MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

東亜学纂学級文庫

『息恒循』を学ぶ

後裔記109(ミワラ<美童>学級の実学紀行)R3.8.28(土) 夜7時配信

#### サギッチの実学紀行「出たッ! ぼく行くけど、みんな、どうするーぅ?!」{後裔記|109} ####


 《和の{民族|エスノ}の真の狙いを{暴|あば}く}》《疲弊した精神も、{萎|しぼ}んだ肉体も、ふやけた肌》
   少年学年 サギッチ 齢9

 体得、その努力に{憾|うら}みなかりしか。

   《 和のエスノの真の狙いを暴く 》

 恐らく、ここ数年で一番(……であって欲しい)修羅場。
 難破の悲劇を潜り抜けるのに精一杯だった{所為|せい}か、すっかり忘れていたことが、二つある。
 一つ。スピアの決め{台詞|ぜりふ}。
 二つ。スピアの屁理屈。

 森の中……。
 自然エスノの{子等|こら}……ムロー学級総員八名、そのうち、現在員六名。
 {バーサス|VS}。
 和のエスノの子等、長屋のクソガキども総勢十名……と、ちょい。
 スピアの野郎が、言った。
 「ぼく行くけど、みんな、どうするーぅ?!」
 これには、さすがの長屋のウンチ{放|ひ}りやションベン{垂|た}れどもも、絶句!
 耳に届いたスピアの言葉と、その顔から読める意思とが、一致しない。そのふてぶてしい淡々とした顔には、{斯|こ}う書いてある。
 「決めたァ! みんな、早く行こうよーォ♪ サギッチも、来るぅ?」……だ。
 スピアの野郎、{山女魚|ヤマメ}をコシアブラの若葉で{包|くる}んで焼いた和流自然食を、やけに気に入ってワシワシ食った{所為|せい}か、屁理屈の充填完了……その口は、全開! ……てな感じ。
 まァ、偉そうに生意気に{捲|まく}くし立てる長屋のガキ大将を黙らせるには、スピアの屁理屈が、何よりの秘薬……てか妙薬……正に、霊薬だァ♪ (……みたいなァ)と、思うおれ。

 で、そのスピアの口が、言った。
 「論破したんだから、長屋の和のクソガキって呼ばれてる君らが、正しいよォ。ぼくらは*難破*だったけど、それも、正しかった。だから君らも、正しいんだと思う。
 君の主張……。
 君ら和の人たちは、ぼくら自然人を、{護|まも}ってきた。
 正しいと思う。
 親が子を護るのは当然だけど、でも、君たち和のエスノの本当の狙いは、*当然*ってところじゃない。ほかにある。必要があったんだ。和のエスノが、存続するために。
 平安時代の末期、ぼくら自然人は、一国一文明一民族を誇っていた和人から枝分かれし、地上の表舞台から姿を消した。
 次、昭和時代の中盤。
 こんどは、文明人が、和人から枝分かれする。ここで和人たちは、アメリカの爆弾によって、大きくその数を減らした。自然人が{俄|にわ}かに増殖……そして、文明人が矢庭に増殖したことによって、二人の子とその親という関係式の三つの亜種の勢力が、{均衡|きんこう}した。
 均衡したと言っても、それはただ、算数の世界の話だ。力の関係は、均衡なんて無理だからねぇ。ピラミッドのてっぺんが文明、その下が自然、そして底辺は、和の人たちだ。

 和の人たちにとって、ぼくら自然人は、{城郭|じょうかく}なんだ。和をぐるっと囲ってる城壁の外には、文明の軍勢が、うようよ{居|い}る。だから和の人たちは、ぼくら自然人を、後方から支援してきたんだ。それを、和の人たちは、「{護|まも}ってきた」っていう言葉に、当ててるんだよ。
 いいじゃん、べつに。
 それならそれでさァ。
 そんなことで{目鮫|メザメ}立てないで、早く行こうよォ♪」

 「そこは、{鯨|クジラ}だろッ! と、一応、言っておく。そこを{敢|あ}えて{鮫|サメ}に替えたのは、{如何|いか}なる屁理屈であろうか……」と、ムロー。魔性の鮫{乙女子|おとめご}先輩に聞かれぬよう、慎重に、独り{言|ご}ちる。
 その慎重……というか、臆病に{応|こた}えるかのように、スピアが、言った。
 「{遊弋|ゆうよく}……じゃなくて、回遊しなきゃだからだよ。ぼくら人間は、{鰓|えら}呼吸なんだ。常に泳いで、**気**を含んだ海水を受け{容|い}れ続けないと、ぼくら人間は、みんな、死んじゃうんだ。
 変わり続けないと、生きてることを忘れっちゃう。頭が、生きてることを、忘れちゃうんだ。それってもう、死んじゃってるってことだよねぇ?
 だから、早く行こうよーォ!!」

 ここで、ツボネエが、ぼそっと、{呟|つぶや}いた。
 「ムローはさァ。変わるのさぼってるから、知命できないんだよ。ひと休み、多過ぎーぃ♪ ……みんなァ?」
 ムロー先輩が、ぼそっと、応えて独り言ちた。
 「だなッ!」 

   《 疲弊した精神、萎んだ肉体、ふやけた肌 》

 {惚|ほう}けた森の妖精が、ブツクサと能書きを{言|ご}ちごちしながら、立ち上がった。
 「来る日も来る日も、冬を引きずった晴れ間の見えない{一日|いちじつ}。
 次にやってくる時令が夏だって、誰かが約束してくれるんなら、この疲弊した精神も、萎んだ肉体も、ふやけた肌も、ちょっとの間だけ、健康っていう幻想を夢見て{蘇|よみがえ}らせることだってできるのに……。
 行くけどさァ!」と、マザメ……先輩。

 ツボネエが、言った。
 「また、ほかの島に行くのォ? ねぇ。アニキーィ!!」
 スピアの野郎は、何も、応える様子はなかった。
 「なんでまた、**島**ってことになっちゃうのさァ。なんで森じゃあ、ダメなんだよッ!」と、マザメ先輩。
 ご機嫌が{傾|かし}いだまま{遊弋|ゆうよく}をはじめる、魔性の鮫!
 オオカミ先輩が、立ち上がった。
 (いい加減、女の扱いに慣れて欲しいもんだなァ!)……というおれたち期待は、今回も、裏切られた。
 そのオオカミ先輩が、言った。
 「森は、島の中にある。島が{嫌|イヤ}なら、海。それも嫌なら、この星から出て{行|ゆ}くしかない。この星の表面には、島と海しかないんだからなァ」
 無論、応えて言葉を返す魔性の鮫先輩!
 「島ん中でも、海ん中でも、{黄泉|よみ}の底でも、どこでもいいわァ! てかさァ。あたいら、この星のどこに{居|い}たって、アース号より早く出航しなきゃ、焼け焦げてそのまま溶けて影も形も無くなっちゃうんだろーォ?!」
 {暫|しば}ーしぃ……沈黙。

 現在員十六名とちょい、{何気|なにげ}に歩き出す。
 不気味!
 こんなとき、つい{戯|たわ}けたことを言っちゃうのが、おれだった。
 「ズングリ丸とアース号が、スタートラインの{重視線|トランジット}目掛けて、波{飛沫|しぶき}を天空に巻き上げながら、猛烈な勢いで荒波を切り裂いて行くーぅ!!
 てかさァ。なんであいつら、ついて来るんだァ?」
 と、まァ、こんな具合で……。
 「同年代なんだからさァ。仲良くすればァ?」と、マザメ先輩。
 「上から目線だけど、おれは、嫌ってはいない。少なくとも、おれらよりは知命に近そうだからなァ」と、オオカミ先輩。
 「そうだよね。クソガキだけど、邪心は無いと思う。ただ、性格が悪いだけ」と、ツボネエ。そう言い終わると、矢庭にムローが歩いているほうに駆け寄り、ムロー先輩の腰と自分の肩を同調させるかのように、速足で歩く。そしてまた、言った。

 「ねぇ。何考えてんのーォ??」
 おれも速足で、ムロー先輩たちに、追いついた。そして、ムロー先輩が言った。ぼそぼそと……。
 「あいつら、旧態人間には違い無さそうだが、もしそれが{装|よそお}いで、本当は、文明エスノの手の者だとしたら、おれたちは確実に、文明の{奴|やつ}らから狙われていることになる。すでに、標的にされてしまってるってことさ。
 一つの亜種が、存亡を賭けて、しかもそれが、{対峙|たいじ}する亜種の根絶を目指すものだとしたら、その具現は、{容易|たやす}いはずがない。
 だからおれたちは、立命期に生まれ持った美質を育て、運命期に武の心を修める。その具体的な計画書が、知命だ。そうそう都合よく、助っ人が現れるわけがない。現れるのは、決して立ち止まってはくれない*時間*と、決して{不精|ぶしょう}を許さない修羅場だけさ。
 血肉の〈血〉に、運命の〈命〉……その血命に{順|したご}うて以て友を選ぶ。来るものが敵と判れば、{直|ただ}ちに殺す。
 {縁尋機妙|えんじんきみょう}……それがもし、真の友と判れば、大努力して手と足を動かし、何がなんでも{掴|つか}まえて、仲間にする。
 ひょっとすると、俺がその**手**の者かもしれない。{仕来|しきた}りの旅を経験しているのだ。どこでどんな経験をして、誰かから新たなる使命を{背負|しょ}わされていたとしても、なんの不思議もない。不思議どころか、実に、現実的な推測だ」

 そこまでを言ったところで、ムロー先輩は、言葉を切ってしまったので、(やれやれ……)と思いながら、おれは何気に、後ろに振り返ろうとした。すると、いつの間に忍び寄って来たのか、十三人とちょいが、ピッタリとおれの後ろにくっついて、{何故|なぜ}か忍び足で、聞き耳を立てている。 
 もはや、〈**どの{面|つら}**〉を見渡してみても、疲弊した精神も、萎んだ肉体も、ふやけた肌も、何一つ認めることは出来ない。
 正に、「総員、戦闘配置につけッ!」との艦内放送を聞いたばかりでキョトンとして突っ立っている、まだ{幼顔|おさながお}の残る新兵たちのようだった。

   **{格物|かくぶつ}**

 ムロー学師より、指令が出回った。
 後裔記を書き終えたならば、必ず己が実践した{或|ある}いは実践すべき*格物*を書き残せ……と。
 後裔記は、行動の学。
 {故|ゆえ}に昨今、実学紀行と呼ばれるようになった。
 行動の学であり、それが実学であれば、格物が生じるのは自然であり、必定でもある。
 その点では、異論などあるはずがない。
 でも、いきなり格物って言われてもーォ!!
 みなに、訊く。
 「ぼくが正したほうがいいところって、どこだと思うーぅ??」
 失礼! ……(ポリポリ)。
  
_/_/_/ 要領よく、このメルマガを読んでいただくために……。
Ver.,1 Rev.,9
https://shichimei.hatenablog.com/about

// AeFbp // 東亜学纂学級文庫
The class libraly of AEF Biographical novel Publishing