みなさん、こんばんは。
【後裔記】です。
毎週土曜の夜7時。
今夜も、お届けいたします。
「行動と目的の学」を実践する子どもたちの日記。
読み切りで ♪
エスノキッズ 心の学問「自伝編」
令和2年8月1日(土)号
一つ、息をつく。
旅に出る前夜......。
かあさんが夜なべをして、手袋編んでくれ......はしなかったけれど、なんと!
腹巻を編んでくれた。
(花の十代の娘の門出に、腹巻かい!)
と思ったけど、この腹巻、後々、なんとなんと、大活躍!
異民族菌に対する頭の免疫は、ガッチリ備えて国を出た。
でも、雑菌に対する腹の免疫力は、情けないほど無に近かった。
それを一切、思考に頼らず、直観で腹巻を編みはじめた母。
まったく、恐れ入る。
そんな夜なべする母の傍(かたわ)らに座ったり寝そべったりしながら、他愛もない話が延々と、明け方近くまで続いた。
「ねえ。
みんな、なんで、『変わりたい』って言うの?」
と、わたし。
ひとりごちるように。
母が、応えて言った。
それも、ひとりごちるようだった。
「変われないって思ってるからさ。
だから、新興宗教に騙されたり、自己啓発本に延々と金を使い続けたり、自己啓発セミナーに命を削ってまで時間を注(つ)ぎ込んだりするのさ」
「違うよ。
変われないって思ってるんじゃなくて、変わりたいって思ってるんだよ。
だからもがいて、騙されたり、無駄に命を削ったりするんだよ」
と、わたし。
思わず、語気が上がる。
「じゃあ訊(き)くけど、なんでもがくの?
あんたが、そうさせたの?
かあさんが、悪いの?」
と、母。
穏やかだけど、力強い口調。
「誰も、悪くないよ。
みんな、両親とか、学校とか、職場とか、人には、いろいろとあるんだよ。
いま無くったって、過去には必ず、原因になるような何かがある。
それがトラウマになってるとしたら、特にね」
と、わたし。
自分で納得して、締めくくるように言い切った。
母も、納得したかのような顔だった。
そう見えた。
その母が、静かに口を開いた。
「あんたの言うとおりだろうねぇ。
あったこと、あったこと、あったこと......。
ぜんぶ、過去じゃないか。
人間の人生は、すべて過去によって決まってしまってる。
何をどうしたって、もう変えようがない。
そういうことかい?」
「そこまでは言ってないけど。
でも、だから変わりたい、変えたいって、思うんじゃないの?」
と、うまく頭がまとまらないまま、わたしはひとまず、そんなようなことを応えて言った。
「原因がなければ、そもそも、変わりたいだなんて思わないものね?
原因がなければ、どんなことだって、説明がつかない。
たしかに、そのとおりだわね。
でも、なんで過去なの?
なんで、原因なの?」
と、母。
「はァ?」
と、わたし。
「未来だって、いいじゃない。
目的や目標じゃあ、ダメなの?
変えたい理由、変わりたい理由」
と、母。
「ダメじゃないけど。
てか。
はァ?」
と、またわたし。
「あんたさっき、とらうまって言ったねぇ。
虎と馬でも、馬と鹿でも、どっちゃーでもいいけどさ。
誰にも会わないようにしたいとか、自分の心が傷つくようなことを言われたくないとかさ、そんな目的があるから、トラとウマとか、憂鬱(ゆううつ)だとか、『もうダメだ』『外に出れない』『変われない!』とか、そんな感情を自分で考えて作り出してるんじゃないのかしらん?」
と、母。
淡々と、腹巻を編みながら。
「そこまで心が強かったら、誰も鬱(うつ)病なんかにはならないよ。
だって、自分で考えて作り出したんなら、仮病ってことじゃん!」
と、わたし。
失礼して、寝っ転がった。
少々、眠気。
「仮病なんかじゃないわよォ!
不安も、恐怖も、エンドレスの悩みも、偏頭痛も、ぜんぶ本物さ。
ただそれが、固持してる目的のために作り出されたってだけのことさ」
と、母。
口調も、淡々。
「それを仮病って、言うんじゃないの?」
と、言ったと思う。
眠気、継続中のわたし。
「仮病は、失礼だよ。
いくらなんでもォ!
どうしても名前をつけたいんなら、そうだねぇ。
〈原因論主義者症候群〉ってところかしらん?」
と、かあさん。
強靭な精神力で、夜なべ継続中。
「出た!
焼香軍...... むにゃむにゃ」
( (^o^)ノ << おやすみーぃ >> )
以降の会話は、潜在意識に委ねたのであった。
わたしの記憶のどこかに、眠ってるはず。
たぶん (^_^;)
斯(か)くして、手編みのハラマキを巻いた焼香軍の少女学徒兵が、闘いの旅の戦地へと出陣していったのでした。
令和2年8月1日(土)号
一息 30【哲学と心理学は表裏一体。行動と学問は合一。学問のための学問は堅苦しだけ】門人、ヨッコ
【行動と目的の学】
江戸期の儒学者たちは、学問を一つの型にして、学校や家庭に根付かせました。その型が崩壊した現代、廃残したわたしたち民族には、新たなる型が求められています。
美質を生まれ持った子どもたちは、戈(ほこ)を止(とど)めると書く武の心を修めるために、東亜の行動哲学、西洋の目的心理学、民族史と神話、未来と過去の脚本技術などを学んでゆきます。
Japanize Destinies Distribution
『亜種記』『息恒循』『然修録』『後裔記』
JDD 東亜学纂
http://www.akinan.net