MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

2024-01-01から1年間の記事一覧

EF ^^/ 然修緑 第2集 第15回

EF ^^/ 然修緑 第2集 第15回 一、想夏 (14) 門人学年 カズキチ ({美童|ミワラ}・{齢|よわい}十二) 「息恒循」齢 立命期・少循令・石将 無言で幽霊と言葉を交わす脳力 エセラが、無言で幽霊と言葉を交わした。 地獄の館での体験を、後裔記に書いていた。 …

EF ^^/ 後裔記 第2集 第19回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第19回 一、想夏 …… 立命期、最後の一年 (9) 少女に思えたその声は、確信に変わっていた。 暗闇とほとんど同じ色で、ぼんやりと何かが見える。 肝臓を輪切りにしたような、{歪|いびつ}な形をした学習用の座卓。 その左横には、姿見の大…

EF ^^/ 然修緑 第2集 第14回

EF ^^/ 然修緑 第2集 第14回 一、想夏 (13) 門人学年 エセラ ({美童|ミワラ}・{齢|よわい}十三) 「息恒循」齢 立命期・少循令・鐡将 音楽は、這い這いに勝る ぼくは、這い這いの記憶は、どうしても思い出せないけど、初めて聴く音楽なのに、なぜか無性に…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第18回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第18回 一、想夏 …… 立命期、最後の一年 (8) 八月。 七月と変わらぬ一日が、始まった。 亜種記に描かれてた{美童|ミワラ}たちは、同じ八月、離島疎開した。 だが、今となっては、疎開したところで安全な島など、どこにもない。 出遅れ…

EF ^^/ 然修緑 第2集 第13回

EF ^^/ 然修緑 第2集 第13回 一、想夏 (12) 門人学年 エセラ ({美童|ミワラ}・{齢|よわい}十三) 「息恒循」齢 立命期・少循令・鐡将 日本人とは何か? 亜種記の然修録編に、『代表的日本人』という本が取り上げられていた。 冒頭から順次要約するような内…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第17回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第17回 一、想夏 …… 立命期、最後の一年 (7) エセラとカズキチは、空想の中で、はっきりと少女の姿を見ていた。 配置に着いた二人は、それを確かめるべく動き出した。 古びた焼杉を下見張りにした勝手口らしきにところに、片引き戸がつ…

EF ^^/ 然修緑 第2集 第12回

EF ^^/ 然修緑 第2集 第12回 一、想夏 (11) 門人学年 エセラ ({美童|ミワラ}・{齢|よわい}十三) 「息恒循」齢 立命期・少循令・鐡将 エリートが潰され国亡ぶ 維新、エリートがリーダーになり、{日|ひ}の{本|もと}の独立を護り抜いた。 聖驕頽砕……俗に言う…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第16回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第16回 一、想夏 …… 立命期、最後の一年 (6) 怪奇な古ぼけた家、ここは、もうどれくらい生きものが住んでいないのだろうか。 エセラは一人、古屋の裏側に廻り、勝手口の前で立ち止まった。 ここから入れば、どの方角からも、背中の曲が…

EF ^^/ 然修緑 第2集 第11回

EF ^^/ 然修緑 第2集 第11回 一、想夏 (10) 門人学年 エセラ ({美童|ミワラ}・{齢|よわい}十三) 「息恒循」齢 立命期・少循令・鐡将 世界で一番異質なガイジン 外国人のガイジン論が、面白い。 外国人から見たガイジンとは、我ら日本人のことだ。 亜種に…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第15回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第15回 一、想夏 …… 立命期、最後の一年 (5) その夜、妹たちとトモキは、早々にガースカ就寝。 母のゆか里は{胡坐|あぐら}、エセラはその前で静座である。 母、俄かに語りだす。 「何度も言わないから、辛抱してお聴き。 ほのみやえみ…

EF ^^/ 然修緑 第2集 第10回

EF ^^/ 然修緑 第2集 第10回 一、想夏 (9) 門人学年 エセラ (美童 齢十三) 「息恒循」齢 立命期・少循令・鐡将 歴史を読まないから未来が亡びる 調査によると、亜種に係わらず、父兄や教師や子等にも係わらず、日本人は、本を読まなくなった。 特に、肝心…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第14回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第14回 一、想夏 …… 立命期、最後の一年 (4) 良く晴れた昼下がり、この自然{民族|エスノ}の集落の{子等|こら}は、太陽神への恐れを知らない。 浦の砂浜に集い、思い思いに転がって過ごす。 仰向けになって目を細めて太陽神を見遣ってい…

EF ^^/ 然修緑 第2集 第9回

EF ^^/ 然修緑 第2集 第9回 一、想夏 (8) 門人学年 エセラ (美童 齢十三) 「息恒循」齢 立命期・少循令・鐡将 闘いから、戦いへ 一、心を鍛える イコール 闘い 二、敵を亡ぼす イコール 戦い 亜種記にあったムロー学級の先輩たちは、闘った。 それで、よ…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第13回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第13回 一、想夏 立命期、最後の一年 (3) 夏も盛り、ある夜のことだった。 エセラは、{仕来|しきた}りの旅への焦りで、寝つけない夜を過ごしていた。 そこへ、ほのみたちを寝かしつけたばかりの母が、エセラの枕元に座った。 そして、…

EF ^^/ 然修緑 第2集 第8回

EF ^^/ 然修緑 第2集 第8回 一、想夏 (7) 門人学年 エセラ (美童 齢十三) 「息恒循」齢 立命期・少循令・鐡将 海賊って、なに? ぼくらのご先祖さまは、{能登守教経|のとのかみのりつね}の軍勢の{傭兵|ようへい}だった野島水軍の海賊……だったと、堅苦し…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第12回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第12回 一、想夏 立命期、最後の一年 (2) 武家屋敷になぞらえるならば、そこに、おはぎが登場しても、不自然ではない。 でも、ここで武家屋敷に譬えたのは、精神面でのことだ。 生活面でなぞらえるなら、オンボロ長屋で暮らしている貧…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第11回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第11回 一、想夏 立命期、最後の一年 (1) 毎年、そして毎日も、律儀に何かが消えてゆく。 海水浴場の看板、鳥や魚や貝たち、漁船に桟橋に港の市場、カントダキ屋、イルモン屋……。 カントダキ屋で「関東炊き」と呼ばれていたおでんは、…

EF ^^/ 然修緑 第2集 第7回

EF ^^/ 然修緑 第2集 第7回 K2694年 想夏 エセラ 立命期 少循令 鐡将 警醒から学ばねば、自覚は邪知に堕ちる 知命に残された猶予は、あと一年。 十四の年から運命期に入り、晴れて{武童|タケラ}となる。 この一年で{仕来|しきた}りの旅を終えて知命し…

EF ^^/ 後裔記 第2集 第10回

EF ^^/ 後裔記 第2集 第10回 嗚呼、迫る エセラ、十二歳。 窓の外を見ると、今でもそこに、父さんが居るような気がした。 実際は、雑木林が繁っているだけだった。 その雑木林の斜面を少し登ると、半島の南端に辿り着く。 崖の下には、ダキの浜がある。 {磯…

_/_/_/ 然修録 第2集 _/_/_/ 第6回

人生の戦略 K2694年 想夏 エセラ 立命期 少循令 鐡将 寺学舎で、こんなひとコマがあった。 「あんたさァ、なんで笑わないの?」と、女先輩。 「ナイーブだと思われるから」と、ぼく。 「あんた、ナイーブの意味、知っとるん?」と、女先輩。 「犯罪誘発…

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/ 第9回

家族 エセラ、十一歳。 書くと、頭の中を整理できる。 だから、書いているだけ。 これが後裔記だとは、誤解しないでほしい。 ぼくの頭の中には、息恒循の教学書で学んだ数々の断片が{放|ほ}ったくられている。 依然、大きな努力はせず、{己|おの}の命はこの…

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/ 第8回

傍観者 エセラ、九歳。 二年ぶりに、後裔記を書く。 あれから、二年……。 二年経ったぼくは、やっぱり真相のことを考えていた。 ほらまたァ! ぼくの頭の中に、真相と題した映像が、映し出されている。 人は、無力だ。 その無力さは、考えれば考えるほど、怖…

_/_/_/ 然修録 第2集 _/_/_/ 第5回

細胞は天才なのに K2694年 想夏 エセラ 立命期 少循令 鐡将 人間は、胃を半分切除されても、生きてゆける。 その人間が、たとえボンクラのロクデナシだとしても、その人間を構成している細胞の一つひとつは、天才の分子で在り続ける。 誰でもみな、天才…

_/_/_/ 然修録 第2集 _/_/_/ 第4回

知らなかった愛読書の意味 K2694年 想夏 エセラ 立命期 少循令 鐡将 良き師友をもち、{座右|ざゆう}には愛読書。 人は、好きな物を好み、集めたがり、見たがり、触れたがり、食べたがる。 座右の書も、読みたがるようでなければならない。 しかも、その…

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/ 第7回

エセラ、別れの空 エセラ、七歳。 一年ぶりに、後裔記を書く。 ここの海は、{男神|おがみ}のような荒くれたところもないし、女神のような神秘の{煌|きら}めきもない。 港でも町でも、気遣いを覚えるような人通りを見たことがない。 だからぼくは、この港町か…

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/ 第6回

本気の亜種記 エセラは、燃え尽きるように、後裔記を書いた。 それを、亜種記と呼びたかった。 だが、呼ぶ前に、燃え尽きた。 これを最後に、また暫く、後裔記のフォルダを閉じる。 天、{曰|いわ}く。 和の{民族|エスノ}は、先人たちの努力労苦をよく敬し、…

_/_/_/ 然修録 第2集 _/_/_/ 第3回

百八十八年前の十六歳 K2694年 想夏 エセラ 立命期 少循令 鐡将 道の精なると精ならざると、 業の成ると成らざるとは、 志の立つと立たざるとに{在|あ}るのみ 百八十八年前、ぼくより三つだけ年上の少年が書いた詩だ。 来年の想夏、ぼくは十四歳となり…

_/_/_/ 後裔記 第2集 _/_/_/ 第5回

お試し亜種記 一年が経ち、エセラは六歳になった。 矢庭に後裔記を書きはじめ、物語は、唐突にはじまった。 とうさんに、言われた。 「おまえたちには、生まれ持った美質がある。 それを、護り抜け。 そのためには、武の心が必要だ。 それを、養え。 そのた…

_/_/_/ 然修録 第2集 _/_/_/ 第2回

命の正体 K2694年 想夏 エセラ 立命期 少循令 鐡将 この世の時空のどこかに もし ぼくらの子孫が存在するなら 伝えたいことがある 命の正体は 感性だ 理性も 知性も あとからいくらでも作ることができる でもね 感性は どうやっても 作れない だって 感…

_/_/_/ 然修録 第2集 _/_/_/ 第1回

まえがき アイアム、テレブ。 七十六歳。 {美童名|みわらな}は、サーレ。 自己紹介は、後裔記を諸書として編集している方の「まえがき」に書いたので、省略する。 この編では、後裔記と同様、亜種記編纂のため、然修録を諸書として編集する。 イエロダが編ん…