MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

一息 50 【学徒マザメ】飛ぶ前に考えてるやつは、何を考えてると思う? それは、飛べない理由と失敗したときの言い訳さッ!

後裔記選集第1部「中巻」1
令和2年12月19日(土)配信

後裔記「考えてるやつらに飛ぶ勇気はない!」 学徒マザメ 齢12

 飛ぶ前に考えてるやつは、何を考えてると思う? それは、飛べない理由と失敗したときの言い訳さッ!

 一つ、息をつく。

 スピアもオオカミのやつも、よろしくやっている……どうやら。サギッチは、どこにいるんだろう。まァ。どうでもいいけど。それより、何で海の鮫ちゃんが山小屋住まいなんだか……って、思われる前に言っておく。
 「なんだってぇ^!?^ サメちゃいまんがなァ!」
 {因|ちな}みにマザメは、「真の目覚め」。{覚醒|かくせい}、{瞑想|めいそう}、{唯識|ゆいしき}。以上。
 オオカミが大木の枝の上で飛び悩んでいるとき、あたいは、そんなどうでもいいことを{余所|よそ}に、独り想いに{耽|ふけ}っていた。
 (飛び下りる……大努力。学徒が大努力して死ぬんなら、それは{本望|ほんもう}ってもんさ。自然人の{美童|ミワラ}は、十四歳で知命して、十五歳で{武童|タケラ}となる……らしいけれど、知命して十五歳を迎えたという話を、生まれてこのかた一度も、耳にしたこといがない。あたいもそろそろ知命の準備、門人となって旅をする年頃だ。それが今、このザマだ。オオカミは、いま飛べば、大きく成長して、知命にグーン!と迫ってゆくことだろう)
 そしてオオカミは、飛んだ。
 「すっげーぇ! 生きてるじゃん」と、まァ、少年らしい声が、聞こえてくる。スピアだ。確かに、{凄|すご}いと思う。大努力して飛んで、しかも生きている。最高だ! 無論、オオカミが生きていようがいまいが、そんなことはどうでもいい。大努力した自然人が、まだ生きている。価値があるとすれば、そこだけだ。そこは、自然の一部。オオカミは、小自然。
 そんなことより、あたいは見た。猛烈な雨……大気の有害物質を除去する。地割れ……地下水の補充そして、地球の表面温度を下げる。これが、自然の正体。大自然だ。スピアの無邪気な質問が、飛んでくる。
 「ねぇ。テンチソウゾウってぇ?」
 「地球の延命措置。自然界の大変革。天孫降臨って、聞いたことあるだろッ?」と、あたい。
 「神様が、空から降ってくるんでしょ?」と、スピア。
 「なんで空なのさッ! 天は、海のことだよ。天も海も、アマと読む。神っていうのは、天地創造で生き残った{種|しゅ}のことさ」と、あたい。こんな優しい言い方だったかどうかは、別として。
 「今のが、天地創造?」と、スピア。
 「馬鹿だねぇ! ちょっと風が吹いただけじゃないかァ。修行さ。天地創造で生き残るためのねぇ」と、あたい。
 「生き残るぅ?」と、スピア。キョトン♪
 「そうさ。訊いてばっかいないで、少しは自分で考えたらどうだい! 前回の天地創造で生き残ったヒト種のやつらは、文明を造った。次の天地創造で、また自分たちが生き残るためにさ。その文明は、何をしたァ? 自然界に攻め入って、{傷|いた}めつけて、ぶち壊したのさ」と、あたい。面倒臭そうな顔をしていたと思う。たぶん。
 「ぶち壊すってぇ?」と、スピア。
 「あんたたちの頭ん中みたいにするってことさッ! 自然の法則を、狂わせたのさ。{穢|けが}れた文明人どもが、自然をどんどん汚していきやがった。生きるものたちは追われ、殺され、{夥|おびただ}しい数の種が{亡|ほろ}び、生き残った種も、狂わされ変形して{病|や}んでいる。でもね。天地創造で、自然は元通りの完全な形に、{蘇生|そせい}するのさ。そのとき、また文明人たちが生き残っちまったら、どうなると思う?」
 そこまでを言ったときだったかな。天空に充満していた霧のような雨が、やっと{止|や}んだ。あたい自慢の自然に{順|したが}った女の長い黒髪が、濡れて伸びきって雨水を{滴|したた}らせていた。あたいは、独り{言|ご}ちた。
 「また、三千年に一度の地獄絵巻がはじまる……」
 「ねぇ。ぼくたちって、狂ってるのォ?」と、スピア。
 「そっか。あんたも、自然の一部だったねぇ。でも、自然人の血は、薄れつつある。和の連中も、和の心が薄れつつある。そうやってみんな、自然から離れていくのさ。自然人は、自然の法則に{順|したご}うて生きてきた。
 桜の木だって、烈冬に暖い日が続けば、花を咲かせる。それが、自然に{順|したが}って生きる、自然に順うて元気を養うってことさ。だから、あたいら自然の生き物は、文明人にどんなに{酷|ひど}いことをされて自然の営みを狂わされても、何もできないんだ。ただ、狂った自然の営みに順うだけなのさ。
 でも、あたいは違う。なんで狂わされて、黙ってんのさッ! なんで狂った自然なんかに順わなきゃなんないのさッ!
 その点、あんたたち座森屋一族の血は、意気地がないのさ。自然人っていうより、{寧|むし}ろ、和の連中に近い。また質問されるとウザイから念のため説明しとくけど、和の連中ってのは、旧態人間のことさ。あたいらみたく貧しくって自然を崇拝してるけど、その営みや行動は、もはや自然の一部とは言い難い。それが、和の{民族|エスノ}さ。
 逆に、サギッチたち鷺助屋一族の血は、危うい。自然愛が強すぎるってことさ。自然界の敵と見たら、{躊躇|ためら}うことなく徹底抗戦を{計|はか}り、それを必ず実行する。サギッチって、どこか投げ遣りなところがあるだろッ? それが、血さ」
 と、あたいは潮が引くように応えて教えてやった……つもりだったが、スピアの次の言葉!
 「てかさァ。イイナズケって、知ってるぅ?」
 (誰だい! そんな余計な言葉を教えやがったのは。てかつっかさァ、何でこの{時機瞬間|タイミング}にそれなのさッ!)と、思うあたい。
 「ねぇ。何をブツクサ言ってんのォ?」と、スピア。
 (やっべぇ! 声に出てたかァ……)と、あたい。即後悔。まだまだ、修行が足りない。目指すは、アメノウズメねーさん! あたいは、次の天地創造で、アメノウズメの生まれ変わりとなるのよん♪ でも、こいつらの生まれ変わりの奴らの前でアメノウズメ踊りを舞うのは、まっぴらゴメンだから、ここで、釘をぶち込んでおく。
 「ねぇねぇねぇ、アメノウズメってーぇ?」……なんて訊きやがったら、地割れに突き落としてやる。{黄泉|よみ}の国まで真っ逆さまさ。イザナミのおねぇさまが、喜んで迎えてくれることでしょう♪

2020年12月19日(土) 活きた朝 2:06
{美童名|みわらな} マザメ
学年 学徒

令和2年12月19日(土) pm 7:00 配信
一息 50 【学徒マザメ】飛ぶ前に考えてるやつは、何を考えてると思う? それは、飛べない理由と失敗したときの言い訳さッ!

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- Akio Nandai "VIRTUE KIDS" Vol.1 to 12 -
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