほう}は、開眼開花していた。
 陽明先生は、進士第一等という重責を担っている父に迎えられることとなり、都を目指した。その途路の金山寺で、大人が舌を巻くような詩を作って、皆を驚かせた……などという逸話もあるけれども、一等驚くのは、父の下で通っていた塾の先生との問答である。
 少年……十歳の陽明先生が、塾の先生に問うた。
 「天下第一等の人とは、どういうものですか」
 塾の先生、答える。
 「進士に及第し、親を{顕|あらわ}し、名を挙げる人。すなわち、お前の父君のような人が、第一等の人だ」
 そう教えられた少年、素直に{頷|うなず}く……と、思いきやァ!
 なんと……「そんな人はたくさん出るから、第一等の人物とは言えますまい」と、{反駁|はんばく}したのでる。
 確かに、進士の試験というものは、しょっちゅう行われている。十歳のクソガキの言うとおりだ。塾の先生、少々参ったらしく、{斯|こ}う応えて言った。
 「そんなら、おまえは、どう思うかッ!」
 すると、十歳のクソガキ、斯う答える。
 「{聖賢|せいけん}となってこそ、初めて第一等ではありませんか」
 ……実に、生意気である。

 昨今、生意気なクソガキを、あまり見かけなくなった。
 今、然修録を書いていて、その理由が、判ったような気がする。 

息恒循
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〈二循の格〉知命

(第二版 改訂一号)

 生涯、{則|すなわ}ち{天命|てんめい}。その最初の重要期を{立命期|りつめいき}と言い、その立命期の後半の循である七歳から十三歳までの七年間を、{少循令|しょうじゅんれい}と言う。

 その少循令が、終わる。自修して、運命期へ。

 「知命」とは、何を知り修めるものなりや……。

 ある{物|ブツ}が、独自に存在する。と同時に、自然の一部分であり、かといって、自ら存在する。ところが、その存在もまた、自然の一部であるもの……それが、自分だ。
 自分とは、正に円満{無碍|むげ}、見事な一致である。
 {然|さ}すれば、自分を知り、その自分を、ただ尽くせばよい。
 {然|しか}るに、それを知ることなくして己を「自分」と呼び、己を{恣|ほし}いままにして、自ら不満や不一致の環境を作り出し、その中で、矛盾や罪悪を引き起こす者が{居|お}る。これは、実に{危|あや}うい。

 「自分を知り、その自分を、尽くす」……とは、なんでもないことのようで、実は、これほど難しいことはないのである。
 自分が、どういう素質や能力を{天賦|てんぷ}されているのか……その*答え*を称して、「命」という。
 その**命**を知ることが、「知命」である。
 これを知って、それを完全に発揮してゆけるようになって……そこでやっと、「立命」なのである。

 {斯|か}くして知命すると、運命期に移り、青循令……{所謂|いわゆる}青年期を営むこととなる。知命遅れし者は、これを区別して、「無知運命期」と周りから称され、ただひたすら、知命に励むものなり。

 「青年の営み」とは、如何なるものか。大人になるとは、どういうことか……則ちそれは、青年の精神を知り、知ったからには、覚悟せねばならぬということだ。

 大人を恥じさせるような純真さを忘れず。
 若々しい情熱と{気魄|きはく}を持つ。
 {不羈奔放|ふきほんぽう}な理想を持つ。
 寝食も忘れる勉強ぶり。
 偉大な人物に{私淑|ししゅく}する。
 万巻の書を読む。
 師友を求める。
 名山大川に遊ぶ。
 {酔生夢死|すいせいむし}を嫌う。

 何かの感激で{已|や}むに已まれず命を賭けようとするような尊い魂を養うことこそが、青年の営みである。 

_/_/_/_/ 『然修録』 第1集 _/_/_/_/
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後裔記 第1集 No.146

#### ツボネエの{後裔記|146}【実学】バカ*チン無し*の{役務|えきむ}【格物】ソクラテスの弟子にように ####

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。
 少女学年 **ツボネエ** 齢8

実学
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バカ*チン無し*の役務

 大人になっちゃってしまうと、何か解らないことがあっても、誰にも{訊|き}けなくなってしまう……って、誰かが言ってたけどーォ!!
 そんなに不便なんなら、大人になんか、なりたくない。どうしてもならなきゃなんないんなら、そんな大人には、なりたくない。
 ……てか、でもさァ。どんな大人になったかは、アタイが感じることじゃない。他人の目に映って、その他人が感じて、決めることだ。だから、どうなりたいとか、どうなったらイヤだとか、そんなことは、一切思わない。なったらなったで、それでよし。ならなきゃならないで、それでよしさァ♪
 で、……LDP指定地区?
 みんな、知らないはずなのに、誰も、誰にも、何も、訊こうともしない。
 無関心? だったら、最悪だ。
 で、ヨッコの姉貴に、訊いたのさァ。
 「ねぇ、ねぇ。LDPって、なにーぃ??」
 マザメの姉御の目が、{何故|なぜ}か優しい♪
 ヨッコの姉貴が、応えて言った。
 「あんただけだね。正常なのは……」
 「ほかの人は、誤動作ってことォ?」と、あたい。
 「それは、正しくないね。動作しないんだから。『{錆|さ}びつき』ってところかなァ?」と、ヨッコねーさん。
 「納得ーぅ♪ で、LDPはァ?」と、あたい。
 「そうだったね。『レベル・ダウン・ア・ペニンソラ』の略さァ」と、ヨッコねーさん。
 「なッなッ! なーんじゃそりゃ!」と、久々に出ましたよん♪ サギッチだ。
 「あんたら、すぐに噴火すっからさァ。あんまり、{絡|から}みたくなかったって言うか……それ、過去形じゃなくて、常に現在進行形なんだけどさァ♪」と、ヨッコの姉貴。
 「わけわかんねぇから、噴火でぎねぇ。安心して、ツボネンちゃんの問いに、応えてやれッ!」と、意外と*短期*集中*短気*のムロー先輩が言った。
 「あッ、そお! じゃあ……。半島を切り崩して、平野にしちまうってことさァ」と、ヨッコしゃん♪
 「開発予定の、国有地……ってところかァ。詮索が過ぎると、みんなに危険が及ぶからなッ! 俺たちも、その『みんな』の端くれって訳なんだからさァ。危なっかしい動きは、休み休みにしてくれよなッ!」と、日焼けしたジュシにぃ。
 「はいはい。{腑|ふ}に落としとくよォ♪ 『大きなお世話』っていう索引を貼ってさァ!」と、ヨッコねぇ。
 「その索引に、イメージ記憶を張っとくのも、お忘れなくーぅ!」と、オオカミ先輩。
 ヨッコねぇ、無言!
 スピアの兄貴が、言った。割といつも、唐突! てか、脈絡無視。言い換えると、自分勝手! でもそこが、スピアの兄貴のいいところーォ♪
 「うどんを作ってたってことはさァ。山小屋みたいなのがあったってことだよねぇ? 今そこ、どうなってるのォ?」
 「危なっかしい詮索は、しない主義だ……って、言ったろッ?」と、日焼けしたジュシにぃ。
 「言ってないと思う。休み休みだから、休んでないときは、詮索したり危なっかしいことしてたんでしょ?」と、スピアの兄貴!
 「{面倒|めんど}っちい奴だなァ!
 俺とペアじゃなくて、良かったぜぇ♪
 山小屋っちゅうかさァ。屋根と壁が付いた炊事場って感じかなァ。今でもあそこに建ってるとしても、誰も居ないよ。うどんのおかんが、鍵をかけて、下山しちまったからなァ。開発の指定地区になったからじゃないんだ。元々、山菜のシーズンしか、おかんは、山に登って来ないから。夏は暑いし、冬は、寒い。秋は……面倒っちいから……たぶん!
 まァ実際、忙しいんだろうけどさァ……」と、日焼けしたジュシにいやん。
 「俺ん{家|ち}じゃなくて、どうしても森に入って寝泊まりしたいって言うんなら、そのおかんっちに行って、屋根付き壁付きの炊事場の鍵を借りてこなきゃなッ!」と、マザメねーさんとペアの、ミスター・クーラーボックス! モクヒャのおっちゃんが、言った。なんか、どうでもいいみたい!
 「要らねぇ! 掘りゃいいのさァ。猪みたいにさッ!」と、マザメねーさん。
 「そんなに、{頑|かたく}なになることもないさァ。その屋根付き壁付きの炊事場とかいう山小屋も、モクヒャさんの家も、そんなに変わったもんじゃないからさァ。なんでもかんでも木で作んなきゃ気が済まない人だからさァ。森の中に丸太ん棒が積み重なっててさァ。その下に{埋|うず}もれてんのが、モクヒャさんの家って訳さァ。
 だから、わざわざLDPの危険な森に入らなくっても、似たような生活が出来ちゃうって訳さァ♪」……と、{渡哲|ワタテツ}サングラスの姉御! ファイねーさんが、言った。
 「{下手|ヘタ}こいて都市部にふらふらっと出かけて行って、逮捕でもされたら、{後|あと}が{面倒|めんど}っちいからなァ。おまえ、そのモクヒャさんの山小屋で、大人しく軟禁されてろッ!」と、オオカミ先輩。失礼な話だけど、アタイも、そう思う。失礼!
 「都市部に入りたくても、子どもも、大人だって、一人じゃ入ることがでぎねーぇから、心配は、要らんよォ♪」と、レジ{袋|タイ}のタケゾウおやじいさん!
 「なんでぇ?」と、アタイ。
 「五人組を作らないと、街へは、入れないんだ」と、{細長|さいちょう}顔のテッシャン。スピアの兄貴とペアのオッチャンだ。
 「なんで、五人なのォ?」と、そのスピアの兄貴!
 「五人に、大きな意味はないさァ。歴史的に、三人とか五人とかの奇数が、何かと都合が良くて上手くいくことが多かったンだろうさァ。肝心なのは、大人数で都市部に、{自|みずか}ら入るってところなんだ。一人ずつ拘束して捕虜すんのって、面倒っちいじゃん! だから、『グループを作って、街に入って来てちょうだい!』って、言ってるって訳さァ」と、細長顔を長ァーくして、テッシャンが言った。
 「さっきの町内放送のことォ?」と、スピアの兄貴。
 「御明察♪」と、ジュシにぃ。
 「覚えてないよッ! なんて言ってたっけぇ? なァ、記憶マシーン♪ 教えろよッ!」と、サギッチ。
 「出番?」と、スピアの兄貴。
 「ゴメン札ーぅ♪」と、アタイ。
 「じゃあ……えっとーォ!!
 『五時を過ぎました。大人は、おうちに帰りましょう。週末です。みなさん♪ 五人のグループを作って、街に遊びに行きましょう。安くて美味しいもの、素敵な物や楽しい事が、いっぱいです。
 さァ! 善い子も悪い子も、笑顔で明るく元気よく、街でいっぱい楽しみましょう♪ 広報、半島西』
 ……みたいなァ。
 だったっけぇ?」
 「完璧! 恐れ入る」と、タケゾウのおっちゃん{爺|じぃ}。
 「どこもかしこも、物騒ってわけだァ。この島は……」と、オオカミ先輩。
 「普通さァ。次の瞬間、生きてるっていう保証は、どこにもない。どこに居たって、{同|おんな}じさァ。この大宇宙に居る限りはねぇ」と、ファイねーやん。
  「じゃあ、どうやったら、その物騒な大宇宙から脱出できるんだァ?」と、ワタテツ先輩。まさかの、真顔! よりによって、この場面で……普通、訊くぅ?
 「まァ、掃除、洗濯、炊事の一切合切をしなくて済むんだ。そこを差し引いたら、ちょっとはマシってことさァ! ……そう思って、妥協しろって言いたいのさァ。だろッ?」と、マザメの姉貴。
 「しないつもりかい!」と、目を{鴉|カラス}にして、モクヒャのおっちゃんが、言った。
 「アタイも、その条件なら、オーケーィ♪」と、アタイ。
 「ぅーんなわけ、ねーぇだろッ! このバカ*チン無し*がァ!」と、ファイねーやん!
 (チンナシーィ??)と、思うアタイだった。

格物
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ソクラテスの弟子にように

 「どんな大人になったかは、アタイが感じることじゃない。他人の目に映って、その他人が感じて、決めることだ。だから、どうなりたいとか、どうなったらイヤだとか、そんなことは、一切思わない。なったらなったで、それでよし。ならなきゃならないで、それでよしさァ」……と、書いた。
 でもこれは、変わらない、変わりたくない自分への*言い訳*なんだそうだ。久々に、目的主義……積極主義の心理学の対話本の続きを、読んだ。

 人間も、この世の中も、本当は、実に{単純|シンプル}なのだ。アタイ自身が、自分の人生を複雑にしているから、いろんな可能性が、{悉|ことごと}く困難に陥ってしまう。フロイトのような過去の自分の体験や思考が未来のすべてを左右するみたいなマイナス思考ではなく、アドラー先生が説いたように、未来の目的や夢に立脚して、今や、これからの未来を考えて、自ら変わっていかなきゃならないということ……。
 今の自分も、変わらない自分も、すべてが、自分で決めたこと。当然だッ! 他人に、決められる*ワケ*がない。アタイは、{何故|なぜ}、変わらないって決め込んでるんだろう。それは、変わりたい、目的や夢を実現したいっていう意志の力が、足りないから……{則|すなわ}ち、「勇気がない!」からだ。言い換えれば、「{意気地|いくじ}なし!」ってこと。

 どうすれば、その勇気が、持てるのか。
 それを持つためには、先ずは、今の自分を、やめるってことだ。それが、第一歩となる。
 「……一切、思わない」「……それで、よし!」「もし、何々だったら……」「アタイは、何々じゃないから……」と、これらは全部、変わらない自分……変える勇気を持てない自分への、*言い訳*なのだ。
 これを、「可能性の中に生きているうちは、変わることなどできません」と、アドラー先生は、言っている。やらない、行動しない、変わらないことによって、「もしやれば、もし行動すれば、もし変わることが出来れば、必ず、自分にも出来る」っていう*可能性*を、常に{某|なにがし}か、残しておきたいのだ。
 何故かッ!
 他人の悪評に{晒|さら}されたくない。「自分には、出来なかった」っていう現実に直面して、{自尊心|プライド}を傷つけたくない。もし、時間がありさえすれば……。もし、表舞台に出る機会を与えられさえしていれば……などと、可能性を残し続けて生きていると、{何|いず}れは、もう若くないから、もう家を買ってしまってローンがあるから、もう出世は望めないから、もう……と、直接的な言い訳を、恥も外聞もなく、おっ{始|ぱじ}めてしまうことだろう。

 「自分を変える」ということは、失敗しないためにあるんじゃない。失敗し続けることも、自分を変えることになる。「失敗しないために、何もしない」ということが、*変わらない*ということなのだ。何度失敗しても、何もしないよりは、前に進んだことになるし、どうしてもダメだと判断して、もし他のことを初めたとしても、それはそれで、やっぱり、一歩前に進んだことにはなる。
 一つの夢や、生涯一大事として大切にしてきた自尊心は、ぶっ壊れて、砕け散るかもしれない。でも、出来ない自分、変われない自分の言い訳を常に考えながら、何もせずに生き続ける{窮屈|きゅうくつ}さや苦しさに比べれば、よっぽど幸せな人生を歩むことができるのではないだろうか。

 やっぱり、どう考えても、変わらないことのほうが楽ちんで、変わることは、厳しいことのように思える。実際、そうだろうと思う。でも、大事なことは、この星、この世界、この大宇宙……そして、身近な世間との関りや意味を、自ら変えてしまえば、世間や他人との関わり方や、日々の行動も、変えなくてはならない必要が、出てくる。
 それ……則ち、「変わらざるを得なくなる」と、いうことだ。
 だから、アタイも、ほかのみんなも、世間との関りや意味……{所謂|いわゆる}ライフスタイルを、ただ選び直しさえすればいいということなのだ。新しく選び直したライフスタイルのほうが、きっと厳しいに決まっている。でも、それで、アタイの人生は、すっごく単純! 「シンプル・イズ・ベスト♪」になる……と、いう訳だ。

 ソクラテスと、その弟子たちとの語らいが、「対話の理想」と言われているそうだ。驚くほど素直で明け透けな言葉と態度で、大師匠に接する弟子たち……読んでみたい!
 {何故|なにゆえ}にぃ?
 決まってるじゃん!
 そんな、ソクラテスの弟子みたいになりたいからァ♪ 

_/_/_/_/ 『後裔記』 第1集 _/_/_/_/
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい……
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然修録 第1集 No.142

#### ヨッコの{然修録|142}【座学】{参|まい}り参られる人【息恒循】〈二循の反〉学人学年 ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 門人学年 **ヨッコ** 青循令{飛龍|ひりゅう}

座学
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参り参られる人

 ヒト種……自然{民族|エスノ}亜種。
 ヒト種の人たる{所以|ゆえん}って、なんだろう。
 「人で無し」の悪玉ジンなら、絶滅してもらったほうがいい。
 そんなことを考えながら、書の中の先人に学んだ。

 ヒト種の人たる所以は、「道徳を持った生きものだ」ということだ。
 「そんなもん! 持ってるか持てないかなんて、判らないじゃないかァ!」
 ……ふむ、{仰|おっしゃ}るとおり。
 でも、その道徳ってのは、心の中に現れる。
 それは、二つ。
 一に、敬すること。
 二に、恥ずること。
 この二つは、人間にのみ、神が与えてくれたものだ。

 敬する心は、どういうときに生まれるのか。それは、人間が限りなく進歩し、常に発達を望み、{僅|わず}かな未完成にも妥協せず、より完全で偉大なるものに憧れるときに生まれる。
 {斯|か}くして敬する心に成長すると、漏れなく同じ心の中に、「恥ずる」という情動が生まれる。一つの心の中に、敬する情動と恥ずる情動が共存する。敬することを知っている人は、恥ずることも知っているという{訳|わけ}だ。
 ところが、誠に残念なことに、私たち〈{日|ひ}の{本|もと}〉の国が敗戦して以来、教育現場において、この尊い「敬する」という心の動きを、一切禁じられてしまってきた。敗戦後、子供たちに教えられたのは、敬することでも恥ずることでもなく、「愛」一辺倒だったのだ。
 では、愛とは何か。それは、女性の専売特許! {則|すなわ}ち、「母の徳性」ということだ。なので、愛のみを強調されて育った子どもは、家庭の中で大切な人は、「母のみ!」……と、いうことになってしまう。
 言わずもがな、父親の存在意義は、次第に薄れてしまう。ただひたすら働いて、お金という獲物を、毎月決められた日に持って帰ってくれれば、それだけでよ良い、合格♪……と、{宛|さなが}ら働き{蟻|アリ}やミツバチが{如|ごと}く、そんな待遇……境遇!に甘んじて生きてゆかねばならない。
 
 ではでは……じゃあ、子供たちは、愛だけで満足する?
 子供たちが、本来、本能的に持っているのは、愛することではなく、敬することだ。その敬する対象を両親に求めるのは、至極当然なことなのだ。
 ときに{幼子|おさなご}というのもは、父親のブカブカの帽子を被ったり靴を履いたりして、よく大人たちを笑わせてくれる。でもこれは、「大人たちを笑わせてあげよう♪」だなんていうサービス精神とは、まったく無縁なのだ。敬するが{故|ゆえ}に、真似てみただけのこと……。
 この点に着目して考えてみると、父親というものは、我が子に対して、あまり口やかましく言わないほうが良い……という状況判断が、成り立つ。口やかましく言うことも大事であることに変りはないが、それは、どちらかというと、やっぱり母親の仕事だ。
 逆に、親の立場に置き換えてみると、そんな我が子の理想像としての親象の{心象|イメージ}を自ら壊さないように、{或|ある}いは、そんな敬する気持ちを芽生えさせるに値する親であるがために、常日頃から態度や言葉に到る立ち居振る舞いに、細心の注意を払わねばならぬということだ。

 子が親の真似をすることからも判るように、人間は、敬する心を持つと、自らその敬する者に少しでも近づきたいという気持ちが自然に湧き起こってくる。これは、愛する心には無い、敬する心の最たる特徴だ。
 これを、「参ずる」とか、「参る」などと言う。神仏に参るように、敬する者に参りたくなるということだ。すると次第に、参るだけでは飽き足らなくなる。そこで、{側|そば}近くで{仕|つか}えたくなる。これを、「{侍|はべ}ると言ったり、「{候|さぶらう}」と言ったりする。
 {侍|さむらい}の起源は、民衆から生まれた「さぶらい」と呼ばれる浪人{風情|ふぜい}の庶民剣士だったそうだ。*さぶらえる人と出会える*ということは、実に恵まれた、幸運な出来事なのだ……と、思わずにはいられない。
 しかも、「参る」という言葉に到っては、愛の場面にも現れる。「A君、あんたに参ってるみたいだよん♪」なんて言われた日にゃあ、そのA君がそれなりの男なら、女{冥利|みょうり}に尽きるというものだ。
 {何故|なぜ}なら、好きとか恋とか愛とかで表現されるものとは、まったく意味が異なるからだ。そこには、相手を敬する対象として、異性の理想像として礼讃する気持ちが、込められている。言い換えれば、人間としての尊さや、精神的な偉大さを、認められたということになる{訳|わけ}だ。

 この「参る」の用例は、これ以外にも、枚挙に{暇|いとま}がないほどある。そこに触れると、主題から大きく外れてゆくこと必至!であるからして、ここで、{鞘|さや}を納めることにする。

 あたいは……最近、こんなことを考えている。

 参りながら参られる人間を目指すなら、その途に戦争があったとて、それは、自然として受け入れるほかないのではあるまいか。学問で喜怒哀楽が大事であるように、戦うべき時は、大いに戦うべきなんじゃないかと、あたいは思う。

 それが、ヒト種という動物の{掟|おきて}……「天命」なんだと思う。

息恒循
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〈二循の反〉学人学年

(第二版 改訂一号)

 生涯、{則|すなわ}ち{天命|てんめい}。その最初の重要期を{立命期|りつめいき}と言い、その立命期の後半の循である七歳から十三歳までの七年間を、{少循令|しょうじゅんれい}と言う。

 その少循令の最高学年を、「学人学年」と言う。

 「学人学年」とは、何を学ぶ歳なりや……。

 天命とは、全天界の{造化|ぞうか}の絶対的な作用、働きである。
 これが、人間を通じて作用したとき、その人間に、性が生じる。
 「性」とは、心理・精神が発達した動物の生き{様|ざま}のことだ。
 この「性」に{率|したが}って、日々実践、開発してゆく。
 これが、「道」だ。

 人間は、道に率わねば、一歩も進むことができない。どこにも、到達できない。{故|ゆえ}に、何を置いても、先ずは道をつけねばならない。
 道を表す文字の一つに、「田」という文字がある。
 古代の先人たちが未開発の荒野の先ず一{区劃|くかく}目である「口」の文字で表される範囲を耕作しようというとき、先ず最初に取り掛かった仕事が、道を造ることであった。田の文字の中の「十」の文字が、その道を表している。それと同時に、「その道を造るために努力する」という意味もある。
 古代の先人たちは、この道のお蔭で、狩りができるようになった。そこでこの田という字は、「狩り」の意味も持つ。このような意味から総じて、あらゆる場面に於いて「道をつける」ことができない、{或|ある}いは、そうしようとする努力すら出来ないような者は、「男じゃない!」と、相成る。

 {順|したが}って「道」というものは、座学でどうにかなるような観念的なものではない。正に、実践そのものなのだ。且つ、創造的である。{則|すなわ}ち、天命の絶対的な作用・働きの実戦であり、これが人間の本性であり、人間は、この本性……{所謂|いわゆる}天分の能力に率って、日々実践してゆく……これが、「道」というものである。

 禅の修行僧の話に、こんなものがある。
 ある弟子が問うた。
 「{如何|いか}なるかこれ道」
 師匠、これに応えて言う。
 「道かァ? 道なら、それそこの{牆外底|しょうがいてい}、垣の外にあるじゃろッ! あれが、道じゃ」
 弟子、ムッとして言う。
 「私の{尋|たず}ねておるのはそんな道ではありません。大道です」
 すると、師匠が、言下に{斯|こ}う言った。
 「大道長安に通ずる」

 都の長安に通じとるのが、大道じゃい! ……みたいな。今で言うなら、「国道一号線のことじゃわい♪」と、言い返されたようなものだ。座学や性急な思索だけで道を{解|わか}ろうとすると、観念や論理に{溺|おぼ}れてしまい、肝心{要|かなめ}の「実践」から遊離「ハイ、サヨナラーァ!!」してしまう……と、いう{譬|たと}えだ。
 実践から遊離したところに、道などあろうはずがない。{故|ゆえ}に、絶え間なく開発してゆかねばならぬ。何事も、{放|ほ}ったくっていると、すぐに草{茫々|ぼうぼう}になり、荒れ果てて、すべてを見えなくしてしまう。

 「道を修むる之を教と謂ふ」……という語録がある。
 弟子は、迷えるものである。どの時代にも、「教」は必要となる。
 教というのは、単に口で教えるだけではなく、実践を伴い、それが、お手本となる。教師が実践して生徒のお手本となり、生徒を、実践へと導く……これが、教の師の仕事である。これを怠る教職員のことを、某「狂氏」と書く。

 学をするということは、単に言葉や{文言|もんごん}で教えられたり教えたりすることではない。先輩の実戦をお手本とし、実践して後輩のお手本となることである。

 ここに到って、{愈々|いよいよ}{美童|ミワラ}は、**知命**するのである。

_/_/_/_/ 『然修録』 第1集 _/_/_/_/
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後裔記 第1集 No.145

#### ムローの{後裔記|145}【実学】{荒|すさ}んでも森に還る{鱒|マス}たち【格物】獣の勇気 ####

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。
 学人学年 **ムロー** 齢17

実学
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荒んでも森に還る鱒たち

 この後裔記、{何故|なにゆえ}に{美童|ミワラ}ばかりに書かせるのか。{則|すなわ}ち、「{何故|なぜ}{武童|タケラ}は、書かないのかッ!」ということだ。
 答えは、簡単だ。
 大人になると、真実を書けなくなるからだ。だから、書いたとしても、{偽|いつわ}りや当たり障りのない内容を鏤めた、面白くもなんともない物語になってしまう。
 無理もない!
 仲間や家族を守るため、{或|ある}いは、なんらかの企てを完遂するためには、嘘や偽りを巧みに編み込んでゆかねばならないからだ。自然{民族|エスノ}と言いながら、まったく全然、自然とは程遠い。{寧|むし}ろ、不自然エスノだッ!
 その点、和の{民族|エスノ}の大人たちのほうが、よっぽど自然体だ。自然を敬い、自然と共存し、自然に生きている。

 さて、ズングリ丸に居残ることになった三名……学人学年の俺、門人学年のワタテツとヨッコくんのことだが、三人とも、後裔記を書くことが苦痛になってきているようだ。隠さねばならぬこと、右だと思っても左だと言わねばならぬ場合、違うと思っても「そうだよねぇ♪」って言わねばならぬ事態……等など。最近、そんな事情を、常に抱えながら、後裔記を、書いている。
 だから、(そろそろ、後裔記を卒業する時期が、迫って来ているのかなーァ?!)なんて、昨今……正直、そんなことを、考えている。

 一つ、余計なことを書こう。
 何故、低学年の五人だけを、外泊させることにしたんだろう。八人全員、ズングリ丸に寝泊まりしたって、なんの問題もないはずだ。しかも、{居候|いそうろう}させてもらう五人の大工たちは、言わずもがな、昼間はズングリ丸で{鋸|のこぎり}を振るうはずだ。大工たちの家に残されたあいつらは、一体全体、何をさせられるんだろう。
 こんなことを考えてしまうから、誰かが、どこかが、都合が悪くなってしまうのだろう。まァ、{兎|と}にも{角|かく}にも、俺はまだ、{美童|ミワラ}だ。生々しい記憶に{順|したご}うて、素直な描写に努めよう。

 俺たち居残り組三人に話の矛先を最初に向けてくれたのは、クーラーボックスのオッチャン、モクヒャさんだった。
 「少年少女だけで、この船にお泊りかァ。まァ、君{等|ら}三人なら、どうにかできるだろう。何かが起きたとき、どうにかせねばならんだろう? その代わり、昼間は、楽をさせてやろう♪ {陽|ひ}がでりゃせっせと甲板掃除と真鍮磨きだ。板張りを拭く米ぬか雑巾と真鍮を磨く研磨剤のピカールは、ぼくからの贈り物にさせてもらうから、存分に使いたまえッ!」
 それが、本当に楽かどうか……そのときは、疑いもしなかった。{殆|ほとん}ど、興味がなかったんだと思う。まさか、あそこまで重労働だったとは……知っていたら、モクヒャさんの陰謀に満ちた贈り物など、絶対に受け取らなかったんだが……。
 そのとき、ふっと思った。無言のヨッコ……不気味だ……というよりアイツは、喋り続けないと死んでしまう、新種のヒト種じゃなかったっけーぇ?! そんなヨッコの無表情の横顔を、チラッ、チラッと見ながら、マザメくんが、言った。
 「レディーファーストってさァ。大切な人なのに、か弱いから、{護|まも}ってあげるって意味なんでしょ? あたい、確かにあんたたちにとっては大切な人だけどさァ。でも、か弱くなんかないから。だから、あたい! やっぱ、森に入るわァ♪」
 そこで、意外や意外、誰もが予想していなかった{奴|やつ}が、口を開いた。
 「あんたもさァ。いい加減、無理言うの、{止|や}めときなよォ! この辺の森はさァ、LDP指定地区なんだよ。文明エスノの政府が徹底管理してる。許可があれば立ち入ることは出来るけど、日の出から日没までに限られる。しかも、季節限定。真冬の極寒、日の出の時刻に氷点下であることが条件さ。
 許可されて森に入った者で、日没までに戻ってきた者は、{未|いま}だ{嘗|かつ}て、一人も居ない。公表では、凍死ってことになってるけど、実際は、森に入って数分後には、漏れなく殺されてるって寸法さ。それでも、生きて戻って来る自信があるっていうんなら、許可なんて{面倒|めんど}っこい手順なんか踏まずに、これから、さっさと森に入っちまえばいいさァ♪」

 さすがのマザメくんも、久々に投下された姉御ヨッコの忠言には、返す言葉が思い当たらないようだった。空気が、重い。そして、最初に口火を切ったのは、日焼けした健康そうな青年、ジュシさんだった。
 目が、怖い!
 「俺が、ちっちゃい頃はさァ……。
 あの森の入り口に、アマテラスを祭った{祠|ほこら}があってさァ。そこから、登山道が森の奥に延びてたんだ。低い山だけどさァ。いっちょこまいに、山小屋があったんだ。
 しかも、春から夏までの間は、うどんが喰えたんだ。山のおかんが、作ってくれるんだ。山菜と油揚げが、いっぱい♪ うどんは、頑固一徹のシコシコでさァ。炊き立てのご飯が、山盛り、お茶碗によそってあって、おかんお手製の総菜が、必ず三品、漏れなく付いてくるっていう超豪華バージョンさァ♪ そのどれもこれもが、{所謂|いわゆる}母の味ってやつでさァ……。
 まァ、一種のデイキャンプってやつだなァ♪ でもみんな、おかんのうどんが目当てだったから、バーベキューなんかやる奴は、滅多に見かけなかったけんどなァ。
 ほんでもさァ。川魚が、これまた{凄|スゴ}い!んだ。土着した{山女魚|ヤマメ}、海から戻って来る{皐月鱒|サツキマス}。コシアブラとかタラの芽とかの山菜が採れるころ、その両方の種の魚たちが、川面から顔を覗かせるんだ。
 山女魚は、銀や青、金色の奴もいるんだ。山女魚が泳いでると、下流のほうから、『おーい♪ 元気してたかーァ?!』って言いながら、皐月鱒が、{遡上|そじょう}してくるんだ。奴らはさァ、代々降海してきたんだけど、一度だって、この辺の海から離れたことがないんだ。なんか、海民家族のお父さんって感じだろッ?
 俺たちが亜種なら、そいつらも、亜種さ。たぶんなァ。実際にそこで泳いでいたのは、皐月鱒だけじゃないってことさ。他の亜種の鱒も、一緒に泳いでた。だから俺たちは、奴らを、区別なんてしなかったのさ。みんな、鱒ってことで、ただそれだけでいいじゃないかって、思ったのさ。
 他の亜種の鱒っていうのは、平家鱒のことでさ。ここに居る平家鱒は、源平の合戦場となって{平|たいら}の{能登守|のとのかみ}率いる軍勢が果てた原っぱを{掠|かす}めて海に流れ出る平谷川からやってきた、{兵|つわもの}揃いさ。
 そんな、俺たちの大切な想い出を、情け容赦なくぶち壊したのさ。文明エスノっていう亜種さんたちがさァ。そこまでされて、{一物|いちもつ}を持たねえ人間が、居ると思うかァ? 口や態度に出すがどうかは、別の問題さァ。
 これ以上、俺たちの森を、{穢|けが}すんじゃねぇ!」

 このあとの沈黙が、長く感じただけなのか、それとも、本当に長かったのか、まったく、思い出せない。  

格物
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獣の勇気

 福沢諭吉という先人は、こんなことを言ったそうだ。
 「盲目社会に対するは獣勇なかるべからず」
 一寸先でさえ真っ暗闇の時代で生き残るには、{獣|ケモノ}の勇気を持つ以外に{術|すべ}はない……と、言うのである。
 盲目社会……正に今が、それだッ!
 獣の勇気とは、なんだろう。
 この語録の編者は、{斯|こ}う説いている。
 獣は、考えない。
 故に、迷わず、{拘|こだわ}らず、{囚|とら}われない。

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然修録 第1集 No.141

#### サギッチの{然修録|141}【座学】維新こそ正に神話!【息恒循】〈二循の高〉門人学年 ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 少年学年 **サギッチ** 少循令{猛牛|もうぎゅう}

座学
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維新こそ正に神話!

 アマテラスやスサノオが神話なら、サイゴウドンやリョウマも、神話だと思う。そして……今ぼくらは、自らの行動を編み、何れそれは、{武童|タケラ}の誰かによって、新たなる神話とすべく{紡|つむ}がれることだろう。

 サイゴウドンやリョウマが登場する神話は、我ら{日|ひ}の{本|もと}の国の存亡を賭けた、内的な大変革の物語だ。でも、ぼくらの神話は、滅亡に瀕した人類の悪あがきの大迷走……正直、そんな感じだ。
 それを、ぼくらは、数千年後の〈日の本〉の国の子どもたちのために、数千年前の同じ子どもたちが思い考え行動した実話として、こうやって日本語で書き残している。

 ところが……だッ!
 維新を、異国の人たちに理解してもらおうと、英語で書き残した偉人が{居|い}る。マジ、スッゲーェ!……と、思う。どんなふうに、西洋人を{諭|さと}そうと試みたのだろう。有り難いことに、その日本語訳が、皇紀二六六二年に刊行されている。それを、苦労して、やっと、手に入れた。
 維新について、西洋の人びとに向けて、著者の、内村鑑三は、こんなことを書いている……と、前置きをして本題に移りたいが、そこは無論、それは但し、例の{如|ごと}く、ぼくが解釈した表現に、少々{或|ある}いは大きく様変わりしていると思う。それを承知で、是非とも巧みに行間を読んでもらいたい。

 では、その本題……。

 〈日の本〉の国は、天の意志によって、{紺碧|こんぺき}の{大海原|おおうなばら}より姿を現した。そのとき天は、〈日の本〉の国に、{斯|こ}う命じた。
 「ヒノモトよォ! 門の内に、{止|とど}まれ。{召|め}すまでは、世界と交わるなァ!」 
 我ら〈日の本〉の国は、二千余年に{亘|わた}り、この命を守り続けた。それが{故|ゆえ}に、〈日の本〉の海を、外国の艦隊が波を切って進むことも無かったし、また、国土の沿岸が、外国から{脅|おびや}かされるというようなことも無かった。

 この事実を知れば、「長く国を閉ざしおってぇ!」などと非難することが、まったく無知で無責任な道理を外れた批判であるということを、{容易|たやす}く明白に理解することができるだろう。
 〈日の本〉が国を閉ざしたのは、天命である。それは、我が国にとっては勿論、世界の国々にとっても良かったことであり、それは真実であって、今も今後の未来も、その真実が変わることはない。
 我々の国は、世界の中心を{為|な}すことを天命であるかのように誇っている西洋から、遠く離れている。そのことは、一つの国にとって、必ずしも不幸であるとは言い切れない。それがたとえ、西洋が発信した{所謂|いわゆる}文明開化に浴する段に及んだとて、幼い我が子を好んで国の外に放り出すような親は{居|い}まい。

 逆に、西洋と近しく{且|か}つ親しくしていた例えばインドなどの国は、{易々|やすやす}と西洋の利己主義の{餌食|えじき}となり、ほぼ丸呑みにされてしまった。
 それは、インドに始まったことではない。ゲルマンに端を発する西洋のアングラやザクセンの狩猟民族たちは、平和なインカ帝国アステカ帝国に、一体全体何が{障|さわ}って……実際、何をしくさってくれたのだろうかッ!
 我が国が、鎖国を避難されて……もし早々に、その門戸を開こうものなら、矢庭!途端!に、インド支配の地固めをしたクライブとか、アステカ帝国を亡ぼしたコルテスのような利発勇猛な軍人が、容赦なく襲い掛かって来ていただろう。

 戸締り厳重な家に押し入る{企|くわだ}てをしている強盗は、そんな、門戸が自ら開かれるような好機を、{虎視眈々|こしたんたん}と狙っているものなのだ。

息恒循
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〈二循の高〉門人学年

(第二版 改訂一号)

 生涯、{則|すなわ}ち{天命|てんめい}。その最初の重要期を{立命期|りつめいき}と言い、その立命期の後半の循である七歳から十三歳までの七年間を、{少循令|しょうじゅんれい}と言う。

 その少循令の高等学年を、「門人学年」と言う。

 「門人学年」とは、何を学ぶ歳なりや……。

 本物の学問とは……。

 その「本物の学問」というものが、人間を変える?
 {然|さ}れば人間は、己を変えることができる?
 それを可能にするのが、真の「学」というものである。

 本当の学問とは、何か。
 それは、真理と実践が一致したときに、初めて己の血肉と成り得る。求道する心と修行する肉体は、生涯、離れるべからざるものなのだ。単なる知識の記憶や技術の修得は、学問でもなければ、教育でもない。{敢|あ}えて名付ければ、「{知識や読書の師|レーゼ・マイスター}」と言うそうだ。
 大切なのは、「{徳性の師|レーベ・マイスター}」のほうだ。この徳性の師に学ぶ以外に、世の中や人類全体は{疎|おろ}か、己ただ一人とて救うことは困難……ズバリ!申し上げれば、不可能である。
 {然|しか}しながら、我々は、幸いにして、書の中で、先哲と交わることが可能である。書の中で息{衝|づ}く先人{先達|せんだつ}は、単なる知識や技術的な手段のような{類|たぐい}ではなく、既に先哲自ら実証されて{居|お}る個々の人格を表してくれているものであり、それらと交えることによって、真の学問を為すことができるのである。

 人間の本質とは……。

 本質……{則|すなわ}ち、核心にあるもの……それは、徳性である。
 知識は勿論のこと、知性も知能も技能も、本質に付属するオマケのようなものに過ぎない。オマケは、もう一つある。習慣だ。
 たとえどんなに多くの知識を持ち、知性や知能や技能や習慣が{優|すぐ}れていたとしても、「偉人」と称されることはない。
 {何故|なぜ}かァ?
 なるほど……確かに、知性や知能や技能や習慣が、人類の文明や文化を創り上げてきた。それは紛れもない事実だ。だのに何故、何れも本質とは言えないのか。それは、知性も知能も技能も習慣も、人間の本質的な要素ではないからだ。
 人間の本質とは、「それ」がなければ人間ではなくなってしまう大事な{物|ブツ}のことである。その「それ」が、徳性なのだ。
 具体的には、愛すること、{報|むく}いること、助けること、奉仕すること、{廉潔|れんけつ}、勤勉……そして、素直な喜怒哀楽も、徳性と成り得るだろう。そういうものが{相俟|あいま}って、一つの徳性を為すのだ。そんな本質を持っているからこそ、知能や技能というものが生きて、世のため人のためとなり得るのである。

_/_/_/_/ 『然修録』 第1集 _/_/_/_/
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい……
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後裔記 第1集 No.144

#### マザメの{後裔記|144}【実学】またもや離散!【格物】潰された心の{強|したた}かな秘策 ####

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。
 学徒学年 **マザメ** 齢12

実学
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またもや離散!

 スピアの然修録、冗談にならないっていうか……笑えない。
 養殖ヒト変種?
 まァ、そこまでやれば完璧だろうけどさァ。さすがに、人間の養殖まではしないと思う。だって、猿で充分じゃん! しかも、知能の高いチンパンジーなら、養殖ヒト変種よろしく、完璧ってもんさァ♪
 あいつら……うん、間違いない。
 絶対、やるねッ!

 この星……最後の平和なひととき……嗚呼、森で寝たい!
 底抜けに生真面目なテッシャンが、言った。
 「現実的な話だけど。こいつ……ズングリ丸、いつまでもここに{繋|つな}いでおくわけにもいかないでしょう。港湾管理所は、地方行政です。行政っていうのは、都合が悪くなると、何を{為出来|しでか}すか{判|わか}りません」
 (クーラーボックスのオッチャン……って言ってくれれば、直ぐに判るのにーぃ!!)と、つい思ってしまうモクヒャさんが、応えて言った。
 「それは、わしが……いや、おれがァ……あやァ! うん。
 わしが、なんとかしよう♪
 ひとまず、フリートに回航だ」
 「また、レース用のかっちょいいヨットに乗って来るのォ?」と、ツボネエ。
 「いや、レース艇のエンジンは、{飽|あ}くまで補助的な役割でしかない。ズングリ丸を{漕|こ}いで行くなんて、とんでもないぜぇ!」と、どの角度から見ても日焼けしてるジュシさん。
 「養殖、やってるんですよねぇ……みんな。漕ぐの、プロじゃん!」と、サギッチ。
 「{生業|なりわい}の{糧|かて}として{要|かなめ}である船を、そう{易々|やすやす}と奉仕作業になんぞに使えんだろう!」と、ムロー学人。ご{尤|もっと}もーォ♪ でも、ムロー先輩が言うと、無意味に{堅|かた}ッ苦しい!
 「キャタピラー製の、でっかいエンジン積んでるから、ぼくの船を持って来ましょう。うちの{筏|いかだ}は、鉄で重いからァ♪」と、テッシャン。
 「じゃあ、おまえに任せたッ♪」と、モクヒャさん。
 「任せるんかい!」と、オオカミの野郎。
 「苦渋の選択であろう……たぶん」と、ワタテツ先輩。
 「てかさァ。なんでフリートなのさァ。フリートは、艇団が、おねんねするところだろッ? 廃船……とまでは言わないけど、作業船にでもするつもりかい?」と、なんか……あたいと同じ{匂|にお}いがするファイねーさんが、言った。
 「この辺りの造船所は、どこも地方行政の{子飼|こがい}だ。頼んでも無いのに解体されっちまうのが、オチってもんさァ」と、タケゾウのオッチャンが、言った。
 ファイねーさん……考えが浅いところも、あたいと同じ匂いがする!
 「じゃあ、どうすんのよォ! 真面目に考えてんのかよォ……マジでぇ!」と、サギッチ。
 「マジじゃないことを考えるほど、{最早|もはや}わしらの余命は、長くはない」と、タケゾウのオッチャン。
 「行間、読めたかァ? いちいち、おまえらに説明してる暇なんて、無いってことさァ!」と、ジュシさん。少々、ムカつく。行間は、めっちゃくそムカつくーぅ!!
 「ムローくんと、ヨッコくんと、ワタテツくんの三人だけ、ぼくらと一緒に、フリートに行って欲しいんだけどォ……。しっかり、働いてもらうことになるとは思うけどォ!」と、テッシャン。
 「他の{餓鬼|ガキ}どもは、どうすんのさァ!」と、サギッチ。
 「おれたちの家に、一人ずつ、ホームステイだなァ♪ ちょうど、五人ずつじゃないかァ!」と、モクヒャのオッチャン。
 「よし。じゃあ、ここは、{恨|うら}みっこ無しで、{斯|こ}うしよう。
 わしの家には、オオカミくん。
 モクヒャん{家|ち}には、マザメくん。
 テッシャン家には、スピアくん。
 ジュシん家には、サギッチくん。
 ファイん家には、ツボネエくん。
 まァ、家庭料理の当たり外れは、乱高下っちゅうところじゃから、何を出されても黙って食うしかないが、どの家も、気兼ねは{要|い}らん。異論は、辞退してもらおう。{如何|いかん}せん、わしらの余命は、短いでなァ♪」と、もうすぐ死ぬらしいタケゾウ{爺|じい}が、言った。
 ツボネエは、既に、大はしゃぎモード♪
 スピアとサギッチは、目が泳いでいる。
 あたいは不満で、どうやらオオカミは、不服らしい。
 オオカミの野郎が、独り{言|ご}ちた。
 「他人のお情けに、甘んじてるバヤイかよォ!
 まだおれたちは、知命前の身だ。指令だろうが宿命だろうが、なんだっていいが、そんなもんに従う義理はない。義理があるのは、一族の先人{先達|せんだつ}くらいのもんだ。ただ血に{順|したご}うておれば、道理を誤ることはない。それが、自然ってもんだろがァ! そうやって、おれたちは、自然界で、生き延びてきたんだ」
 と、オオカミの野郎が、そこまで言った……そのときだった。
 「ぼく……お世話になります」と、スピア。
 「宜しくお願いします」と、サギッチ。
 「今晩、何食べるのォ?」と、ツボネエ。ファイねーさん、聞こえなかったふりーぃ♪
 「スピアくんとは、いろんな話ができそうだねッ♪」と、テッシャンが、言った。

 さっきから、ヨッコ先輩が、黙ったままだ。
 (この女、また変わろうとしてるーぅ?!)と、{何気|なにげ}に思ってしまうあたいだった。
 
【格物】
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潰された心の強かな秘策

 人生、思い通りにはならない……。
 これ、あたいの妄想。
 人生、言葉通りにはならない……。
 これ、オオカミの野郎の妄想。

 あたいの心は、「思い」の重みに、押し潰された。
 オオカミの野郎の心は、「言葉」の重みに、押し潰された。

 {何故|なぜ}、この世は、これほどまでに乱れてしまったのだろう。
 改めて{唯識|ゆいしき}を、学習してみた。

 乱れはじめた頃から人間は、皆一人ひとり、あまりにも外にばかり心を流散し、お金に名誉、地位だの利便だのと、外に外へと、己の幸せを追い求め続けてきた。
 自分を本当に幸せにしてくれるものは、お金でも地位でも名誉でも利便でもない。では、権力だろうか。無論、違う。それは、幸せどころか、破滅へと導く。本当に大切なものは、個々各々の心の中にしかない。そのことに目覚めるべきときに、人間は、{終|つい}に目覚めることができなかった。
 そのとき目覚めて、その「本当の幸せ」の獲得を目指して、生き方を大きく変えなければならなかったのだ。

 本当に……もう、手遅れなのだろうか。

 百数十億年前に、ビッグバンってもんが起きて、宇宙が生まれた。その宇宙は、今も、膨張し続けている。確かに、それは、事実なんだろう。でも、あたいが実際に、それを体験したわけじゃない。
 ところがさッ!
 あたいの心の中のビッグバンは、宇宙のそれほどでっかくはないかもしれないけど……でもそれは、実際にあたいが体験した、正真正銘の真実だ。しかも、そのビッグバンは、毎日のように起きている。その証拠に、潜在意識が映し出した夢から覚めると、「現実」というまったく心の想像が及ばないような不思議な異世界の中に、放り出されてしまう。
 その異世界では、自分と他人とが{対峙|たいじ}し、今日やらなければならないことに{縛|しば}られ、何者かが、あたいの心を押し潰そうと暗躍している。
 矢庭に、何かを考える。それが、*言葉*となる。
 {俄|にわ}かに、悩む。それが、*思い*となる。
 そして……この世のすべてが、対立する。

 そんな「言葉」や「思い」なんかに潰されない強い心を養わなければ、「私」という生きものに未来はない。ビッグバンによって出現した「この世」という現実の世界は、ビッグバンが起きる前から、そこにあったのだろうか。そんなはずはない。心のビッグバンが起こったから、そこに出現したのだ。
 ……であれば、己の心が欲するような世界を、出現させればいいではないか。「はーァ?! 非現実的……正に、{戯言|たわごと}だッ!」と、言われるのであれば、それで構わない。但し、その代わりに、心が欲するような世界になるように、大努力して{戴|いただ}くしかあるまい!

 毎朝、毎朝、心にもない理不尽で不条理な現実に振り回されながら、それを毎日毎日繰り返して、やがて老いて死んでゆく。正に、泥沼……なら、まだマシなほうだ。{殆|ほとん}どは、{肥溜|こえだ}めだ。そこから、なんとしても、抜け出さなくっちゃいけない。
 そんなことは、判っている。では、どうやってぇ?
 目覚めたとき、肥溜めの世界が、既にそこにあったわけではない。目覚めた瞬間から、悪意に満ちた言葉や思いによって、世界は、次々と出現するのだ。それが、対立の世界だ。では、どうするか……。
 目覚めたときには、まだ何もなかった……であれば、そこに、戻ればいい。何もない、真っ白の生の世界へ。その、「生の世界」へ戻る力が、唯識で言うところの、「念、{定|じょう}、{慧|え}」だ。

 「念」とは、明記して忘れざる力。
 ……心の中にある影像を明瞭に記憶して、それを忘れることなく、いつまでも思い描く。それを、維持し続ける力のこと。

 「定」とは、静まり定まること。
 例えば、坐禅を組むなどして集中していると、心の中の対立が消えて、静まり定まった心が現れてくる。

 「慧」とは、あるがままにある世界。
 定心……「定」によって静まり定まった心の中は、言葉も思いも、消え去っている。そこに、まだ何もない、あるがままの世界が、映し出される。

 この「念」「定」「慧」が、繰り返し心の中に起こるように錬磨しているうちに、本当に素晴らしいものを、己の心の中に獲得することが出来る。これこそが、本当に大切なもの……そう、幸せなのだ。
 この「大切なもの」を獲得する方法とその実践のことを、{瑜伽|ゆが}という。{所謂|いわゆる}これが、「ヨーガ」というやつだ。

 唯識というのは、三世紀ごろに生まれた古い思想だけれども、科学性と哲学性と宗教性という三つの面を、兼ね備えている。これは、世界でも{稀|まれ}だ。

 {最早|もはや}、科学だけでは、幸せにはなれない。哲学だけでは、誰も変われない。宗教だけでは、己が行動しない。瑜伽の三面が合わさって初めて、「まだ、間に合う♪」……のだ。

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然修録 第1集 No.140

#### スピアの{然修録|140}【座学】竜馬からヒト養殖まで【息恒循】〈二循の中〉学徒学年 ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 少年学年 **スピア** 少循令{猫刄|みょうじん}
     
【座学】
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■慣竜馬からヒト養殖まで

 ヒト種が、電脳人間によって養殖される日は、近い……と、ぼくは思う。三亜種が退化して、「変種の誕生」というわけだ。食用ではない。飼い馴らすためだ。{何故|なぜ}かッ!
 ヒト種は、頭脳のほかに、腹にも、脳がある。{所謂|いわゆる}腹脳……「心」さ。心があるから、喜怒哀楽がある。強制退化させられて心が無くなってしまったヒト種の亜種たちには、{最早|もはや}喜怒哀楽もない。
 {鴉|カラス}は、電脳チップの指令を、従順に遂行する。心が無いからだ。でも、電脳チップを埋め込まれた文明{亜種|エスノ}の連中は、命令が絶対の兵士としては……正に、不良品だ。誤動作は、日常{茶飯事|さはんじ}。何故かッ!
 喜怒哀楽が、あるから……心が、あるからだ。だから、近い将来、文明の人たちは、ヒト変種の養殖を、始めるはずだ。心を持たない……電脳チップを埋め込みさえすれば、ただその指令に従うのみ……そんな、強制退化させられた養殖ヒトが、自然エスノと和のエスノを、亡ぼす。
 退化は、進化する……たぶん。
 養殖場で、胎児のうちに、電脳チップを埋め込んでしまう……とか、チップを埋め込まなくても、遺伝子の組み換えとか、ヒト用飼料やビタミンやアミノ酸のような添加物の{類|たぐい}で、チップが無くても指令に従うヒト変種の養殖に、成功するかもしれない。
 そうなってくると、ヒト変種は、次に、何をやるだろう。心を持った人間は、邪魔なのだ。であれば、自分たちの祖先……文明エスノの人間たちの抹殺を、始めるだろう……たぶん。

 今、ぼくら自然エスノも、和のエスノの人たちも、心を鍛えることに、重点を置いている。それは、無論のこと、完全に、正しいことだと思う。でも、心だけでは、{対峙|たいじ}する肉体や武器に勝つことは、難しい。心……腹脳に加えて、頭脳や肉体も{鍛|きた}えなければならない。
 で、鍛えるとは……。
 {叩|たた}く? 動かす? ……それだけでは、まさにお粗末だ。疲労したり劣化したりして、ただ老化を加速させるだけだ。やはり、栄養が大事だ。脳への栄養、内臓への栄養、肉体への栄養……しかもそれらは、養殖ヒトに与える飼料や添加物を上回る栄養が、なくてはならない。

 ヒト種の亜種への分化は、退化の前兆だった。ある機能が失われたから、**種**から外され、亜種となってしまったのだ。ぼくら自然エスノも、和のエスノの人たちも、もうこれ以上、退化してはいけない。電脳人間や養殖ヒト{等|ら}との戦いに、もし、ぼくらが勝つことができたら、文明エスノ……{則|すなわ}ち、心を持った文明人たちの命も、助けることが出来る。
 サギッチたち黒鷺屋が{推|お}している、「文明エスノ皆殺し」の策を否定しているわけじゃない。確かに、あの人たちを生かして{放|ほ}ったくっといたら、また同じ{過|あやま}ちを、必ず繰り返すに決まっている。だからといって、ぼくらに助ける能力やその手段が残っているのに、それを封印して、「みんな、ぶっ殺しちゃえば、手っ取り早いじゃん!」……だなんて発想は、正に! ……退化進行形の証しなのだ。

 言わずもがな……ここまでは、まだ余談の「まえがき」みたいなもんだ。でも、今まさに、轟々と押し寄せる避難を、僕は、五感で察知してしまった。ぼくら{美童|ミワラ}が学んでいるのは、今も昔も、「心を鍛えること」のほうなのだ。
 なので……*早速*、学びで得たことを、記したいと思う。

 変化を起こし、その変化に順応し、自反し、己を変え、格物……則ち、己を正す。先人偉人は勿論、退化して愚かな判断しか出来なかった故人たちの逸話も、大いに自反材料となる。

 ある日、西郷隆盛が、坂本龍馬に言った。
 「会うたびに言うことが違う。定見を持て」
 竜馬、これに反論する。
 「孔子{曰|いわ}く。時に従う」
 今日も、昨日と同じことを言っているようでは、この激しい変化の時代を乗り切ることはできない……と、竜馬は考えていたのだ。
 竜馬は、そこを{解|わか}っていたが、殺されてしまった。
 西郷どんは、時に{順|したが}って変わることを{拒|こば}み、{敢|あ}えて悲劇の{犬死|いぬじに}を、率先して選んだ。

 さて、その竜馬……。
 勝海舟を、{斬|き}りに行く。
 すると勝海舟、開き直ったように、{斯|こ}う言った。
 「卒となり将となり、{忽|たちま}ちにして沈み、忽ちにして浮かぶ。天騒ぎ地踊るも、我れろうらくたり」
 何が起ころうと、ジタバタするんじゃねぇ! ……みたいな。
 正に、お見事。
 この{潔|いさぎよ}さに{惚|ほ}れ込んで、海舟の門弟になってしまった竜馬も……これまた、お見事だ。

 今泣いた鴉が、もう笑う……という{諺|ことわざ}が、事実であったなら、昔の鴉は、泣くことと笑うことを、全く異質の感性として、使い分けることが出来ていた……則ち、「心を持っていた」ということになる。
 {況|いわん}や! ここで{云|い}う鴉とは、実際には、人間の{子供|こども}のことだ。悲しみに、どっぷりと浸って泣いている子供が、おやつを{携|たずさ}えて部屋に入って来たお母さんを、{一目|ひとめ}見るや……瞬時に感情を切り替えて、嬉しそうに笑って見せる。
 これは、心が、喜怒哀楽を、健全に制御していることの証しなのだ。

 「今、この{時|とき}」という無数の点を、一直線に{繋|つな}ぎ、真っ直ぐな道を、脇目も振らずに生き通す……という生き方も、確かに、(スッゲーぇ!!)って思う。
 でも、一生、怒った顔で過ごすっていうのは……どうなんだろう!

 〈喜〉〈怒〉〈哀〉〈楽〉は、どれも、同じものは、一つもない。すべて、無数の点の中の、たった一つだけの点なのだ。
 それを、わざわざ線で繋いでしまっては……生き{辛|づら}くて、息辛くて、どこへも行き辛くて、仕方がないんじゃないかと思う。
 お粗末さまデシ♪ 

息恒循
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〈二循の中〉学徒学年

(第二版 改訂一号)

 生涯、{則|すなわ}ち{天命|てんめい}。その最初の重要期を{立命期|りつめいき}と言い、その立命期の後半の循である七歳から十三歳までの七年間を、{少循令|しょうじゅんれい}と言う。

 その少循令の中等学年を、「学徒学年」と言う。

 「学徒学年」とは、何を学ぶ歳なりや……。

 当然のこと{乍|ながら}ら、当該学年の頃の{子等|こら}というものは、体験……行動の経験は、未熟である。{先達|せんだつ}から学ぼうとしても、まだ人脈も無ければ、行動半径も小さい。
 {然|さ}れば、先人偉人に学ぶより、他に手はない。{則|すなわ}ち、無限で多次元で多彩で複雑な先達の人生の現実を縮図にして、それを眺め読み取るということだ。それを、読書という。
 では、その縮図たるその書から、何を学び、また実際に、何を学び取ることが出来るのか……。

 一に、一度きりの己の人生を、{如何|いか}に生くべきか。その生き方を、学ぶ。
 二に、生きる上では、行動の判断基準と成り得る様々な情報……{所謂|いわゆる}知識が、必要となる。その知識を、修得する。
 三に、人が歩む道に{於|お}いて、もっとも重要なものは、徳である。則ち、徳たる教養を、身に着ける。

 この、学び、修得し、身に着けるという読書習慣の個々も、無論のこと大事なのではあるが、最も大事とされることは、実は、それらに共通した一つの目的なのである。
 その、目的とは……。

 一に、己の人生の中で、**徳**を見出す。
 二に、その徳を、{凹|へこ}むことなく力強く生き抜くための、原動力とする。

 書籍には、先人偉人たちの深い味わい……言い換えれば、しみじみとした「{旨味|うまみ}」というものがある。

 そういう書のことを、「良書」と呼ぶ。

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後裔記 第1集 No.143

#### オオカミの{後裔記|143}【実学】ズングリ丸の運命【格物】{武童|タケラ}たる{所以|ゆえん} ####

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。
 学徒学年 **オオカミ** 齢13

実学
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ズングリ丸の運命

 どうも……確かに、あの変な{大人|おとな}五人組と一緒に{居|い}ると、何やら得体のしれぬ大きなものに{護|まも}られて生きているような感覚に、包まれてしまう。
 {則|すなわ}ち……五感すべてが、それを感じるのだ。

 あくどい文明エスノ野郎の話は、もうウンザリしてきた。それに、真っ黒い身体の中で、真っ黒い眼をクリクリさせている意外と愛くるしいアイツら……{鴉|カラス}たちの顔が、頭に浮かんでくる。そんな罪もない鴉に電脳チップを埋め込んで、「特攻{鴉|ガラス}」にしてしまった文明野郎たちに、腹が立って腹が立って仕方がない。
 ……なので、他のことを、考えてみた。(何が、脳裏に浮かんでくるんだろう)と、思った。そったら! すったら! 矢庭に、{湧|わ}いてきた。
 (外舎? ……なんで、軟禁?)
 (内舎? ……なんで、監禁?)
 (上舎? ……なんで、{抑留|よくりゅう}か、死罪?)
 この手の質問は……そうそう、民俗学を探求していたという「四角四面相」のテッシャンに訊くのが、真実へと通じる最短の早道に違いない。幸い、その事実は既に、おれら自ら、体験済みである。
 ところが……だッ!
 おれと、同じことを考えていた{奴|ヤツ}が、居た。(そいつと、同じにされたくない!)……と、これが、今のおれの真相だ。でもまァ、「そいつと、似てるーぅ♪」って言われても、反論する材料を、何も持たねぇ!
 ……サギッチが、言った。

 「あの外舎ってさーァ……サギッチ、{曰|いわ}く♪
 変じゃん!
 外舎を修了したら内舎に進級……で、その次が上舎だって言うんなら、意味も通るけどさァ。軟禁、監禁、そして抑留か死罪ってかァ? まるで、監獄か収容所の階級じゃん!」
 「監獄と呼ぶには、{微温湯|ぬるまゆ}過ぎる。そこも、{解|げ}せんところとして、外してはならん{要|かなめ}の疑念じゃなッ!」と、ムロー先輩。
 「意味を知らないんだから、意味が通る{訳|わけ}ないしーぃ!! 解せるはずもないじゃん!」と、マザメ先輩。ご{尤|もっと}もです。
 「不可解を、説明無しで解せるのは、神様くらいのもんかもしれんな。ここには、神様は{居|お}らんしのーォ♪」と、タケゾウさん。どうやら、自分が説明しようという気は、サラサラなさそうだ。
 テッシャンのほうを、見る。一瞬、目が合う。先に目を{逸|そ}らしたのは、おれ。テッシャンが、言った。
 「元は、自然徒學舎って呼ばれていたんです。君たちが{美童|ミワラ}って呼ばれるようになってから、まだ半世紀も経っていないでしょう。その半世紀前までは、自然徒って呼ばれてたんだ。寺学舎も、ミワラという言葉が生まれたのとほぼ同時期に生まれた言葉です。その前は、お寺以外にもいろんな場所に学び{舎|や}があって、ただ単に學舎って呼ばれてたんだ。
 『自然徒心得』ってのがあってね。
 ……あッ!
 なんで詳しいかっていうと……{況|いわん}やです。学生のころ、民俗学の研究室に残ったから。
 正確には覚えてないんだけど、こんな意味だったかなァ♪
 一、学徒たる者、みな、{五省|ごせい}外舎を修める。
 二、門人たる者、みな、{六然|りくぜん}内舎を修める。
 三、学人たる者、みな、{七養|しちよう}上舎を修める。
 四、居舎の中にも、「外内上」の三つの{間|ま}を{布置|ふち}する。
 五、仕事を{為|な}すにも、この三つの手順に{倣|なら}う。
 六、心の中にも、この三つの心構えを設ける。
 七、これらに大努力するが、義。
 八、その義が為す道を、理という。
 九、生涯、学徒であれ!
 ……以上です」

 「{面倒|めんど}っちい奴らだったんだなァ! おれらの祖先ってぇ……」と、おれ。
 「そのチチヨー!! ジョーシャ? ……を卒業したら、次は、どこに行くのォ?」と、ツボネエ。確かに……でも……って言うか、てかさァ! {解|わか}らないことがあっても、誰にも{訊|き}かずに……てか、訊けずに、こそっと独りで調べて納得して終わっちゃうーぅみたいなことが……なんかさァ。増えてきたよなァ。まァ、いっかーァ♪
 テッシャンが、また答えてくれた。
 「ぼくも詳しくはないんだけど、もっと西か南の{彼方|かなた}に、彼らの隠れ島があるって……そんな{噂話|うわさばなし}、聞いたことがあるよ。遠い過去に、置き去りにされた真実……それが、噂ってやつさァ♪」
 「ぼくらは、{拿捕|だほ}されちゃったから、軟禁されたんでしょ? ぼくらは、その隠れ島へは、行けない。……てか、行かせてもらえない。だよねぇ?」と、スピアの野郎!
 (ダホ? 頭打って{阿呆|あほう}になったから、{打呆|ダホー}ってかーァ?!)と、マジ思ったおれ……。
 日焼けした青年……ジュシさんが、応えてくれて言った。
 「難しい言葉、知ってるんだねッ!」
 「この船も、検疫が終われば、解体されて銭湯の{薪|まき}になる運命なんでしょ?」と、マザメ先輩。
 「君らの町には、まだ銭湯があるのォ?」と言って、サングラスを下にずらして、驚いた眼差しを覗かせるファイねーさん。
 「無知と誤解は、餌を食って生きて{居|お}る。何を食って生きて{居|お}ると思うかねぇ?」と、ニヤニヤしながらモクヒャさんが、言った。
 「無知に関しては、うちのムロー学人が詳しいからァ♪」と、ツボネエ。
 「どういう意味ぃ?」と、ファイねーさん。
 「そこは、無知のままで結構! 答えは、時間ですね」と、ムロー先輩。
 「正解! さすが、*無知*運命期ーぃ♪」と、ファイねーさん。
 「知っとるんやんけーぇ!!」と、ムロー学人。
 「そこは、落ち込むところじゃないよォ。怒るところでもないけどねぇ♪ だって、あたいだって、説明できないもん!」と、ファイねーさん。
 「モクヒャーん! 説明、よろしくーぅ♪」と、タケゾウさん。
 ……で、モクヒャのおっちゃん、講釈開始!

 「先ず……だけど。
 拿捕も検疫も解体も、港湾管理所の仕事じゃないからね。まだ{辛|かろ}うじて平時……戦争が始まる前だから、もし拿捕されるとしたら、刑事犯罪の容疑者が乗船しているか、違法操業をしている船舶くらいのものでしょう。
 ただこの船、センケン……船舶検査の有効期限が切れている疑いは、拭えませんけどねッ!
 検疫は、人や動植物……加えて食品等が対象になりますから、もし検疫が必要と判断されたのであれば、君たちは、検疫が終わるまで、このズングリ丸から下船することを許されなかったか、もし許されたとしても、下船して直ぐに検疫所に連れて行かれて、当分はそこで待機させられていたはずです。
 解体に到っては、論外でしょう。他人が所有する船舶を無断で解体なんかしたら、それこそ犯罪人になって、拿捕じゃなくて逮捕されちゃうでしょうからねぇ♪」

 キョトン! とした顔で、{緩慢|かんまん}に手足を作動させているムロー学級の総員八名……。
 そんな{緩|ゆる}やかな時の流れを{余所|よそ}に、作業甲板のご予約席にすっかり納まって{胡坐|あぐら}をかいて{坐|ざ}しているオッチャンにオニイヤンにオネーヤンたち総勢五名は、ムギコン酒の酔いで「あーら、よいよーぃ♪」よろしく、何やら算段をするが{如|ごと}く、なんちゃて談議に没入していったのだった。

【格物】
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武童たる所以

 {戦|いくさ}というものは、群れで*縄張り*を張る{獣|けもの}には、必定なのだ。確かに、子や仲間を{護|まも}ろうとする獣たちは、みな、「護るために戦う」という衝動を、生来持っている。これだけは、どうしようもない。人間は、正にそれ……「獣の代表選手」のようなものではないかァ!

 であれば、文明{民族|エスノ}は、その獣ですらない。
 ケモノ未満だ。
 {何故|なぜ}かッ!
 {奴|やつ}らは、自分や大切な人を護るために、自ら戦おうとしない。衝動が、無い。それどころか、自分の身代わりに、{鳥獣|トリケモノ}に戦わせる。それも、調教という強引な同意に基づいたものではなく、電脳チップを埋め込むという、極めて{卑劣|ひれつ}な{遣|や}り方でだ。
 どう考えても、{鴉|カラス}にチップを埋め込んで人間を襲撃させるだなんて、あくどいにも程がある。そのうち奴らは、我らヒト種と同じヒト科である「チンパンジー種」の面々の頭に、電脳チップを埋め込むに違いない。高度な知能を持つチンパンジーにチップを埋め込んで、彼ら彼女たちを自由に制御できるとなれば……それは正に、驚異でしかない。
 しかも人間は、素手では、チンパンジーに勝てない。  

 獣なら獣らしく、大事な人や物を護るために、自ら起こし起こった衝動に{順|したご}うて、自ら戦場を駆ける覚悟をしなければならない。それが、人間の{大人|おとな}……{武童|タケラ}の、進むべき道。

 その**覚悟**が無い者に、{如何|いか}なる生き物も、決して敬意を抱いてはくれない。

_/_/_/_/ 『後裔記』 第1集 _/_/_/_/
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名

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然修録 第1集 No.139

#### ワタテツの{然修録|139}【座学】赤{鷲|ワシ}と金色の{鵞鳥|ガチョウ}【息恒循】〈二循の初〉少年/少女学年 ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 門人学年 **ワタテツ** 青循令{猛牛|もうぎゅう}
     
【座学】
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赤鷲と金色の鵞鳥

 赤い若鷲に、どんな秘密が隠されているというのだろう。
 しかもそれは、悠久……和の{民族|エスノ}に、語り継がれてきた。文明エスノも、自然エスノも、その源流は、和のエスノだ。ということは、我らヒト種が亜種に分化する前の大昔から、それは、神話よろしく大事として、ヒト種の源流の人びとによってのみ、語り継がれてきたということになる。
 神話の色鳥……我が{日|ひ}の{本|もと}の国で思い当たるのは、「火の鳥」の赤だが、どうも赤い若鷲とは、なんの関係もなさそうだ。では、海外では、色のついた鳥に、どんな物語があり、何を子々孫々たちに語り継ぎ、またそれは、真に何を教えようとして始まったことなのだろうか。
 いつもの堅苦しい東洋哲学や原始仏教のテーマからは、大きく{逸|そ}れてしまうのだが、原始ヒト種たちが、色づきの鳥から何を教訓として知り得て、{何故|なぜ}それが、語り継がれてきたのかを知る……ということは、赤い若鷲の話を聴くための正しい姿勢を心得るために、是非とも学んでおくべきことだと思う。
 ……で、西洋。こんな話を、見つけた。

 あるオッサンの話。
 息子が、三人居た。上の二人は可愛がったが、「ウスノロ」と呼ばれていた末息子だけは、可愛がるどころか、{寧|むし}ろ{蔑|さげす}んで、常々厄介にさえ思っていた。
 ある日、長男が、木を{伐|き}りに森に入ることになった。母は、パンケーキ一つと葡萄酒を{一瓶|ひとびん}、長男に持たせた。さて、長男が森に入っていると、白髪で小柄な老人が現れ、食べ物と飲み物を恵んでほしいと懇願した。だが長男は、「そんなものは、持っていない」と{嘘|ウソ}をついて、「とっとと帰れぇ!」と言って、追い払ってしまった。
 すると……その直後。
 長男は、自分が振るった斧で己の腕に怪我をしてしまい、まだ{殆|ほと}んど仕事が出来ていないというのに、急ぎ家に帰らざるを得なくなってしまった。

 次に、次男。
 長男の代わりに、やはり同じ食べ物と飲み物を持たされて、森に入ってきた。すると、また同じ老人が現れ、同じことを次男に言った。だが次男は、「自分の分が減ってしまうから、ダメだッ!」と言って断り、「とっとと帰って、俺を一人にしてくれ!」と言って、老人は、またもや、追い払われてしまった。
 すると……その直後。
 次男は、自分が振るった斧で己の腰をひどく{傷|いた}めてしまい、長男と同様、ろくに仕事もしないうちに、急ぎ家に帰ってしまう。

 順番からいくと、次は、ウスノロの末っ子だ。
 本人も、「次は、僕に行かせてくれ」と、父に頼んだのだが、何を懸念してか、父は、それを断固許さなかった。だが、あまりにもしつこく頼むので、仕方なく、末息子も森に行かせることにした。母も、食べ物と飲み物を持たせてくれたが、二人の兄とは異なり、小麦粉だけで作った粗末なケーキと、一瓶の酸っぱい{麦酒|ビール}だった。
 ……で、当然、同じ老人が現れ、同じことを、末っ子くんに頼んできた。すると末っ子くん、{斯|こ}う言った。
 「小麦粉と水だけで作ったケーキと、酸っぱいビールだけしか持ってないんだ。それで良けりゃ、ここに腰を下して、僕と一緒に食べようよォ♪」
 二人が仲良く腰を下ろすと、粗末なケーキは、栄養たっぷりの美味しいパンケーキに変わり、酸っぱいビールは、甘くて美味しい葡萄酒になった。
 すると矢庭、小柄な老人は、末っ子に向かって、斯う言った。
 「君は、とても親切にしてくれたので、幸運を授けてあげよう。あそこに、一本の老木がある。あれを切り倒せば、その根元のところに、何かがあるよッ♪」
 老人は、そう言うなり、「あッ!」っという間に消えて、{居|い}なくなってしまった。末っ子くんが、老人に言われたとおりにしてみると、{何本|なんぼん}もの根っこの間に、羽根が金色の鵞鳥が{坐|すわ}っているのが見えた。ウスノロの末っ子くんは、それを見るなり、大事そうにその鵞鳥を抱き上げ、そのまま、その晩に泊まることにしていた宿屋へ運んで行った。
 その宿屋の主人には、三人の娘がいた。娘たちは、その金色の鵞鳥を大いに珍しがり、なんという鳥なのかを知りたがり、{挙句|あげく}、その金色の羽根を一本{貰|もら}えないものかと考えはじめた。やがて、その機会を{窺|うかが}っていた長女が、鵞鳥の羽根をむしり取ろうとしたところ、どうしたことかッ! そんまま鵞鳥にくっついて、離れなくなってしまった。
 それを見ていた次女が、姉を鵞鳥から離そうとしたが、なんとォ! 次女もそのまま、鵞鳥から離れなくなってしまった。末の妹は、触ると危ないから近寄るなと注意されたけれども、次女の{身体|からだ}に触れた途端、やはり末の妹も、くっついて離れなくなってしまった。こうして娘三人は、鵞鳥に{繋|つな}がれて、くっついたまま、一晩を明かしたのだった。

 はてさて、ウスノロくん!
 ここは、「薄のろ」の異名の本領発揮……と、言わんばかりに、くっついた娘三人のことなど一向に気にならない様子で、再びその金色の鵞鳥を抱き上げると、そのまま出かけてしまった。娘三人は、鵞鳥に繋がれたまま、ウスノロくんの足の向くまま、右や左へ東へ西へと、ウスノロくんを追い回す格好で、野っ{原|ぱら}を走り回らねばならなかった。
 暫く振り回され走り回っていると、顔見知りの神父さんと出会った。……で、その神父さん。当然、{斯|こ}う言った。
 「娘のくせに、なんという恥さらしなことを! そんなふうに男の尻を追い回すような振る舞いは、断固けしからん!」
 神父さんは、そう言うなり、{殿|しんがり}の末娘のほうに手を伸ばして、その身体に触れた。すると、なんと神父さんまで、末娘の身体にくっついて離れなくなってしまった。オマケに、その神父さんの付き人まで神父さんにくっついてしまい、助けを求める声を聞いて駆けつけた二人のお百姓さんまでもが、更にまたくっついてしまった。

 ところが、恐るべし「薄のろ」!
 ここに到ってもまだ何も気づかないウスノロくん……結局、総勢七名が、{数珠|じゅず}繋がりのように鵞鳥に繋がってしまった。そして、そのまま野を抜け、町に出てた。
 その町の王様には、娘が一人居た。子どもは、その娘が一人だけだったので、大そう可愛がっていた。{然|しか}し、何故かどうして……その娘、産れてこの方、一度も笑ったことがなかった。そこで王様は、娘に、こんな約束をさせた。
 「わたしを笑わせることが出来た男となら、結婚してもいいです」と。

 はてさて!
 ウスノロくんと、金色の鵞鳥と、そこに数珠繋がりとなった七人の老若男女たち……。この光景を観たお姫様はァ?
 案の定……さすがのお姫様も、これには「ぷっ♪」っと、噴き出してしまった。しかも、その笑いは、いつまで経っても、治まりそうがなかった。これで、文句なしで、王様の一人娘の婚姻が決定づけられた訳なのだだけんども……{如何|いかん}せん、その婚姻のお相手は、ウスノロくん! 言わずもがな、王様は、この未来の婿殿が、どうしても気に入らなかった。
 そこで王様は、考えた! そして、ウスノロくんに、斯う言い渡した。
 「娘を花嫁とするためには、先ずはこの仕事を片付けなければならない」……と。 {則|すなわ}ち、王様は、ウスノロくんに無理難題をふっかけた訳だ。ところが、どう見ても「薄のろ」にしか見えないこの若造が、どんな無理難題の仕事を言い渡しても、申し分なく、完璧にやりこなしてしまうのだ。
 何故? ここでまた、あの小柄な白髪の老人が、陰であれやこれやと、ウスノロくんに指南を授けていたのだった。
 そうこうしているうちに……{終|つい}にウスノロくんは、王様の一人娘と結婚し、更に、王様が{亡|な}くなると、ウスノロくんがその後を継ぎ、王国の領地をごっそり治める「大国の王様」となったのである。

 ……とまァ、こんな話だ。

 グリム童話に出てくる有名な物語の一つであり、このような話は、ヒンズー教の説話やイソップ寓話をはじめ、インドやヨーロッパの様々な民話に現れてくる。前述の物語の一節にも表現されているように、そもそも鵞鳥というのは、素朴な人には幸運を、{狡|こす}っ{辛|から}い人には、悪運をもたらす……と、信じられてきた。
 鵞鳥は、信仰の対象なのだッ!

 鵞鳥には、人に{報|むく}いたり、人を罰する力があると、信じられている。……と同時に、鵞鳥は、敵の接近に際して、警報を発するという信仰も、存在している。
 一例を{挙|あ}げると……。
 四世紀に、ローマがゴール人の侵略を{蒙|こうむ}ったとき、女神ジュノーの{社|やしろ}に居た聖なる鵞鳥が、敵の{斥候|せっこう}を見つけるや、けたたましく{啼|な}き出したという。
 乗り込んで来た敵兵は、その鵞鳥をひっ捕まえて、殺してしまうも……時遅し! その時分には、もう既に、住民たちは、危険の訪れを察知して、行動に出ていたのだった。
 そののち、ローマ市を絶体絶命の危機から救ってくれた鵞鳥を{讃|たた}えるために、行列の先頭に一羽の金色の鵞鳥を{戴|いただ}いて、国会議事堂へと運ばれたということだ。

 このような話は、西洋では、枚挙に{暇|いとま}がない。ギリシャ神話のゼウスの妻ヘーラーの逸話、シベリアのオスチャック族の三大神の逸話、フィンウグリッド族のノアの洪水の逸話、ヒンズー神話の羅生門の逸話、英国の聖マイケル祭の逸話……等など。

 ……で、我が国「日の本」。
 ブリの養殖をしているという和の{民族|エスノ}(らしき……)オッチャンが、{嘗|かつ}て町屋の大工をやっていたという頃よりも、もっと前の学生時代、民俗学の研究室に残って知り得たという「赤い若鷲」の逸話……。
 そこに隠された*信仰*が、分化して滅亡への道を転げ落ちているヒト種を救う鍵となるのではないか……。

 その理由の説明など、出来っこないけんども……俺は、そう思えてならないのだ。

 ……蛇足になるが、{敢|あ}えて一つ。
 何故、単に「鷲」ではなく、「若鷲」なのだろう。稚魚と成長魚の区別は簡単に出来るが、形も大きさも大差がない成長魚の各々の年齢など、素人に区別できるはずがない。
 鳥も、同じだと思う。「若鷲」と表現したのは、「鷲とは違う鳥だが、その呼び名を知らぬ{故|ゆえ}、{一|ひと}先ず「若鷲」と表現した」……という仮説が、もし成り立ったとしたら……若鷲と呼ばれている赤い鳥は、実は、西洋の信仰と同じく、敵の接近に際して警報を発する鵞鳥ということにもなるのではないだろうか。

息恒循
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〈二循の初〉少年/少女学年

(第二版 改訂0号)

 生涯、{則|すなわ}ち{天命|てんめい}。その最初の重要期を{立命期|りつめいき}と言い、その立命期の後半の循である七歳から十三歳までの七年間を、{少循令|しょうじゅんれい}と言う。

 その少循令の初等学年を、「少年/少女学年」と言う。

 「少年/少女学年」とは、何を学ぶ歳なりや……。

 「天下のこと万変といえども、{吾|わ}がこれに応ずる{所以|ゆえん}は喜怒哀楽の四者を出でず」

 陽明先生……王陽明の教えの中に在る一節である。
 どんなに世の中が激しく移り変わろうとも、喜怒哀楽の四つを大事にしておれば、必ず生きて進んでゆけるという意味だ。喜怒哀楽が、人生の要……と、いうわけである。
 現代の子どもたちは、本当の意味での学問というものを、していない。学校でも、塾でも、家庭教師も、喜怒哀楽を揺さぶってはくれない。そのような{訳|わけ}で、教育の荒廃も、登校拒否や非行も、止まりはしないのである。
 国会中継を{視|み}て、喜怒哀楽を揺さぶられて、感情を{露|あらわ}に国を想って熱弁している政治家が、一体全体何人居ることだろう。{嘗|かつ}ての吉田茂のように……。

 山岡鉄舟清水次郎長は、{凄|すさ}まじく障子も震えるほどの喧嘩を、よくやっていたという。だが、そこまで互いに喜怒哀楽を露にしたからこそ、真の友情が生まれたのである。

 孔子も、喜怒哀楽の激しい人だったという。「{憤|いきどお}りを発して食を忘れ、楽しみて{以|もっ}て{憂|うれい}を忘れ」と、『論語』にもある。「{慟哭|どうこく}」という言葉は、弟子の顔回が殺されたときに、孔子が周りも{憚|はばか}らずに泣き{喚|わめ}いた様子を、表しているのだという。

 喜怒哀楽は、人間が自然の一部であることの証である。自然とは、自ら{燃|も}ゆることだ。全身の活力が起爆し、体内のすべての精力が発散し、燃え尽きる。

 これが、子供期に学ぶべき、「真」である。 

_/_/_/_/ 『然修録』 第1集 _/_/_/_/
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名

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