MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

一息 37【スピアの後裔記】呑気に釣りを楽しむ養祖父と養母。表裏精粗。理想と空想。大努力と隠居《オンライン亜種記4》

『オンライン亜種記』
住み慣れた半島の港町から、離島に疎開した寺学舎の学童たち。
彼らの日記〈後裔記〉を、配信しています。
ミワラ〈美童〉と呼ばれる彼らの《生まれもった美質》を共有し、立命の共同体感覚を養うために。

エスノキッズ 心の学問「自伝編」
令和2年9月19日(土)号


一つ、息をつく。


〔 呑気に釣りを楽しむ養祖父と養母 〕

むかしむかし......ではなく、わりと最近、具体的には、昨日のこと。
毎日、日本のどこかで起こっている日常、風景、そして、おはなし。
珍しくもなく、創作のようなスパイスもない。

実にいい天気だ!
やがてどんより。
小粒の雨がパラパラ♪

ここでもぼくは、スピアと呼ばれる。
美童名(みわらな)といって、産れたときに命名される。
「生まれもった美質が、失われないように」という願いが、込められているらしい。
何でそれが、スピアなんだか!

最初の日、初対面から馴れ馴れしく、好き放題に喋っていた養祖父と養母。
父と娘。
あくる日、最初の朝。
早くに家を出る。

徒歩、峠をひとつ越え、港に連れて行かれる。
「露天座学かァ! 小難しい話の続きーぃ?」
って、思うよね?

ところが、呑気に父子で釣り。
「働かんかーい!」
って、思うよね?

「ほら。
お父さん。
釣れてるよォ!
サビキなんだから、釣れたらドンドン釣らなきャ!」
と、娘。

父は、娘に背中をバシバシ叩かれながらも、そこそこ好物らしいミックス豆とサラミ入りのチーズを、交互に口の中に放り込んでいる。
「百も承知ぢゃ!」
と、言いたげな口元。
実際に口から零(こぼ)れ出たのは、別の言(こと)の葉だった。

「大好きな夏。
今まさに、過行く。
暖かく優しい陽光を浴びて、好きな発泡酒と豆とチーズをチビチビやりながら、たまたま魚がいるから釣りを楽しむ。
これでもし、まだ思い残すことがあると言ったら、内海(うちうみ)の神が怒って、太陽神を岩陰に追い遣ってしまうことだろうさ」

と、応えて何かを言うときは、「わけわかんねーぇ!」だけで、取り立てて言うほど、難しいことは言わない。
でも、腰をもぞもぞと動かすのを合図に、ちょっと長く独り言(ご)ちるときがある。
それが、小難しい。

娘は、明らかに、その〈独り言〉に気付いてるふうに見えるけんども、気に掛ける様子はなく、何を言っているか知りたいような気配を漂わせることもない。
その娘(ぼくとの関係で言い換えると、養母。という立ち位置、役柄だと思われる!)が、ぼくに言った。

「ほらスピア、レンガ砕いて!」
ぼくは、カチカチに凍って煉瓦(れんが)みたいになった赤土色のオキアミを、アイスピックと食卓用のフォークを使いながら、器用とは言えそうもない手つきで、端から砕いていった。

唐突に、ぼくは、養母に訊(たず)ねた。
「ねぇ。ぼくは、なんでスピアなの?」

養母が、応えて言った。
「スピアジャさ。海辺♪」


きのうの一日、養祖父が、ぼくにだけ聞こえる声で言(ご)ちた、語録。
その(1)。

〔 表裏精粗 }

「万物には、必ず表裏精粗がある。
一草一木にもみな、至理が潜(ひそ)んでおる。
己と天命を正しながら、宿命と対決する。
それが、男子の運命だ」


その(2)。

{ 理想と空想 }

「未来には、二つの想いがある。
理想と空想だ。
理想は、高次の真理に向かって、己を変え、この世を変える。
空想は、百年経っても、千年経っても、何も変わることはない」


その(3)。

{ 大努力と隠居 }

「この世に存在する条件は、七養と六然(りくぜん)だけ心得ておればよい。

但し、自然の生き物として生まれたからには、生まれもった美質を護り、武の心を養わねばならん。
前者を、ミワラ〈美童〉という。
知命するまでの子等(こら)のことだ。
後者を、たけら〈武童〉という。
知命してから天命に到るまでの、長い道のりだ。

七養と六然は、隠居してからでも間に合う。
隠居の意味は、自分で調べれば、今夜にでもすぐに解(わか)る。

ヒトの一生、命という重い荷物を、天命まで運ばねばならん。
ここは、『男子の一生』と言いたいところだが、時代を配慮した。
だが、配慮して、ふと思う。
男子であろうが、女子であろうが、命を運ぶためには、大努力が必要だ。

天命に到るまでは、この大努力だけでよい。
七養と六然の意味は、隠居してから調べなさい」

そのとき、ぼくは思った。
(もし、ぼくの人生に隠居がなかったら、それって、いつ調べればいいのォ?)
と。

次の養祖父の〈独り言〉を聴いて、ぼくは、独り言(ご)ちた。
無論、周りからは聞こえない、微々たる小声で。
「この爺さん、他人(ひと)の心が読めるんかい!」

養祖父は、斯(こう)言ちたのだった。

「まかり間違って、隠居の前に死ぬようなことがあらば、それがまさに、天命というものだ。
なぜならば......。

運命とは。

人の数倍、努力と苦労をし、秀(すぐ)れた者になる。
人が寝るところは半分にし、人の食うところは半分にする。
努力するところは常に元気で、人の十倍も二十倍もやる。
心身疲労で病気病死したときは、まさに天命と諦(あきら)める。
学徒が学問のために死ぬのは、本望(ほんもう)と心得る。

これが、大努力だ!」


ぼくは、「これが、青春だァ♪」って、叫びたいよ。
海辺で (^_^;) 


2020年9月17日(木) 活きた朝 3:44
スピア(美童名(みわらな))

_/_/_/ プロフィール _/_/_/
立命期のミワラ〈美童〉。
知命まで息直術(そくちすい)を学ぶ。
学年は、少年。
(少年/少女→学徒→門人→学人→知命)

≪ちなみに≫ 知命後は、運命期に入る。
タケラ〈武童〉となり、武童名(たけらな)を名乗る。
天命まで恒循経(こうじゅんきょう)を学ぶ。


令和2年9月19日(土)号
一息 37【スピアの後裔記】呑気に釣りを楽しむ養祖父と養母。表裏精粗。理想と空想。大努力と隠居《オンライン亜種記4》

【教学のメカニズム】
「学んで教える」を、一つのテーマ当たり4回行う。
《ミワラ〈美童〉の最高学年、学人》
先達のタケラ〈武童〉から、テーマとなる語録を教わる。それを、思考(現在)と潜在意識(過去)と直感(未来)で、自らの体験語録に置き換える(=行動の学)。その語録を、下位の門人に教える。
《門人》
同じ方法で学び、下位の学徒に教える。
《学徒》
同様に学び、最下位の《少年少女》に教える。

『オンライン亜種記』
【バックナンバー】 http://www.akinan.net