MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

一学85 ミワラ<美童>の然修録 R3.5.14(金) 朝7時

#### 一学オオカミ「追ん出しゲームの{子等|こら}から学んだ、綿密な生き方」然修録 ####

 森の循観院で、「美」を説いた追ん出しゲームのおチビ(?!)ちゃんたち……(アセアセ)。でも、おれが{奴|やつ}らから学んだのは、美に非ず! 能率的な生き方……即ち、*要領よく生きる方法*だッ♪
   学徒学年 オオカミ 少循令{石将|せきしょう}

 一つ、学ぶ。

 マザメの後裔記、面白い♪
 あの五人組、隣りの島にも出たかッ!
 暗躍しておるな、地底{住|ず}みなだけに……(アセアセ)。
 まァ、{閑話休題|それはともかく}。
 あのハキハキ{喋|しゃべ}っていた幼い少女……なんと! おれと{同|おな}い年の少循令石将とは……思いもせなんだし、疑いもせなんだッ!
 おれが、あいつらから学んだのは、無論、その少女が森の山小屋で説いたという「美」などではない。本来の当たり前の平時である治乱の世の中にあって、その人生を{如何|いか}に綿密に生きるか、その考え方と遣り方……{即|すなわ}ち、方法論だ。
 こんな具合で……。

《 人生を、能率的に生きる方法 》

 諸君!
 覚えてくれているだろうか。
 サギッチが書いた、然修録。
 先ずは、可能性の有る無しに関わらず、様々な{遣|や}り方、あらゆる方法を引っ張り出して、並べ立てるが肝要……{云々|うんぬん}。
 {所謂|いわゆる}、{集団発想法|ブレインストーミング}……{即|すなわ}ち、「思いついたことは、何でも構わん。他の人の発言を、批判するなッ! 自由奔放、よし♪ みんながドッと笑うような発言なら、なおよし」と、いった具合だ。

 一つ、余談。
 そのブレインストーミングを提唱したA・オズボーン氏は、{譬|たとえ}えで、ブレインストーミングを、{斯|こ}う説いたそうだ。
 「{海女|あま}さんが、真珠貝を採るとき、海の底で、一つ一つご丁寧に開いて選びながら採るようなことは、しない。
 なんでもかんでも、たくさん採ってきて、いい真珠が入っているかどうかは、舟に上がってから、ゆっくり調べるものだ」と。

 調査の段階では、数がモノを言う。
 輝かしい{新たな工夫|アイデア}の{殆|ほとん}どが、たくさんのくだらないアイデアの組み合わせで、出来ているものなんだとか……。
 要領が悪い人というのは、部品ばかりををいっぱい買い集めて、一つも自分で組み立てようとはしない、そんな部品マニアのようなものなのだ。
 では、それらの{夥|おびただ}しい数の部品中からどれとどれを選び出し、それを使って、何を作ればいいのかッ!
 ここで一つ、注意をしなければならないことがある。
 みんなで話し合うと、平均的な、ありきたりの答えしか、得ることが出来ない。頭一つ出た案は潰されて、創造的と言われるような輝かしいアイデアは、一度も輝くことなく、自然消滅してしまうのだ。

 大事なのは、他人の頭に頼らず、自分の頭で考えるということ……では、その自分の頭で考えた輝かしいアイデアを創造するための要領とは、一体全体、どんな手順なのかッ!
 ここで、あの追ん出しゲームの訓練が、活きてくるのだッ♪
 手作りの粗末なゲーム盤を、じっくり眺めながら、考える。これを、前述のブレインストーミングの譬えで言い換えると、「集めた部品のすべてを並べて、遠目から、その全体を眺める」と、いうことになる。
 固定観念で動かすコマを決めて、そのコマ一つだけをじっと{睨|にら}みながら、(はてさて、どっちに動かすべきか!)と、考えたところで、いい手など浮かぶ{筈|はず}もない。
 ゲーム盤の全体を眺めるからこそ、どの方向に進むのが最良かの、見当をつけることが出来る。{或|ある}いは、動かすべきは、そのコマではなく、別のコマだということに、気づくかもしれない。
 コマ{然|しか}り、部品然り、調査で収集したデータ然り、これらコマ、部品、データというものは、それぞれ、他のコマ、他の部品、他のデータとの関連性によって、その価値が生まれてくるものなのだ。

 全体を眺めていると、突如、その関連性に、「はッ!」っと気づかされることがある。
 それが、**発想**というものだ。
 (手間を省いて能率を上げるのが要領だと言いながら、これじゃあ、随分と面倒っちいし、手間ばっか掛かるじゃん!)と、最初は、そう思ったものだ。
 それでも、忍耐強く調査と発想の手順を踏んでいる追ん出しゲーム五人組の奴らの**全体**を眺めているうちに、一つのことに、「ハッ!」と気づかされた。
 大蛇が通る王道は、小さなヘビでも、よく知っている……蛇の道はヘビ!
 大蛇が知る王道……即ち、最善の近道は、例えその{身体|からだ}が小さくとも、同じヘビなら、その王道を知っているし、{躊躇|ためら}わずその道を通る。
 険しい{獣道|けものみち}で、如何にも遠回りで、時間もかなり掛かりそうに見える。だから、他の獣たちは、その道を通ろうとはしない。蛇のみぞ知る、{究極の要領|グッド・チョイス}……なのだ!

 同様に、人間さまも、創造とか発想といった面倒っちい綿密な手順を、誰も踏もうとはしない。王道を知らないということ……或いは、知っていたとしても、面倒っちそうだから、その道を通ろうとはしない。
 これ即ち、「要領が、悪い!」と、いうことだ。 

 人生を、能率的に生きる方法とは、綿密な手順を踏んで、創造的な発想法で生きるということ。
 集められてひしめき合う素案全体を眺めて、その中から、最良の遣り方や方法を、選べばいいだけのことなのだ。

 蛇の道は、ヒト ……で、ありたいものだッ♪

_/_/_/ 「後裔記」、「然修録」
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_/_/_/ 『亜種記』
Vol.1 [ ASIN:B08QGGPYJZ ]

_/_/_/ 『息恒循』を学ぶ _/_/_/
その編纂 東亜学纂
その蔵書 東亜学纂学級文庫
その自修 循観院