MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

後裔記 第1集 No.124

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい。
そのために、働く! 読む! 書く!
今とここのみ、知命{是|かく}が如く。
南内 彬男
なんだい! あきお
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_/ 1 /_/ 『亜種記』 *電子書籍
息恒循を学ぶ子どもたちの闘戦の旅
_/ 2 /_/ 「後裔記」 *メールマガジン
亜種記を構成する諸書(実学紀行)
_/ 3 /_/ 「然修録」 *メールマガジン
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_/ 2 /_/ 後裔記 第1集の子どもたち
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名
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※電子書籍編集のための記号を含みます。
  お見苦しい点、ご容赦ください。

#### スピアの実学紀行「新型ヨッコ号♪ ぼくは直観で観察していた」{後裔記|124} ####

 《ツボネエの後裔記に{視得|みえ}た直感と、ぼくのへーぇ♪理屈を総括する直観》
 《住む場所を変え、獲物を変え、個体の色や形を変えて進化してゆくヨッコ先輩の洞察》
 少年学年 スピア 齢10

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。

 《 ツボネエの後裔記に視得た直感と、ぼくのへーぇ♪理屈を総括する直観 》

 {厄介|やっかい}なことになった。

 でも、それは、この後裔記にも、然修録にも書けない。
 その理由は、その理由を、書けないからだ。
 ツボネエは、幼子が得意とする直感でそれを知り、{懸念|けねん}材料となった。対して屁理屈ボーイのぼくは、直観で、それを知り得て、思案している。同じ「チョッカン」と読んでも、その意味は、大きく隔たる……にも{拘|かか}わらず、その異なる*チョッカン*が、二人の頭脳に映し出した影像……それは、どうやら、まったく同じものらしい。

 ムロー先輩も、離島に疎開して最初の然修録に、その事態を予測し、それを警告するかのようなことを書いていた。この星の生き物は、変わらなければ、生き{存|ながら}えることはできないし、子孫にバトンを{繋|つな}ぐことも出来ない。
 天敵に食い荒らされて絶滅に{瀕|ひん}した小動物たちが、住む場所を変え、獲物を変え、個体の色や形を変えて進化してゆく{様|さま}は、その必然性を、{解|わか}り{易|やす}く物語っている。

 余談……以上。

 《 住む場所を変え、獲物を変え、個体の色や形を変えて進化してゆくヨッコ先輩の洞察 》

 脱衣場には、音楽が流れていた。
 話の流れからすると、「シューベルトの曲が、流れていた」と、書きたいところなんだけど、どうやら選曲は、外国帰りのヨッコ先輩ではなく、同じくここ外舎に軟禁されている和の人たちのようだ。

 その退屈な脱衣場での*オアズケ*の時間……マザメ先輩が、言った。
 「和の人たちって……ホント、音楽が好きよね」
 「そうそう♪ ここも、どの部屋でも、BGMが流れてる。居間には学びに適したBGMが、ここ脱衣場には、入浴に適したBGMが、そしてトイレにも……」と、新型ヨッコ先輩♪
 「ヨッコねーさんは、どんな曲が好きなのーォ?!」と、ツボネエちゃん。
 「よくぞ、{訊|き}いてくれましたーァ♪
 さすがは、直感だけで生き残ってるツボネエさまね。わたしの好きな話題、ズバッとピンポーン♪ だよ。
 山野さと子さんの、『とんがり帽子のメモル』とか『メイプルタウン物語』とか。細川たかしさんの『正調おそ松節』も、捨て{難|がた}いわねぇ」と、ルンルンで{応|こた}えるヨッコ先輩。
 「最初の二つは、聴いてみたいけどーォ……てか、三つ目の『ブシ!』って、なにぃ?」と、マザメ先輩。
 「『うちの母ちゃんは、日本一。なんとかなんとかーァ♪』って曲でしょ? コオ島の技師長が、銭湯で歌ってたじゃん」と、これは……ぼく、スピア。言わずもがな、シンプルな親切心♪
 「てか、覚えてるほうが、どうかしてるよッ!」と、サギッチ。まァ、こいつは、そう思って当然だと思う。
 「なァ。ムネさんって言ったっけぇ? あの、陰気なオッサン。この外舎に収容されてる和の人たちって、みんな、引き{籠|こ}もりの子どもや大人たちなのかァ?」と、流れに乗れずに、話題を変えようとするムロー先輩。
 「そういう{訳|わけ}じゃないんだけどさァ。頑固っていうか、要領が悪いっていうか、投げ{遣|や}りっていうか、{諦|あきら}めが悪いっていうか、{兎|と}にも{角|かく}にも、文明の{奴|やつ}らのご機嫌取りを拒絶したか、それとも失敗したか……まァ、どっちゃにしたって、その言葉やなんらかの所作が、文明の奴らの気に{障|さわ}ったってことさ」と、ヨッコ先輩。
 淡々と応えてそう言い終えたヨッコ先輩に、六人の視線が集まる。
 「……で、あのムネさんは、何をして、文明の奴らの気に障ったのさァ!」と、オオカミ先輩。
 こんな質問でもして話を繋げていかないと、お風呂が沸くまで間が持てない。オオカミ先輩が、そんなことは思いつきもしていないだろうことは、当然至極だけど……で、ヨッコ先輩が、応えて言った。

 「ムネさんの{口癖|くちぐせ}……もう、何回聞かされたことだろう。
 スピア君みたいに正確には覚えられてはいないんだけど、こんな感じかなァ♪

 『文明の奴らに何を訊かれたって、ハイとイエスしか思いつかねぇ。アンタとかアンタラーァとかって、俺たちのことを呼びやがるが、俺には、*オマエラニンゲンドモ*としか聞こえねぇ。奴らだって、{危|あや}ういエスノ……同じニンゲンさ。なんで俺たちが、そんな敬するに値しない奴らの言いなりにならなきゃならないんだッ!
 あの夜……。
 いつものように、四〇〇㏄のバイクに{跨|またが}った。
 仲間のバイクが、一台、また一台と、俺の後ろに{連|つら}なってゆく。ただバイク好き、というだけで繋がってただけの関係だったが、好きなことで繋がった仲間ほど結束が固いものは、他にはないのさ。
 それが、あの日の夜……奴らが、待ち受けていた。
 人間狩り……検問。
 みんな、逃げた。
 4サイクルと2サイクルのエンジンが、回転数を上げながら、猛スピードで四方に散った。その途中で、ガードレールに激突したアイツ。取っ掴まって、袋叩きに{遭|あ}った、アイツ……。
 みんな、申し合わせてたみたいに、みんな……死にやがった。俺だけ、仲間外れさ。まだ、生きている。抵抗が、甘っちょろかったから、生け捕りにされて、ここに連れて来られたのさ。戦争じゃーァあるまいし、死んだヤツらを敬するつもりはない。だからと言って、生き残った俺に、罪がないということにはならない。
 孤独との闘いに勝ったら、アイツらが下した罰を、甘んじて受け{容|い}れるさ。そしたら、やっと……やっと、またアイツらに、{逢|あ}える。そうと決まった日にゃーァ……無論! カッ飛んで行くさ。猛スピードでなァ♪』

 ……ってね。
 話をした{訳|わけ}じゃない。会ったことも無ければ、それどころか、気に障る直前まで、お互いに相手の存在すら知らなかった。要はさァ、その*存在*が、奴らの気に障るのさ。
 そこから、一つだけ、言えることがある。
 和のエスノが、これだけ危うことになってるってことは、あたいら自然エスノは、もっと危ういことになってるってことさ。

 ……さて、とーォ!!
 お風呂♪ もう、沸いたんじゃなーぃ??
 さァ!
 あたいと男どもは、庭に出るわよーォ!!
 {乙女子|おとめご}ちゃん二人は、一緒に入って二十分。次に男ども四人まとめて、十分で出てきてちょうだいね。もたもたしてると、午後の日課の邪魔になるし、今日は、あんたたちの紹介の時間も、{割|さ}かなきゃだからね。
 じゃあ、よろしくーぅ♪

 ほら、行くよッ! ほらほら♪ ハイハイ!
 行って行って…… 」

 ……と、牛を追いでもしているかのように、ケツを叩かれ叩かれ、脱衣場から追い出された男ども四人なのであった……。
 
 **{格物|かくぶつ}**

 その……ムロー先輩の、然修録より。

 明治五年。
 こちらも番頭さん、住友の広瀬{宰平|さいへい}氏。奉公先の住友家の家長(当主)住友吉左衛門に大{抜擢|ばってき}されて、住友の別子銅山を、維新の混迷から護った人物です。

 明治五年に、彼が何をしたかというと、〈挨拶〉です。住友本家であった、年賀の挨拶。
 「相変わりまして、おめでとうございます」
 えッ? サイヘイさん! 「相変わりませず」のマツガイ(間違い)じゃないのーォ?? ……と、当時の習わし作法を拝察するに、「なんとも不吉な挨拶だ」と思うのが、当然ではないでしょうか。

 そこを、サイヘイさんは、{斯|こ}う言ったそうです。

 「相変わらないことが、どれほどにおめでたいことです! 世の中が激しく転変する中で、{私|わたくし}たち住友の番頭が、相変わらないものを{以|もっ}ておめでたいという気持ちで、どうして住友百年の計が立ちますか。本当に住友の将来を思うなら、なぜ『相変わってこそ、おめでとうございます」と、言えないのです!」と。

 今は昔……大先輩〈先人・先達〉に、こういう人物がいてこそ、社風という風が、吹くのかなーァ♪
 以上、離島からの『然修録』、第一報です。

 ……と、こんな内容。
 まだ、一年も経ってないのに……。
 ムロー先輩も、変わったねぇ♪
 
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Ver,2,Rev.8

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