MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

東亜学纂学級文庫

『息恒循』を学ぶ

一息88 ミワラ<美童>の後裔記 R3.5.13(木) 夜7時

#### 一息マザメ「循観院に珍客! 梅子さんが連れてきた謎の五人」後裔記 ####

 そうです。あの追ん出しゲームの五人組が、あたいの島(森)を荒らしに(?)、梅子さんに連れられやって来た! その{齢|よわい}に、唖然! その女の子の言い草に、{感奮|かんふん}!
   学徒学年 マザメ 齢12

 一つ、息をつく。

 「おかえり!」と、あたい。
 「暗いねぇ。相変わらず。
 森の中でも走ってくればァ?
 太陽神、{傾|かし}いでるけど、まだ西の空に見えてるし。
 もっと、光を浴びなさいよ。
 脳細胞、死んじゃうよーォ?!
 だから、あんたが書くこと、いつも暗いのさッ!」と、梅子。
 「そうかもね。忠告、有難う」と、あたい。
 「友だち、連れてきてやったよ♪
 友だち、欲しかったんだろッ?」と、梅子。
 「それは、余計なことだったね。
 あたい、瞑想の修行中なんだ。
 こう見えても……」と、あたい。
 「そうなのーォ!?
 それは、残念ね。
 『あんたたち、{要|い}らないってさ。
 悪かったね。帰っておくれッ!』」と、梅子。
 「いやいや、それじゃあ、あたいが悪もんじゃんかァ!
 あんたのお客なんだからさァ。
 そこで{温|あった}まってから、帰ってもらいなよ」と、あたい。

 すると、梅子さん……。
 「訂正。
 要らないけど、あたいの客ならしゃーないから、{身体|からだ}だけ温めたら、直ぐに帰れだってさ。
 さァ、入っといでよ。
 地底の星の子どもたちーぃ♪」
 「まったくッ!」と、あたい。
 「何が、『まったく』なんだい?」と、梅子。
 「勉強し直せってってことさ。
 {言|い}い草じゃなくて、{言|こと}の葉をねぇ!」と、あたい。
 「それこそ、要らないよッ!
 あたいは{燕|ツバメ}だから、言い草でいいのよ。
 言の葉は、あんたが勉強しなさいよッ!」と、梅子。

 ぞろぞろと、子どもたちが、入ってくる。……五人。身体を、温めはじめる。皆、無言。
 「言の葉ってのは、同年代だと、遠慮しちゃうのねぇ?」と、梅子。
 「いやいや、どう見たって、あたいのほうが、上っしょ!」と、あたい。

 ここで、チビちゃんたちの中で、一番大きい女の子が、口を開いた。
 「礼を言います。
 失礼しました。
 あたいは、少循令の{石将|せきしょう}。
 オオカミさんって人と、同い年。
 よろしく。
 でも、間もなく失礼します」
 「ウギョギョ!
 あたいより、年上なのォ?
 そう言えば、梅子さんさァ。
 さっき、地底の星って、言ってたよねッ?
 あんたたち、地底の元祖自然人なのかい?
 それとも、新種の亜種かい?」と、あたい。

 すると、その一番上の女の子が、{胡坐|あぐら}をかいた格好はそのまま崩さず、あたいのほうに向き直って、言った。
 「どっちゃーでもないよ。
 あんたたちと同じ、枝分かれした地上の自然人さ。
 あたいらの島には、寺学舎はないけどね。
 こっちの島の史料室と、朗読室の巡回授業所が、あたいらの学舎さ。
 こっちの島に渡るために、穴、掘った訳じゃないんだ。
 あたいらの先祖の話ね♪
 隣りの島に渡って来たとき、地上には、和の人たちの集落があったんだ。
 亜種を{違|たが}えてしまった以上、そこに集落を構えると、島を荒らすことになるからね。
 縄張りを、侵すってことさ。
 だから、地底に、集落を{創|つく}った。
 この島まで掘ったのは、たまたまさ。
 この島に渡るために掘った訳じゃないんだ。
 それに、この島に{山城|やまじろ}の遺跡が埋まってなかったら、ここに研究棟が建つこともなかっただろうって、タケラたちが言ってた。
 星っていうのは、あんたが感じたとおり、小さいってことさ。
 地底に{鏤|ちりば}められた、小さな星たちって意味ね。
 たまに、こそこそ外に出て遊ぶんだけどさァ。
 太陽の光が足りないから、細胞が育つのが、遅いんだ。
 だけど、そのぶん、あんたたちより、美肌かもね。
 まァ、そんなことは、どっちゃーでもいいんだけどさ。
 大事なのは、外見の美じゃなくって、美の世界っしょ!
 あんたたちも、そう習ったんでしょ?
 寺学舎で……」

 (こりゃ、ヤバイ……元い。ヤバ面倒っちい女と、絡んじまったみたいだ。やっぱり、早く帰ってもらわなきゃ!)と、思ったあたい。
 ……と、あたいが押し黙って物思いに{耽|ふけ}っていると、梅子さんが、{嘴|くちばし}を挟んできたッ!
 「メスってのは、徐々に、威厳と貫禄が備わってくる生きものなのさ。
 そこが、美の世界。
 崇拝と信仰によって、初めて、到達し{得|う}る。
 そこを目指す道が、哲学よ。
 科学では、到達は{疎|おろ}か、そもそも、道が違う。
 若いメスにその美を探し求めても、その美の世界を観ることはできない。
 美の世界に到達するためには、長い年月を必要とするからさ。
 根気が要る。
 ときには、大努力も要る。
 その長きに亘った忍耐と大努力が、ある日突然、一夜にして、無に帰す。
 そこが、美の世界さッ♪」

 この梅子さんの持論展開に、意外にも、あたいよりも先に、あたいよりも年上らしい{美童|ミワラ}の女が、応えて言い返した。
 「あたいらが星って呼ばれるのは、そんな訳の解んない美の{所為|せい}じゃないよ。
 ミワラだろうが和だろうが文明だろうが、あたいらヒト種の子どもはみんな、生まれ持った美ってもんがあんのさッ!
 ……美徳。
 それが、運命の{道標|みちしるべ}となる。
 その道の先に、あんたが言う美の世界があるのかもしれないけど、そんなことは、どうだっていい。
 あたいらは、闘わなきゃならないんだ。
 ヒト種は、百年ごとに戦争をやるっていう、ふざけた宿命があんのさ。
 神様の{気紛|きまぐ}れ……てか、夫婦喧嘩の勢い!
 そんなもんであたいらは、闘うために生れ、その戦いによって死んでゆく。
 それが、あたいらヒト種の生き方なのさ。
 あたいらが、あんたたち鳥の種のことを理解できないように、あんたたち鳥の種だって、あたいらヒトの種を理解することは、不可能なのさ。
 あんたが、悪い訳じゃない。
 子を産んで育ててる大先輩に、あんたってのは、随分失礼な言い草に聞こえるでしょうけど、まァ、悪くは思ってないから、大目に見てちょうだいねッ♪」

 梅子さん、これまた意外! まったく動ぜず、ぼそっと言った。
 「あんたの言う生まれ持った美も、あたいが言ってる美の世界の美も、どっちも美術品って訳さ。
 美術品は、同じ美術品を、鑑賞したりなんかしない。
 美は、他の美を見たりなんかしないってことさ。
 だから、あんたが持ってる美と、あたいが言ってる美とは、一生、出逢うことも無ければ、たとえ接近したって、相手を見て取ることもない。
 それで、いいのさ♪
 だから、変われる。
 だから、生き残れる。
 それが、あたいら自然の一部が、今まで悠久延々と、繰り返し繰り返し{遣|や}り続けてきた、**進化**ってやつさ」

 ここであたい、口を出す。耐えがたきは耐えない主義なので……(信じられないでしょうけどーォ♪)。
 「どうでもいいけどさァ。
 さっきから、あんたしか、喋ってないじゃん!
 他の四人は、人間の言葉も、{燕|ツバメ}の言葉も、喋れないって訳かい?」

 あたいより年上らしき少女、これまた以外にも、明解に即答!
 「{微|び}に入り{細|さい}を{穿|うが}つ。
 あんたたちは、地上でしか暮らしたことがないから、言葉でしか気を遣えないのさ。
 そんな下等動物が、あたいらに異見なんか唱えるんじゃないよッ!
 千年早いわァ!
 てか、そのころにはあんたたち、もうとっくに、退化の{挙句|あげく}に亡んでるわよッ!
 {身体|からだ}、温まったから、ご指示通り、行くねぇ♪
 礼を言うよ。
 有難う。
 最後に一つ。
 オオカミっていう男に、もし置いてけぼりにされて、先に行かれちゃったら、相談に乗るよ。
 一宿一飯の恩義までは無いけど、一瞬一温の恩義くらいは、この美しい肌に、感じてるからさーァ♪
 じゃあねッ!」

 女がそう言い終わると、五人、ぞろぞろと、サッサと出て行ってしまった。
 あたい……梅子さんに向かって、一言。
 「納得できないんだけど。
 一人だけが、ベラベラ!
 あたいらムロー学級8人組では、絶対に有り得ない。
 8人みんな、腹ん中にあるもんは、全部口から出し切る!
 だから、仲間なんじゃないのォ?
 あたい、間違ってるーぅ?!」

 梅子さん、{暫|しば}し間を置いて、ぼそっと応えて言う。
 「{六然|りくぜん}さ。
 六然に徹しないと、地底では、生きていけないってことさ。
 でも、あの子たちだって、あんたたちと同じ、地上のミワラさ。
 {俄|にわ}か地底人でさえ、あれだけ六然に徹しないと、生きていけないんだ。
 何百年も地底で生き続けてるあんたたち自然{民族|エスノ}の本流の人たちは、想像を絶する厳格さで、六然とか七養とかを、固く護り続けてきたんだろうねーぇ」

 そんまま、夜は、勝手{気儘|きまま}に、{更|ふ}けていった。
 (置いてけぼり?
 オオカミが、動き出したァ?
 勝手にーぃ??
 あたいらに、何の断わりもなくーぅ?!
 次会ったら、ぶっ飛ばしてやるッ!)
 あッ、いけない!
 莫妄想、莫妄想……。
 おやすみなさい♪ 
 
_/_/_/ 「後裔記」、「然修録」
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