MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

後裔記 第1集 No.129

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_/ 2 /_/ 後裔記 第1集の子どもたち
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名
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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい……
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_/ 1 /_/ 『亜種記』 電子書籍
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_/ 2 /_/ 「後裔記」 メールマガジン
亜種記の諸書、子どもたちの実学紀行
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※電子書籍編集のための記号を含みます。
  お見苦しい点、ご容赦ください。

#### マザメの実学紀行「ムロー学級の危うい結束と余裕のヨッコ先輩」{後裔記|129} ####

 ● 出立、四散、整列、行相……共同体感覚と、秘められた矢!
 ● 運命の分かれ道。頼るはムロー先輩の*直観*か、{将又|はたまた}ツボネエの*直感*かァ!
 学徒学年 **マザメ** 齢12

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。

 ◆◇◆
 出立、四散、整列、行相……共同体感覚と、秘められた矢!

 (歩学かどうかは疑わしいけど、あたいらって、{兎|と}に{角|かく}よく歩くよねッ! ……って、おっと! {莫|まく}妄想……ん? てか、その必要有り? ただ歩いてるだけじゃん♪)
 ……などと、あたいを含めてムロー学級総員八名、現在員七名、みんな好き勝手に妄想しながら歩いていたんだと思う。
 整列登校……元い。バラバラ歩行の班長は、ヨッコ先輩。副班長は、ムロー先輩。スピアの然修録じゃないけど、行相なんて上等な*歩き方*をしてる{奴|やつ}なんて、一人も{居|い}やしない!
 あたいらムロー学級は、アドラー先生の共同体感覚ではなく、{寧|むし}ろ同志でなければ、次の大動乱で生き残れない……{云々|うんぬん}って、誰かが書いてたよねぇ? 寧ろも寧ろ、あたいは、アドラー先生の目的心理学を学んで、共同体感覚を、ちゃんと会得するべきだと思う。

 みんな、自由自在の意味を、取り違えている。然修録の差し当たっての主題は、〈自由自在〉と〈目的心理学〉ってことで、よろしくーぅ♪

 えッ? そりゃーまァさーァ……あたいだって、「腹へったわァ! あたい、森で寝るわァ。よろしくーぅ!!」みたいなことを言ったさ。でも、今はちゃんと、ヨッコ班長の真後ろに着いて、スピアの奴が然修録に書いてた行相ってやつを、実践してる。あたい的には、{立腰|りつよう}より行相のほうが、{好|よ}いかもーォ♪
 だってさァ。立腰って、お尻を突き出すんでしょ? イヤに決まってるじゃん!

 それに引き替え、オオカミの野郎なんて、{酷|ひど}いもんさ。「保安ってさァ、笑っちゃうよな。だってさァ、この世に存在しないんだから。おれたちに必要なのは、保安でも平和でもない。自警だッ! おれも、ここを出る」……なんて、偉そうなことを言っといてさァ。歩き出した途端に、「ゆっくり、ゆっくり、おとな旅……。よし♪」だってさァ。{呆|あき}れて、{斯|こ}う言ってやったんだ。
 「前から思ってたんだけどさァ。あんた、時折、相当なバカだよねッ!」
 元気なら、速攻で噛みついてくるところなんだけど、今日は、散々歩かされて、昼飯抜きで、風呂だけ入って、また散々歩かされてる。(まァ、反応無し! だろうなァ……)と、思った矢先、オオカミの野郎が、意外にも速攻で応えて、{斯|こ}う言った。

 「おれは、船長だァ!
 バカになる以外に、どうやっておまえらみたいな問題児六人を{纏|まと}め上げろって言うのさ。
 先ず、その問題児の筆頭は、マザメ! おまえだ。
 『森で寝る』だってぇ?
 スピアも、{腑|ふ}抜けやがってぇ。
 『昼ご飯、食べてないかもーォ?!』ってかァ?
 ムロー先輩だって……。
 『直ぐに、この島を出るぞッ!』ってさァ。確かに、ご立派♪
 でもさあァ、どうやってぇ? ……で、結局、『なァ。少し、散歩でもしようじゃないかァ』ってかァ? *行動して失敗してから考える*っていういつものムロー先輩の行動{類型|パターン}は、何一つ変わってないじゃん!
 変われてないと言えば、サギッチも、相変わらずだな。
 『極右勢力の筆頭、{鷺|さぎ}助屋一族の後裔だーァ』だってぇ? 偉いのは、てめぇのご先祖さまで、後裔のガキどもじゃないっつうのよッ!
 ……で、ツボネエ。
 『墓場だよねーぇ♪』ってかァ? 確かにおれは、「精気のない和の変種に加えて幽霊まで出てこられたら、たまんねーぇ」みたいなことを言ったけんど、ツボネエちゃんも、立派に自然エスノの変種だろがァ!
 それに、今は、どんな{時|とき}さァ。息恒循の{伝霊|でんれい}を、考えてみろよッ! まだ{烈徒|れっと}だ。午前7時から午後6時。そろそろ、次の{考推|こうすい}の時間だけど、まだ空は明るい。
 確かに、そろそろ敵が、一日の緊張を緩める時間ではある。でも、おれたちの脱走の発覚を明日に引き延ばすには、まだ時間が早過ぎる。なんで、誰もその心配をしないんだッ!」

 ……で、あたい。斯う言ってやった。
 「信じることが、共同体感覚じゃんかさァ! あたい、ヨッコ先輩を、信じる。だから今は、行相の修行。他に何か{術|すべ}があるなら、言ってごらんなさいよォ! ほらーァ♪ そらそらーァ♪」

 背後から、サギッチが、近づいて来る。そして、言った。
 「おれ、史料室に行きたかったんだけどなァ」
 「なんでさァ! まったく、{戯|たわ}けがァ!」と、あたい。
 すると、スピアも寄って来た。そして、言った。
 「図書館だろッ? この島の郷土史。……だろォ?」
 「まァ、な」と、サギッチ。
 「戯けるべきときがあるから、戯けるっていう{言乃葉|ことのは}があるんでしょ?」と、ツボネエちゃん。
 (戯けるって言葉が、なんで*言乃葉*やねん!)と、思ったあたい。まァ、それはそれ……(やれやれ)。
 最後尾を歩いていたムロー副班長が、いつの間にか列を詰めて、直ぐ後ろを歩いていた。そして、言った。
 「矢は一つ。その一本で敵将を射抜けなければ、我が軍は全滅する。頭を柔らかくしなければ、良計は浮かんではこんだろう」
 「策も出なけりゃ、冗談も出ねぇやァ!」と、オオカミの野郎。
 ツボネエちゃんが、ヨッコ先輩を追い抜いて{行|ゆ}く。

 「矢……かァ」と、それまで先頭を歩いていた班長のヨッコ先輩が、独り{言|ご}ちた。

 ◆◇◆
 運命の分かれ道。頼るはムロー先輩の*直観*か、将又ツボネエの*直感*かァ!

 ツボネエちゃんが、叫んだ。
 「ねぇ! 分かれ道だよ」
 その一瞬、ヨッコ班長の肩が、揺れた。
 あたいら七人は、浦の海岸沿いを歩いていた。ちょうど、谷川が浜辺に注ぐあたりまで来たところだった。一本は、その谷川に沿った上り坂。もう一本は、半島の切り立った先端を越える峠道。
 「どっちに行けばいいんだーァ?!」と、サギッチ。
 「ムロー先輩の先見に欠くる〈観る〉と書くほうの直観に頼るべきか、将又、ツボネエちゃんの危うい〈感じる〉と書くほうの直感に{賭|か}けるべきか、それが問題……ではなく、そのどちらも選ぶに値しないっていうところが、問題だねぇ♪」と、相変わらず{蘊蓄|うんちく}がメンドッチ・スコベッチのスピア。
 「ここは、{二手|ふたて}に分かれるかァ。ムロー{斥候|せっこう}班と、ツボネエ斥候班……みたいなァ♪」と、オオカミの野郎。
 まさかとは思ったけど、実際……次の瞬間、そうなった。

 あたいとヨッコ先輩が、最後に残された。ヨッコ先輩は、あたいの後ろに居るはず。あたいが振り返ると、ヨッコ先輩は、ニコニコと{微笑|ほほえ}んでいた。そして、言った。
 「どっちでも、あんたの好きな道で行きなーァ♪ あっちの坂道と、こっちの峠道は、峠の頂のちょっと手前で、合流してるんだ。この辺は、電波事情も悪いし、店もなんにも無い。文明エスノの奴らが、一番嫌う寒村……過疎地さ。
 安全ってことだよォ♪
 だから、心配{要|い}らないから、早くお{行|ゆ}きぃ」

 **{格物|かくぶつ}**

 〈信念〉って言葉にも、信じるっていう漢字が入ってるじゃん。
 やっぱり、信じるって、大事なんだよ。
 敵……文明の奴らの言うことを{一々|いちいち}信じてたら、あたいら{民族|エスノ}は、簡単に{亡|ほろ}ぼされッちゃう。
 でも、〈武〉の字が{如|ごと}く、心を尽くして敵の{戈|ほこ}を{止|とど}めさせることを欲するならば、一度は敵……相手の言うことを信じて、相手の良心を探る努力の一つや二つは、必要なんじゃないのかなァ。
 ワタテツ先輩やサギッチからは、「甘い!」って言われるだろうけど、武の心を重んじる座森屋の血を受け継いだスピアなら、解かってくれると思う。
 備え持った戦術は、多いに越したことはない。戦術が単一だと、戦略にならない。だから、いろんな奴が居て……それで、{好|い}いのだ。
 但し、「オオカミの野郎だけは、例外である」ことを、ここに宣言しておく……(マジマジ♪)
 
_/_/_/ ご案内 【東亜学纂学級文庫】
Ver,2,Rev.11

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