MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

第3集「自伝編」土曜夜7時配信 R3.3.6 一息62

#### 後裔記「社史の要約。はじめに、深謀遠慮、訣別」 少年スピア 齢10 ####

 この社史、*ぼくとサギッチのルーツ*だな。道理で、親友サギッチとの{対峙|たいじ}が{甚|はなは}だしいはずだッ!

 一つ、息をつく。

 振られて飛び出てジャジャジャ・ジャy-ン♪
 前置き、省略。
 サギッチに、直接言う。

      **二極代々記**

   《 はじめに 》

 二極の輝き。対極に{同胞|はらから}見ゆ。{是|これ}、{対峙|たいじ}なり。
 天に昇る太陽が、その輝きを{擡|もた}げ、その対極を明らかにする。
 天に沈みかけた月明かりが、その対峙の暗雲を照らす。
 前門の虎の侵入を{防|ふせ}いでいると、後門から{狼|オオカミ}が押し入ってくる。
 先を越されて悔しがる虎は、門前に立ちすくんで雲間の龍を見て吠える。
 片や、勝ち誇った狼の命とて久しからず。
 城内に、その{屍|しかばね}が横たわる。
 活き活きとして瑞々しい女の{唇|くちびる}は、男子の心を{惹|ひ}きつけ酔わせ{朽|く}ちさせる。
 その女への熱情が冷めて消え{失|う}せてしまう前に、対極から現れた別の女の若々しい{鮮|あざ}やかな{頬|ほほ}に、新たなる熱情が{萌|きざ}しはじめる。
 その対極の輝きとて、久しからず。
 {然|さ}りとて、{侮|あなど}れず。
 東西南北、{何|いず}れの極にも、対峙する同胞の一族あり。
 是も、久しからず。
 然りとてこれもまた、侮れず。
 {鷺|さぎ}助屋一族と座森屋一族も、互いに遠く離れた極に在り。
 立ち位置を大きく{違|たが}えながらも両者は、共に同じ血を持つ同胞として、立命の息吹を{燈|とも}しつづけている。
 その{燈火|ともしび}が、互いが生まれ持った忠純{故|ゆえ}に対峙を招き、悲劇を演じ続けることとなる。

   《 深謀遠慮 》

 見渡す限り、同胞たちの{憂|うれ}いと{思惑|おもわく}は、東西南北に散っている。理を同じくしているが{故|ゆえ}、{辛|かろ}うじて心の一部のみが結びついているに過ぎぬ。我らみな、あることに恐れ{慄|おのの}いている。その最悪は、次の天地創造で、亜種文明{民族|エスノ}が生き残ってしまうことである。
 自然……。
 我ら亜種自然{民族|エスノ}は、この自然の一部である。
 ヒト種の亜種が、もう{一|ひと}。最も絶滅が{危惧|きぐ}されている亜種、和の{民族|エスノ}である。彼らは、元々その一部であった自然を{崇拝|すうはい}し、その心は依然、自然の一部であると言ってよい。{然|しか}しながら、その身は自然から離れ、自然の{猛威|もうい}を{脅威|きょうい}に感じ、恐れ慄くばかりである。
 再度、何度でも言う。 亜種文明{民族|エスノ}は、次の天地創造で、完全なる絶滅、疑いなき消滅、跡形{微塵|みじん}も無く{亡|ほろ}びなければならない。さりとてヒト種は、この文明……科学の力無くして、次の天地創造で生き残ること{適|かな}わず。数千年に一度の自然大再生、怒り狂う猛威に{敵|かな}う{種|しゅ}無し。
 そいの自然の一部である我ら自然エスノも、その大再生の猛威のなかで、{終|つい}にはその荒れ狂った自然に切り捨てられる。それを、「我、飽くまで自然の一部なり。自然と共に、ここに再生す」と言わしめる強大な力がある。それが文明……科学の力だ。
 我らは、この文明の力を健全に駆使し、自然の一部のまま、次の天地創造で生き残る。然しそれは、その文明の主である文明エスノに、阻止される。そればかりか……再度、何度でも言う。文明エスノは、人間是皆絶滅せしめる。
 {故|ゆえ}に、百年ごとに起きるヒト種の{掟|おきて}……大動乱の都度、この文明エスノと飽くなき戦うことを余儀なくされる。然しながら、その闘戦は、我が**{義|ぎ}**である。座森屋一族は、その義の勇軍の{斥候|せっこう}として、深く文明界の中へ、文明人の中へと潜入していった。そしてあるとき、座森屋一族の者みな、あることに気づく。
 一族の血……座森屋一族の血が、その義に異を唱えている。文明人との対峙の垣根を超えた斥候の使命が、ある物を見、ある事を聞き、何かを感じ、自らその血を変えたのだ。その血が、{古|いにしえ}より語り伝えられる武の心……{戈|ほこ}を{止|とど}めさせる至誠の心である。
 自然の生き物……ヒト種であれ、{蟹|かに}であれ、{猿|サル}であれ、フナムシであれ、生を営み続けるほかの種{皆々|みなみな}{各々方|おのおのがた}の生を絶滅に至らしめるという行為必達に、一体全体{如何|いか}なる理があると言うのか。仮に、確固たる理がそこにあろうとも、そこの理に根っこは存在せず、断固として義とは成り得ない。
 ここで、座森屋一族と{鷺|さぎ}助屋一族は、血を{違|たが}える。血とは、義である。では、問いたくなる。
 座森屋一族の義とは、何か。
 鷺助屋一族の義とは、何か。
 亜種自然{民族|エスノ}の理とは、何か。

   《 訣別 》

 文明人も自然人も和の人びとも、ヒト種......人間であることに、疑いはない。
 初対面で直ぐに、{琴瑟相和|きんしつあいわ}し、互いに{知己|ちき}の間柄となる人と人がある。そうかと思えば、{如何|いか}なる暗示の{技|わざ}を駆使しようとも、どうにもこうにも真心を曲解し合ってしまう人と人もある。
 ここに登場する二人の出会いは、前者である。
 自然人としての天命が、両人を{意気相|いきしょう}傾けさせたと言ってよい。ところがこの両名、知命を異とした。{子等|こら}はみな立命し、知命から先が、運命である。{況|いわん}や。知命とは、{正|まさ}に運命の分かれ道。故に二人の運命は、後者の関係と相成る。
 その二人とは、中空車輌を提唱したジパング島(現・ザペングール島)の{黒鷺|くろさぎ}君と、側溝車輌を提唱した{日|ひ}の{本|もと}島(現・ヒノーモロー島)の{座黒|ざぐろ}君である。二人とも、彼らの一族に代々伝わる{後裔|こうえい}記に名を{馳|は}せた、その時代の{寵児|ちょうじ}だ。
 両君の後裔記それぞれに、〈その日〉のことが記されている。
 言わずもがな、二人は{武童|タケラ}の運命を歩む。

 以上。 

 {蛇足|だそく}・後書きの{類|たぐい}も、省略。
 サギッチに、直接言う。

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 _/_/_/ エスノキッズ心の学問「自伝編」 _/_/_/
 平成22(2010)年4月創刊
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