MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

後裔記 第1集 No.126

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい。
そのために、働く! 読む! 書く!
人生は、今とここのみ。
{生業|なりわい}は、{莫|まく}妄想、意識、要領。
嗚呼、嗚呼、嗚呼……阿呆寅、
まだ、五つ♪(×12年駆動)
南内 彬男
なんだい! あきお
文筆{性懲|しょうこ}りもなく35年 (/▽\)
家父長{懺悔|ざんげ}の30年 m( _ _ )m
酪農修行ぼんくらの3ヶ月 ( ̄。。 ̄)
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_/ 1 /_/ 『亜種記』 *電子書籍
息恒循を学ぶ子どもたちの闘戦の旅
_/ 2 /_/ 「後裔記」 *メールマガジン
亜種記を構成する諸書(実学紀行)
_/ 3 /_/ 「然修録」 *メールマガジン
亜種記を構成する諸書(座学日誌)
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_/ 2 /_/ 後裔記 第1集の子どもたち
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名
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※電子書籍編集のための記号を含みます。
  お見苦しい点、ご容赦ください。

#### オオカミの実学紀行「{棄|す}てられた子供達と{葬|ほう}り去られた大人達」{後裔記|126} ####

 ● 物静かだが頑固で……だが、己を知る和の人
 ● 百本の{和蝋燭|わろうそく}……その炎が語る、葬り去られしもの
 学徒学年 オオカミ 齢13

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。

 ◆◇◆
 物静かだが頑固で……だが、己を知る和の人

 ザペングール島の子どもたちの真剣な{眼差|まなざ}しが、
おれの脳裏に浮かび上がってきた。彼ら彼女たちは、要領の{会得|えとく}という明確な目的を持って、〈オッサン追ん出しゲーム〉の修練に余念がなかった。
 今、{何故|なぜ}、そんな情景が、{甦|よみがえ}ってきたのだろう。それは、やはり今回も、ゲーム盤だった。ムネさんが、淡々と指すゲーム盤……大将棋。怪し幼女や挙動不審な少年が、現れた。でも、おれの脳ミソは、ムネさんが{嵩|こう}じつつある大将棋以外のすべての登場人物を、〈現れた〉という一つのコトバ記憶に結びつけ、そのまま記憶の倉庫の中に、{放|ほ}ったくってしまった。
 そしてやっと、ほかのみんなも、ムネさんに注意を向けはじめた……と、ふとそう思ったそのときだった。矢庭に、脳ミソを介さない命の言葉が、物静かな居間に鳴り響いた。その内容は、正に失礼{千万|せんばん}!

 「死語のベストスリーは、初夏、夕立、夕{涼|すず}みだな。ねぇ。オッチャン、ムネさんって呼ばれてたでしょ? おれらも、ムネさんって呼んでいいよねぇ?
 てかさァ……。
 {歩|ふ}! なんだけどさァ。
 そうそう。そいつ、そいつ。ですです。
 歩ってさァ、大陸の国の歩兵みたいにさァ、取り留めも無く湧いて出てきてさァ、バシバシみんな死んじゃうじゃん! {限|きり}がないっていうか、{埒|らち}が明かないっていうか、時間の無駄だって思わない? ただ、勝負を長引かせるだけってこと。{解|わか}るよねぇ?
 だから、歩の皆々に告ぐ!
 『おまえらみんな、{罷免|ひめん}だッ! {合戦|かっせん}場から速やかに退去し、{兵糧|ひょうろう}づくりに励め!』
 ……ってね。
 合戦場っていうのは、ゲーム盤のこと。ゲーム台かな。まァ、どっちゃーでもいいやァ。
 ねぇ、聞いてるぅ?
 ……ってかさァ。
 聞こえてるーぅ?!」
 
 ……と、ヒト種の動物、子サギッチが、{啼|な}いた。
 その間、ムネさんは、無言で優しさに満ちた愛想笑いをしながらも、視線は、盤に釘づけになったままだった。玄関を入ってすぐの土間から{外|がい}の間……居間を見て左手の奥に、床の間がある。ムネさんは、その前に涼し{気|げ}な{藺草|イグサ}の座布団を敷いて、生意気で非礼な他亜種のクソガキの啼き声を聞きながら、{微|かす}かに視界に映りこむその少年の所作を観察しながら、{何某|なにがし}か{愉|たの}しんでいるかのようにも見えるのだった。
 ……すると、あいつが、口を挟んだッ!
 面倒臭い展開がはじまる予感……。
 「ねぇ。なんで{生駒|なまごま}でしか動かさないのォ?」と、スピア。
 意外! ムネさんが、直ぐに応えて言った。

 「己……自分自身が成れない、わしのような*うつけもん*が、どうして{成駒|なりこま}を操れようか。しかも、盤の上は、戦場だ。サギッチ君……で、よかったかなァ? 君が言ったように、歩は、大陸の戦乱で、バッサバッサと戦死する歩兵が{如|ごと}く、掃いては{棄|す}てられ、また掃いては棄てられる。でも、そんな歩が、わしは、好きでな。
 その点、正直、君らは、好かん!
 {不成者|ならずもの}だからだ。成れるのに、成らん! 亜種、自然エスノとして生きることを立命としながらも、{然|しか}し{乍|なが}ら、ここで自修の初等を修めることも運命の一つと心得て{居|お}るなら、それはそれで、まだ可愛いところがあるというもんだが、実際の君らには、その{欠片|かけら}もない。
 君ら亜種は、決して、そのような遠回りの道を、歩もうとはせん。出会って早々に、こんな決めつけられ方をすると、不愉快というより、拒絶で思考が麻痺して、頭が働かんじゃろーォ?! じゃが、結果というものは、突き詰めて考えてみれば、{俄|にわ}かに透け透けに見えてくるものなのよ。
 まァ……自然の連中にも、例外で、わしらの亜種に近い思考に進化しはじめた一族も、居るようじゃが……なァ! スピア君♪
 これ以上の委細を、語るつもりはない。{故|ゆえ}に、訊くも無駄というものだ」

 ムネさんは、そう言うなり、安堵したような横顔を見せながら、再び大将棋に嵩じはじめた。すると、なんとーォ!! それでもまだ{猶|なお}訊く馬鹿もんが{居|おった。
 「ねぇ。ムネさんってさァ。楽しいなっとか、嬉しいなって思うこと、ないのォ?」と、ツボネエ。
 これに、またまたムネさん、即座に応えて、{斯|こ}う言った。
 「目も{眩|くら}むような、でっかいでウンコが、出たときだァ!
 サギッチ君、どうぞーォ♪」

 「わッ、けッ! つ……が、わかんねーぇ!?」と、サギッチ。
 「なんもかんも、有り得んしぃ!」……と、これは、マザメ先輩(アセアセ)。

 ◆◇◆
 百本の和蝋燭……その炎が語る、葬り去られしもの

 もう一人、無言のオッサンが居る。
 気になるが、ムネさんのように、気安く声をかけられるような雰囲気ではない。ムネさんを、中年男と仮定するならば、その男は、初老の爺さんといったところだ。その{年格好|としかっこう}から拝察するに、実に面倒臭そうだ。おれの悪い予感は、外れたことはない。自慢じゃないが……(ポリポリ)。
 その初老の爺さん(……名前、長いなッ! ショロジイって呼ぼう♪)が、{遂|つい}に、口を開いた。
 「電脳に毒された、文明エスノの廃残兵ども……{夥|おびただ}しく、{喋|しゃべ}りまくる」
 ショロジイは、終始無言で、床の間の奥隣りにある仏壇に、和蝋燭を{灯|とも}していた。「灯していた」というのは、変な言い方だ。普通に灯すだけなら、直ぐに終わってしまうからだ。だが、その蝋燭は、{優|ゆう}に百本を超えていた。しかも、その一本一本が、{漁|いさ}り火よろしく、実に大きな炎を、ゆらゆらと左右に揺らめかせていたのだった。
 その炎は、神秘的で、怖ろしくもあるのに、{何故|なぜ}か心が落ち着き、情緒さえ感じさせる。それは、油煙も上げず個々に孤独に灯るその炎から漂ってくるもの……ロウが溶けるときに空気に溶け込む、ほんのりとした、なんとも言えない香りが、おれの{朽|く}ちかけの脳ミソを、優しく{撫|な}で撫でしてくれていたからだと思う。
 すべての和蝋燭を灯し終えたショロジイが、そのままその場に腰を下ろして、胡坐をかいた。そして、語りはじめた。

 「あらゆるもの、様々な常識、{夥|おびただ}しい数の有形無形のすべてのものが、人の数だけある。
 無縁なら、誰でも彼でも{騙|だま}そうとする、顔だけ*やおい*{奴|やつ}ら。
 誰からも騙されまいとして、心をカチカチに氷結させた、顔だけやおい奴ら。
 悪意に満ち満ちて、子どもたちに古典を読ませまいとする、顔だけやおい奴ら。
 消え去る、明文の数々。
 退化が止まらい、人間力。
 大人たちは朽ち、摩天楼は{瓦礫|がれき}と化し、壊れ過ぎた国家は、遺跡寸前だッ! 誰にともなく祈りを捧げ続ける、ボロ雑巾のように道端に捨てられ、日々、毎日毎日、周りのすべての人間から踏みにじられながら、それでも生きなければならない、死ぬことさえ教えてもらえない、子どもたち……俺が、それだ!

 我が人生、大罪の道。
 我が人生、懺悔のてんこ盛り。
 だが、俺を不幸にした奴も、俺に不幸にさせられた人びとも、すべて一人残らず、過去に葬り去られた。もう二度と、彼らと交わることは、叶わない。もう、あのころには、戻れない。どれだけの人を不幸にしたのか……もうそれさえも、数えきれない。
 学ばぬうちに、何も解らぬうちに、大人を名乗り、家夫長となり、親となった。{故|ゆえ}に、何もできず、結果、何もせず、それでもまだ{猶|なお}、何も考えず、知らず知らずにかまけて見て見ぬふりを恥とも思わず、{唯々|ただただ}、時間を過去に送り続けてきた。時間……{即|すなわ}ち、命という巨大なゴミの山を、過去に築き上げてしまったという{訳|わけ}だ。
 そうさ。
 誰だって、一旦、{産|うま}れるには産れるさ。だが、{殆|ほとん}どの奴らが、大人になれないまま、人としての生涯を終える。でも、人ではない肉体は、まだ生きている。だから、供養してるのさ。俺自身を……自らなッ!
 死ぬこともできす、思い悩むだけで、何もできない。だのに、身勝手に、生まれ変わろうとしてやがる。だから、そんな己の肉体を{憾|うら}みながら、死んでいった俺自身……俺の心を、{供養|くよう}……そう、{弔|とむら}ってやってるのさァ」

 聴いて欲しいと頼まれた訳じゃないので、誰一人として、{言乃葉|ことのは}を返そうとはしなかった。そもそも、返そうと思っても、それは土台、無理な相談なのだ。語っているショロジイの己自身は、もうこの世には存在しないのだから……。
 
 **{格物|かくぶつ}**

 懺悔……かァ。
 知らず知らず、その懺悔に値するような行為行動をしたり、逆に、{為|な}すべきときに、要領は別としても、意識さえどこかへ飛ばしてしまい、終始、何もしなかったり……。

 大事なのは、今……子どものうちなのだ。
 大人になってからじゃ、もう、遅い! 
 
_/_/_/ ご案内 【東亜学纂学級文庫】
Ver,2,Rev.9

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