MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

東亜学纂学級文庫

『息恒循』を学ぶ

一息94 ミワラ<美童>の後裔記 R3.5.29(土) 夜7時

#### 一息スピア「天空に延びる段々長屋。和の人たちの世界観!」後裔記 ####

 崖上の廃墟で無事に合流した、ぼくら四人。オオカミ先輩に連れられ、峠を越える。そこには、なんとも不思議な段々長屋! しかも現れたのは、あのジジサマ♪ 徐々に明かされる、和の{民族|エスノ}の和っぽい資質と、質素な日常……。
   少年学年 スピア 齢10

 一つ、息をつく。

 {何故|なぜ}かなんでか、無言のマザメ先輩。
 元気が、ない。
 マザメ先輩の後裔記を読んだから、何故かなんでか、なんとなく解るような気がする。と、いつもの前置き……余談をはじめると、ヨッコ先輩に{睨|にら}まれそうだから、*今日のところは*、**素直に**、本題に移ろうと思う。

 {斥候|せっこう}……{船長|スキッパー}、オオカミ先輩。
 本隊……{船員・水夫|クルーメン}、ぼくとサギッチ。
 {殿|しんがり}……{水夫長|ボースン}、マザメ先輩。
 いざッ!
 歩学……(ポリポリ)。

   《 オオカミ先輩が{居候|いそうろう}する和の人たちの家 》

 南に突き出した崖から北に向いて一つ目の峠を上りきると、見晴らしのいい原っぱが広がっていた。林道の道幅も、{俄|にわ}かに広がる。そのまま北に向いて歩き続けると、意外と{直|じき}に、道幅は再び狭くなり、北斜面に流れ出る谷川の源流に沿いながら、谷底へと延びている。
 左手の谷川の源流を{跨|また}ぐと雑木林、右手も暫くは雑木林だったけど、疲れを知らないぼくら子どもでさえも、さすがに疲れてき……と、その時だった。
 {僅|わず}かな区間ながら、天然の斜面を{拓|ひら}いた棚田のような居住区が、姿を現した。その住宅の側面を、下から見上げる。二階建ての二階が、その上の二階建ての一階と{繋|つな}がって、そこで一段上がっている。
 それを数回繰り返して……そう、段々長屋って言うのかなーァ!? そんな、段々に繋がった二階建ての長屋が数棟、やっと大人が一人が通れるくらいの間隔を置いて、数列、横に並んでいる。

 船長……オオカミ先輩は、自分の家に案内でもするかのような{馴染|なじ}んだ足取りで、スタコラとその一番手前の段々長屋の側面の石段を、上りはじめた。

 長屋と長屋の間の石段は、狭そうだったけれど、一番手前の段々長屋の石段を上りはじめると、その横には、{棗|ナツメ}や{唐柿|とうがき}やカキノキが、四方に枝葉を伸ばしていた。
 (ナツメとイチジクと柿かーァ♪ 実が{生|な}ってるときに、来たかったなーァ!!)と、思うぼく。
 段々長屋の最上段に上り着くと、日本原産のガクアジサイが密集し、生け垣を成していた。
 (アジサイかーァ♪ 花が咲いてるときに、来たかったなーァ!!)と、思ったぼく。

 「二階建ての長屋に見えるじゃろッ? でも、全戸平屋の長屋なんじゃ。二階と上の段の一階で、一つの住戸になっとる。じゃから、平屋なんよねぇ♪」
 挨拶代わりに、疑問を覚える前に、その疑問を説いてくれたのは、まさしくそれが、オオカミ先輩の海上生活部門での師匠、(ジジサマだーァ!?)……と、思ったぼく。

 そこでぼくは、みんなの期待に応えるべく行動し、ジジサマは、なるべくして質問攻めの渦中の人となった。

 「ねぇねぇ♪ ジジサマさんさァ。
 {斯|こ}う言ったんだったよねぇ?
 『その{荼枳尼天|だきにてん}さまが怒って、この島の岸辺を壊してしもうた。荼枳尼天さまを怒らせたんは、おまえらが嫌っとる、文明の{奴|やつ}らなのかもしれん』って。
 岸辺を壊したって、岸辺に何があったん? 何が壊されたん?」
 ジジサマ、そこが{既|すで}に渦中とは{露|つゆ}知らず、余裕さえ見せながら、応えて言った。
 「松林さ。なめらかな土、繁る松の木、なだらかな岸辺、流れ着いて洗われる{細石|さざれいし}……」
 「だから{巌|いわお}となりて、崖になるまでになったのォ?」と、ぼく。
 「いやいや……てか、国家の歌詞で、遊ぶでない!」と、ジジサマ。
 「じゃあ、なんで崖になったのォ? てか、結局、誰が壊したのォ? 荼枳尼天さん? 文明人さん?」
 ここでジジサマ、({面倒|めんど}っこいガキじゃのーォ!!)とでも思っていそうな表情に変わり、顔色も、何やら曇って陰に包まれたみたいになっちゃったッ!

 すると、助け船? 渡りに船? {漁|すなど}る師匠だけにーぃ?! ……と、思わせるような{ちょうどいい間|タイミング}で、聞き覚えの無い子どもの声が、段々長屋の上の雑木林の中から聞こえてきた。
 「スサノオさまが、岸辺の松林を蹴って、天にお昇りになったんだ。だから松林が崩れて、崖になったのさ。だよねーぇ?!」
 段々長屋の子どもたちだ。たぶん。姿は見せなかったけど、何人かつるんで遊んでいるような、そんな気配だけは伝わってきた。ジジサマは、依然、無言のまま。なので、また問う。
 「ねぇねぇ♪ 本当にそうなのォ?」
 「違う」と、ジジサマ。
 「違うって、ジジサマさんが教えたんじゃないのォ?」と、ぼく。
 「そうだ」と、ジジサマ。
 「じゃあ、{嘘|ウソ}を教えたのォ? 相手が子どもだからァ?」と、ぼく。ちょっとムカついたので、ちょっと意地悪な物言いを、選んでみた……みたいなァ♪

 (仕方ない。納得させんと、面倒っちいのは、治まりそうもないなッ!)とでも……というか、間違いなくそう思っていそうな顔に変わったジジサマが、ボソッとその答えを、独り{言|ご}ちるように{呟|つぶや}いた。
 
 「相手が子どもだからというのは、間違いじゃないが、それが理由という{訳|わけ}ではない。
 荼枳尼天が怒って岸辺を蹴り飛ばして崖になっちもうたと言えば、{子等|こら}は崖も海も、怖がってしまうじゃろッ? 確かに……実際問題、海は、怖ろしい。その事実を知らなければ、わしらは、自分の命も、仲間の命も、{護|まも}ることはできん。
 じゃが、怖がって尻込みしてしもうたら、わしら島の人間は、食うてはいけん。{勇|いさ}みすぎても尻込みをしてしもうても、どのみち、自然のなかでは生きてはいけんっちゅうことぢゃ。
 じゃあ、文明の{奴|やつ}らが、松林をコンクリートの牢獄に変えてしもうたがために、自然から切り離されて、なだらかで豊かだった岸辺が、総崩れして崖になってしもうたじゃことの、たとえそれが*ほんま*のことじゃろうと、そうなことを聞かされたとしたら、子等は、どんな感想を持つと思う?
 {憾|うら}むじゃろう! 文明の奴らを……。自分の実際の体験の中で、自分自身が、本当に{憎|にく}いと感じたんなら、それはそれじゃ。じゃが、読んだり聞いたりしただけで、無闇に人を憾むような習慣を身に着けてみろッ! どうなると思う?
 敵でもない相手に憎まれ、敵でもない相手を憾まにゃならん。そう、{戦|いくさ}じゃ。無意味な殺し合いが、また始まってしまう。じゃから、子等がちゃんと、自らの行動から学べるようになるまでは、たとえそれが善意であろうと、過去の事実を、安易に、{況|ま}してや不注意に教えるべきではないっちゅうことよねぇ。
 ちょっとは、解かってもらえたかのーォ?!」

 「意外と、よく解った。頑張って、よかったねぇ♪」と、ぼく。
 「今わしは、君に、{褒|ほ}められたんかのォ? もしやしてぇ……」と、ジジサマ。
 「褒められたのか皮肉を言われたのかくらい、{爺|じい}さんくらいのジジサマになれば、直ぐに判るでしょーォ?? あッ、ゴメン。元い……訂正! ジジサマくらいの爺ちゃんになれば、直ぐに判るでしょーォ?? てか、どっちの言い方が、正しいのかなーァ……」と、ぼく。
 「どっちゃーでもええわい!」と、ジジサマ、または爺ちゃん、{或|ある}いは爺さん。……と、この三つとも、正しいらしい♪

 そんなこんなで、ぼくらは、やっとの思いで、ジジサマ邸に招き入れてもらえる運びと相成った。
 「てか、おまえがグダグダ言ってっから、おれら、いつまでも立たされてたんだろッ!」と、サギッチの声が、聞こえてくるようだ。しかも、感度は{頗|すこぶ}る良好ーォ♪

 玄関を入ると、いきなり、ドーン♪ っと、手狭のガランとした部屋! 最後に入ってきたジジサマの声が、背後から聞こえてくる。
 「客間だ。遠慮するな。入れッ!」
 (襖の向こう側に、寝室と居間と水回りーぃ?? それにしては、狭いよなッ!)って思っていると、オオカミ船長が、襖をガガガガーッ!! っと開けて、両脇に寄せた。すると、客間と同じくらい手狭な、しかも、こっちも客間に負けじと殺風景な和室……が、あるのみ!
 振り返って、ジジサマに問う、ぼく。
 「ねぇねぇ。台所とかお風呂とかトイレとかはーァ??」
 「無い」と、ジジサマ。
 「無いってさァ。あんたたち、ここで、どんな暮らししてんのさァ!」と、マザメ先輩。まァ一応、〈女性を代表しての、驚愕の意思表示〉……ってところだねッ♪

 自分まで〈あんたたち〉で{括|くく}られてしまったことが、どうにもこうにも気に入らないっていうふうな顔に{変化|へんげ}したジジサマが、客間の真ん中に、ドカン! っと座って{胡坐|あぐら}をかいたかと思うと、矢庭に言った。

 「文明の奴らでさえ、ピラミッドの底辺を占めるほどの多くの民たちは、段ボールを駆使した軽量紙骨の省エネにして超エコの地下街生活者じゃが、畳半畳ほどしかない延べ面積の大半を、客間が占めておる。
 人は、対話を重んじる。その対話によって、様々なことを知る。都合の悪いことは、直ぐに真実を捻じ曲げてしまう奴らじゃが、それら個々のねじ曲がりの{殆|ほとん}どすべてを、省エネ超エコ可動ハウス住みの奴らは、直ぐに見抜いてしまう。
 目に映ったものには、必ず、裏がある。陰もある。誰だって、そんなものは、見たくもないし、知りたくもない。じゃから文明の奴らは、見たことを、気づかれまいとする。逆に、己の裏や陰の部分を知られたくないから、なかなか自分の姿を見せようとはせんし、名前を明かすことすら、怖れる。
 今や人間さまも、多品種小ロットの数量限定で、賞味期限の短い生食用として、計画生産されとるっちゅうことじゃなッ!」

 {暫|しば}し、時が流れた……。

 蛇足を一本!

 {因|ちなみ}に、台所とかお風呂とかトイレとかは、ヒノーモロー島の秘密基地……廃墟の隊舎と同様、段々長屋のどこかに、共用部の棟が設けられているとのことだった。
 あれだけ、「風呂ないのーォ!!)的な脅迫……元い。{驚愕|きょうがく}の色を演じ{魅|み}せようとしていたマザメ先輩が、その後、一言も風呂にもトイレにも行きたいと言い出さなかったことに、ぼくら男どもは、{寧|むし}ろそっちのほうが、驚愕を覚えてしまうのだった。
 さすがは森住みの魔性の{鮫|サメ}{乙女子|おとめご}!
 恐るべし……(ガクガク)。

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Ver.,1 Rev.,4
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