MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

東亜学纂学級文庫

『息恒循』を学ぶ

一息 52 【学徒学年オオカミ】旅立ちの宣告。暗躍する{武童|タケラ}たち。自然人が創る血。養祖父の早起きを探る。

第3集「自伝編」R3.1.2 (土) 19:00 配信

 一つ、息をつく。

 太陽が、傾き沈む意思を{伺|うかが}わせながら、尾根の雑木林に触れている。何か背中を{推|お}されるような、このまま歩き続ければよしと左の耳元で{囁|ささや}かれているような、そんな気分だった。  おれとスピアは、再び無言で歩いていた。峠を越えてもまだ、太陽はおれの背中を推していた。あることを、考えていた。何気に。(これが、おれたちの旅。おれたち学級の{仕来|しきた}りの旅なんじゃないだろうか……)と。  だとしたら、一人旅は、{酷|こく}。おれやマザメとて、まだ新米の学徒学年生。スピアやサギッチに到っては、こちらもまた新米、しかも少年学年生。スピアを伴って、マザメを山から引きずり下ろして、サギッチを見つけ出し、この島を出なければ、この旅は立ち行き{儘|まま}ならないだろう。でも、出ると言っても……出た先は、海。  スピアが、ガランと玄関の引き戸を開けた。すると{直|す}ぐ目の前で、スピアの養母カアネエが、台所仕事をしていた。スピアは、いつもの光景のような振る舞い。(いつもこんなに早く仕事を終えて、家に戻って来ているのだろうか?)などと、どうでもいいことを何気に思う。  台所に首を突っ込むと、左手に廊下。スピアに伴われてその廊下を{跨|また}ぎ、居間に入った。スピアの養祖父シンジイが、円卓の前に座している。シンジイが、言った。「まァ、座れ」とも言わず、突然。  「唐突だが、直ぐに決めなさい」  「おとうさん!」と、台所からカアネエの声。それを無視して、再びシンジイ。  「お前の母は、ここを出て{行|ゆ}くことになった。おまえたちは、母に伴われて、文明人として文明社会で自然人の使命を果たすか。それとも、ここから各々が仕来りの旅に出立するか。おまえたちの道は、その二つだけだ」  「出て行くって、いつ?」と、スピア。  「任務目的の必要性および{妥当|だとう}性の確認、調査と情報の隠密にして積極進取、対策方法の列記、最善の方法手段の決定、段取り手順の策定、失敗や不測の事態が起きた時の保身{所謂|いわゆる}逃げ道の考察とその根回し。  ホトトギスが、不器用に鳴きはじめる。しからば、出立実行。必ず成功。{然|しか}らば祝杯。次の段階へと進む。これを、繰り返す。以上で、天命に到る」と、シンジイ。  「いつ鳴くの?」と、スピア。  (てか、頭痛いよ!}と、思うおれ。  「入江で、カモメたちが{騒|さわ}ぎだす」と、シンジイ。すると立ち上がり、また一言。  「寝る」  (もうかい!)と、思うおれ。  カアネエは、居間の台所側の障子の敷居の上で、仁王立ち。スピア、無言で立ち上がる。左手に突っ立っている養母をチラッと見ると、{踵|きびす}を返すような妙な{潔|いさぎよ}さで振り返り、風呂場側にある障子を抜けて、廊下に出た。  無論、その後を追うおれ。追いつく。スピア、階段の一段目の踏み板に、足を掛ける。{無垢|むく}の踏み板が、{軋|きし}む。二段目、また軋む。三段目、スピアが振り返って、言った。小声で。  「明日の朝は、シンジイより早く起きよう」  翌未明。スピア、階段を下りる。無垢の踏み板が軋む音。その下の段、また軋む。そして、居間。シンジイが、円卓の前で{胡坐|あぐら}をかいていた。その{対面|といめん}に座るスピアとおれ。スピアが、言った。  「ねぇ。じいちゃんってさ。毎朝何時に起きてんのォ?」  「何時と決まって{居|お}るわけではない。層脳……潜在意識の仕事が終わるとき。それが、{塊脳|かいのう}……顕在意識の目覚めだ」と、シンジイ。  (と、{応|こた}えて言ってはくれたけんど、わけわかんねーぇ!)と、思うおれ。  「わかった」と、スピア。  (わかったんかい!)と、{驚|おどろ}くおれ。  「で、どういう意味ぃ^?!^」と、続けてスピア。  (わかっとらんやんけーぇ!)と、思うおれ。  「意味不明。それもよし」と、シンジイ。  「じいちゃんって、不思議だね」と、スピア。  (おまえら二人とも、立派に不思議だぞッ!)と、思うおれ。  「そう思えるなら、それもよし」と、シンジイ。  「カアネエはさァ。ぼくらと一緒に行くの、{嫌|いや}じゃないのかなァ」と、スピア。  「母さんに訊け!」と、シンジイ。  (まァ、そりゃそうだな)と、思うおれ。  「そうだけどさァ。でもなんかカアネエって、違う気がするんだ。ぼくらと。じいちゃんは、同じみたいに思うだけど。母さんねーさんは、なんかそのーォ。違うんだよね」と、スピア。  「血だ」と、シンジイ。  「血?」と、おれ。つい、声が出る。  「血って、赤でしょ?」と、スピア。  (そっちかい! まったく、声も出ねぇ)と、声を出さずに思うおれ。  「赤は赤でも、赤信号だ。文明人が、自然人の法則を狂わせた。自然の一部の自然人の法則が狂えば、自然界全体の法則も狂う。血は、受け継ぐものではない。{創|つく}るものだ」と、また一応、また応えて言ってはくれたシンジイなのであった。ジャンジャン!  で、「つくるーぅ?」と、ついまた声を出してしまったおれ。  「そうだ。今おまえたちは、自然人の血を創ろうとして{居|お}る。そうさな。今はまだ、無色透明の血が2リットル。自然人に染まった血が、1一リットルってところだな」と、シンジイ。  「それって、どうなんですかァ? 多いんですかァ? 少ないんですかッ^?!^」と、おれ。  文明の亜種たちの中で生きれば、無色透明の血の半分は、{直|じき}に文明人に染まってしまうだろう。何故ならば、文明社会の法則に{順|したご}うて生きるからだ」と、シンジイ。  「ねぇ。自然人って、なにぃ?」と、スピア。  「十の一つ一つの答えを聴いたところで、なんの徳にもならん。徳の一つを修めれば、十を知ることなど、{容易|たやす}いものだ」と、シンジイ。  「どうすればいいのォ?」と、スピア。  (だからッ! 訊くなって言われとんやろがァ!)と、思う従順なおれ。  「知りたければ、学びなさい」と、シンジイ。  「どこでぇ?」と、スピア。  「史料室」と、シンジイ。  「わかった。じゃあ今日も、じいちゃんと一緒に行くよ」と、スピア。  「ダメだ」と、シンジイ。  「ダメ? なんでぇ?」と、スピア。  「朝になれば、日課が始まる。史料室の者たちは多用で、おまえたちには{構|かま}っとれん」と、シンジイ。  「じゃあ、どうすればいいんですかァ?」と、おれ。  「これから行く」と、シンジイ。  「これからァ? まだ三時じゃん!」と、スピア。  (そのとおり。当然のご意見だぞッ、スピア!)と、思うおれ。  「わしは{行|ゆ}く。おまえらは、好きにしろ」と、シンジイ。  「えーぇ!」と、スピア。  (どうするんだか……てか、眠いぢょ!)と、思ってしまうおれであった。

皇紀2085年12月31日(木) 活きた朝 4:50
学徒オオカミ 齢13

*令和3年1月2日(土)号
一息 52 【学徒学年オオカミ】旅立ちの宣告。暗躍する{武童|タケラ}たち。自然人が創る血。養祖父の早起きを探る。

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- Akio Nandai "VIRTUE KIDS" Vol.1 to 12 -
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