MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

一学 37【オオカミの然修録】手作りゲームで要領を得るための要領を会得する(知恵を要領よく使う訓練)『離島疎開7』

7時ですよーォ♪
おはようございまーすぅ。
ミワラ〈美童〉の感想、然修録です。

エスノキッズ 心の学問 「教学編」
令和2年10月11日(日)号


一つ、学ぶ。


〔 手作りゲーム盤で要領を得るための要領を会得する(知恵を要領よく使う訓練法)〕

スピアの後裔記を読むに、どうやらマザメとサギッチと一緒に、同じ島に降ろされたようだ。
おれは、この島に、独りで降ろされた。
まったく正しい分配、素晴らしき疎開である。
たぶん。

〈 集中→直感 〉を頼りに、漂海民ならずとも漂浜族よろしく、日常を熟(こな)している。
すると、何気(なにげ)に思う。

(次は、要領だな!)と。

その「〈 要領 〉がいい」とは?

1.あまり、いい意味では使われていない。
2.仕事や学業を、誰よりも早くやっつける。
3.困難な課題でも、うまくまとめてしまう。
4.頭がよく、いい手を考えてサクッと片付ける。
5.歓迎すべき、創意工夫。

結局、「課せられた結果を求めるためには、何をすべきか?」をよく考え、無駄なことは一切しないという思考態度のこと。
であれば当然、「要領がいいやつだ!」は、誉め言葉のはず。
それが、皮肉めいて聞こえるときがあるのは、なぜか?

6.汗水垂らしている周りの人から見ると、面白くない。
7.自分が及ばない考え方で簡単に片付けてしまうので、妬(ねた)ましい。
8.(こんな頭がいいやつは、きっといつか、おれに背くだろう」と、疑念を抱く。
9.上司や先生が考え及ばないところで表意を衝(つ)かれるので、歓迎されない。
10.その頭の良さから、裏から手を回す悪巧みの首謀者となる、または、その疑念の対象となる。
11.観を呈する能力が高いので、相手の顔色を見ながら、手抜きをすることも得意。

以上を総じて、知恵という(らしい)。

寺学舎時代、誤解が多い偉人や書物が主題となる座学が多かったように記憶している。
が、言葉......この〈 言(こと)の葉(は) 〉というやつも、実に誤解を招き易い。

たとえば......。
誉めてあげたつもりが、相手にしょんぼりされてしまったり!
皮肉を浴びせたつもりが、相手に小躍りされてしまったり!


ここに、島の子どもたちが手作りで遊んでいる、カンタンに作れてすぐに遊べるゲームがある。

「なにもそんな面倒臭いことをしなくっても、スマホでちゃちゃっとダウンロードしちゃえばいいじゃん!」ですかァ?

ご尤(もっと)も。
おれも、そう思った。

でも、気づかされた。
この島の子どもたちは、憎たらしいくらい、要領がいい!
その理由が、このちゃっちい、粗末な、手作りゲームに隠されている。
と、踏んだ。

彼らの会話から、それを、検証してみた。
某日、観察開始。


「今日、なにするぅ?」
「オッサン追ん出しゲーム」
「この人数だもんね」
「馬乗りの最少人数だし」
「じゃあ、オッサン追ん出したら、馬乗りして帰ろう」

「今日は、誰が馬?」
「追ん出しゲーム、前やったとき、何回で追ん出したか、覚えてるよな?」
「うん」「はい」「まァ」
「コマ移動の回数が前回と同じなら、支柱役。一回でも多く叩いたら、馬役。少ない回数で追ん出せたやつが、馬に乗る」

「支柱役が、女の子だったらァ? あたい、イヤだからねッ!」
「そんときは、そんときだ」
「うまく配役できなかったらァ?」
「そんときも、そんときだ」
「いい加減!」
「そこは、要領がいいって言ってくれよなァ♪」

「前に作ったの、もう捨てちゃったよ」
「作ればいいじゃん」
「前んときも、そうしたのよね。たしか」

……

「作るの、はやッ!」
「そこは、要領がいいって言ってあげるわよッ♪」
「あんがとさん」

「また、一時間の格闘だねッ!」
「前は、会心の10回だったんだ、おれ」
「どうやって動かしたのォ?」
「教えてあげたいけど、忘れた!」

「何か、ルールがあるはずよね?」
「コツのことかァ?」

「目的は、カンタンなのにね」
「ただ、オッサンを追ん出すだけ!」
「なんかさ、先生に言われてるみたい」
「なにを?」
「やり方は問わん。自由にやれ!って」

「知ってるかァ?」
「なにを?」
「このゲームの、本当の名前」
「知らねーぇ♪」
「発明ゲーム」
「なーんじゃそりゃ!」

「あたい、知ってる。お兄ちゃんが、言ってた」
「なんてぇ?」
「発明とおんなじ。知恵の組み立てをするから」
「な、な、なーん......てか、なにそれ!」

「おれは、オヤジに聴かされた」
「まさしく、オッサンじゃん!」
「で、なんてぇ? あんたんとこの、オッサン!」
「アナロジー技法」
「パス!」
「日本語で言ってよね!」

「類推」
「よけいに、わかんねぇ!」
「だろッ?」
「それで、済ます気ぃ?」
「......」

「あんたもだよ! お兄ちゃんに、聴いたんでしょ?」
「うん」
「なんてぇ?」
「実際に何かをして、物事の類似性を推理することだって」
「結局、よくわかんねぇってことで!」
「だなァ♪」

...... やにわに没入。
...... にわかに無口。
...... 離脱の予感。

「これって、本当にできんのかよッ!」
「てか、前はちゃんと、出来てたじゃん?」
「さてはおまえ、ずるっこしたなァ?」
「間違いない。でなきゃ、そんな感想は出てこねぇかんな」
「はいはい。いやまァ。てか、覚えてねぇよッ!」

「できた!」
「マジーィ?」
「見せて、見せてーぇ♪」
「そうか。そうなれば、追ん出せんのかァ♪」
「じゃあ、コマを、この配置になるように動かせばいいのよねぇ?」
「前に出来たとき、こんな配置だったけぇ!」

……

「お手本なんて見せられたら、よけいに難しいよッ!」
「イラつく!」
「自己流のほうが、よっぽどマシ!」
「真似してラクしようって思うからだよ」
「かもね」
「たぶんね」
「きっとね。たぶん」

「あんた、馬、確定だね♪ 前回、10回で追ん出せたんだったわよねぇ?」
「まったく、思い出せねぇ。おれ、本当に出来たのかなァ!」
「何事も、記録が大事ってことだね」
「理屈はなッ!」
「なんでよッ!」
「コマを動かす瞬間は、直感が働いてるんだ。メモなんかしてたら、感が鈍るだろッ!」
「納得」
「なにが納得なのォ?」

「記録ってのはさ。終わってから要点をまとめるってことさ」
「どうしてぇ?」
「でなきゃ、反省する時間もとれないし、何を反省すればいいかもわかんないだろォ?」
「反省があるから、進歩がある」
「まさに、発明の〈よちよち歩きズム〉だなッ♪」
「はいはい......」
「あーァ、こりゃこりゃ♪」

「てかさァ、終わってからじゃ、遅くない? だって、終わっちゃうんだから!」
「じゃあ、終わる前に、反省しろってことォ?」
「ギブアップして投げたくなったら、上を向いて歩こうよ! ってことだな」
「べつに、歩かなくっても......」
「いや、歩くのは、案外正解かもな。ほかの道を探せってことだからなッ!」
「急がば回れってかァ?」

……

「わかった!」
「なにがァ?」
「いつもこの長いコマが、邪魔すんのよ。タテに長いのが二つと、ヨコに長いのが二つ」
「そんなこと、わかってるよッ!」
「わかってるんなら、サッサと何とかしなさいよッ!」

「邪魔者は、一か所にまとめとかないと、面倒だもんな」
「邪魔者が散らばってたら、オッサンみたいにデッカイの、動かし辛いもんねぇ♪」
「オッサン追ん出す前に、先ずは、それだなッ!」

……

「できたッ!」「おれも」「ここまでなら、あたい、自信がある♪」
「さすがに、目的を細分したから、話が早いなッ!」
「で、どうすんのォ?」
「なにがァ?」
「このまま突撃するか。それとも、ここでもう一度、反省するかよ」

「よし! 横長ゴマと縦長ゴマのくっつけ方の最速の方法を、極めよう♪」
「そんなことしてたら、馬乗りの時間、なくなっちゃうやん!」
「今やらないと、また忘れっちまうぜぇ?」
「確かに」
「一理ありってところね♪」

「じゃあ、誰か一人がそれをやって、あとで教えてもらえばいいじゃん」
「いるよね、そういうやつ!」
「どういうやつ?」
「本を読んだだけで、わかったつもりになってるやつ!」
「ゲームを本で読むってことォ?」
「まァ、それもだけど」
「自分でやってみなきゃ、会得なんかできないってことさ」
「会得ってぇ?」
「頭で覚えるのが理解、行動で身体(からだ)が覚えるのが、会得」
「ふーぅん♪」

「こんなカンタンなゲームでさえ会得できなかったら、仕事の会得なんて、夢の夢よね」
「じゃあ、発明は、宇宙の宇宙かァ?」
「いや、あの世のあの世だなッ!」
「どっちゃーでもいいわよッ! そんなこと」

……

「できた!」「あたいも♪」「やっとだよッ!」
「やればできる。ってことだな」
「やる気が出なかったらァ?」
「やる気を出してやってみる。出来れば面白くなる。面白ければやる気が出る」

「そんな、都合がいいものォ?」
「やる気があっても、やるとは限らねぇしなッ!」
「なんでぇ?」
「誰かに反対されたり、ほかのやつらが思うように動いてくれなかったり」
「それって、ただの言い訳じゃん。愚痴ってやつぅ?」

「やる気が足りないんだよ」
「足りないんじゃなくって、頭が悪いのよ」
「はいーぃ?」
「やり方が悪い。無駄が多いってこと」
「はーァ」

「〈理解〉する頭っきゃないから、そんなこと言われんのさ」
「〈会得〉しろってかァ? はいはい...... 」

「なァ」
「なにぃ?」
「もっと早くオッサンを追ん出す方法、ないかなーァ」
「おまえ、よっぽどオッサンが嫌いなんだなッ♪」
「そんなんじゃないけどさ」
「あるような気がする。その方法」
「まァ、あるだろうな」

「なんでそう思うのォ?」
「直感だ」
「なんでそう思えるのォ?」
「会得したからじゃねぇかァ?」
「そうじゃなきゃ、この一時間が、無駄になっちゃうもんなッ!」

「要はさ」
「なにぃ?」
「コマの位置を交換する方法の解を求めるための知恵を養う、ってわけだ」
「なにがァ?」
「このゲームさ」

「なんか、難しそうね」
「要領よくやれってことさ。唯(た)だ、それだけさ」
「それだけなら、出来るような気がするわァ♪」
「『なんでぇ?』って、訊(き)かないのかァ?」
「なんでぇ?」
「...... 」


令和2年10月9日(金) 活きた朝 03:43
学徒、オオカミ


令和2年10月11日(日)号
一学 37【オオカミの然修録】手作りゲームで要領を得るための要領を会得する(知恵を要領よく使う訓練)『離島疎開7』

◎ 然修録の発祥について

然修録は、寺学舎に通っていた一部の学童たちが、講釈を書き留めていた学習帳です。
寺学舎というのは、瀬戸内でかつて古(いにしえ)の時代に栄えた港町にあった寺塾です。
一部の学童たちはみな、その港町に隣接する寂(さび)れた浦々に住んでいました。
そこは、「平家の敗残兵が密かに身を隠して、今に到っている」と、伝えられている地です。
『平家物語』巻第十一では、彼らの祖先を率いた名将の武勇が、描かれています。
この浦々から谷川沿いに峠を上り尾根を越えると、その先に、原っぱが拡がるような町が現れます。
その地が、彼らの先祖が最期を飾った古戦場です。
この学習帳は、日常や読書の感想を綴った自習帳に形を変えながらも、『然修録』の名を、今に残しています。
学童たちは、『然修録』を書き始めた大先輩たちの心情を、慮(おもんばか)らずにはいられなかったのでしょう。

◎ 然修録の現在について

かつて栄えた港町にあった寺学舎は、今はもう存在しません。
寺学舎と呼ばれていた講堂の佇まいは変わっていませんが、そこに集う学童たちの姿はありません。
隣接する寂れた浦々では、子どもたちの姿を見ることさえ稀になってしまいました。
でも、その浦々の隠れたところで、寺学舎という名の家塾が、存続していたのです。
2020年2月、その家塾に集っていた学童たちの然修録を、メルマガという手段で公開しました。
その8月、彼らは天災とも人災ともつかない災難によって、離島へと疎開して行きます。
学友たちと住まいを隔て、島を隔てて独学を余儀なくされた彼ら、学童たち。
貧しい彼らですが、メルマガやブログといった少々古臭いテレスタディで、今も学んでいます。
仲間たちは、この然修録を「元気が出る感想」と呼び、後裔記を「元気が出る日記」と呼んでいます。

◎ その後裔記とは?

このメルマガの姉妹編です。配信本文の脚注欄と『バックナンバー』に、上記のような説明書きを載せています。

◎ 今に残る寺学舎の用語集

〈1〉少年/少女 → 学徒 → 門人 → 学人
 寺学舎の学年の呼び方です。

〈2〉ミワラ〈美童〉
 立命期の学童たちの呼称です。
 学人となったのち、知命するまでが立命期です。
 「生まれもった美質を護ってほしい」
 という願いが、込められています。

〈3〉美童名(みわらな)
 産れてから知命するまでの名前です。
 武家社会の幼名のようなものです。

〈4〉息直術(そくちすい)
 行動の学と呼ばれ、後裔記は、その行動の足跡です。

〈5〉恒循経(こうじゅんきょう)
 目的の学と呼ばれ、然修録は、その目的の道標です。

〈6〉タケラ〈武童〉
 運命期の学童たちの呼称です。
 知命したのち、天命に到るまでが運命期です。

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ミワラ〈美童〉と呼ばれる寺学舎の学童たちの日記、後裔記です。
https://www.mag2.com/m/0001131415.html

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