MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

一息 36【スピアの後裔記】亜種記の苦言。離島生活。待っていた不思議な父子家庭。厳格な養祖父《オンライン亜種記3》

『オンライン亜種記』
住み慣れた半島の港町から、離島に疎開した寺学舎の童児(わらわじ)たち。
未来の子孫が、武童(たけわら)と呼ばれていることを知る。
生まれ変わった後裔記が、時空を超える。

エスノキッズ 心の学問「自伝編」
令和2年9月12日(土)号


一つ、息をつく。


〔 亜種記の苦言 〕

ゴメンなさい。
オンライン亜種記を読んだけど、不承知です。

最初の亜種記、読んだことありますかァ?
学纂さんが編集のボランティアをしてくれるようになるもっと前に、編集されたものです。
ズッケロ、サーレ、ペーペっていう三人の少年の後裔記を、編集したものです。
その物語が世に出ることは、ありませんでした。
精々、後裔のぼくらが、読んだくらいでしょう。

それを読んだときに、思ったんです。
児童書のアニメ化とか、小説の映画化って、よくありますよね?
原作に無いシナリオが追加されたり、原作の筋書を一部変えてしまったりと、それが、アニメ化だったり、映画化だったりするわけです。

でもね。後裔記は、一切、加筆もして欲しくなければ、変えても欲しくないんです。
ただ、事実を伝えるだけ。

僕らの現在、過去に送られる事実は、面白くもなんともなくって、その読者は、子孫のほんの数人しかいないかもしれない。
でも、それでいいと思うんです。

先祖、先人、先達(せんだつ)が経験した事実の中から、その後裔の僕たちが、末裔(まつえい)なんて屈辱的な呼ばれ方をされないように、真実を読み取って、僕ら民族の誇りを、子孫に伝え続ければいいだけの話なんじゃないかって、思うんです。

だから、今まで通り、後裔記をそのまんま、コピーして、貼り付けて、配信して欲しいんです。
他の童児(わらわじ)七人も、きっと、異論は無いと思います。


〔 疎開生活 〕

島に、着きました。

正直。
誰とも、話をしたくない。
僕のほうを、見てほしくない。

〈僕は、この世に居ない〉ことに、して欲しい!


〔 待っていた不思議な父子家庭 〕

台風が来たら倒壊しそうな、二階建ての古びた一軒家......。

離島。
港らしき天然の突堤に出迎えてくれたのは、不愛想な爺さん。

サギッチとマザメは、その爺さんがやってくる前に、フェリー(という名の漁船)の船長や乗組員に連れられて、どっかに行ってしまった。

その一軒家の前に着くと、不愛想な爺さんが、やっと口を開いた。

「言語を省いて以(もっ)て神気を養う。
それなら良し。
そうでないなら、おまえは、言葉を知らない猿だ。
島の動物たちの言葉を聴いて、自分という〈ブツ〉がどんな動物なのか、時間をかけて己を観察しなさい」

僕は、未知の住まいの周りでチュンチュン、ピーヒョロ、カァカァと煩(さわ)いでいる鳥たちに向かって、心の中で怒鳴った。

「言語を省けよッ!」

不思議と、その爺さんを、ぼくは、(嫌いじゃないかもしれない)って、なぜかそのとき、何気に思った。

家に入ると、性格のキツそうなオバハンがいた。
僕から観てオバハンなだけで、まだ若い大人の女の人だ。
目が合って早々、よく喋(しゃべ)る女の人だった。
元来ぼくは、よく喋る人種は、大嫌いだ。

この女の人は、今までに経験したことがないくらい、よく喋る人種だった。
だけど、爺さんを嫌いじゃないって思ったときの不思議さと同じように、嫌いどころか、なぜか、(好きかもーォ!)って、思ってしまった。

そのオバハンの喋りの流暢(りゅうちょう)さは、最高だった。
もし、同じくらいよく喋る大人の女の人が、僕のそばに寄って来たとしたら、僕はきっと、禅機も失せて、禅僧みたいに一言(いちごん)も発せず、一物も見ず、その女の人が去るまで、ひたすら黙座しながら、心の中を騒々しく(ベチャ♪ベチャ♪)させていたと思う。


〔 厳格な養祖父 }

島に着いた翌朝。
シナリオの箱書き的に描写すると、こんな感じかなァ (^_^;)

〈 丸い座卓を囲んだ朝食の席。
オバハン(養母)はまだ、台所で何かゴソゴソしている。
味噌汁を、お椀によそっているのかもしれない。
円卓を挟んで、爺さん(養祖父)と向かい合う少年。
爺さんが、語りはじめる 〉

「異国から受けた屈辱を放置した怠慢が、次の動乱を招く。
未来の後裔(こうえい)、同胞(はらから)のために、ありったけの命を捧げた先人たちを、我ら子孫は、侮辱した。
その罪で、我ら子孫は、神から、「再び維新せよ」との、天命を下されたのだ」

と、爺さんが言い終えるが早いか、そこでやっと、オバハンが〈香の物〉をお盆に載せて、食卓の間(ま)にやってきた。
そして、座りながら、言った。

「うちにはテレビも無いし、新聞も届かない。
でもね、それでいいの。
テレビは、視れば面白いし、新聞は、読めば面白い。
だけど、事実がそうそう、毎日毎日、面白いはずないじゃない?
大胆に事実を捻じ曲げたり、不謹慎に恐怖を煽(あお)ったりしないと、倒産しちゃうのよ。
テレビ屋さんや、新聞屋さんっていう商売はねッ!」


以上、離島からの『後裔記』、第一報です。

2020年9月9日(水)
スピア(童名(わらわな))
★立命期の童児(わらわじ)。〈少年〉学年。


令和2年9月12日(土)号
一息 36【スピアの後裔記】亜種記の苦言。離島生活。待っていた不思議な父子家庭。厳格な養祖父《オンライン亜種記3》

【行動哲学と目的心理学】

美質を生まれ持った子どもたちが、戈(ほこ)を止(とど)めると書く武の心を修めるために、東亜の行動哲学、西洋の目的心理学、そして民族史や神話から過去を学び、自分たちの運命が横たわっている〈未来〉を脚本する人間力を、学んでゆきます。

Japanize Destinies Distribution
JDD 東亜学纂〈テレスタディ〉
『オンライン亜種記』
『オンライン郷(さと)座学』
【バックナンバー】 http://www.akinan.net