MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

然修録 第1集 No.145

#### ムローの{然修録|145}【座学】維新と亜種動乱【息恒循】〈四の循〉若循令 ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 学人学年 **ムロー** 青循令{猫刄|みょうじん}

座学
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維新と亜種動乱

 我々の目的は、わが国を一つとすることだ。三つの亜種に分化分裂した{民族|エスノ}のうちの一つ、文明エスノの畜生どもが、電脳チップという非人間的で非道な方法で、わが国を支配しようとしている。目的を達成するための一番の近道は、言わずもがな、文明エスノを{亡|ほろ}ぼすことだ。

 {然|しか}しながらそれは、維新に譬えられるような*崇高*とは程遠い。

 歴史を{顧|かえり}みると、現代と同様、国を一つとする試みが、幾度となく試みられてきた。その仕上げとも言える時代が、江戸の末期……維新期だ。この維新期には、多くの志士が生まれた。我ら{美童|ミワラ}が知命すると、{武童|タケラ}となる。彼らもまた、時代は{違|たが}えど、正真正銘の志士である。

 この、二つの時代の志士たち……実は、共通点がある。

 我が国の志士というもの、国を一つにするために、幼少期より、陽明先生の教えを読み、その語録から学び、実践によって、その体得を目指してきた。{何故|なにゆえ}かッ! 内村鑑三が、外国人向けに書いた英語の本の日本語訳の書のなかに、その答えの一つがあった。{不肖|ふしょう}、無知運命期の俺が、乱暴ながらその要約を試み、ここに紹介する。

 維新……偉大な立役者、西郷隆盛。その偉大さを、弟の{従道|つぐみち}と区別するために、「大西郷」と呼ばれた。その男は、文政10(一八二七)年、鹿児島に生まれた。{中|ちゅう}の{下|げ}の家柄で、六人兄弟の長子。目立たず、おっとりとした少年だったという。
 そんなある日、少年大西郷にとって転機となる事件が、起きた。東遠の者の切腹である。この男が、少年大西郷に、{斯|こ}う言ったという。
 「命は、主君と国に{捧|ささ}げるものだ」……と。

 よく太った大男に成長した青年大西郷……目玉も大きいので、「うど目」という*あだ名*が、つけられたそうだ。この、力持ちで相撲をとることが好きで、山歩きを好み、自然を愛した若者が、若くして陽明先生の著作……{所謂|いわゆる}陽明学に、{惹|ひ}かれていったのである。
 陽明先生の教えは、数ある中国思想のなかでも、善悪の観念や天の崇高な法を説くという点で、同じくアジアで生まれた威厳ある信仰「キリスト教」に、最も近いと言われている。若き大西郷の実際的な行動力は、ここからきていると思われる。同時に、禁欲的な仏教「禅」にも興味を示し、探求した。「禅の修行は、情の{脆|もろ}さを抑えるためだ」と、のちに友人に洩らしている。

 青年大西郷は、二つの想いを、胸に抱き続けた。一に、帝国の統一。二に、東アジアの統合。陽明学を論理的に学ぶと、同様の思想が見えてくるそうだ。対して、徳川幕府が奨励したのが、保守的な思想……朱子学だ。{則|すなわ}ち、陽明先生の教えとは、進歩的で前向きで、可能性に富んで、キリスト教との類似点も多く、まさしく、徳川幕府とすれば、禁止令に値する煙たい思想だったと言える。

 話は、脱線するが……。
 世界三大心理学者のアドラーの思想が煙たがられた理由にも、陽明学との類似点があるように思う。アドラー心理学が、前向きで目的を重んじる積極未来志向だからだ。

 {閑話休題|それはさておき}……。

 {何|いず}れにしても、大西郷が愛した陽明学も、長州の戦略家、高杉晋作が、長崎で初めて読んで驚愕したと言われる聖書も、幕府の崩壊を当然が{如|ごと}く預言するものであり、また同時に、国家再建のために不可欠な思想だったことは、歴史が、その{証|あかし}を物語っている。

 大西郷が影響を受けたのは、先人の思想ばかりではない。現役の先達も、少なからず{居|い}た。なかでも特筆すべき人物は、二人。薩摩藩主の島津{斉彬|なりあきら}と、水戸藩藤田東湖だ。
 斉彬は、冷静であり、先見の明があった。鹿児島の町の防御を固め、一八六三年に攻撃を仕掛けて来たイギリス艦隊を、大いに苦しめた。また、攘夷思想を抱いていたにも{拘|かかわ}らず、フランス人が領内に上陸した際、これを丁重に出迎えた。そんな藩主、斉彬は、「必要とあらば、あえて戦争も辞さない平和の士」と、高く評された。大西郷は、そんな藩主を愛し、忠節を尽くした。

 次に、藤田東湖。「大和魂の魂」と呼ばれた男。鋭く角ばった{容貌|ようぼう}は、火を噴く富士山にも{譬|たと}えられるほどだった。正義を熱烈に愛し、野蛮な西洋人を心底憎んだ彼の周りには、再建後の日本を担うべき多くの若者たちが、集まってきていたのだった。大西郷も、その評判を聞きつけ、藩主に付き添って江戸に入ったとき、その機を逃さず、東湖に会った。
 二人は、意気投合した。「私が今胸に抱いている志を後に伝えてくれるのはあの若者をおいてない」と、師は語り、弟子もまた、「天下に{畏|おそ}るべき人物はただ一人、それは東湖先生です」などと、言い合った。
 ここで大西郷は、「帝国を統一し、ヨーロッパと肩を並べる国になるために、大陸へ領土を拡大する」……という天命の具現を見るための具体策を、心の中に確固たる形として、{紡|つむ}ぎはじめたのである。
 その東湖師匠は、一八五五年の地震で、この世を去った。その精神の堅持と理想の実現は、優秀な弟子……大西郷へと、{委|ゆだ}ねられたのである。

 おっとりして、無口で、無邪気な大西郷は、一人{思惑|おもわく}に{耽|ふけ}りながら過ごすことが、多かったそうだ。そのとき、天の輝きから届く声を、独り静かに聴いていたのだろうか。

 大西郷の語録……。

 「道を行う者は、天下こぞってそしるも足らざるとせず、天下こぞって{誉|ほま}むるも足れりとせず」

 「人を相手にせず、天を相手にせよ。天を相手にして、己を尽くして人をとがめず、わが誠の足らざるを{尋|たず}ぬべし」

 「道は天地自然の道なるゆえ、講学の道は敬天愛人を目的とし、身を修するに克己を{以|もっ}て終始せよ。……天は人も我も同一に愛し{給|たま}うゆえ、我を愛する心を以て人を愛するなり」

 『西郷西洲遺訓』という書物に、このような大西郷の言葉の多くが残されているそうだ。その何れもが、大西郷が天から聴いた言葉なのだと、内村鑑三は、信じている。

息恒循
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〈四の循〉若循令

(第二版 改訂一号)

 生涯……{則|すなわ}ち、{天命|てんめい}。
 最初の重要期である{立命期|りつめいき}が終わると、あとは生涯、{運命期|うんめいき}となり、その運命期の二番目の循を、{若循令|にゃくじゅんれい}という。

 若循令は、二十一歳から二十七歳までの七年間であり、この期は、生涯を通じて**四番目**の循である。

 「若循令」とは、{如何|いか}なる期か……。

 {少|わか}くして学べば壮にして{為|な}すあり。壮にして学べば老いて衰えず。老いて学べば死して朽ちず。
 ……佐藤一斉 『言志晩録』

 {怠|なま}けて勉学せぬ若者を見せられる程不快なものは、他にない。その本人も、*ろくな者*にはならぬことは、言うまでもない……と、まァまァそうは言っても、{余程|よほど}の*ろくでなし*でもない限り、誰しもそれ相応の志くらいは、持っているものである。
 これが、壮年になると、もう学ばぬ、学ぼうとせぬ者が、随分と増えてくる。生活に{逐|お}われるにつれ、若くして抱いていた願望や志が、次第に薄れていってしまうのである。結果……早々、老弱老衰が、飛んでやって来る。{所謂|いわゆる}、{若朽|じゃっきゅう}である。

 {能|よ}く学ぶ者は、老来益々妙なり。
 但し、その学とは、心性の学を肝心とすべし。
 {則|すなわ}ち、雑学は、禺なり。

 自然の到るところに名山大川があるように、古今東西、種々様々な英雄、哲人、{碩学|せきがく}、賢師が{居|お}る。そういう尊い人の教学を、生きている間にできるだけ多く{遍参|へんさん}し、それを**楽しみ**とするような道楽趣味が、非常に肝要なのである。
 

_/_/_/_/ 『然修録』 第1集 _/_/_/_/
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい……
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 東亜学纂学級文庫★くまもと合志
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