MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

後裔記 第1集 No.127

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい。
そのために、働く! 読む! 書く!
人生は、今とここのみ。
{生業|なりわい}は、{莫|まく}妄想、意識、要領。
嗚呼、嗚呼、嗚呼……阿呆寅、
まだ、五つ♪(×12年駆動)。
南内 彬男
なんだい! あきお
文筆{性懲|しょうこ}りもなく35年 (/▽\)
家父長{懺悔|ざんげ}の30年 m( _ _ )m
酪農修行ぼんくらの3ヶ月 ( ̄。。 ̄)
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_/ 1 /_/ 『亜種記』 *電子書籍
息恒循を学ぶ子どもたちの闘戦の旅
_/ 2 /_/ 「後裔記」 *メールマガジン
亜種記を構成する諸書(実学紀行)
_/ 3 /_/ 「然修録」 *メールマガジン
亜種記を構成する諸書(座学日誌)
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_/ 2 /_/ 後裔記 第1集の子どもたち
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名
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※電子書籍編集のための記号を含みます。
  お見苦しい点、ご容赦ください。

#### オオカミの実学紀行「怒りの深層! 職場を追われた和の人達」{後裔記|127} ####

 ● おもろいショロジイが語る、怒りの深層と逆襲の鍵
 学人学年 **ムロー** 齢17

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。

 ◆◇◆
 おもろいショロジイが語る、怒りの深層と逆襲の鍵

 (この外舎を管理……否、管理だの運営だの、そんなことは、どうでもいい。誰が、軟禁された和の人たちを、監視しているかだ。それらしき姿が無いということは、あの大将棋を{指|さ}してるオッサンかもしれないし、和{蝋燭|ろうそく}を{灯|とも}して{懺悔|ざんげ}{三昧|ざんまい}中のショロジイなのかもしれない。
 {何|いず}れにしても、ここで出{遭|あ}う人に対しては、好ましい印象を、与えなければ……だな。{然|しか}も、{況|いわん}や! {然|さ}もなくば、ワタテツ同様、危うし……{或|ある}いは、お{陀仏|だぶつ}だァ!)
 ……妄想、以上。

 {莫|まく}妄想!
 意識!

 そう、{閑話休題|そんなことより}、ショロジイが、面白い♪
 面白いことを言う{訳|わけ}でもなく、面白いことをする訳でもない。でもl、なんかこう、{肉が焼ける音|シズル}が、食欲や購買意欲をそそるように、どうにもこうにも、興味をそそられてしまうのだ。
 ツボネエが、そのショロジイに向かって、言った。
 「ねぇ……てかさァ。仕事、行かなくていいのォ? 大人は、働かなきゃダメなんでしょ? 蝋燭のおっちゃんは、もうお爺ちゃんなん?」
 「その問いは、お粗末{節|ブシ}だなッ♪」と、オオカミ君。
 「それ、どんな歌?」と、マザメ嬢。
 「知らん!」と、オオカミ君。
 「じゃあ、黙ってなッ!」と、マザメ嬢。
 「はい」と、オオカミ君。
 「将棋のオッチャンも、{蝋燭|ろうそく}の{初老|ショロウ}に見える爺ちゃんも、どっかで働いてたんでしょ? ここに軟禁されるまでは……」と、スピア君。
 「おまえが口を挟むと、ややこしくなんだろッ! 助け{舟|ぶね}のつもりなら、まァ有難いことだけど、おまえの場合は、頼まれてからにしてくれ!」と、オオカミ君。
 ここで、初老の爺さん……略してショロジイ♪ 俺たちのほうに向き直り、{立腰|りつよう}の構えで正座した。ゆっくりとした所作だったが、イライラするどころか、{何故|なぜ}か緊張を覚えて、背筋に冷たいものが走った。
 ……そして、ゆっくりとした口調で、語りはじめた。

 「依頼を受けてから動くのは、仕事とは言えません。例えば、大型船の入港。大型船は、港に入って微速になると、{舵利|かじき}きが悪くなるんです。しかも、風の影響を、受け{易|やす}い。だから、二千馬力から三千馬力もあるタグボートが、システムからの指示で、急行するんです。
 そうです。君たちが嫌いな、文明の{力|りき}! 電脳{組織|システム}からの指示で、生身の人間たちが、動くのです」

 「おれは、力の無い船長だけどーぉ……」と、オオカミ君。力なく……まァ、どうでもいいことに対する、余計なお世話だなッ!
 「生身の脳は、無能だってことォ?」と、ツボネエ嬢。
 助け舟……無し。
 「港で働いてたんですかァ?」と、サギッチ君。
 「{日|ひ}の{本|もと}の特定重要港湾と呼ばれる大きな港で、IGSという仕事をしていた者です」と、ショロジイ。律儀に、大人に{応|こた}えるように、答えてくれた。
 「そうでしたかァ……」と、オオカミ君。どことなく、大人びた声。
 「そうでしたって、どうでしたのォ? ねぇ!」と、ツボネエ嬢。オオカミ君を、{睨|にら}みつけるようなその眼差し……{怖|こわ}ーァ!!
 オオカミ君、ショロジイの目を直視し、助け舟の出動を、切望する。ショロジイ、{促|うな}がされて、またまた律儀に応えて語りだす。

 「どんな船であれ、航海の結果がどうであれ、船長を任じられた人は、決して無能ではありません。しかも、君のような若さで、しかも、海の知識も船の知識も皆無の{乗組員|クルー}たちを従えての航海の末の漂流だったそうですね。充分過ぎるくらいに、立派な船長だと思います。
 よくぞ、〈ユニフォーム、タック、ウイスキー〉の旗流信号に応える航海を{為|な}し{遂|と}げられたものです。敬服致します」

 オオカミ船長、「ロメオ{一流|いちりゅう}♪」と言って、答礼する。まったく、意味不明の世界だ。
 (まァ……それだけ、一応は、それなりの航海術を、真面目に学んだということかァ。その点、俺より、よっぽどマシかもしれんなァ!)と、密かに思う俺。
 「ねぇ。話……まだ、途中なんだよねぇ?」と、スピア。ショロジイに、罪で無邪気な顔を、向けている。
 律儀なショロジイ、律儀に応えて、再び語る。

 「アイ・ジー・エスというのは、インテグレッド・ゲート・システムの略です。CTMS……コンテナ・ターミナル・マネジメント・システムが導入されている港で、働いていました。
 高校を出ると直ぐに、{艀|はしけ}を運搬する会社に入りました。暫くして、転職。今度は、{筏|いかだ}を運搬する会社です。艀運送は、コンテナ船の出現で、消滅しました。今ではどこの港も、岸壁に直接船を接岸して、荷役を行っています。
 筏輸送も、消滅しました。発展途上国が、原木の輸出を、禁止してしまったんです。今では、ティンバーとかランバーとか呼ばれる板になった製材を、主に輸入しています。
 そんな{訳|わけ}で、高校や大学を出て直ぐに港で働き{始|はじ}めた仲間たちの多くは、職を失い、港から去り、次の港へ。そこでまた、職を失い、他の港へ……。そんなに大量に働き手を失ったら、会社のほうが困るんじゃないかって、当時は思ったものです。でもね、じぇんじぇん、大丈夫やったんです。
 人間て、思い考え行動する生きもの……やろッ? そやんなァ♪ 少なくともぼくら和のエスノの人間たちは、そうあるべきやて{思|おも}てるし、そう信じてる。実際問題、その通りやろッ? それが、文明の{奴|やつ}らは、エゲツナイことばっかしよんねん。〈考え〉を模したコンピューターを開発し、〈行動〉を模したロボットを、大量生産しよってん。それで、生身の働き手が、{要|い}らんようになってしもたァ!
 例えば、トランスファー・クレーンが、そうやァ。21台あれば、二十一人の生身のオペレーターが、クレーンのトップの高所で、操作の仕事をしとった。それが、今じゃどうやァ! オペレーション室で、四人が働いとるだけやァ。巨大なクレーンには、生身の人間は、誰一人乗ってへん。
 まったく、{憎|にく}そい奴らやァ!
 ……これで、話の続きは、終わりです」

 「変調っていうんだよねぇ?」と、小声で{訊|き}いてくるツボネエ嬢。(だなァ!)と、目で答える俺。
 「そんな{凄|すご}いもの、開発したり造ったり出来るんだから、ニセモノ電脳野郎なんかより生身の脳ミソのほうが、断然優秀なんじゃないのォ? なんで自分たちの職を奪って貧乏人を増やすようなバカなこと、するわけーぇ??」と、マザメ嬢。
 ムロー学級の男ども、総員、ショロジイの顔を、直視する。これは、「話の続きの終わり」に異議を申し立て、話の続きの再開を、各自が{直訴|じきそ}している*風景*である。
 ……で、ショロジイが、応えて言う。
 ショロジイの律儀に、感謝♪

 「そうですね。マレーシアっていう国があります。世界最大のコンテナ船を、持っています。開通して百五十年を超えるスエズ運河の航行には支障ありませんが、それより半世紀遅れて開通したパナマ運河では、その積載量に制約を受けてしまいます。それだけ、そのコンテナ船が、巨大だってことです。
 その、バカみたいに大きなコンテナ船を建造したのが、わたしたちの国、*日の本*なんです。
 大きさだけに特化して優れている訳じゃありません。例えば、港湾の仕事。多様で、しかも、複雑です。それは、港の仕事に限ったことではありません。皆さんの生活に直結していないというだけで、この世のどこもかしこも、多様で複雑な事象や仕組みが、{絡|から}み合っているんです。
 それを、一本一本、地道に{解|ほど}いていくことが、本来、生身の人間がやるべきことなんだと思います。
 それが、仕事というものなんじゃないでしょうか。
 答えになっていませんね。
 失礼しました……(ポリポリ)」

 ショロジイは、そう言い終わると、また和蝋燭のほうに向き直って、立腰の正座を{胡坐|あぐら}に{替|か}えて、一本一本、和蝋燭の{燈火|ともしび}に、視線を移してゆくのだった。

 **{格物|かくぶつ}**

 ワタテツは、{美童|ミワラ}の縮図だ。
 我らは、相変わって、おめでたくならねばならぬ。
 {即|すなわ}ち、社交性!

 お世辞の一つも言えない我らを、恥! とは思わぬが、今のままでは、世渡りは出来ぬ。しかも、我らが{居|お}る*その*世とは、既に、文明エスノの陣地内なのだ。
 今、必要な武器は、{槍|やり}でも鉄砲でもない。敵の奴らの気分を良くさせてやるための、話術や{仕種|しぐさ}……。
 即ち、〈暗示〉だッ!
 
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Ver,2,Rev.9

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