MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

東亜学纂学級文庫

『息恒循』を学ぶ

後裔記 第1集 No.151

#### オオカミの{後裔記|151}【実学】楽園ペニンソラ【格物】追ん出しゲーム再び ####

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。
 学徒学年 **オオカミ** 齢13

実学
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楽園ペニンソラ

 亜種動乱……百年ごとに繰り返される戦乱。
 そんなことが、本当に再び、繰り返されるのだとしたら……それは、およそ二十年後に始まるだろう。もっと早くても、なんの不思議もない。それが終息するのが、二十数年後だからだ。その年からちょうど百年前に、おれたちの国は、終戦を迎えた。その戦争が、俗に言う「{聖驕頽砕|せいきょうたいさい}」だ。
 聖なる戦いも、{驕|おご}り高ぶりという心の劣化に{病|や}むと、{頽廃|たいはい}し、果ては、{玉砕|ぎょくさい}あるのみ……。
 {武童|タケラ}の努めるべき使命は、武の心……その〈武〉の字が{如|ごと}く、振り上げた{戈|ほこ}を、{止|とど}めさせることだ。であれば、敵の心を深く{推|お}し量らなければ、一度振り上げた手を自ら下させるなどという奇跡的な芸当が、出来る{筈|はず}がない。時遅し……{最早|もはや}、動乱を止められないのだとすれば、{猶更|なおさら}だ。敵のことを、よくよく、知らなければならない。
 そのことを、先輩{先達|せんだつ}のタケラたちは、どう考えているのだろうか。まだ、おれのような若輩なんかが、心配することじゃないのかもしれない。でも、現実、おれらは、電脳チップを埋め込まれた{鴉|カラス}に、命を狙われた。おれたちは、危機一髪のところで、タケラの先輩たちに助けられたが、それと同時に、タケラたちも、気づいたはずだ。
 (もう、始まっているのだ……)と。

 {閑話休題|まァ、それはそれとして}。

 オンボロ丸というか、シュッポコ丸というか、早い話が〈ズングリ丸〉のことなんだけんども、あいつは、タケラの大人たちによって、深夜に離岸させられ、{曳航|えいこう}されて、見知らぬ入江へと、移された。
 おれたちが決定を見た計画では、ズングリ丸の改修作業の間、ムロー学級の上級者らは、作業を手伝い、下級者らは、タケラたちの家に預けられるというものだった。そもそもそれが、よく理解できなかった。まったく、無意味だからだ。おれは、タケゾウさんの家に預けられるという話だった。
 マザメ事件で、出鼻を{挫|くじ}かれる結果となってしまったが、それでも結果的には計画通りで、おれら学徒学年以下の下級{美童|ミワラ}たちは、銘々、予定通り、タケラたちの家に預けられて行った。そして、ほどなく……{則|すなわ}ち、預けられてまる一日も経たぬうちに、ムロー学級総員八名、一人残らず、{曳|ひ}かれて行くズングリ丸の船倉に、納まった。

 「ここが楽園、ペニンソラの浜さッ♪」
 ジュシさんが、自慢気に、両の腕を大きく広げながら、声高らかに……そう言った。

 もうじき、初夏が、やって来る。
 おれたちが、離島疎開のために住み慣れた浦町を去ったその日は、残暑の時令ながら、猛烈に暑い夏の盛りのような日だった。それまでは、みんな、親と一緒に暮らしていないというだけで……それと、義務教育の学園に通っていないというだけで……それと、一風変わった寺学舎という私塾に{集|つど}っているというだけで、ごくごく平凡で、平均的な子どもたちだった。
 あれから、もうすぐ一年……おれたちは、離島を巡り、電脳カラスに襲われ、そしてまた、見知らぬ離島(たぶん!)まで曳かれて、今この入江に、辿り着いてしまった。その離島に、{武童|タケラ}のタケゾウ組五名と、{美童|ミワラ}のムロー学級八名が、集ったのだ。

 タケラたちも、気づいたのだろう。
 {終|つい}に、観念したのだ。
 亜種動乱は、もう、止められないと……。

 自称大工のタケラたち五人は、本当に大工のような巧みな働きを垣間見せながら、ズングリ丸{上架|じょうか}用の台車を組み、潮が引くと、浜辺にレールを敷く作業をした。それも一息つくと、次は、蒸気艇の作業甲板に白い大きな紙を広げて、何やら書き込んだり計算したりを繰り返した。入江には、大小様々な船が停泊し、その{何|いず}れもが高いマストを持ち、枝打ちされた杉木立のように、林立している。
 その島で初めての朝、おれたちには、特に何も、仕事らしき作業が割り当てられることはなかった。{概|おおむ}ねは、自由行動……但し、入江の外には、絶対に出るなという厳命が、おれたち八名に告げられた。

 「なんで、出ちゃダメなのかなァ……」と、ツボネエ。
 「この島、楽園なんだろッ?」と、サギッチ。
 「島の裏側に、文明の奴らの街があるとかァ?」と、スピア。
 「もしそうだったら、とっくの昔に乱闘が起きてるよッ!」と、マザメ。
 「なにか、理由があるんだろう……」と、おれ。
 「だから、その理由を考えてんだろがァ!」と、ワタテツ先輩。
 「真相を知ってる人が{傍|そば}に{居|い}るんだから、{訊|き}きに行ったほうが早いんじゃない?」と、ヨッコ先輩。
 「じゃあ、行くべぇ♪」と、ムロー先輩

 どうにもこうにも、正に、本当に……漏れ無く成長しないムロー学級、総員八名なのであった!
 それでも、学者肌のテッシャンが、たいへん有り難く、誠に{丁寧|ていねい}に、答えてくれた。

 「ここは、離島。しかも、無人島。海流は早く、魚も居ない。「この辺を、うろうろするなッ!」って、魚たちには、言ってある。登りたくなるような高い山も、無い。だから、文明の奴らがやってくる理由が、一つも無いんだ。でも、衛星から見られたら、ぼくたちの存在が、判ってしまう。それじゃあ、君たちが寺学舎で学んだ浦町や、巡って来た島々と、何一つ変わらない。
 太陽って、なんで見えるか、知ってるよね。自ら、光ってるからさ。月だって、太陽の光を反射して、光ってる。地球だって、そうさ。でもさァ。自分では光らない。光を当てられても、反射しないとしたら、どうやって、光を地球に届けるんだい? きっと、何も見えないんじゃないかなァ。
 だったら、ぼくらだって、自ら光らず、光も反射せずなら、衛星からも、空の無人偵察機からも、何も見えないんじゃないのかなァ? そう考えてみたところで、実際は、やってみなきゃ、何も判りはしない。だから、目標を決めて、理論を{搔|か}き集めて……そう、オペレーションズ・リサーチさ。
 目標は、勿論のこと、横からは見えるけど、上からは、見えない! まァ、まだ未完成なんだけどねぇ♪」

 「下からはーァ?? パンツも、見えない?」と、ツボネエ。
 「それは、都合が悪いなッ!」と、サギッチ。
 「空論は、早めに断つべし……」と、スピア。
 「賢明な判断だねぇ♪」と、テッシャン。

 (もう、あの浦町に戻る日は、二度とやって来ないんだろうなァ……)と、他愛もない無邪気な{遣|や}り取りを聞きながら、おれは、そんなことを思っていた。

格物
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追ん出しゲーム再び

 争いを未然に防ぐには、確かに{OR|オペレーションズ・リサーチ}も必要だろう。でも、それだけじゃ、無理だ。直観力だけでも、知識だけでも、やっぱり、無理だ。それで、あれこれと考えているうちに、「要領」という言葉が、頭に浮かんだ。要領と来れば……そう、あれ! 〈オッサン追ん出しゲーム〉だ。
 追ん出しゲームは、いくら直観や知識を集積して手順書を作ったところで、まったく役に立たない。だのに、何回か試みているうちに、だんだんとその〈要領〉が、判ってというか、解ってくる。だから、手順書を作って覚えて実践する*OR*と、*要領*を覚えるという二つのことは、まったく異なる脳の働きだと、思わざるを得ない。
 {況|いわん}や! 仕事も発明も、手順書どおりにやっただけでは、要領を覚えることは出来ない。でも、「覚える」と言うくらいだから、記憶の一種には、違いない。
 人間の頭の左側には、*コトバ*が記憶され、右側には、*イメージ*が記憶されている。これら、コトバとイメージの一つひとつが、糸のようなもので{繋|つな}がれている。だから、外から{言葉|コトバ}を聞いただけで、そのイメージを思い出すことが出来るのだ。その糸を繋げていないか、{或|ある}いは切れてしまっているかすると、どうにもこうにも、思い出すことが出来ない……そう、「忘れた!」っていうヤツだ。
 右脳に、そのイメージが入っていることは、覚えている。それは、間違いない。でも、そのイメージに繋がっているコトバを、探し出すことが出来ない。そのキーワードが、名前の場合も、よくある。その人に関するイメージが、頭の中にあることは、確かなのだ。でも、左脳からその名前を探し出せないもんだから、右脳に記憶されているイメージを引き出すことが出来ない。「ド忘れ!」とはよく言うが、正にそれが、そういうことなのだ。

 ここで、重大な事実が{判|わか}る。コトバと繋がっていない、思い出す手立てが無い*イメージの記憶の数*は、驚くほど膨大だということだ。

 ある著名な大脳生理学者が、こんな実験をしたそうだ。イメージが記憶されている頭の右側に、直接、電気信号を与えたのだ。するとなんと、その人は、過去のあるシーンを、事細かに、今まさに体験しているかのように、克明に思い出したのだそうだ。思い出すというより、「過去に戻った」と言ったほうが、より適当かもしれない。

 ……と、いうことは、人間は、体験したことは、*細大漏らさず*、それをイメージとして、右脳に記憶している……と、いうことだ。

 ときに、思いもよらないことを、思い出すことがある。夢も、不思議大賞の一つだ。夢で見る物語は、百パーセント作り話のように思えるけれども、その多くが、克明に記憶された過去の体験の一つひとつなのかもしれない。三歳以前に記憶されて、思い出されることのないイメージもある。{所謂|いわゆる}、潜在意識の記憶というやつだ。こいつにも、不思議大賞を授与したい!

 結論……。
 こんな素晴らしい記憶能力をもった生身の人間の脳が、電脳チップなんかに負けるはずが無い。
 おれは、勝つために、生きる。
 敵が振り上げた{戈|ほこ}を{止|とど}めさせるような努力など、絶対にしない。そんな、余計なことをやっている暇は、{最早|もはや}一刻も、残されていないからだ。
 
_/_/_/_/ 『後裔記』 第1集 _/_/_/_/
寺学舎 ミワラ〈美童〉 ムロー学級8名

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい……
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