#### オオカミの{然修録|132}【1】座学「記憶の検閲」【2】息恒循〈目録〉道徳自在 ####
{会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
学徒学年 **オオカミ** 少循令{石将|せきしょう}
【1】座学
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記憶の検閲
予想外の{窮地|きゅうち}に直面、{或|ある}いは、どうしても思い通りにならない時、人は、天空の誰かに{縋|すが}るかのよに、自分自身に向かって、{斯|こ}う問う。
({何故|なぜ}?)
禅の偉いお坊さんに、「それがいかんのじゃ!」って、言われそうだ。しかも続けて、斯う言うのが常だそうだ。「そんなことを考えるから、知識を積んだ人間というのは、どれほど坐禅の修行を積んでも、いつまで経っても何も悟れんのじゃ。素直になって坐禅{三昧|ざんまい}をしていれば、必ず{莫|まく}妄想になれると言うに……」と。
ところがどっこい!
自然に、{某|なにがし}かの言葉が、脳裏に浮かんでくる。これが、{言葉|コトバ}記憶。{心象|イメージ}記憶と並んで、人間が生まれながらにして持っている能力だ。しかも厄介なことに、(何故?)の答えが、この地球上には存在しない場合がある。
それは、自然と調和をしている物や出来事。自然に、そこに{在|あ}る。自然に、そう成る。正に、自由自在の*自在*だ。これが西洋なら、「神様が、そういうふうにお創りになったのだ」と言えば、皆が納得するだろう。でも、信仰心が薄く、神話も教えられず、神様がどんな真実を語っているのかも考えたことすらない日本人にとっては、そんな言葉で納得できる{由|よし}も無い。
その割には、言葉だけは、西洋人に負けないくらい、知っている。でも、肌で感じることは、出来ない。言葉を肌身に感じて納得し、素直な心で行動に移せるかどうかは、三歳までに教育されているか{否|いな}かに掛かっている。{所謂|いわゆる}これが、刷り込まれて命と成った心象記憶だ。
では、とうの昔に四歳を過ぎ、しかも、俺のようなボンクラ頭だった場合、もう、神様の言葉も、神話の真実も、理解することは不可能なのだろうか。もしそうなら、実に面白くない。そこで、四歳以降でも役立つ脳の機能について、調べてみた。
で……あった♪
自己組織性。嗚呼、難しそう……(やれやれ)
心象記憶……{即|すなわ}ち、頭の中に記憶された膨大な種々雑多のイメージは、自然に任せておきさえすれば、〈命〉を護るために、勝手にというか、ひとりでに、最も効果的な配列……そう、いい{塩梅|あんばい}の順番で、呼び出されてくるというもの。
事実、{鴉|カラス}に石を投げると、顔を覚えられて、見つかると、糞やら生ゴミやらを、集中投下されるという。鴉は、人の顔を三年くらい覚えていて、そいつの顔を見ると、それが刺激となり、そいつに{虐|いじ}められた記憶が、都合よく思い出されるという{訳|わけ}だ。
鴉の脳ミソに出来ることが、人間の脳ミソに出来ない{筈|はず}がない。馬や鹿以下なら、まだ我慢のしようもあるが、鴉以下は、我慢ならん! 冗談はさておき、「自己組織性」と言われると、何やら小難しそうに聞こえるが、人間の四歳以降でも、鳥や{獣|けもの}でも、等しく脳ミソに{具|そな}わった記憶の自在性……みたいに考えると、俺のボンクラ頭でも、どうにか少しは理解できそうだ。
ところがだッ!
同じ刺激を与えられて、皆が同じ反応をするかと言えば、実際は、そのまったく逆だ。同じ種類の犬なのに、まったく同じ条件のイメージを記憶させ、同じ時間を経て、再びまったく同じ刺激を与えたとしても、愛想の{好|い}い犬も居れば、無愛想な犬も居る。{敏捷|びんしょう}に反応する犬も居れば、{鈍間|のろま}な{奴|やつ}も居る。
この違いは、どこからくるのだろうか。その答えが、やはり、三歳までに、どんなイメージを脳に刷り込まれるかで、決まってくるようなのだ。その、幼児期に刷り込まれた心象記憶が、概ね四歳以降、新たなイメージを脳ミソに叩き込もうとしたとき、その、元祖イメージ記憶野郎が、新たなイメージを記憶するべきか否かを、検閲するというのだ。
平たく言うと、好きなら記憶する。逆に、嫌いだったら記憶しない。俺の顔を見て無愛想な犬は、生まれつきというか、幼児期の体験によってというか、{何|いず}れにしても、そもそも、俺みたいな顔が、嫌いなのだ。
この検閲のことを、個性というそうだ。
結局……個人的な性格は、一生、変わらないということかッ!
えッ?
「あんたが覚えたがるイメージは、検閲じゃなくって、*検疫*のほうやろッ!」だってぇ?
ほっとけやァ! 失礼な……(アセアセ)
【2】息恒循
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〈目録〉道徳自在
先ず序章として、{既|すで}に下記を記した。
〈序説〉 ●遺伝血と伝承脳
〈遺伝〉 ●心象記憶
〈伝承〉 ●言葉記憶
「天命{之|これ}を性と{謂|い}い、性に{率|したが}ふ之を道と謂い、道を修むる之を教と謂う」
之、『{中庸|ちゅうよう}』の一節である。
無限の創造、変化、進歩……。
約してこれを、{造化|ぞうか}と言う。
地は有限であり、固定である。
対して天は無限であり、変化極まりない。
天地と人間を含む自然を象徴して、天と呼ぶ。
{故|ゆえ}に、天地自然は、造化であり、その作用、働きというものは、絶対であり、必然である。
その絶対と必然のことを、命という。
生命が、精神や意識の世界をもつに到ったことも絶対、必然であれば、{子供|こども}に対する親の*言いつけ*も、絶対であり、必然である。命令とは、そういうことである。
その天地自然、造化の絶対的な作用そのものが、天地自然の一部である個々の生命そのものであり、その個々の生命に宿った絶対的必然的な作用のことを、天命と言う。
その個々の生涯は道徳であり、その道徳は、正に自在であり、無限である。
この書……『{息恒循|そっこうじゅん}』は、その生涯道徳を、以下の目録に{順|したご}うて、説くものである。
《生涯》
●{天命|てんめい} (生涯道徳。その一生。四十九年間。零歳から四十八歳までの人生)
〈前期〉
●{立命期|りつめいき} (天命の前期十四年間。この時期の学童を、{美童|ミワラ}と呼ぶ。実父母が命名した{美童名|みわらな}を名乗る)
〈一の循〉
●{幼循令|ようじゅんれい} (零歳から六歳までの**最初**の七年間)
〈一循の{猶|ゆう}〉
●少年/少女候補予定者 (幼循令の前半四年間)
〈一循の{候|こう}〉
●少年/少女候補学童 (幼循令の後半三年間)
〈二の循〉
●{少循令|しょうじゅんれい} (七歳から十三歳までの七年間)
〈二循の初〉
●少年/少女学年 (少循令の初等学年)
〈二循の中〉
●学徒学年 (少循令の中等学年)
〈二循の高〉
●門人学年 (少循令の高等学年)
〈二循の反〉
●学人学年 (少循令の最高学年)
〈二循の格〉
●**知命** (自修して運命期へ)
〈後期〉
●{運命期|うんめいき} (天命の後期三十五年間。この時期の年代を、{武童|タケラ}と呼ぶ。自ら己に命名した{武童名|たけらな}を名乗る。※知命に到っていない場合は、運命期の頭に*無知*の二文字が付く。タケラとは成るが、*たけらな*は名乗れず、ミワラの学年と*みわらな*で呼ばれる)
〈三の循〉
●{青循令|せいじゅんれい} (十四歳から二十歳までの七年間)
〈四の循〉
●{若循令|じゃくじゅんれい} (二十一歳から二十七歳までの七年間)
〈五の循〉
●{反循令|はんじゅんれい} (二十八歳から三十四歳までの七年間)
〈六の循〉
●{格循令|かくじゅんれい} (三十五歳から四十一歳までの七年間)
〈七の循〉
●{徳循令|とくじゅんれい} (四十二歳から四十八歳までの**最後**の七年間)
《指南一》
●{循令|じゅんれい} (7年間。※七つの循令共通)
〈一年目〉 ●{飛龍|ひりゅう}
〈二年目〉 ●{猛牛|もうぎゅう}
〈三年目〉 ●{猫刄|みょうじん}
〈四年目〉 ●{嗔猪|しんちょ}
〈五年目〉 ●{悪狼|あくろう}
〈六年目〉 ●{石将|せきしょう}
〈七年目〉 ●{鐵将|てっしょう}
《指南二》
●{時令|じれい} (一年間)
〈一季目〉 ●{想夏|そうか} (七、八月)
〈二季目〉 ●{起秋|きしゅう} (九、十月)
〈三季目〉 ●{執冬|しっとう} (十一、十二月)
〈四季目〉 ●{烈冬|れっとう} (一、二月)
〈五季目〉 ●{結冬|けっとう} (三月)
〈六季目〉 ●{敲春|こうしゅん} (四、五月)
〈七季目〉 ●{還夏|かんか} (六月)
《指南三》
●{恒令|こうれい} (一週間)
〈一日目〉 ●{七養|しちよう} (日曜日)
〈二日目〉 ●{自修|じしゅう} (月曜日)
〈三日目〉 ●{内努|うちゆめ} (火曜日)
〈四日目〉 ●{五省|ごせい} (水曜日)
〈五日目〉 ●{自反|じはん} (木曜日)
〈六日目〉 ●{六然|りくぜん} (金曜日)
〈七日目〉 ●{人覚|にんがく} (土曜日)
《指南四》
●{伝霊|でんれい}】 (一日)
〈潜在一〉 ●{腹想|ふくそう} (午後九時から午前三時まで)
〈潜在二〉 ●{頭映|ずえい} (午前三時から四時まで)
〈顕在一〉 ●{体敲|ていこう} (午前四時から五時まで)
〈顕在二〉 ●{然動|ぜんどう} (午前五時から七時まで)
〈顕在三〉 ●{烈徒|れっと} (午前七時から午後六時まで)
〈顕在四〉 ●{考推|こうすい} (午後六時から八時まで)
〈顕在五〉 ●{気養|きよう} (午後八時から九時まで)
《指南五》
●{唯息|ゆいそく} ({一刻|いっとき})
〈一呼吸目〉 ●{想|そう}
〈二呼吸目〉 ●{観|かん}
〈三呼吸目〉 ●{測|そく}
〈四呼吸目〉 ●{尽|じん}
〈五呼吸目〉 ●{反|はん}
〈六呼吸目〉 ●{疑|ぎ}
〈七呼吸目〉 ●{宿|しゅく}
《指南六》
●{吐無|ぬむ} ({一吐息|ひとといき})
《指南七》
●{造化|ぞうか} (天地自然)
(Ver.2,Rev.0)
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_/ 3 /_/ 然修録 第1集の子どもたち
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