MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

然修録 第1集 No.140

#### スピアの{然修録|140}【座学】竜馬からヒト養殖まで【息恒循】〈二循の中〉学徒学年 ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 少年学年 **スピア** 少循令{猫刄|みょうじん}
     
【座学】
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■慣竜馬からヒト養殖まで

 ヒト種が、電脳人間によって養殖される日は、近い……と、ぼくは思う。三亜種が退化して、「変種の誕生」というわけだ。食用ではない。飼い馴らすためだ。{何故|なぜ}かッ!
 ヒト種は、頭脳のほかに、腹にも、脳がある。{所謂|いわゆる}腹脳……「心」さ。心があるから、喜怒哀楽がある。強制退化させられて心が無くなってしまったヒト種の亜種たちには、{最早|もはや}喜怒哀楽もない。
 {鴉|カラス}は、電脳チップの指令を、従順に遂行する。心が無いからだ。でも、電脳チップを埋め込まれた文明{亜種|エスノ}の連中は、命令が絶対の兵士としては……正に、不良品だ。誤動作は、日常{茶飯事|さはんじ}。何故かッ!
 喜怒哀楽が、あるから……心が、あるからだ。だから、近い将来、文明の人たちは、ヒト変種の養殖を、始めるはずだ。心を持たない……電脳チップを埋め込みさえすれば、ただその指令に従うのみ……そんな、強制退化させられた養殖ヒトが、自然エスノと和のエスノを、亡ぼす。
 退化は、進化する……たぶん。
 養殖場で、胎児のうちに、電脳チップを埋め込んでしまう……とか、チップを埋め込まなくても、遺伝子の組み換えとか、ヒト用飼料やビタミンやアミノ酸のような添加物の{類|たぐい}で、チップが無くても指令に従うヒト変種の養殖に、成功するかもしれない。
 そうなってくると、ヒト変種は、次に、何をやるだろう。心を持った人間は、邪魔なのだ。であれば、自分たちの祖先……文明エスノの人間たちの抹殺を、始めるだろう……たぶん。

 今、ぼくら自然エスノも、和のエスノの人たちも、心を鍛えることに、重点を置いている。それは、無論のこと、完全に、正しいことだと思う。でも、心だけでは、{対峙|たいじ}する肉体や武器に勝つことは、難しい。心……腹脳に加えて、頭脳や肉体も{鍛|きた}えなければならない。
 で、鍛えるとは……。
 {叩|たた}く? 動かす? ……それだけでは、まさにお粗末だ。疲労したり劣化したりして、ただ老化を加速させるだけだ。やはり、栄養が大事だ。脳への栄養、内臓への栄養、肉体への栄養……しかもそれらは、養殖ヒトに与える飼料や添加物を上回る栄養が、なくてはならない。

 ヒト種の亜種への分化は、退化の前兆だった。ある機能が失われたから、**種**から外され、亜種となってしまったのだ。ぼくら自然エスノも、和のエスノの人たちも、もうこれ以上、退化してはいけない。電脳人間や養殖ヒト{等|ら}との戦いに、もし、ぼくらが勝つことができたら、文明エスノ……{則|すなわ}ち、心を持った文明人たちの命も、助けることが出来る。
 サギッチたち黒鷺屋が{推|お}している、「文明エスノ皆殺し」の策を否定しているわけじゃない。確かに、あの人たちを生かして{放|ほ}ったくっといたら、また同じ{過|あやま}ちを、必ず繰り返すに決まっている。だからといって、ぼくらに助ける能力やその手段が残っているのに、それを封印して、「みんな、ぶっ殺しちゃえば、手っ取り早いじゃん!」……だなんて発想は、正に! ……退化進行形の証しなのだ。

 言わずもがな……ここまでは、まだ余談の「まえがき」みたいなもんだ。でも、今まさに、轟々と押し寄せる避難を、僕は、五感で察知してしまった。ぼくら{美童|ミワラ}が学んでいるのは、今も昔も、「心を鍛えること」のほうなのだ。
 なので……*早速*、学びで得たことを、記したいと思う。

 変化を起こし、その変化に順応し、自反し、己を変え、格物……則ち、己を正す。先人偉人は勿論、退化して愚かな判断しか出来なかった故人たちの逸話も、大いに自反材料となる。

 ある日、西郷隆盛が、坂本龍馬に言った。
 「会うたびに言うことが違う。定見を持て」
 竜馬、これに反論する。
 「孔子{曰|いわ}く。時に従う」
 今日も、昨日と同じことを言っているようでは、この激しい変化の時代を乗り切ることはできない……と、竜馬は考えていたのだ。
 竜馬は、そこを{解|わか}っていたが、殺されてしまった。
 西郷どんは、時に{順|したが}って変わることを{拒|こば}み、{敢|あ}えて悲劇の{犬死|いぬじに}を、率先して選んだ。

 さて、その竜馬……。
 勝海舟を、{斬|き}りに行く。
 すると勝海舟、開き直ったように、{斯|こ}う言った。
 「卒となり将となり、{忽|たちま}ちにして沈み、忽ちにして浮かぶ。天騒ぎ地踊るも、我れろうらくたり」
 何が起ころうと、ジタバタするんじゃねぇ! ……みたいな。
 正に、お見事。
 この{潔|いさぎよ}さに{惚|ほ}れ込んで、海舟の門弟になってしまった竜馬も……これまた、お見事だ。

 今泣いた鴉が、もう笑う……という{諺|ことわざ}が、事実であったなら、昔の鴉は、泣くことと笑うことを、全く異質の感性として、使い分けることが出来ていた……則ち、「心を持っていた」ということになる。
 {況|いわん}や! ここで{云|い}う鴉とは、実際には、人間の{子供|こども}のことだ。悲しみに、どっぷりと浸って泣いている子供が、おやつを{携|たずさ}えて部屋に入って来たお母さんを、{一目|ひとめ}見るや……瞬時に感情を切り替えて、嬉しそうに笑って見せる。
 これは、心が、喜怒哀楽を、健全に制御していることの証しなのだ。

 「今、この{時|とき}」という無数の点を、一直線に{繋|つな}ぎ、真っ直ぐな道を、脇目も振らずに生き通す……という生き方も、確かに、(スッゲーぇ!!)って思う。
 でも、一生、怒った顔で過ごすっていうのは……どうなんだろう!

 〈喜〉〈怒〉〈哀〉〈楽〉は、どれも、同じものは、一つもない。すべて、無数の点の中の、たった一つだけの点なのだ。
 それを、わざわざ線で繋いでしまっては……生き{辛|づら}くて、息辛くて、どこへも行き辛くて、仕方がないんじゃないかと思う。
 お粗末さまデシ♪ 

息恒循
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〈二循の中〉学徒学年

(第二版 改訂一号)

 生涯、{則|すなわ}ち{天命|てんめい}。その最初の重要期を{立命期|りつめいき}と言い、その立命期の後半の循である七歳から十三歳までの七年間を、{少循令|しょうじゅんれい}と言う。

 その少循令の中等学年を、「学徒学年」と言う。

 「学徒学年」とは、何を学ぶ歳なりや……。

 当然のこと{乍|ながら}ら、当該学年の頃の{子等|こら}というものは、体験……行動の経験は、未熟である。{先達|せんだつ}から学ぼうとしても、まだ人脈も無ければ、行動半径も小さい。
 {然|さ}れば、先人偉人に学ぶより、他に手はない。{則|すなわ}ち、無限で多次元で多彩で複雑な先達の人生の現実を縮図にして、それを眺め読み取るということだ。それを、読書という。
 では、その縮図たるその書から、何を学び、また実際に、何を学び取ることが出来るのか……。

 一に、一度きりの己の人生を、{如何|いか}に生くべきか。その生き方を、学ぶ。
 二に、生きる上では、行動の判断基準と成り得る様々な情報……{所謂|いわゆる}知識が、必要となる。その知識を、修得する。
 三に、人が歩む道に{於|お}いて、もっとも重要なものは、徳である。則ち、徳たる教養を、身に着ける。

 この、学び、修得し、身に着けるという読書習慣の個々も、無論のこと大事なのではあるが、最も大事とされることは、実は、それらに共通した一つの目的なのである。
 その、目的とは……。

 一に、己の人生の中で、**徳**を見出す。
 二に、その徳を、{凹|へこ}むことなく力強く生き抜くための、原動力とする。

 書籍には、先人偉人たちの深い味わい……言い換えれば、しみじみとした「{旨味|うまみ}」というものがある。

 そういう書のことを、「良書」と呼ぶ。

_/_/_/_/ 『然修録』 第1集 _/_/_/_/
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい……
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 東亜学纂学級文庫★くまもと合志
 東亜学纂★ひろしま福山