エスノキッズ 心の学問「自伝編」
令和2年5月30日(土)号。
一つ、息(いきを)つく。
なんだよッ!
みんな、引きこもりばっかじゃん ♪
でも、ぼくら民族に引きこもりが多いのは、当然かもしれない。
ぼくら民族の大祖先は、当然ひと組の夫婦なわけだけど、その大ジージと大バーバが結ばれたのは、2700年以上も前だそうだ。
その大ジジババ夫妻の末娘が、我らが民族の引きこもり第1号!
まさに、ぼくら民族の引きこもりは、三千年の歴史を誇るのだ ♪
まァ、誇りたければの話なんだけど。
褒めてくれるのは、スーパー親バカでくらいだろうけどね。
例えば......。
「うちのマサオちゃん、もう30年も、お部屋から出てきませんの。
まさに、難攻不落!
そりゃあ、天才の息子を持てば、それなりの苦労はあります。
兵糧が絶えないように、和洋の一流料理店から、三度の食事のコース料理を届けさせたりもしておりますの。
そうしましたところ、マサオちゃんの天才の御身がブクブクと、お豚さんのようにお膨れになっちゃってーぇ!
特大サイズの紙オムツ、特注で作らせたりもしておりますの。
絵柄は、3パターン ♪
ブタさん、ウシさん、ニワトリさん。
そうそう。
来週からわが家、リフォーム工事ですの。
なんと、マサオさんの部屋に、特注の天井クレーンを取り付けるんでーす ♪
天才のお豚ちゃん!
悲願の寝返り成るーぅ ♪
劇的でしょ?
なんて感動的なんでしょう ♪ 」
ここで映像が、現場からスタジオへと切り替わる。
番組名は忘れたけど、スクリーンをスライドさせて、どの局の放映を観ても、似たような猥雑娯楽の番組ばかり。
この日を境に、ぼくは、テレビジョンというIT機器の電源を、入れなくなってしまった。
テレビが静まった部屋に一人引きこもっていると、交友関係の対象は、記憶と本だけとなる。
本は、さて置く。
なんでってぇ?
ある先輩(女)に、こう言われたから。
「座学で息恒循を学んだり、然修録を書いたりで、いっぱい、本読まなきゃなんだからねッ!
後裔記までお堅いこと読まされたら、たまったもんじゃないわァ!」
だそうです。
なので、記憶の話。
でも、思い出されるのは、リアルに充実して自信満々の奴らばかりだ。
ぼくは、そいつらのことを、リア獣(りあじゅう)と呼んでいる。
リア獣ってさあ、すぐに何やかんや、ぼくらに命令するんだよね。
それでぼくらを遠ざけといて、当のリア獣は何をしてるのかなって探りを入れると、感心するくらい必ず、女の子たちを相手に自慢話を力説してる。
認めたくはないけど、それを羨ましく思って眺めてるぼくがいる。
それ......つまり、羨ましく思うってことは、悪いことだとは思わない。
だってさ。
その羨む対象を目標に変えて、ただ努力しさえすればいい。
それで、完結 ♪
でも実際、現実は、そうはならない。
妬みの感情が、疾風(はやて) ♪ のように現れる。
そしてぼくは、 こう思う。
「大失敗して、大恥をかけばいいのに。
先生に怒鳴られて泣きべそをかいて、女の子たちに笑われればいいのに」
なんて、心がみみっちい、
なんて、嫌(いや)な奴んなんだッ!
そんな嫌な奴が、今のぼくであり、今どきの人間なのだ。
結局人間は、他人を客観的に見ることなんて出来ない。
自分が経験した個人的な価値観からしか、他人を見ることができない。
だから、評論家なんていう職業は、100%、紛い物なのだ!
これも、ぼくの経験から捉えた個人的な価値観。
まあ、それは事実なんだから、悩んでも仕方がない。
問題は、羨ましいと思った相手。
例えば、親しくもない、ただ同級生というだけの、自信満々のプレイボーイの少年!
ぼくは、そいつのことを、本当に羨ましいのだろうか。
そんなぼくの記憶のなかで、異質を放っている活きた朝の出来事がある。
幼い少女。
ぼくより、遥かに年下!
彼女は、確かにこう言った。
「ピアにいって、呼んでいい?
ピアにいってさあ。
なんでそんなに帽子、深く被ってるのォ?
それじゃあ、自分の足下(そっか)しか見えないじゃん!
でも、ピアにいは、自分に都合かいいから、そうしてるんでしょ?
わかるよ、わたし。
見たくないもの、見られたくないとき、目を合わせたくないひと。
そんなもの、そんなとき、あるよね?
そんなひと、いるよね?
でもさ。
そう思うのは、自分がどこに生まれて、誰に育てられて、どんなことを見たり聞いたりやってみたり、うまくいったりいかなかったりで、決まるんじゃないの?
それでピアにいは、自分の心が傷つかないように、自分にとって都合がいいように、帽子を被る深さを決めてるんじゃないの?
でもさ。
それってさ。
本当に自分にとって、見てはいけないもの、見られてはいけないとき、目を合わせてはいけないひとなのかな。
後悔しないのかな。
そのままで。
そんな人生で。
そのままずっと、変わらずにいて。
後悔しないのかな。
ピアにいの頭、臭いよッ!
蒸れるでしょ?
その帽子。
通気性、悪そうだし。
そんな帽子被ってるから、世界中の人が羨ましくって、世界中の人に嫉妬しちゃうんだよ。
どうして、見る人すべての人より、自分のほうが優れてなきゃなんないの?
どうして、目が合う人すべての人から、よく思われなきゃなんないの?
そんなふうに考えてるから、蒸れるんだよ。
臭いんだよ。
臭いって漢字、自分を大きく見せたいって書くじゃん!
腐るんだよ。
頭も、心も。
だから、頭が臭くなったときには、もう、心も腐ってる。
それで、いいの?
今のままで、いいの?
変わりたくないの?
居るよね?
自分の心の中に。
変わりたくない自分。
変わりたい自分。
でもやっぱり変われない自分。
変わりたくない自分が、帽子を被ってるんだよ。
変わりたい自分は、どうにもできなくて、どんどん腐っちゃう。
その腐った心が、変われない自分なんだよ。
そんな通気性の悪い帽子、脱いで捨てちゃいなよッ!
でも、それってさあ。
わかるよ。
勇気が要るよね?
誰が、勇気を出さなきゃいけないの?
決まってるよね ♪
変わりたい自分。
でしょ?」
(なんだァ? こいつーぅ!)って、思った次の瞬間、また、その幼い少女が言った。
(納得!)
「ねえ。
ピアにい ♪
スピアって、どういう意味なん?
わたしもね。
もう、決めてあるんだ。
知命の名前。
聞きたい?
あのねえ......。
ツボネエ ♪ 」
令和2年5月30日(土)号
一息 21【縁尋機妙。引きこもりを尋ねる縁(えにし)は、やはり引きこもり。これも機妙】少年、スピア
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生まれもった美質と武の心。
エスノキッズと呼ばれた少年少女たち。
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