MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

第4集「自伝編」金曜夜7時配信 R3.3.26 一息72

#### 後裔記「講釈要約の後半、{鷺|さぎ}助屋の遺伝子が語る!」 少年スピア 齢10 ####

 アヤツの講釈の要約の後半は、ぼくとマザメ先輩にしか出来ない。それは、{何故|なぜ}か! 今、明かされる。*戦うことを選んだ鷺助屋の血*、その*言い分*!

 一つ、息をつく。

 第一声!
 「さすがは、オオカミ先輩♪」
 ぼくが予想するに、これには、マザメ先輩も異論は無いと思う。
 {何故|なぜ}なら……。
 サギッチが書いた講釈の下書き原稿の内容は、ぼくがオオカミ先輩に{諳|そら}んじて聞き取ってもらった内容の、{優|ゆう}に二倍はあった筈だからだ。それを……あそこまでの要約を、{遣|や}って退けた。その努力がどれほど、オオカミ先輩の日頃の行動を超えているか!
 それが、どれほどの功績に値するのか、その近似値を、本当に実感できるのは、二人だけだ。聴講によって原文の容量のほどを知るぼくと、その原稿を胸に{携|たずさ}えて、峠道を上って行ったマザメ先輩……。
 余談は、ここまで。
 要約のつづき……その、残りの三つ……と、その前に、一つだけ。
 この要約という作業の発案者、マザメ先輩から頼まれたこと。

 「アイツの長い講釈の{焦|こ}げて食えない{衣|ころも}を、乱暴に削ぎ{棄|す}てていくと、七つの副題が、姿を現す。最初から四つ目までは、まァ、アイツの読書の成果。でも、残りの三つは、{鷺|さぎ}助屋の遺伝子が、悪さをしてる。入れ知恵をしてるってことさ。
 それは、アンタが思い出そうとしたり、諳んじようとしても、表には出てこない。そう、{曲者|くせもの}さ。アンタ自身が、感じるしかないんだよ。
 だから、要約、誰かに手伝わせてもいいけど……誰かって、一人しかいないけどさ。{兎|と}に{角|かく}、後半の三つだけは、あんたの頭が思い出したり、口が諳んじた内容だけじゃなくて、アンタの腹の脳が感じたことを加味して、要約して欲しい{訳|わけ}さ。
 わかったーァ♪」

 言わずもがな、{解|わか}りたいなんて思わないけど、「うん」って言うしか対処の術を知らないぼくなのでした。
 余談の蛇足、以上。 

   《 五、文明人衰退の真相 》

 文明{民族|エスノ}は、自己破滅の道連れを求めている。きっと、寂しがり屋なのだ。これは、{児戯|じぎ}に類する作り話ではない。現実の話なのだ。我ら自然人と{対峙|たいじ}している文明人は、どんな性質を持ち、どんなふうに見えているだろうか。やり手のビジネスパーソン? 有能な外交官?
 ……では、答え合わせ。
 正解は、統合失調症。{或|ある}いは、精神分裂症。無論、これらは、ヤツらが考案した病名だ。もう少し、具体的に言おう。メランコリーな、文明人。彼らが自分たちのために考案した病名を、いくつか列記する。
 {抑鬱|よくうつ}神経症、神経症性{鬱病|うつびょう}、気分変調性障害、持続性抑鬱障害……等など。
 {躁鬱病|そううつびょう}という病名が考案された頃はまだ、西洋医学に至誠を感じることができた。だが、〈神経症ビジネス〉という言葉が{巷|ちまた}に流れ出したころから、病名が、どんどん増えはじめたのだ。
 文明界の現状の話は、ここで、{扠|さて}置く。

 要は、神経症ビジネスの顧客を総括して、メランコリー文明人と呼ばれているということだ。
 メランコリー文明人は{何故|なぜ}、{憂鬱|メランコリー}という総合神経症疾患に病んでしまったのだろうか。
 彼ら彼女たちは元々、〈洗脳ビジネス〉の顧客に選ばれた、高学歴の人たちだ。対峙する我ら自然人との闘いのために、忠純な兵士として育て上げる。それが、洗脳ビジネスの目的だ。その洗脳のために仕掛けられた{広告戦略|プロパガンダ}のことを、文明界の巷では、〈洗脳ビジネス〉と呼ばれている。
 洗脳ということは、{脳髄|のうずい}に働きかける訳だから、当然、ある程度以上の{知能や知性|インテリジェンス}を自認する{自尊心|プライド}の高い人たちが、その対象として囲い込まれた。

 この洗脳ビジネスは、成功したかのように見えた。{然|しか}し……。
 危うし! 自然{民族|エスノ}……とは、ならなかった。半世紀に{亘|わた}って、用意周到、{虎視眈々|こしたんたん}と育て上げてきたメランコリー文明人を、〈神経症ビジネス〉の顧客にされてしまったのだ。
 結果、メランコリー文明人に、ある症状が見えはじめた。周囲に同調しないと、生きていけなくなったのだ。彼ら自身が、この症状にどんな病名を付けたのかは忘れてしまったので、ここでは仮に、〈依存症性同調障害〉とでも名付けておこう。
 自滅的な社会現象……{即|すなわ}ち、これら新たなる神経症の出現によって、我ら自然人は、負け試合を、延命という名の{闘戦中間の休息|ハーフタイム}に、持ち込むことができたのである。
 自然{民族|エスノ}を{亡|ほろ}ぼすことを共通の目的意識として、共同体感覚を{培|つちか}って、今まさに、その長きに{亘|わた}った悲願の日々が成就しようかという、そのとき、彼ら彼女たちを、制御の利かない過度の同調という障害が発生、発病してしまったのだ。
 赤い服が{流行|はや}りだしたと聞くと、もう、制御が{利|き}かない。周囲との調和も対照(実際に照らし合わせてみること)もそっちのけで、ただただ慌てて〈赤〉を{揃|そろ}えるために、西へ東へ、南へ北へと、{奔走|ほんそう}する。
 昨日までA子ちゃんが好きだって言ってたのに、何人かがA子ちゃんを嫌っていることを知ると、その日その時から、〈あたい、A子ちゃんなんて、実は、好きじゃなかったのよねぇ♪〉に訂正変更して、その{吹聴|ふいちょう}に躍起になる……みたいな。
 マザメ先輩が、然修録に書いていた話じゃないけど、自然も、文明も、和も、どの亜種のどいつもこいつも、人間は確かに、弱くなったのだ……と、思う。

   《 六、生命体となった〈数〉 》

 文明{民族|エスノ}を二世界三亜種の{覇者|はしゃ}に{伸|の}し上がらせようとしているは、新たに生命体の{類|たぐい}に仲間入りした〈数〉という{奴|やつ}らだ。
 言わずもがな、その{礎|いしずえ}を築いたのは、メランコリー世代の文明人であるが、これ前述のとおり……彼ら彼女たちは{既|すで}に、弱体化の一途である。
 このメランコリー世代が弱体化{或|ある}いは老いてゆく{最中|さなか}の陰で、頭角を現す者あり。その彼ら彼女らは、神経症ビジネスにも、洗脳ビジネスにも、宗教ビジネスにも、依存することはなかった。彼ら彼女たちが依存したもの……正にそれが、〈数〉なのだ。
 そんな彼ら彼女たちは、その〈数〉に一定の法則と無限の特性があることに気づき、〈数〉に{意図|いと}を持たせ、{息吹|いぶき}を吐き出す機能を組み上げた。
 さて、彼らが気づいたその特性とは……。
 たとえば、四当五落。メランコリー世代にとっても、懐かしい言葉として記憶に{甦|いみがえ}ることだろう。受験戦争。四時間寝るか、五時間寝るかで、当落が分かれる。
 次。一石二鳥。一石一鳥で甘んじているようでは、{戦|いくさ}には勝てない。そんな考えを持っている文明人との戦にあっては、一石二鳥くらいで甘んじているようでは、到底勝利は見えてこない。

 {遂|つい}に頭角を見せたその{主|ぬし}{等|ら}……〈数〉の入信者たちは、目前の問題や逆境の難題を、確率や割合という〈数〉に置き換えるという発想を持った。
 しかも、そのために必要と考えて自ら修練して、{湧|わ}き{出|い}でる分数や少数を暗算で処理し、概算で百分率や歩合をも{弾|はじ}き出せるようになっていった。
 そんな彼ら彼女らのことを、シゾフレニア世代と呼んでいるそうだ。様々な電子機器を携帯し、瞬時に素早く、計算したり情報を集めたりする能力に、恐ろしく{長|た}けている。我ら自然{民族|エスノ}にとっては、{遂|つい}に、こいつらこそが、脅威だ。

 だが、その能力には一つ、大きな問題があった。あらゆる計算や情報収集の方法を知ってはいるが、{何|なん}のために、何を、どうやって計算するかは、誰かから指示してもらわなければ、判らないのだ。
 さらに、その計算や情報の集め方が正しいのか、或いは間違っているのか。その行為行動が、善なのか、{将又|はたまた}悪なのか。そんな、一番大事な判断が、自分では皆目見当がつかないのだった。
 {故|ゆえ}に、シゾフレニア世代の文明人たちは、**言いなり**の労働を{生業|なりわい}とすることを、余儀なくされた。その〈言いなり〉という、意思を持たない心が、〈数〉という名の、こちらもまた意思を持たない生命体と、結びついたのである。
 これがまた、{厄介|やっかい}な、新種の脅威となってしまった。

 〈シゾフレニア世代の文明人〉と〈数〉の連合軍は、メランコリー世代の多勢の{群|む}れにも増して、巨大化しつつある。この再編成されようとしている新たな多勢に勝つためには、{我等|われら}〈自然人〉と〈和の人たち〉の連合軍は、一石三鳥の脳力と、その実践行動力を急務として、{鍛|きた}え上げなければならない。
 これは、桁数の多い割り算と同じことだ。桁数が増えれば、思考の量も増える。思考が増えれば、より高度な集中力が、求められる。その成果は、言わずもがな。計算能力と問題解決能力の、向上だ。
 だが、これでもまだ、一石三鳥とはならない。
 発想力が、欠けているのだ。

 ここで、一つ。
 留意しておかなければならないことがある。
 「{斬新|ざんしん}な兵法が、必ずしも、有効とは限らない」と、いうことだ。{寧|むし}ろ、{古|いにしえ}の過去に秘蔵された数千数万の兵法の実際や、その語録の中に、最も我等の期待に{適|かな}う答えが隠されていることのほうが、多いのだ。
 斬新さに魅せられて目が{眩|くら}んだり、己の独創性に酔って、進むべき道を見誤ったり、そんなことをしていたのでは、われら自然{民族|エスノ}にも、和の{民族|エスノ}にも、未来は無いということだ。

   《 七、数に対抗し{得|う}るもの 》

 {算法や問題解決の手順|アルゴリズム}の修得以外に、脳力を鍛えるためにやるべきことが、二つある。
 それは、音読と手書きだ。
 さらに進めて言えば、朗読と、写本だ。
 この二つが、{武童|タケラ}や{美童|ミワラ}の得意分野だと思っている自然{民族|エスノ}の諸氏諸君は、多いと思う。
 では、問う。
 得意とは、何がどこまで出来るこを、指すのか。
 答えよう。
 それは、速度だ。
 では、説明しよう。

 思い出してもみよッ!
 日常の、朗読室……。
 入る前に、持ち込む本の読む範囲を決め、その範囲にある漢字すべてに、2Bの鉛筆で、{振り仮名|ルビ}を振る。
 場面は変わり、巡回授業所の準備……当番の講釈人。その準備とは、手書きで、原稿や資料を作ること。しかも、漢文の勢いで、漢字を多用する。
 但し、その単語や熟語の意味、{延|ひ}いてはその由来をよく理解して、誤用は許されない。出来上がった文体は、{宛|さなが}ら漢文調。それ即ち、簡潔明瞭!

 これらの目的は、簡易な数字を一行並べただけの足し引き算を{幾通|いくとお}りも暗算する{其|そ}れに、等しい。
 その目的とは、{況|いわん}や!
 速度だ。
 遅ければ、{何|なん}の意味もない。
 速さが、脳力を高める。
 その次に、まだやるべきことがある。
 分析、評価、自反。
 そしてまた、まったく同じ本の同じ範囲を、朗読する。
 或いは、講釈の原稿を{推敲|すいこう}して、まったく同じ場所、同じ時間に、再度、講釈する。無論、場所は同じ朗読室の檀上でも、その日その時間、巡回授業所は、開講していない。

 次。
 敵を知る。
 コツは、場合分けと、時間分けだ。
 世代別、出身地別、血液型別に分類して、そのそれぞれを、分析する。分析し{尽|つ}くしたならば、次は、それを自ら、評価する。自分のことを一番{解|わか}っているのは、自分である。他人が評価するよりも{遥|はる}かに、厳しい評価となろう。
 そこまでを終えたならば、それを{日毎|ひごと}月別に、{更|さら}にそれを、年次の{括|くく}りで、自反する。
 以上。
 たった、これだけだ。
 ここで一つ、注意しておく。

 〈数〉は正直者だが、それがどうしたことか、他人を{騙|だま}すのに、最もよく利用される。それも、この〈数〉という{奴|やつ}の素顔の一つだ。
 特に、その道の専門家と自称する者が扱う〈数〉には、相当な注意が必要だ。具体的に言おう。正常値、全国平均、実態調査の統計数値……みたいな言葉には、気を付けろッ!
 {最|もっと}も{尤|もっと}もらしいのに、{何故|なぜ}、注意が必要なのか。
 答えよう。
 {限定地域特有|ローカル}で、{偏|かたよ}っていて、狭い範囲の中の相関関係しか持たないからだ。
 {飽|あ}くまで個人的な感想や見解として作文された調査データでさえ、自称専門家が作りさえすれば、それは{直|ただ}ちに、正常値とか標準的とか平均値などといった、{曰|いわ}く付きの称号が与えられてしまう。
 人は、その称号で判断して、架空の因果関係を、自ら作文させられてしまう。しかも、それを信じると、自分で決めてしまう。数字に{拘|こだわ}り過ぎると、真実を見失うだけでなく、知らず知らず、まったくの{嘘|ウソ}を、自ら{捏造|ねつぞう}してしまうのだ。
 それが、どういう意味か、考えてもみよッ!
 答えよう。
 己の命のみならず、大切な人たちの命をも、{奪|うば}い取ってしまう。
 それが、この世に{平時|へいじ}など存在し得ないという真実の{所以|ゆえん}なのだ。

 以上だけど、要約だってのに、やっぱ、長いよね(……アセアセ)。
 最後に、やっぱりこれ♪
 ……蛇足。

 「四当五落」とは、確かに受験生の現実的な〈数〉だと思う。でも、ぼくらの{脳髄|のうずい}や肉体がヒト種である限り、四時間や五時間の睡眠では、到底足りない。
 大人の年代である{武童|タケラ}たちに必要な睡眠時間は、七時間。子どもの年代である{美童|ミワラ}に到っては、七時間でも足りず、特に脳髄形成期の幼循令に{於|お}いては、10時間を超える睡眠時間が必要なんだそうだ。
 みんなも、こんなの読む{暇|ヒマ}があったら、早く寝ればーァ?! 
 
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 平成22(2010)年4月創刊
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