#### スピアの実学紀行「{凪|な}ぎの果て、前天地創造時代に想いを{馳|は}せ」{後裔記|117} ####
《{魔鮫|マザメ}{居|い}ぬ間の独演会》
《前天地創造時代》
《{神代|かみよ}天地創造時代》
少年学年 スピア 齢10
体得、その言行に恥ずるなかりしか。
《 魔鮫居ぬ間の独演会 》
ぼくらの疲労を気{遣|づか}ってくれたのか、それとも、同性の魔性の{鮫|サメ}{乙女子|おとめご}と相性が悪くて、{不貞|ふて}腐れているのか! {兎|と}にも{角|かく}にも六人が作業甲板に腰を下ろすや{否|いな}や、海面は{凪|な}ぎ、嘘のような真っ平の海面が、延々と四方に拡がっていった。
いつもの調子で会話が始まったけれど、マザメ先輩だけが、{直|じき}に爆睡態勢に入った。爆睡とは、〈爆撃型有害睡眠〉の略である。{喚|わめ}く、{蹴|け}る、転がる……どうやら、妖怪と戦っているようだ。お疲れさま……(やれやれ)。
さてさて男どもは……と、いうと、いつもの意味不明、目的{曖昧|あいまい}な談議を、続けた……{訳|わけ}なんだけど、どうやら、その大半を、ぼくが、語っていたようなのだ。
その内容? ……って普通、ぼく以外の誰かが、後裔記に書く……って、思うよねぇ? 思ってよォ!
でも、サギッチが、{斯|こ}う言った。
「覚えられるかよッ! 自分で書けよ」
ほかの三人……ムロー先輩、オオカミ先輩、ツボネエ……あッ! 今、気づいた。「さてさて男どもは……」ではなく、さてさて、ほかの男ども四人と少女一人は……」でした……(アセアセ)。
兎も角、みんな、サギッチの薄情な提案に……異論は、無さそうだった。
《 前天地創造時代 》
ぼくが、言った……(ポリポリ)。
「結局、ぼくらヒト種って、起源は、一つなんだよねッ!
前天地創造時代。
その時代は、四百万年と少々まで、延々と続いた。
その次が、ぼくらの時代……神代天地創造時代。
こちらは逆に、まだ四千年っくらいしか経っていない。
前天地創造時代に生き残った*ヒトっぽい*動物は、チンパンジーのみ。前天地創造時代に誕生し、ザッと百万年近くも生存し続けている。
その堂々たる生き残りを果たしたチンパンジーを見て、ぼくらの太祖の神さまが、斯う思ったんだ。
「これだッ!」
で、神さまは、{青人草|あおひとくさ}……つまり、ぼくらヒト種を創造し、自然界の生態系において、チンパンジーと同格の種に布置した。
のちに、青人草たち自らが、系統的な分類を試みた。結果、〈ヒト族〉が新たに設けられ、既存のチンパンジーは、〈チンパンジー亜族〉とした。
{即|すなわ}ち、チンパンジーは、系統をどこまで{辿|たど}っても、行けども行けどもチンパンジーで、ヒト亜族と交わることはないってこと。
恐らく、誕生したばかりのヒト亜族のその容姿は、チンパンジーとなんら、変わるところが無かったんだと思う。その証拠に、のちに誕生したヒト亜族の下位、アウストラロピテクス属を見ると、(ヒトなんだか、サルなんだか……)って感じだからだ。
余計な補足だけど、こっちの属は、{属|ぞく}するほうの属。
兎も角、アウストラロピテクス属は、頑張った。
孤独に耐えて、ぱきぱきぴきんこ、ぱきぴんこーォ♪
ああ、アウロピ、まだ二百万歳ーぃ♪
みたいな……(ポリポリ)。
……で、結局、アウロピ絶滅!
……即ち、ヒト亜族の絶滅!
さて、そこへきて困り果ててしまった神さま。
アウロピ属の代わりに、ヒト属を創造する。
ところが、こいつがどうも、パッとしない。
誕生から百六十七万五千年プラスマイナス七万五千年も経ったある日、神さまは、やっと、大事なことに気づいた。
「こいつら、まだのらりくらりと生きとんのかッ!」
……で、思った。
「こりゃ、マズイ!」
なんでマズイのかっていうと、このまま、のらりくらりと生きられてしまうと、次の天地創造で、コロリと絶滅してしまうから。でしょ?
で、神さまは、実際問題、どんな手を打ったのか。
ヒト属を創造して、ザックリ百六十七万五千年経ってるってことは、今からザックリ三十二万五千年っくらい昔の話になるんだけど、(創造しちまったもん、今更どうしようもないよねぇ?)って、神さまは、思った……言わずもがな、たぶん(アセアセ)。
で、しゃーないから、ヒト属の下位に、ホモサピエンス種ってのを、創造したんだ。
(これが、ヒット♪ って、自画自賛……みたいな)と、思ったぼく。
《 神代天地創造時代 》
結果、チンパンジー亜族チンパンジー属と、ヒト亜族ヒト属ホモサピエンス種が、生き残った。
ここからが、神代天地創造時代。
このホモ種……この世の始まりとして{捉|とら}えると、人間としては、ほぼ完成形♪
でも{何故|なぜ}か神さま……面白くないご様子!
何故なら、自然界において、ホモ種の存在が、薄い。
(ほかに、もっとインパクトのあるやつを、創造しなくっちゃ!)と、思う神さま。そして、{焦|あせ}る神様、苦肉の計!
神さまは、次々と神さまを産んだ。
そのうちの{二柱|ふたはしら}……男女のペアが、{淤能碁呂島|おのごろしま}で{麻具波比|まぐわい}(いやーん♪ ばかーん♪)を、あそばされまくった。すると女の神さまほうが、ボロボロポンポンと、神々を産んでいった。
この時分、神の子も、そのまた子も神さまだから、産れた{子等|こら}はみな、神と呼ばれた。
で、ボロボロポンポンで産れた神々のうち、{三柱|みはしら}のヤンチャ坊主たちがいた。ほどなく大人になった時分、父親の{男神|おがみ}に呼ばれ、棒で三十回{叩|たた}かれた。
涙と血に{塗|まみ}れた三柱のヤンチャ坊主たちは、そのままホモサピエンス種が住まう{天之忍許呂別|あめのおしころわけ}に送られた。別名、{三子島|みつごのしま}!
血まみれ涙まみれの三柱のヤンチャ坊主(……とは言っても、言わずもがな、大人!)たちを、{憐|あわ}れに思ったホモサピエンス種の大人たちは、三つあった集落で、{一柱|ひとはしら}づつ預かり、手厚く看護した。
ところが……この三柱のヤンチャ坊主ども!
看護してくれているホモサピの女たちを、手当たり次第に麻具波比(本当に、いやーん! 本当に、ばかーん!)であそび……それが、どうしたことか、ドッコイ!
麻具波比(よしてよ、いやーん♪ あーれーぇ、ばかーん♪)された女たちも喜んで、またまたボロボロポンポンと、雑種のホモ神を、産み続けた。
ここに、純血のホモサピ種は{亡|ほろ}び、雑種のホモ神が、この世に{蔓延|はびこ}る。
計の成功を見た三柱のヤンチャ男神の父親たちは、これを記念して、ホモサピエンス種の名を後世に残し、ここに、ヒト族ヒト亜族ヒト属ホモサピエンス種が、確立する。
これが、ぼくらの太祖の生誕秘話♪
そして近代から現代にかけて、このホモサピ種が分化し、ブンメイエスノ亜種、ワノエスノ亜種……そしてぼくら、シゼンエスノ亜種の三亜種が成り、今{此処|ここ}に到る」
以上♪ ……みたいな(アセアセ)。
**{格物|かくぶつ}**
鹿児島が生んだ経営の神様、稲盛先生の自戒三箇条(……だ、そうです)!
一に、熱意……
二に、考え方……
三に、善ありしか……
四に、私心なりしか……
で、ぼく……。
一に、意外とぼく、熱血漢! ……合格ーぅ♪
二だけど、考え方も、処する心の姿勢も、合理性や真剣味に欠ける。 ……不合格!
三の〈善〉どころか、ときに悪魔に{変化|へんげ}する。 ……アウトーォ!!
四に到っては、私心……パキパキピキンコ、パピピンコッ!
イライラカッカの、瞬間熱湯沸かし機(……燃料は、無論のこと、石炭♪ ……みたいな)。
平常心が、ぶち壊れ、{強|したた}かに、みんなに八つ当たり! ……死刑じゃーァ!!
_/_/_/ ご案内 【東亜学纂学級文庫】
Ver,2,Rev.2
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【レーベル】 東亜学纂学級文庫
熊本県阿蘇市 《阿蘇神社の総本社最寄》
【発行所】 東亜学纂
広島県福山市 《日本遺産「備後鞆の浦」》