MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

東亜学纂学級文庫

『息恒循』を学ぶ

第4集「自伝編」土曜夜7時配信 R3.3.27 一息73

#### 後裔記「岸辺に干された敷布団とぼく。{煌|きら}めく太陽神」 少年スピア 齢10 ####

 岩場に敷布団を敷いて、*この世を見渡す*。世間は、*戦の準備*。{俄|にわ}かに{瞑想|めいそう}。矢庭に{焦|あせ}り。「この島を、出よう!」 ここに{居|い}る限り、ぼくらの運命は、*始まらない*。

 一つ、息をつく。

 オオカミ先輩の然修録……その自反。
 「先輩健在、ここにあり!」って感じ。
 いいね♪
 でもさ。気づいてたァ?
 もう、{師走|しわす}だよッ!
 この島に{居|い}る限り、対人関係で{凹|へこ}んだり悩んだりすることって、無いような気がする。
 {武童|タケラ}たちは、着々と戦争の準備をしてるっていうのに、{美童|ミワラ}……特にぼくら、浦街寺学舎のムロー学級8名は、離島で{安穏|あんのん}と、何も変化の無い毎日を送っている。
 悩まなきゃなんないのは、そこじゃないのかなァ。
 でも、ここは島。
 {慌|あわ}てて旅に出たら、真冬の寒空の{下|もと}、刺すような空気を割りながら、{荒|すさ}んだ三角波に揺られ揺られ、日々日々、{唯々|ただただ}{遥|はる}か遠く先の水平線を目指して、ひたすら航海を続けなきゃなんない。 しかも、まさか、オンボロ漁船でぇ? それさえも、慌ててからじゃ、調達は困難だと思う。
 この島に来て、3か月を過ぎて……もう、4か月になる? {兎|と}にも{角|かく}にも、この星の一年が、終わろうとしている。

 ところでもう一つ、然修録の話。
 マザメ先輩の自反。
 自分の人生に、不安を感じている。
 それを主題に{掲|かか}げたのに、その内容は、省略ーぅ?! でも、{解|わか}る。本当に不安で、本当にどうしたらいいか{判|わか}らないときって、悔しいくらい、何一つ、言葉にならない。

 それにしても、驚いた。
 話、飛びまくってるね……(アセアセ)。
 短期荷重で争うときは、敵としては物足りないヤツだった。でもそれが、長期荷重での争いに転じた途端、今までの人生で経験したこともない強敵になった。
 短期荷重……持ち上げる、ベランダに運ぶ、手摺りに被せる。
 長期荷重……担う。廃墟の階段を下りる。岸辺まで運ぶ。
 真冬の湿った敷布団、恐るべし!
 峠お越えて廃墟の階段を上るという長期荷重を闘ってくれたオオカミ先輩……マジ、有難う♪

 で、今日は、五省舎{事|こと}秘密基地に、一人でやって来た。
 言わずもがな、公団型集合住宅の廃墟。その二階の部屋。今日はまだ、〈就寝許可証〉の木札が、生きているぼくの目に映らない。
 まだ、寝てるのかなァ? 寒いしな。おにいさんの思い出ばなしは、夏ばっかだったからな。冬は、苦手なんだろうな、きっと……たぶん。
 ぼくが頭に載せて運んできた〈夏掛け〉と言われても反論出来ないくらい薄手の毛布を、おにいさんの{煎餅|せんべい}布団の上にして、四隅を重ね合わせるように、{被|かぶ}せてあげた。
 「焼け石に水だろッ!」って、思うよね?
 でもぼくは、重ね着の達人なんだァ♪
 冬物の繊維製品なんて、一つも持っていない。だから冬になると、ぼくは、8枚とか9枚とかの夏用の服を、重ね着してる。無論、純正はぜんぶ、半袖だ。それを、長袖にする方法を、母さんがーァ♪ 夜なべーぇをしてーぇ♪ ……教えてくれた。
 重ね着式冬用二層毛布が、ゆっくりと、盛り上がった。
 「ありがとう」
 それは、気のせいかと思って忘れ去られても不思議のないくらい、か細く小さな声だった。依然として居並ぶ、{空|から}になって久しい2段式寝台の数々……。
 すると{俄|にわ}かに、〈就寝許可証〉の木札が、薄っすらと*おにいさん*の枕元に、浮かび上がってくる。
 このまま、この世の中が終わってしまうのではないかと思わせるような物静かな時の流れのなかで、ぼくいが被せた薄っぺらい毛布が、{膨|ふく}らみを帯びる。徐々に、徐々に……。
 すると直ぐに、{何故|なぜ}かまた、沈みはじめた。徐々に、徐々に……。そして、〈就寝許可証〉の木札も消えて、見えなくなってしまった。ただ、「ありがとう」が、言いたかっただけみたいだ。
 (美しい人……)と、なんか、そんな言葉が、ふと頭の中に浮かんだ。(この世にも、居るんだな。心の美しい人……)と、{何気|なにげ}に、そんなことを思った。
 ここ数日の晴天続き。(湿った敷布団でも、干すかーァ♪)と、思い立つ。敷布団を抱えて、廃墟の共用部の階段を、下りる。抜き足差し足、忍び足……いつもの、習慣。外に出る。岸辺を、見渡す。
 「{平|たいら}っぽい岩場が、いいかな。んっとーォ……あァ! ……んっとーォ……まァ、あそこで、いっかーァ♪ 一応」と、最近のぼくは、何をするにしても、こんなふうに、{独|ひと}り{言|ご}ちる。なんか……暗いよね(アセアセ)。

 敷布団を、広げる。
 干すという目的を変える気はなかったけど、その上に、寝転んでみた。意外と、心地がよかった。こんなとき……心地がよくて、特に他に、急いでやらなきゃならないようなことも、思い当たらない……みたいな。
 そんなとき、最近のぼくは、{唯々|ただただ}何気に、いろんな{想|おも}いを巡らす。
 (独り{言|ごと}っていうか、誰かに聞いて欲しいんだか、なんか、どうしてあげたらいいんだか判らないような、なんかそんな、一人でぼそぼそ{喋|しゃべ}ってる大人って、多いよなッ!)と、これは、声を出さずに、ただ思っただけ。
 風もなく、今朝は早起きだった太陽神が、{赤裸々|せきらら}に{煌|きら}めいている。なんか、笑ってるみたいだ。{兎|と}にも{角|かく}にもこの時節、これほど有難いことはない。
 起き上って、{胡坐|あぐら}をかく。想いに{耽|ふけ}る。また、寝そべる。何気に考える。起き上って、胡坐をかく。また、想いに耽る。寝そべる。また、何気に、何かを考える。
 そうこうしながら、(どれほどの時間が、流れ去ったことだろう……)と、時折そんなことを思いながらも、それでもまだぼくは、何気に、どうでもいいようなことばかりを選んでいるかのように、そんな、どうでもいいようなことを、また、考えはじめた。

 (**今日**という{戦|いくさ}も、半分、終わったなッ! 午後の戦は、時間任せ。そして、今日もまた、一日が、終わる。
 **一週間**という戦も、水曜日が終わったころには、同じような気分になる。また、もうすぐ、一週間が終わる……。
 そして、〈ものまね大賞〉でも競うかのように、まったく{同|おんな}じ感じで、一か月の戦が過ぎ、一年の戦も、過ぎてゆく。
 そしてまた、どれほどの時間が、流れ去ったことだろう……と、思ったとき、矢庭に、ハッとする。
 ぼくの一生という戦が、終わったのだ。
 その**とき**は、何の{前触|まえぶ}れもなく、突然、やってくる。そして、{呆気|あっけ}なく、ぼくの人生は、終わる。
 {疲弊|ひへい}したぼくの肉体が、横たわっている。
 「{死骸|しがい}は、食わない」って言ったのは、誰だったかな。{鷲|わし}じゃない「ワシワシ」言う……トンビじゃない、{鷹|タカ}でもない……そう、ハヤブサだったけぇ?
 ぼくの運命は、廃残兵の{流転|るてん}の旅。
 ぼくは、その{殿|しんがり}。
 ぼくの人生は、{先達|せんだつ}や先輩、同輩や後輩たちへの、社交辞令。
 春を待っていたら、そんなふうに、ぼくの人生は、終わってしまう。
 春を待たずに、この島を出なきゃ!)

 そう思った途端、ぼくは、(みんなに、お別れの挨拶をしなきゃ!)と、思い立ち、急に、忙しくなった。
 (でも、最初の挨拶が、あいつじゃなァ……。パス。後回しだな。でもなんか、お風呂の湯舟に浮かんでる、プラスチックのアヒルのオモチャみたいだな。軽いんだろうな、本当は。歩いてるときは、メタボのボテボテのペタペタ歩きなのに……)
 と、そこで、思うのを{止|や}めた。
 思ってることを気づかれると、面倒だからだ。
 カモメなら歓迎するけど、あの一匹狼……元い。一匹ウミネコの可愛くない歩学の講釈は、正直、どっちゃーでもいい!

 昼どきを過ぎた途端、何やら少し、肌寒くなってきた。太陽神は、同じ色で煌めいているっていうのに、{何|なん}で午前中より昼過ぎのほうが、寒く感じるんだろう。
 だからと言って、コンクリート打ち{放|っぱな}しの廃墟の中に、入る気にはならない。そっちのほうが、もっと寒いだろうから。太陽神がやる気満々のうちは、このまま外に居るほうが、無難だと思った。

 (子どもって普通、こんなんじゃないよな……きっと、間違いなく。たぶんだけど。
 然修録?
 後裔記?
 書かないよな、普通……そんなもん!
 社史? 読まないよッ! 普通……そんなもん)

 ……と、そんなことを思いながら、何か他の事を考えようとしたけれど、どうも、{塩梅|あんばい}が悪い。どうにも、気になって仕方がない。
 何がって、あいつ!
 プカプカというより、潜航していた{涙滴|るいてき}型のでっぷりした潜水艦が、浮上してきたみたいだ。
 岸辺に上陸!
 まん丸い腹を左右に振りながら、狭い砂浜から岩場を伝って、ぼくを無視して、直ぐそばを歩き去ろうとしている。
 せめて、ぼくに近いところだけでも飛び上がって、警戒という社交辞令を見せてくれても良さそうな{場面|シーン}だ。
 どうしても、飛ぶのが{嫌|イヤ}だと言うなら、せめて、走って過ぎ去るとか……。
 でも、実際は……。
 ペッタンペッタン、立ち止まり、横目でぼくを、チラッ!
 ペッタンペッタン、立ち止まり、横目でぼくを、チラッ♪

 目の前を、今日の対戦相手が、通り過ぎてゆく……。
 無心、{唯識|ゆいしき}、{瞑想|めいそう}……。
 {嗚呼|あァ}今こそ、心の修行の成果が、試されるとき……。
 
####

 _/_/_/ エスノキッズ心の学問「自伝編」 _/_/_/
 平成22(2010)年4月創刊
 旧メルマガ名: 「オールドパパスの配信小説」

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 今週の配信は、水木金土の夜7時です。
 この周期は、創作の作業段階によって、変動します。
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  【は】メルマガ編集期間
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 最も時間を費やすのが、シントピック・リーディング期間です。同じ主題(テーマ)の本を、数冊読みます。一つの主題に関して、多層的な視点を持つことによって、どの論説にも{偏|かたよ}らない、客観的な解釈を実現できます。

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     289円(税込) ASIN: B08QGGPYJZ

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