#### ムローの座学日誌「存亡の危機! 境遇に左右されない己をつくれ」{然修録|105} ####
『{何故|なぜ}、境遇に振り回されるのか』 《環境に順応? なぜ人間は、その時々の境遇に一喜一憂し、フラフラと己の道を{逸|そ}れてどこかに行ってしまうのか》《存亡の危機? なぜ人間は、諸外国が喜んで攻め入って来ることを予測できず、内乱に没入してしまうのか》
学人学年 ムロー 青循令{猫刄|みょうじん}
{会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
**{主題と題材と動機|モチーフ}**
《 {主題|テーマ} 》
何故、境遇に振り回されるのか。
《 その{題材|サブジェクト} 》
環境に順応? なぜ人間は、その時々の境遇に一喜一憂し、フラフラと己の道を逸れてどこかに行ってしまうのか。
存亡の危機? なぜ人間は、諸外国が喜んで攻め入って来ることを予測できず、内乱に没入してしまうのか。
《 この主題と題材を選んだ{動機|モーティブ} 》
次の天地創造の前に……。
宇宙星艦〈アース〉が出航する前に……。
この星の人類は、絶滅する。
俺の後裔記より……。
アース号出航? 地球存亡の危機? 俺たち自然{民族|エスノ}が、和のエスノのクソガキどもに{護|まも}ってもらうだとーォ?!
俺たち{美童|ミワラ}は……元い。俺たちムロー学級の面々は、そんなにも頼りなく映っているのかッ!
和の連中の洞察力のほうが、俺たち自然人の直感力よりも、勝っているということなのか。
自反、格物、直感力の三拍子を{以|もっ}てしても、和の連中の洞察力には敵わぬ! と、いうことなのか。
俺たち自然人は、先祖代々、和の人たち……{所謂|いわゆる}旧態人間を、護ってきた。
それが、俺たちの時代で、逆転するぅ? 有り得ん! ……というか、有ってはならん!
俺ら{美童|ミワラ}が弱体化すれば、三つの亜種の均衡は、崩れ去る。人類は、三つ{巴|どもえ}となり、その争いは、地球全体を覆う。
{故|ゆえ}に、人類は、滅亡する。
その日は、近い。
**題材の{講釈|レクチャー}**
《 環境に順応? なぜ人間は、その時々の境遇に一喜一憂し、フラフラと己の道を逸れてどこかに行ってしまうのか 》
周りの事情や自分の個性を大切に考えることは、悪いことじゃない。但し、天命に向けて己の道を歩むうえに{於|お}いては、ほぼなんの役にも立たない。大事なのは、自主的に努力できるか{否|いな}かということころにあると思う。
この「自主的な努力」を考えるとき、{瑞西|スイス}に二人、学ぶべき先人偉人がいる。
一人目は、詩人であり哲学者である{アミエル|Henri Frederic Amiel}(一八二一~八一)。
死後、日記が有名になった。理由は、その美しい心情と情緒にあるという。後裔記を子々孫々に残そうという我ら{美童|ミワラ}としては、生まれ持った美質を保ち続けるために、是非一度、読んでおきたいものだッ! ……(アセアセ)。
二人目。
法律家であり哲学者である{カール・ヒルティ|Carl Hilty}(一八三三~一九〇九)。
その著作は、実業家でもあった{所為|せい}か、思慮深く実証的であるという理由で、日本でも広く受け{容|い}れられてきた。{敬虔|けいけん}な信仰によってプロテスタントの倫理観や道徳観を書いた著作、『幸福論』や『眠られぬ夜のために』が、有名だ。
その片方は、読んだ記憶はある……が、その内容は、記憶していない……(ポリポリ)。
さて、そのヒルティの語録を、読んでみよう♪
「人間は{抛|ほう}り出しておいても善くなるような自然的能力を持っているものではない。逆に善に反抗する傾向がある。
すなわち{怠惰|たいだ}、勤労を嫌う、わがまま、罪のない{子供|こども}を容易に{犯|おか}す時代風俗のもつ魔力などである。児童に根本的に必要なものは、そのうちに成長して、下品なもの・俗悪なものなどに触れない清潔な雰囲気である。
教育についての抽象的理論の多くは価値がない。
最高の教育を受けた人間も、その後の自己{陶冶|とうや}を{缺|か}いては、立派な人間には成り得ない。ごく劣悪な教育も、自己陶冶によっては、なお改善され得るものである」
陶というのは、焼物を造ること。治は、{治金|やきん}……金属を精錬……鉱石から金属を取り出して、材料を造ること。
練って焼きを入れて、人間を造る。
取り出して鍛えて、人間を造る。
即ち、人間というものは、焼きを入れて鍛えなければ、ものにならぬということだ。
まったく、手厳しい!
{然|しか}しながら、現実は、ヒルティの言う通り……自由奔放では、いつまで{経|た}っても、ダメ人間のままだ……と、いうことを、物語っている。
俺たち自然{民族|エスノ}は、「自然の一部である」と、悠久豪語してきた。自然とは、創造……新たに何かを造り出すこと。変化……常に自ら変わること。正に{造化|ぞうか}……常に天地万物が変転し、それ故に存立存続してゆくものだということ。
なので自然の一部足る人間は、常に自然を造り、己を自ら変え続けなければならない。
但し、これを自主的主体的に、絶え間なく創造力を発揮するということは、{如何|いか}なる自然の一部の生きものも、残念ながら、不可能と言っていい。特に人間の大人は、直ぐに疲れる……へこたれると言ってもいい。
そういうときは、逆に、環境に左右されてしまう。だから、ヒルティの言葉にもあるように、「清潔な雰囲気」……即ち、善い環境に置かれていなければならないということだ。
人間が環境を造り、また同時に、環境が人間を造る。
これが、自然の一部足る生きものの{所以|ゆえん}なのだ。
《 存亡の危機? なぜ人間は、諸外国が喜んで攻め入って来ることを予測できず、内乱に没入してしまうのか 》
みんな、気づいているだろうか。寺学舎で学んでいたころからずっと、俺たちは、国内の治乱のことばかりを考えている。外を、まったく見ていない。すると、どうなるか……。
そう、黒船が、やって来る!
通商が目的なら、まだいい。でも、その国の国民が、{世間知らず|ナイーブ}だということを知ったら、どうするだろう。俺なら、通商などとまどろっこしいことはせず、(大砲をぶち込んで、占領してやろう!)と、思うだろう。
即ち、我ら日本人……文明、和、自然の三亜種とも、国際的な認識が、欠落しているということだ。
数ある大陸の大国と{対峙|たいじ}したときに、「闘争かッ! {将又|はたまた}、中立かッ!」の二択しか頭に浮かばないようなポンコツの頭では、それこそ国家*存亡*の二択の答えが、直ぐに出てしまうというものだ。
日本の政治家は、「平和、平和、平和主義だーァ!!」と連呼するだけで、ロシアの独裁者は、自国を平和の教科書のように言い、アメリカを帝国・侵略主義の魔王であるかのように非難する。
どいつもこいつも、ただ「平和、平和、平和……」と、バカの一つ覚えだけで*お経*をあげているが……じゃあ、その平和って、なんなのさァ!
どういう条件が揃ったときに、平和というのか。
それは、誰のためにあるのか。
その平和を得るためには、どんな代償を払わなければならないのか。
……と、そんな基本的なことを考えたこともなければ、知りたいとも思わない。言葉だけで、中身がない。正に、空論! お話にならない。
国民が、自由を勝ち取って幸福を享受することが*平和*なら、すべての国民が奴隷化することもまた、*平和*と呼ばれている。残念ながら、それが、現実なのだ。
この星のすべての人間が、お互いに敬意と善意を{以|もっ}て接しなければ、**平和**などとい実態なきややこしき時空が、顕在する難しき人類と共存などできるはずはないのだ。
国民を、右と左に分け隔てたり、ヒト種を、三つの亜種に分化させたり、人間というのは、何故にこうも、わざわざ問題を難しくすることが大好きなのだろうか。
難しくすればするほど、本題から遊離してゆく。より難しいほうを大事にするから、益々本題から離れてゆく。
即ち、愚か者は、事を難しくして、わざわざ危険な行動を起こして、そこでたまたま得た{何某|なにがし}かの幸福に、一喜一憂しているだけなのだ。
**{蛇足|スーパーフルーイティ}**
その*愚か者*と逆の意味の言葉で、〈居易俟命〉というのがある。あまり詳しくはないが、〈きょいしめい〉とでも読めばいいのだろうか。偉人は、平易な立ち位置で、天命を{俟|ま}つ……と、いう意味だ。
その言葉を取って名前にしたのが、{白居易|はく・きょい}だ。易に{居|お}って、はじめて天を楽しむことができる。{所謂|いわゆる}、楽天♪
このおっさん! この〈楽天〉を{字|あざな}にしたから、その名が*白楽天*になったという{訳|わけ}である。
まァ、オオカミ君とスピア君の二人が、どうやら『{中庸|ちゅうよう}』を学んでいるようなので、原典の語録の解説は、彼らに譲ろう♪
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Ver.1,Rev.9
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