MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

一学 51【門人学年ワタテツ】美童の行く末、短命の武童。病魔の正体は、荒んだ心。余所者の我らが生く術、神器の一文字。

第3集「教学編」R3.1.17 (日) 7:00 配信

 一つ、学ぶ。

 {手短|てみじか}に書く。
 理由、マザメくんたちにも読んでもらわねばならんので。
 {主題|テーマ}は短命、〈早死に〉について。
 {久方|ひさかた}ぶりの写真読み。
 一に、誰が。
 二に、{何故|なぜ}。
 三に、ではどうする。

 誰が。
 亜種自然人。人類の{掟|おきて}、百年ごとの戦争がまた迫っている昨今、これを亜種自然{民族|エスノ}と呼ぶ者たちが一部に出てきて{居|お}る。これに{順|したご}うて、亜種文明人は亜種文明{民族|エスノ}に、亜種旧態人間は亜種和の{民族|エスノ}にといった具合である。
 〈誰が〉とは、この自然エスノのことだ。
 〈何故〉が二種類あるので、〈誰が〉も二つに分かれる。
 深刻度が高い順に、一つに{武童|タケラ}、二つに{美童|ミワラ}だ。
 ここで、解説を入れておく。
 美童は、誕生から{齢|よわい}^14^までの立命期。{美童名|みわらな}を名乗る。この立命期で知命し、齢15^から49^までが運命期。原則、これを武童と呼び、{武童名|たけらな}を名乗る。但し、この運命期に入っても未だ知命できていないばやい! 正常な運命期と区別して、〈無知運命期〉と呼ばれてしまう。武童名を名乗ることも許されないため、美童のまま、美童名を名乗り続ける。ムロー先輩と小欄(俺)とヨッコがこれ、無知運命期の{美童|ミワラ}だ。

 何故の一、タケラ!
 {武童|タケラ}は、武の心を修養する。争いを未然に防ぐ力を持った{健|すこ}やかな心のことだ。だが、これが百年ごとの戦争が迫ってくると、武童たちの〈武〉の{捉|とら}え方が変容してくる。単に、殺し合いという文言が浮かび上がってくる。次回の戦乱が迫った昨今で例えれば、その殺し合いの対象は、亜種文明人......文明{民族|エスノ}だ。
 この傾向は、同じ自然エスノの中でも、サギッチら{鷺助屋|さぎすけや}一族が、最も顕著である。逆に、最も本来の武の心に{順|したが}って居るのが、スピアら{座森屋|ざもりや}一族である。ここにまた、分裂分化の{火種|ひだね}がある。ここでは、それは置く。
 『{葉隠|はがくれ}』の武士道にしても、『闘戦経』という日本最古の兵書ですら、武の目的を殺し合いとはしていない。無論、{自刃|じじん}でもない。己と闘い、負の宿命と戦う。これが、{武童|タケラ}が本来修養すべき、武の心だ。これを{怠|おこた}り、見失い、結果、渡る世間は敵ばかりと相成って{御座候|ござそうろう}。
 ここで再度、{敢|あ}えて、武の心について学び直したいと思う。『闘戦経』、その冒頭の一部を引用する。ここに、二つの極意を挙げる。

 > 我が武なるものは天地の初めに在り、しかして一気に天地を{両|わか}つ。{雛|ひな}の卵を割るがごとし。{故|ゆえ}に我が道は万物の根元、{百家|ひゃっか}の{権與|けんよ}なり。

 武の心は、天地創造のころから存在する。その武の力によって、天と地が分かれた。この武の心が、我らが本来の姿である〈海洋の中の一国一自然一民族〉の根元。様々な考え方の{大本|おおもと}に{据|す}わって{居|お}るものだ。故に武という字は、{矛|ほこ}を{止|とど}めると書く。相手の武器を収めさせる力を持つということだ。
 古事記では、この世が{混沌|こんとん}としておった折、天と地が分かれて秩序が生まれてきたのだと説く。その秩序を生み出した力こそが、武の心なのだ。故に、武の力は、破壊するためにある{訳|わけ}ではない。武器を持つ術でも、その心構えでもない。その対局、真逆にあるもの。平和を保つため、武器を棄てさせるためにあるのだ。

 > これは一と{為|な}し、かれは二と為す。何を{以|もっ}て輪と翼とを{諭|さと}らん。{奈何|いか}なる者か、{蔕|へた}を固め{華|はな}を{載|の}する。信なる{哉|や}。天祖先づ{瓊鋒|ぬほこ}を以ておのころ{馭|じま}を造る。

 そもそも、文と武を別のものと捉えはじめるところから、武の心が{危|あや}ぶまれるようになる。文と武は、車の両輪や飛行機の両翼のようなもので、元々文と武は一つのもの。片方では何も機能しない。花は、ヘタがしっかり固まっているから、綺麗に咲く。ヘタが武、花が平和(文)だ。日本の神々が武の心を持っていたからこそ、美しい神の国、霊薬の島々をお造りになることができたのだ。
 この一つとなった文と武が、秩序であり、和である。この文と武を一つのものに出来たのは、我ら民族の太祖神々……それが最初であり、最後でもあった。故に、我らはこの一つを為した文武という和の心を、永久に受け継いでゆかねばならない。文は武であり、武は文である。そのどこを探しても、殺し合いなどという理屈は出てこない。

 何故の二、ミワラ!
 我らのことだ。くどくは言わない。離島疎開。我らはみな、{余所者|よそもの}となった。親切な心に触れる時もあろう。また、阻害されて心が{荒|すさ}ぶこともあろう。保護された引きこもりと放たれた孤独の違いに、心を{傷|いた}めることもあろう。総じて、心が荒ぶ。結局は、心が荒ぶ。繰り返し繰り返し、情緒は乱高下し、挫折の危機に{晒|さら}される。郷に{居|お}ったころの心の健やかさを想う。そしてまた、荒ぶ。

 ではどうする。
 俺が降り立った島には、百歳を超える爺さんや婆さんが居る。これ、少なからず。彼ら彼女らは、いつもニコニコ。
 ある日のこと。なにということもなく海岸添いを歩いていると、前から、丸い背中を左右に振りながら、一羽のウミネコが歩いて来る。その後ろから、同じように丸い背中を左右に振りながら、一人のバアサンが歩いて来る。ウミネコは、俺を大きく迂回して、そのまま歩いて行ってしまった。羽ばたこうともせず、なんともふてぶてしい。
 で、そのバアサン。迂回はせず、俺の目の前で立ち止まった。すると矢庭に顔を上げて、俺の顔をジロジロ見ながら、{斯|こ}う言った。
 「あんた、死ぬよ。早死に。気をつけなさいなァ^!!^」
 俺は言葉が出ず、ぎこちない笑顔を返して、また歩を進めようとした。と、そのときだった。優しいが断定的な、か細いが力強い声が、すれ違いざまの老婆の心から聴こえてきたのだ。
 「健やかにな。武の心ある者は、長生きせにゃならん。使命があるからのォ。〈ゆるす〉修養をされい。ゴンベンの〈ゆるす〉じゃないからな。{赦免|しゃめん}のほうの〈ゆるす〉でもないんじゃのーォ、これがまた。それはな、心の上に{如|ごと}しの字を載せて、〈ゆるす〉と読む。それが、{恕|ゆる}すじゃ。
 {即|すなわ}ち、相手のことを我がことが如く思う心……ちゅうことじゃな。なんじゃあ。わからんのかァ。つまらん男じゃのォ。相手を自分と置き換えてみぃ。それが、修養となる。許す相手がその相手のときは、ゴンベンの{許|ゆる}すや赦免ほうの{赦|ゆる}すじゃ。許すその相手が自分に置き換わると、そのとき許すは、恕すとなろう。
 さすれば、心健やか。長生きができる。使命を{全|まっと}うするための時間が、稼げるっちゅうことじゃ。それを人は、命が延びたと言う。神様は、{斯|こ}う言うて居られる。
 『天命を全うするまで、死なれてなるものかッ!』とな。
 じゃから、観念せい。
 観念して、もっと、穏やかな顔で、歩きなされ。
 じゃあ、邪魔して、悪かった……のは、おまえだ。
 さっさと行けッ!」
 {況|いわん}や、(なーんじゃ、そりゃ^!!^)と、思った俺なのであった。

 最後に一つ、提案がある。
 みな、輪番で、息恒循の解説を書いてみてはどうか。
 たとえば、先ずは恒令。その一日目の七養から。
 きっと、心健やかになると思う。

皇紀2681年1月17日(日) 活きた朝 6:18
門人ワタテツ 青循令猛牛

令和3年1月17日(日)号
一学 51【門人学年ワタテツ】美童の行く末、短命の武童。病魔の正体は、荒んだ心。余所者の我らが生く術、神器の一文字。

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MIWARA BIOGRAPHY
(C) Akio Nandai "VIRTUE KIDS" Vol.1 to 12
V.K. is a biographical novel series written in Japanese with a traditional style.
Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.
A.E.F. is an abbreviation for Adventure, Ethnokids, and Fantasy.

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