令和2年4月18日(土)号。
一つ、息(いきを)つく。
今日は、言わせてもらう。
みんなに読まれるとわかっていて、恥ずかしい弱音を正直に書くやつって、いるのかね?
強がるだろッ! 普通。
弱音は恥ずかしいから、隠すだろッ! 普通。
それでも「後裔記は、日記だ」って言い張るなら、もう、これ以上は言わない。
但し、おれも、言い張る。
おれは、後裔記で、弱音は吐かない。
おれは、後裔記で、本音は言わない。
男は、平時に生まれると、女になるそうだ。
女は、平時に生まれると、男になるそうだ。
男も女も、クソ食らえッ!
ここ数日、おれは、落ち込んでいる。
その発端となった数日前の座学。
残酷でリアルなモチーフ。
寺学舎の講堂の中で、最年少。
幼い男。
体験座学。
知命後の名前も、まだ決めていない。
過日、野外実習も体験済みの模様。
其奴(そやつ)も、不合格!
当然。
宿題を叩きつけられる。
それも、当然。
ここまで、僻(ひが)みも妬(ねた)みも羨(うらや)みも、無し。
これも、当然。
その幼い男、やにわに皆の前に出て、仁王立ち。
片手には、宿題が書かれたB4サイズの原稿用紙が一枚。
設問は、スピアが手渡されたものと全く同じ。
コピーよろしく、写筆。
幼い男、そいつを持った片手をだらんと垂らしたまま、設問と自作の答案を諳(そらん)じる。
残酷でリアルなモチーフが、それ。
それが、スゴイ!
おれはやっぱり、凡人。
生まれもった美質も天才も、音も立てずに崩れ去ってゆく。
幼いというだけで備わっているこいつの天才に太刀打ちできるのは、スピア君の記憶力くらいだろう。
その日、その彼も体験座学。
但し、実習体験で負った傷心は、未だ完治を見ず。
されどそこは、幼さが武器の神童、スピア君。
まだ名もない幼き男が諳じた設問と答案を、一字一句漏らさず、暗記していた。
それを写筆する、おれ。
ここより、僻みも妬みも羨みも、すべて有り。
これも、当然?
以下、写筆。
「一、君には、自分の間違いを素直に認める勇気がない。
それは、何故(なぜ)か。
答えます。
ぼくは、変化の犠牲者でした。
自信のない弱い心を、無意識で護(まも)ろうとしていました。
でも実際は、ぼくの強い心が、変化を仕掛けたんです。
明日を、活きた朝からスタートさせるために、ぼくが仕組んだ計画と準備です。
二、君は、頭痛がすると、自分の頭が悪いと言って、自分の頭に怒りをぶつける。
それは、何故か。
答えます。
警告に対する怒りでした。
苦難に遭遇したことに、感謝したい気持ちになることができませんでした。
でも実際は、ぼくの頭が悪い、すぐに悪いところを変えなさいと、痛みがそれを教えてくれていたんです。
問題を可能性に変えるための、絶好の機会です。
三、君は、気分が落ち込むと、まるでそれが問題であるかのように、深刻に考える。
それは、何故か。
答えます。
問題ありません。
人生で、気分は何十ぺんも何百ぺんも、上がったり下がったりします。
下がると、気持ちが萎(な)えます。
でも実際は、がっかりするようなことじゃないんです。
気分を再び高めるための、栄養補給です。
ただ待つ。
待ちながら、ただじっとして、よく考える。
ここが、急降下から急上昇に転じる分かれ目だったんです。
四、深刻に考えた君は、引き続き落ち込むことを決断し、それを実行した。
それは、何故か。
答えます。
再び自信を失いました。
再び、ぼくの自尊心が、ボロ雑巾になりました。
仲間の同情が欲しかった。
もう、好(い)い加減、許して欲しかった。
それで不安になり、落ち込んだ。
ぼくは、そう思いました。
でも実際は、落ち込んで見せる自然の感情を利用してやろうって、ぼくの無意識が決断したんです。
それでぼくは、落ち込んで見せる感情を実行しました。
五、君は、そんな自分の性格を変えないと、自ら決めてしまった。
みんなが簡単にやっていることなのに、君は、自分の性格を変えることが出来ない。
それは、何故か。
答えます。
なぜ自分に自信が持てないのか。
どうせぼくには、自信なんか持てっこない。
なぜそんな性格を変えれないのか。
どうせ性格なんて、変わりっこない
ぼくは、そう考えました。
でも実際は、考えたのではなく、そう思うことにしようって、自分で決めたんです。
ものの見方や捉え方、感情の上下、思考や行動の型、そのどれもが自ら決めた自分の性格、心のクセです。
自分で決めたんだから、自分で変えればいい。
そう自分で決めればいいだけのこと。
たしかに、簡単でした。
以上です」
講堂内、静寂。
寺学舎の裏手には、墓地が拡がる。
そこも、静寂。
ここは当番塾師、ワタテツの出番!
幼い男が引っ込み、横からワタテツ登場。
ワタテツさんが、言った。
「おれは今、みんなの顔を見ながら、三つのことを思った......」
何だよ!
おれは、正確に暗記する霊力など持ち合わせない。
なので、一字一句がどうであろうと、そんなことは気にしない。
心に残ったままを書く。
「一、みんな、それぞれに違う。
異なるまだ幼い体験の彼も、彼から見て異なる君たちもおれも、羨(うらや)む言葉一つや蔑(さげす)む言葉一つで決めつけられはしない。
今、君たちが見ている彼も、今、彼から見えている君たちも、照らされた一部分を見せられてるだけだ。
人は、見せたい部分のみを照らす。
そんな彼の一部分と、自ら照らしてる自分の一部分とを比べて、天才と凡才の差違を探し、見つけ出す。
それが、素直な自反となることもあれば、妬みで自分見失ってしまうこともある。
彼に有って、おれたちに無いのは、幼さという天才力だッ!
二、幼いころには、想像力や天の才を自由に発揮できる。
幼いやつらは、完全な天才のままでいようとし、さらに優れた自分へと、無意識でその進化を目指して進んでゆく。
既に幼いとは言えなくなってしまったおれたちは、社会や家庭の環境に影響されながら、進んでいる。
でも幼いやつらは、生まれもった美質と遊びだけで、自分の土台を成長させようとする。
実習体験も、自然に降って湧いた逆境も、すべてを遊びに変えて、その中で自分の生き方のすべてを作り上げてしまう。
その結果が、既に成ってここに立ってるおれたちだ。
である。
だろッ?
ね ♪
三、おれたちはみんな、大人から見れば、ただの子どもだ。
ただということは、大人の社会で子どもは要らないということだ。
なぜか。
それは、おれたち子どもが、永遠の未来を眺めているからだ。
おれたち子どもは、生まれもった美質で、神から与えられた世のため人のための使命で、天才という名の優れた直感や霊感で、次から次へと直面する課題を解き明かそうとする。
それが、大人たちにとっては煙たい。
迷惑なのさ。
だからさ。
だから大人たちは、おれたち子どもに、様々な問題を投げつける。
試練さ。
常に、試練に晒(さら)される。
すると、どうなる?
おれたち子どもの本能、情緒、直感、つまり衝動や感情、思いや考え、行動のそれらすべてが、ねじ曲げられる。
すると、どうなる?
永遠の未来が、消える。
その代わりに、羨(うら)みや妬(ねた)みが、己自身の態度を支配する。
他人を蔑(さげす)むことによって、心が癒される。
歪(ひず)んで歪(ゆが)んだ自己愛が、確立する。
自己愛は、一部分に留まらない。
全体を、支配しようとする。
全体とは、自然のことだ。
だから大人になった人間たちは、自然を支配しようとする。
自然エスノだからといって、本当に大人になっても、自然の一部分に留まっているだろうか。
自然を支配しようとしているのは、本当に文明エスノだけなのだろうか。
おれたち子どもは、本当に不要なのだろうか......」
もっと、長かったような気がする。
要約......いや、割愛......いや、省略力なら、暗記王スピアに太刀打ちできるかもしれない。
暫し......。
じっくり、考える。
無理だなッ!
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一息 15【幼い男、宿題の答案がスゴイ! 本音を書け? これは読まれる日記。強がるだろ普通!】学徒、オオカミ
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