MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

東亜学纂学級文庫

『息恒循』を学ぶ

一息103 ミワラ<美童>の後裔記 R3.7.17(土) 夜7時

#### 一息スピア「睡魔に宣戦布告したマザメ司令。ムローが火を噴く」後裔記 ####

 《ぼんやりステージ、{アルファー|α}波のぼくたち》《覚醒ステージ(ベータ波)に、揃い踏み!》《変身ムロー先輩が、楽園・味覚・理性を語る》
   少年学年 スピア 齢10

 一つ、息をつく。

   《 ぼんやりステージ、アルファー波のぼくたち 》

 最初に、覚醒ステージ({ベータ|β}波)に呼び戻されたのは、オオカミ先輩だった。
 さて、ぼく……睡眠ステージ({デルター|δ}波)に吸い込まれていく道すがら、何やら、ムロー学人の声が、聞こえてきた。
 「暫くここで、ゆっくりすればいい……」
 その声に、オオカミ先輩が、突如! 反応したのだ。
 依然。睡眠ステージ(デルター波)に吸い込まれていく道すがら、ムロー学人の声に続いて、何やら、オオカミ先輩の声も、聞こえてきた。
 「有難うございます、学師! でも、おれたちは、{最早|もはや}旅人。気力を養ったら直ぐに、また、船を出さなければならばならない。これは、門人の{仕来|しきた}りの旅なんかじゃない。使命……天命の旅だッ!」
 そこを、知命ではなく、天命という言葉を使ったところは、(オオカミ先輩、ナイスーぅ♪)の、無知運命期のムロー先輩に対する気配り……思い遣りだと、ぼくは拝察した次第です……(ポリポリ)。
 すると、ムロー先輩が、言った。
 「まだ、正常心に戻っては{居|お}らんだろうが、時間が無いので、伝えておく。
 おまえが、自ら決めた行動の論には、問題が、二つある。
 一つ。
 あとどれくらい生きるかを分母にして、この島にいつまで留まるかを決めろ。{明日|あす}の命も知れぬというなら、今すぐ、この島を、出て行けッ!
 二つ。
 おまえらの船のことだが……。
 船底に大穴が空き、蓄電池は放電し、燃料は、{尽|つ}きている。しかも、この島に、液体燃料は、無い。固体燃料なら、山ほど、山になっとるんだがァ……」

 ここで、また一人、覚醒ステージ(ベータ波)に、呼び戻される。サギッチだった。そして、その声が、聞こえてきた。
 「コケイ燃料ーォ??」
 「石炭だよーん……♪」と、こちらは逆に、ぼんやりステージ(アルファー波)まで秒読みの、ツボネエ。
 「石炭で走る船に改造しない限り、この島からの脱出は、不可能というわけだ。それなりの公算は、ある。聞きたいなら聴けばいいし、聴くなら、その話が終わるまでに、あの船をどうするかを、決めろッ!」と、依然、覚醒ステージに君臨する、ムロー先輩。
 すると、ツボネンちゃん……。
 「話題、決まっちゃうよーん♪ ほかには、無いよねーん??」
 まさに、そのときだった。 
 睡眠ステージ(デルター波)で{遊弋|ゆうよく}していた魔性の、{鮫|サメ}の、{乙女子|おとめご}様が、覚醒ステージ(ベータ波)まで、一気に、垂直急浮上!
 「話題、こっちで決めていいのォ? ねぇ! どうなのォ?」と、マザメ先輩。
 「どんな話題だって、ムローなら、大丈夫だよん♪ ねーぇ!?」……と、「どうにか」というか、「しぶとく」というか、覚醒ステージに気分だけは踏み{止|とど}まっている少女ツボネエが、言った。 無論、そのトロリンとした眼差しは、不安そうな面持ちを隠せないムロー先輩に、向けられていた。
 こうなると、燃料なんか無くても{俄然|がぜん}!パワー全開……の、マザメ先輩。応えて、{斯|こ}う言った。
 「言ったわねーぇ!! じゃあ、三つ。
 一に、この島は、どうやってできたのか。
 二に、自然人が{企|くわだ}ててる人工知能チップについて、どう評価するか。
 三に、次の百年ごとの戦乱から、次の天地創造まで、どうやって起こってゆくか。
 以上」
 「どうでもいいけどさーァ♪ スピアの兄貴、爆睡だねーぇ!!」と、ほぼ陥落寸前のツボネン城……ではなく、ツボネエ嬢♪
 「ぅんーなわけ、ねぇだろがいッ! この、タヌキ野郎のバヤイ……だろーォ?! スピア!」と、サギッチ。
 (余計なことを言いやがってぇ……まったく!)と、思うぼく。

   《 覚醒ステージ(ベータ波)に、揃い踏み! 》

 まァ、そこまで言われたら、仕方がない。
 「マザメ先輩には、逆らいたくない」というのは、寺学舎の男ども共通の不文律だけれども、このときばかりは、(女の浅はかさに、どうしても、背を向けるわけにはいかない)って、思ってしまった。
 なので、言ってしまったのだった。
 「マザメ先輩さーァ!!
 問いは、的を{射|い}てるかもしれないけど、もし、{訊|き}く相手を間違えているとしたら、ぼくら四人は、連行されて収監! 自然エスノは、計画も{儘|まま}ならないうちに、絶滅へと追い込まれる。
 マザメ先輩の一言で、すべてが終わってしまうんだ。カアネエやシンジイの長年の労苦も、理由は知らないけど、ザペングール島のおねえさんの大怪我も、すべて無駄になってしまうんだ。
 ムロー先輩やツボネエが、今でもぼくらの味方だって、確かな{論的証拠|エビデンス}を掴まなきゃダメってことさ。マザメ先輩は、何かを直感して、それを確信したから、今の問いを、ムロー先輩にぶつけたんだよねぇ? だよねーぇ♪
 ぼくたちは、今、微妙な立ち位置で、片足を交互に地に着けながら、ヨーロ、ヨーロって、*やじろべえ*みたく、仕方なく突き動かされてるんだ。
 一瞬の油断が、ぼくらみんなを、地獄へ突き落すことになるんだよ。自覚しようよ。ねぇ、えーかげん!」
 
 そんなふうなことを言い終えると、矢庭にツボネエの声……。
 「起きてたんだーァ!! スピアの……アニキーぃ♪」
 そのあと、少しの間。
 ムロー先輩が、言った。
 「ツボネンちゃん♪
 わしの机の引き出しから、黄緑色の小さい紙の箱を、持ってきてはくれんかァ」
 ツボネエが、応えて言った。
 「はーぃ♪」
 その小さな紙の箱を受け取ると、ムロー先輩は、なんとも言い難い、微妙に幸せそうな顔になって、{斯|こ}う言った。
 「{明日|あす}の命を知るとな。人間、不思議なもんでなァ。一瞬でいいから、自分に、ご{褒美|ほうび}を与えたいって、そう思うものらしいんだ。
 こういう芸当を、素直に受け{容|い}れると、何故か不思議と、森の中の水たまりで求愛の乱舞をしている数百の赤とんぼたちの美しい愛の営みを、思い出さずにはいられない。
 おまえらにも、{直|じき}に、{解|わ}かることだ」
 ムロー先輩は、そう言い終わると、三分の一に減って揉み消されている紙巻きタバコに、火をつけた。そしてまた、言った。
 「オーガニック。無添加の天然のタバコの葉っぱに、同じくオーガニックのミントの葉っぱを混ぜて、ギュッと固く巻いてある。だから、こんなに細いんだ。そもそも、これが{細|ほそ}いか太いかなんて、おまえらには、判らんだろうがなァ。
 明日の命が知れると、妙に、健康のことが、気にかかるようになってなァ。まァ、おまえらが言いたいことは、判る……(アセアセ)。
 自分で育てた無添加無農薬の植物や、オーガニックを{謳|うた}った商品でないと、どうも、安心して食べれなくなってしまってなーァ……」
 
   《 変身ムロー先輩が、楽園・味覚・理性を語る 》

 〈新新ジャンル〉と謳われた、微妙にノンアルコールの甘酒を発泡させたみたいな、炭酸飲料……麦とトウモロコシの発酵酒を、チビチビと{啜|すす}るムロー先輩……。
 暫しの……間。
 ムロー先輩が、ムロー学級の五人を眺めながら、語りはじめた。

 「まァまァ。
 ちょっとだけ、ゆっくり、飲ませてくれ。
 その{訳|わけ}は、{斯|こ}うだ。
 十九世紀の初頭、イギリス……特に、マンチェスターのジン・パレス。居酒屋の起こりの話だ。
 酒を売る店の中に、カウンターが、置かれることになった。労働者たちは、まるで、ベルトコンベアに{載|の}せられた**物**のように、急いで酒を飲んで、〈酔っぱらい〉という不良ロボットに変えられると、次々と店外に放り出され、再び工場へと、送り返されて行った。
 今で言う、バーだな。
 明日の命が知れるとな。そんな酒の飲み方は、したくないんものなんだ。
 タバコ、{然|しか}りだ。タバコは、安らぎと息抜きと精神の集中力まで高めてくれると、西洋の狩猟民族たちは、長い間、そう信じて疑うことを知らなかった。
 十七世紀から十八世紀には、パイプで……タバコの葉っぱを切り、パイプに詰める。
 十九世紀の初頭になると、それが、葉巻に{替|か}わる。吸い口を切って、火を起こして、口にくわえるだけ。
 それから{暫|しばら}くすると、マッチも、発明される。火打ちをしなくても、{擦|す}るだけで直ぐに、火がつく。
 そして十九世紀の後半、シガレットが、登場する。

 一本を吸い終わるまで、葉巻は半時間。シガレットは、精々五分だ。居酒屋のカウンターと、同じことさ。
 安らぎも、息抜きも、すべてが、スピードアップだ。それが、文明人たちが考えた、亜種存立のための進化だったというわけだ。
 だが、その進化のメカニズムの正体は、ベルトコンベアに旧態人間たちを載せて、自然界から放り出す。そのメカニズムが、葉巻がシガレットに取って{代|か}えられた様に、様々な工夫によって、スピードアップされてゆく。
 文明人たちは、そのスピードアップが、身に{沁|し}みついていやがる。{真面|まとも}にぶつかれば、すべてが高速で、目が回って、瞬時に、廃残兵が{堆積|たいせき}した谷底へと、不法に投棄されてしまう。
 {故|ゆえ}に!
 {即|すなわ}ち!
 次の百年ごとの大戦は、我ら自然エスノにとって、決死……全滅必至の{闘戦|とうせん}と、相成ろう。和のエスノの人{等|ら}も然り、焼け跡で生き長らえることができるのは、幽霊か怨霊くらいのもんだ。
 余談が、過ぎた。
 では、三つの質問に、答えよう♪」

 急に眠くなったのは、ぼくだけではなかったみたいだ。
 睡魔に戦いを挑んだのは、ぼくらの心強い仲間……マザメ艦隊司令だッ! 見捨てて、眠りに落ちるわけにはいかない。でも、辛い。
 (あーァ……)と、{嘆|なげ}くぼく(ら)。  

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Ver.,1 Rev.,8
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