MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

東亜学纂学級文庫

『息恒循』を学ぶ

第3集「自伝編」木曜夜7時配信 R3.3.11 一息64

#### 後裔記「疎開した島に戻る。孤独の{微睡|まどろみ}を{紡|つむ}ぐ」 学徒オオカミ 齢13 ####

 *孤独の回避*の迷走は、もう{止|や}めた。瞑想で{甦|よみがえ}る。*祖先が後裔記に託した悲願*とは。

 一つ、息をつく。

 一人、海岸を歩く。
 仮に、この島で寝泊まりするとなれば、無論のこと、{御定|おさだ}まりなど無い。{如何|いか}なる{類型|パターン}有りや!

 【い】 秘密基地の二階の二段ベッドで、幽霊と一緒に寝静まる……パス!
 【ろ】 スピアの家、二階の六畳間の隅っこに、{居候|いそうろう}……パス!
 【は】 騒々しい朗読室に近い深層住宅に住まうサギッチの部屋に、転がり込む……パス!
 【に】 もう一つ、例に{挙|あ}げるまでもなく有り得ないが、一応書く。森の奥深く、繁みに見え隠れする山小屋で、一つ屋根の下、魔性の{鮫|サメ}{乙女子|おとめご}と共に、一夜を{遣|や}り過ごす……{丁重にお断り|PASS UP}!

 結局、いつもこの島を眺めていた狭水道あたりまで歩く。ここなら、水道を通る漁船からでも、岸辺に立って手を振っている人に気づき{易|やす}い。{況|いわん}や、その手を振る人が、おれ。
 漁船の{艏|おもて}の{舳先|へさき}部分を、ちょこんと岩場{擦|す}れ擦れに近づけられそうな場所も、{予|あらかじ}め見当をつけておく。無論、潮の干満を考慮しなければならないことも、頭に入っている。
 そうこうして、おれが降り立った島……どうやら、ザペングール島と呼ばれているらしいその島に、無事にというか、特に目的も行先も頼るところもないので、戻ってきた。おれは、スピアのように、新しい住まいや暮らしぶりのことは、書かない。まァ、スピアと同じように、靴を{脱|ぬ}いで上がる家屋の二階に住まっているとだけ、言っておこう。
 その部屋で独り、何気に思いに{耽|ふけ}ったのはいいが、そのもどかしい{呪縛|じゅばく}のような{微睡|まどろみ}から、抜けられなくなってしまった。覚えている範囲で、断片を、それなりに{繋|つな}いで、書いてみた。こんな感じ……。

 (後裔記っていうのも、変だよな。先人……ご先祖さま目線。「おれたちの子孫が書いた日記!」だもんな。おれらがその子々孫々なんだから、おれらがおれらの子孫に向けて書く{訳|わけ}じゃない。ご先祖さまに読んでもらうために書く、おれら子々孫々の行動の記録。それなら、後裔記で、意味が通る。変じゃない。おれの考え、変かなーァ!
 いや、変じゃない。思い出した。苦労人(苦浪人)の無知運命期を{驀進|ばくしん}し{始|はじ}めたムロー学人が、言っていた。寺学舎の座学の塾師としてではなく、珍しく公開議事堂(富士山滑り台)に、ふらっと顔を見せたときのことだった。
 無論、その日は、魔性の{鮫|サメ}{乙女子|おとめご}さまは、欠席……というか、無遅刻無欠席の完璧主義のあの強がり女が、その日……{何故|なぜ}か、何の連絡もなく、寺学舎を休んだのだ。
 自然体のやつらは案外、外圧や誹謗中傷に強い。だが、強がっているヤツらほど、{潰|つぶ}れるときは、ある日突然で、意外と、驚くほど{脆|もろ}いものだ。マザメは、そういう女だ。それは……無論、{兎|と}も{角|かく}!
 で、誰の何の話をしてたんだったっけぇ? そうそう。ムロー先輩の、後裔記に関する{蘊蓄|うんちく}だ。ムロー先輩は、{斯|こ}う言った。
 『後裔記は、自分たちがこの世に{居|い}た{頃|ころ}のことを忘れないように、その自分が生きた時代の行動や思考を記すことを習慣にして、それを次の世代が引き継ぎ、それをまた、次の世代が受け{継|つ}いでゆくもの。だから、自然人の祖先たちは、自分の一族の{裔|えい}の末端のことまで、難なく、{恙|つつが}無く、知ることができるのだ』
 ……だったかな。そうだァ! それでかーァ♪ 間違いない。たぶん。
 後裔記で、あっち(先人かた{観|み}て)の世で今を生きている子々孫々のあれやこれやを読み知ったご先祖さまが、何かの意図で、代々の出来事の中から一つを選び出し、その風景や問答や行動や思考を、その今を生きるおれら一人ひとりの夢の中に、映し出してるんだ。そうに、違いない。絶対に、たぶん!)

 これを、{瞑想|めいそう}と呼ぶは、不届き{千万|せんばん}……だね(アセアセ)。
 ただの回想……ん? そうだ。回想と言えば、もう一つあった。
 狭い水道の岸辺で、漁船が通るのを待っているときのことだった。この時令、まだ日差しは、強い。血肉が腐って異臭を{放|はな}つのも、早い。その血肉を期待してか、{鴉|カラス}の野郎たちが、おれの周りに集まって来た。おれはまだ、{屍|しかばね}じゃない。適当な岩場に座り込んでいたおれは、そのまま後ろに倒れて、{仰向|あおむ}けになった。そして、{何気|なにげ}に思った。

 (この身を、いま宙に舞う黒いおまえたちに{供|きょう}するとき、我が生は{亡|ほろ}びる。おれには、その写像が、はっきりと見える。その一部始終は、後裔記に記されることはない、おれの、唯一の真実。それが、おれの最期。死だ。その幕が、下りてゆく。それが、はっきりと見える。
 おれの血が腐ると、どんな悪臭を放つのだろうか。考えてみれば、今こうして生きているということは、何とも、不思議なことだ。その生きるということも、考えてみれば、どの部分も、説明し{難|がた}い。どれもこれもが、そのすべてが、不可解……不可思議だッ!)

 南の{彼方|かなた}の{灘|なだ}に、一つの点が、映り込んでいる。実像……漁船だ。それに気づくが早いか……上空のカラスたちの一羽が、おれに、言った。

 「もう、日が暮れる。おれが鳴いてやるから、早く、家に帰れ!」

 そして、鳴いた。

 「アーッ、アーッ♪ ブルブル。ワーァ、ワーァ♪ ゴロゴロ。アーッ、アーッ♪ あーァ?!」

 おれの血が、また未来へと、流れはじめた。

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 平成22(2010)年4月創刊
 旧メルマガ名: 「オールドパパスの配信小説」

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