MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

然修録 第1集 No.131

#### マザメの{然修録|131}【1】座学「心の目覚め」【2】息恒循〈伝承〉言葉記憶 ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 学徒学年 マザメ 少循令{悪狼|あくろう}

【1】座学
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心の目覚め

 曲も本も、時代に合っていないと、買ってもらえない。
 誰にも、聴いてもらえない……。
 誰にも、読んでもらえない……。
 では、精神論は、どうか。
 哲学は?
 心理学は?
 人は、{流行|はや}り{廃|すた}れに左右されることを嫌う。
 {何故|なぜ}か。
 それが、現実。それが、自分だからだ。

 **下位者を{上手|うま}く指導してやれない**

 下位者が、思うように動いてくれないと、ついつい{罵|ののし}って、知らず知らず攻撃してしまっていることがある。相手は、人格否定をされて、やる気を{削|そ}がれてしまう。こういうのを、「勇気くじき」と言うそうだ。
 やらなきゃならないのは、その逆だ。**勇気づけ**。そんなことは、解っている。解っているのに上手くいかないから、焦る。焦るから、安易に相手を{褒|ほ}めて、ご機嫌をとる。褒められた相手は、自分を誤解してしまう。誤解して行動してしまうから、結果それは、相手を変な方向に操作することになってしまう。
 「こらッ!」も、「やめろッ!」も、「晩ごはん、抜きにするぞォ!」も、褒めたり持ち上げたりするのと同様、意に反する所作を強要する{訳|わけ}だから、これらみな、相手を操作してその場を{凌|しの}ぐという{姑息|こそく}な手段に他ならない。

 周りから持ち上げられて、誤解して上機嫌になった連中が群れると、縦の関係が、強化構築されてゆく。逆に、「愛のムチ」というものがある。これも、大概は、自己満足で終わる。例外があるとすれば、上位者も下位者も共通の目的や課題を持ち、強い信頼関係が構築されている場合だけれども、もしそんな関係が築けているのなら、愛だかなんだか知らないけど、*ムチ*なんてものは、{要|い}らないと思う。

 〈先輩〉とか〈後輩〉とか、上下関係を示した言葉は、欧米では、ほとんど無いそうだ。逆に我が国……{日|ひ}の{本|もと}には、メッチャいっぱいある。上下関係の呼び方だけでも、『呼び名辞典』みたいな、一冊の本ができるほどだ。
 アドラー先生は、「あらゆる関係は、対等でなければならない」と、言っている。欧米では、この考え方が基本になっているので、上下関係に{拘|こだわ}った呼び名を、あれやこれやと考える必要が無かったんじゃないかと思う。

 では、平等な関係の相手に注意をする必要があるときは、どう対処すればいいのか。相手を操作するような言動を{慎|つつし}み、相手のやる気を削がないような前処理……*動機づけ*をした上で、助言を与える。
 {漠然|ばくぜん}としているので、目的心理学の本を読むと、{斯|こ}う説かれていた。

 一に、肯定。
 良いところ、上手くいっているところを、素直に認めて伝える。「君ならできそうだ」とか、「正直、期待してるから」とか、相手の良いところや好感がもてた理由を、ハッキリと言う。
 二に、助言。
 「でも、そのやり方は、ダメだ」と、注意したいところだけを、正確に指摘し、「ダメだ」と、ハッキリと伝える。相手が、「どうすればいいんですかァ?」と、素直に興味をもって相談を持ち掛けてきたら、そこで対話だ。
 但し、*解決方法だけ*に主題を{絞|しぼ}ること。ここで、普段の行動や考え方にまで、問題指摘の範囲を広げてはいけない。また、問題の原因を分析したり追求することも、ダメだ。
 三に、再び肯定。
 ここで、油断して褒めてはいけない。上から目線で言っているように見られてしまうからだ。ここは、相手の成果によって自分や仲間が助かったことや、問題なく事が進んだりしたことに対して、素直にお礼を言うだけでよい。
 「解り{易|やす}い資料で、助かったよ」とか、「あそこまで気がついてくれて、みんな『助かった』って言ってるよ」とか、「君に頼めば、安心できる。次も、頼むよ」……みたいな。

 「助かった」って言われると、組織や社会に対して何か具体的に貢献できたような実感が湧いてきて、嬉しいし、勇気も湧いて来るというものだ。
 ……と、理屈の上じゃあ、解るんだけれども、現実となるとね。これが実に、難しい。
 「てめぇ! 頭打っとんかい! おまえの頭は、生ゴミかーァ!!」みたいなことを、ついつい言ってしまう。しかも、限定解除! 下位者に限らず、同位者や上位者に対しても、分け隔てなく……(ポリポリ)

 **学ばなければ、目覚めない**

 {吾々|われわれ}……三つの亜種すべての人びとに共通して悪いところは、肉体ではなく、精神にある。それを起因として、不健康となり、早く老い、早く死ぬ。精神のどこが、悪いのか。それは、感激性が薄れ冷めてしまうことだ。あらゆる物事……身の周りの俗務という{猥雑|わいざつ}な日常以外に、何も感じなくなってしまう。
 願望への一途にも、自己の向上や修得にも、感激の情が、湧いてこない。感激が無いから、どんな状態が*無心無欲*なのかさえ、判らない。これではもう、ヒト種の亜種ですらない。
 変種だッ!

 あたいは、起きていても、眠っているような気分になることがある。そんなときは、本当に眠る。人間は、学んでいないと、どうでもいいことに延々といつまでも迷ったり悩んだり……ぼんやりとして、全く眠っているのと同然になってしまう。
 まるで、時間が止まったようだ。でも実際、時間は、止まってはくれない。起きていて自分だけが、時間が止まってしまうのなら、本当に眠って時間の経過を潜在意識に{委|ゆだ}ねるほうが、よっぽどマシだ。
 そして、目覚めて学べば、心の中に星が輝き、パッと明るくなり、心の中も外も、{冴|さ}え{亘|わた}る。それは、目覚めたから学んだのではない。心が何かを学んだから、目覚めたのだ。だから、学ばなければ……一生、目覚めることはない。

 では、どうすれば心が学んでくれるのか。それが、自反。自ら、{反|かえ}る。素直な気持ちで、己を{省|かえり}みる。心が反省をするから、ここに感激性が生じ、*格物*と相成る。
 物……{即|すなわ}ち、己。格……即ち、{格|ただ}す。
 己を、正す……そこで初めて、自分を変えることができるのだ。

【2】息恒循
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〈伝承〉言葉記憶

 心の伝承……それが、日本人流の{言葉|ことば}記憶の元祖だ。儒学を核として、東亜の哲学を、教育の**型**としてきた。{幼子|おさなご}が、『四書五経』などを{諳|そら}んじる光景も、珍しくはない。

 だが、懸念する光景もある。「これを読めば、こんな良いことがある」といった、何らかの確固とした裏づけがなければ、それについて興味を示さないという風潮だ。確かに、間違いではない。

 ただ、根拠があるからと言って、学問から目を{逸|そ}らし、脳の機能を向上させる西洋的な{遣|や}り方にばかり興味を示すのは、{如何|いかが}なものだろう。
 確かに、脳の機能を改善させてくれるものとして、{身体|からだ}に{好|よ}いとされているものがある。カフェインは、脳の機能改善以外にも、腎臓の改善にも効くと言われているし、ハーブティーやアホエンなどというものも、脳の血流が上がることから、脳が活性化すると言われている。
 確かに、それらは、{良|い}いことだろう。

 {然|しかし}しながら、同じ脳科学の観点から考えるのであれば、正に確固たる実績のある人間学の修得について、目を{逸|そ}らせなくなるような裏づけを、是非とも研究し、整理して欲しいものである。
 人間学の修得……即ち、言葉記憶の修行による心の伝承。これが、世界に誇る教育の型であり、世界の人々……、特に、西洋の人びとが、今最も注目している学問であることを、{吾々|われわれ}日本人は、忘れてはならない。

 《以下……後年、後裔による追記》

 人類必定の百年ごとに起こる大動乱……その一つ、{聖奢頽砕|せいきょうたいさい}【脚注】が、やっと終わり、我ら{日|ひ}の{本|もと}の国は、独立を断念するも、米国の被保護国として、今も{猶|なお}、古代国家としての国体を、微塵ながらも保ち続けている。
 生活も少しずつ楽になってきたが、国民の不安は、{募|つの}るばかりだ。(どんな生き方が、正しいのか。どんな人生を歩み、何を目指せばいいのか……)などと、常に迷い、悩んでいる。
 学校や新聞雑誌などの媒体にしても、夥しい量の知識を与えてはくれるが、人間として最も大事に違いない、「何が正しく、何が悪いのか」や、「人間は、{如何|いか}に生きるべきなのか」などの人間学については、一切その口を、閉ざしている。逆に、金儲けの情報や知識は、{溢|あふ}れんばかりに{止|とど}まるところを知らない。

 結果、誰も、真剣に生きる意味を問わなくなり、人間のあるべき姿を追求することを、止めてしまう。ただただ楽で安易な道を探し求め、脇道に迷い込んでそのまま、崖から落ちて人生を終えてしまう。そんな日本人が、今後も増え続ければ、辛うじて保ち得ている先祖伝来の国体も、{惨|みじ}めに荒廃し、{挙句|あげく}は、亡びてしまうこと必至だ。

 それを防ぐためには、どうすればいいのか。実は、簡単なことなのだ。みんな一人ひとりが、生きるための明確な指針をもち、日々一所懸命、生涯一生懸命に生きれば{良|い}いだけのことなのだ。
 これこそが、人生の普遍的な価値である。もう、迷っている時間はない。もう、悩んでいる場合でもない。個々が、確固たる人生観をもち、ただただ、日々一所懸命に生きるべきなのだ。
 その人生観を、どうやってもつか。それが、人間学。それが、学問。それが、本当の教育なのだ。

【脚注】
 聖奢頽砕とは……。
 「植民地から有色人種を解放する聖戦から{驕|おご}り{頽廃|たいはい}による痛恨の{玉砕|ぎょくさい}までの東亜の大動乱」の略称であり、特に、自然{民族|エスノ}の間で、{斯|こ}呼ばれている。
 聖戦を担う和の{民族|エスノ}と文明{民族|エスノ}の中から、文明エスノが離脱し、驕り頽廃を引き起こし、結果、全軍玉砕に到った。
(Ver.2,Rev.0)

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