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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい。
そのために、働く! 読む! 書く!
南内 彬男
なんだい! あきお
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_/ 1 /_/ 『亜種記』 *電子書籍
息恒循を学ぶ子どもたちの闘戦の旅
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亜種記を構成する諸書(実学紀行)
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_/ 2 /_/ 後裔記 第1集の子どもたち
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名
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※電子書籍編集のための記号を含みます。
お見苦しい点、ご容赦ください。
#### ヨッコの実学紀行「待ちに待ってもらっていなかった再会とその{行方|ゆくえ}」{後裔記|121} ####
《再会……そして、早速スピアの短い!話。あたいら自然エスノの秘められた歴史》
《で、あたいは{何処|どこ}から来て、こいつら六人を、何処に連れて行こうと言うのかッ!》
門人学年 ヨッコ 齢15
体得、その言行に恥ずるなかりしか。
《 再会……そして、早速スピアの短い!話。あたいら自然エスノの秘められた歴史 》
(相変わらず、声がよく通る女だわッ!)と、そのとき思ったあたい……やれやれ、ツボネエちゃんのこと。
あたい? 幽霊じゃないから……(ポリポリ)。
さて……と。
あいつら六人が車から降ろされた原っぱ……に、迎えに行ったというか、引き受けの役を命ぜられたのが、あたい。それは、仲間だからじゃなくて、たまたま。それどころか、あいつらと仲間だってことは、極秘……それも、あたいの命……だけじゃなく、ムロー学級8人全員の生命を守るためでもある。
まァ……そのへんのことは、追々とーォ!!
スピアが、{何気|なにげ}に言った。
(てか、久々に美人のおネエさまに再会して、感動の言葉の一つも無いのかよッ!)と、何気に思いながら、腹を立てるあたい。
「この原っぱ、〈能登っぱら〉に似てる」
「冬景色じゃないじゃん♪」と、ツボネエ。
「こいつの津軽海峡のイメージ記憶は、能登半島っていうコトバ記憶と結びついとるようだな」と、ムロー先輩。
「そのジジむさい着想と言い方、どうにかな、な、ならないもんかねぇ!」と、マザメちゃん。まったく、同感。
「スピアんちからサギッチんちに行く坂道があんだろがァ! その坂道を、そのまま上ったところにあるのが、能登の原っぱさ。知らねぇのかよッ!」と、オオカミ君。
「まァまァ......仕方がないさァ。ずっと、寝てたんだから」と、マザメッちん。
「好きで寝てたんじゃないもん!」と、ツボネエちゃん。
「てか、おまえ、なんの病気なんだったけぇ?」と、サギッチ。
「考えて仕方が*ある*ことと*ない*こと、いい加減、頭ンなか整理してから口から出せッ!」と、ムロー先輩。まァ、正論!
「確かに、どっちの原っぱも海は見えるけど、島の数も位置も大きさも違う。どこにでもある原っぱから観た風景の一つに過ぎんだろッ!」と、オオカミ君。
「違うんだ。地面の下から伝わって来る空気の感じが、似てるんだ」と、スピア。
「この下に、地底住みの自然エスノたちの{洞穴|どうけつ}があるとでも言いたいのかァ!」と、ムロー先輩。
「有り得ん! だって、考えてもみなよ。ここは、文明エスノの領域。敵陣の地下に隠れ家を造るバカ、どこに{居|い}んのさッ! あッ、ゴメン。居たねぇ♪ そこに、一人」と、マザメちゃん。
「まんざら、バカでもないかもよーォ?! マザメちゃーん♪ あたいら自然エスノの地底住みの{輩|やから}を捜索するとしたら、先ずは当然、あたいら自然エスノの領域。次が、和のエスノの領域。自分たち文明エスノの領域まで探すかどうかは別としても、まァ、もし探したとしても、最後の最後だろうね」と、あたい。
「地上への出入口が、ガチ!で隠密なら、『確かに有り!』……かもなァ」と、偉そうにサギッチ。
「ぼく、まだ何も答えてないんだけどォ……」と、スピア。
「そういう話じゃないのーォ??」と、マザメちゃん。
「ないことはないけどーォ……」と、スピアの野郎!
「あんまり、いじるなッ! また、長い話が始まっちまうだろがァ!」と、オオカミ君。彼の懸念と忠言は、いつも遅い。
スピアの望まれていない講釈……というか、脳内の{保管された記憶|アーカイブ}の放出が、始まった。
「確かめる方法は無いけど……てか、そんなもんがあったら、八百年も隠れ住んでなんか居られなかっただろうけどね。
でも、有り得ないことは無いと思うんだ。
ぼくらの浦の民族史に、こんな文章があった。
短いから、言うね。
平家が隠れ住んだ平の浦と、その西側の{古|いにしえ}から栄える港に上陸した源氏の負傷兵たちが住みついた原村の話……。
平と原は、{慶長|けいちょう}{頃|ごろ}両村{合|あ}わしてみな和したが{如|ごと}く、一つの村となる。平の{子等|こら}は、この大人たちの決定を不服とし、寺の奥に{集|つど}いて{籠|こも}り、自らを自然徒と称し、潮待ちの{旅人|りょじん}で{賑|にぎ}わう原の子等と風俗人情を異にせり。
{嘗|かつ}て{元暦|げんりゃく}の{頃|ころ}より、平家の残卒留まりしところを{平|ひら}と言い、源氏の廃兵残されしところを{原|はら}という。元暦{其|そ}の元年、平家は源義経の奇襲によって屋島で惨敗。其の翌年、平家一族は、壇之浦で滅亡する。
屋島から追い落とされた{能登守|のとのかみ}{平|たいらの}{教経|のりつね}らは、{此処|ここ}より上流の原っぱでの{戦|いくさ}を{以|もっ}て{最期|さいご}とす。
敗残兵は東へ下り、谷川に沿って密かに隠れ住み、谷川が{灌|そそ}ぐ浦に港を築いて生活の{糧|かて}とした。其の原っぱを能登の原、谷川を平谷川、浦を平の浦と称し、{今日|こんにち}此処平谷川に沿うて平家{後裔|こうえい}が{自然徒|しぜんと}{學舎|がくしゃ}を起こす。
栄える{傲慢|ごうまん}に{抗|あらが}う子等みな、{是|これ}此処に学徒を{誓|ちか}い、孝の自然人を期す。
……みたいな」
(まァ、確かに、スピアの野郎にしては、まァまァ、短いほうかも……でも、*やれやれ*最大級!)と、思うあたい。
でも、改めて思うに、郷土史って{凄|すご}い! ……っていうか、やっぱ郷土史とか神話なんかも、必要だよねぇ♪ だって、あたいらの祖先のことが、昔の文章なのに、今どきの誰かさんの小難しい然修録なんかより、よっぽどズバリ!で、{解|わか}り{易|やす}いんだもん。
(ね、ムロー先輩♪)と、密かに思うあたい……(アセアセ)。
《 で、あたいは何処から来て、こいつら六人を、何処に連れて行こうと言うのかッ! 》
……で、どこから迎えに来たかっていうと、{外舎|がいしゃ}。文明{民族|エスノ}に友好的な和のエスノの人たちが軟禁されるところ。文明エスノに反抗的な和のエスノは、{内舎|ないしゃ}というところに収監される。
で、で……本当なら、あたいが居るはずのところ……そこは、{上舎|じょうしゃ}。自然人エスノは、その人格や態度がどうであれ、その上舎に{抑留|よくりゅう}される。
自由度が高いから〈外〉、囲っておくべきだから〈内〉、最上級の警戒を要するから〈上〉……と、そんな意味合いで、外・内・上の字が当てられてるみたい。
で、で、で……あいつら、六人。ムロー先輩の後裔記に書かれていたことが本意の事実だとすれば、港湾事務所から届いた報告書には、{斯|こ}う書かれていたはず。
「一切、言葉を発せず。国籍、血の種別、共に不明。収容とする」……と。
なので、外舎で一時預かり。要は、{様子見|ようすみ}ってことね。
その外舎、文明エスノお得意の、コンクリート{打放|うちっぱな}し。箱型の平屋。その陸屋根は、三階建ての家が建ちそうなくらい強固で頑強な造り。道路に面した壁にだけ、赤紫色の自然石が、貼られている。一枚ものの立派な石が、両側に一枚ずつ。聞いたところによると、その石の名前は、アフリカンレッド!
入口の左側に、石碑……に見えるけど、それは、表札。場違いと思わせるに充分な{佇|たたず}まい。{青御影|あおみかげ}の{間知石|けんちいし}で組まれた土台。橋梁の{両詰|りょうづめ}に{据|す}わってる{親柱|おやばしら}のような、見方によっては、正に巨大な墓石!
まァ、あたいらの再会……そんな展開で、始まったって{訳|わけ}でぇ!
**{格物|かくぶつ}**
べつに、誰のことって訳じゃないけど、要領の悪い奴って、行く先々で、必ず一人は居る。あたいも、その一人ではあるんだけど……(アセアセ)。
優先順位を呑み込めない、周りのことを何も見ていない、{齷齪|あくせく}動いている割には、大事なことは何も片付いていない、いつも怒鳴られてる! ……みたいな。
これ、幼少期に脳ミソに刷り込まれた性格ってヤツだとしたら、物……己を、{格|ただ}す……だなんてこと、不可能ってことになってしまう。でも、放置しておけば、{傍|はた}迷惑→引きこもり→自殺……なんて、そんな最悪な末路が、頭に浮かび上がってくる。
で、提案!
いっとき、忘れた頃に、誰かさんが要領に関して読書したことを然修録に書いていたけれど、今まさに、それを{会得|えとく}体得しなきゃならない時なんじゃないかしらん?
でなきゃ、あたいらみんな、上舎……。
そして、その行く末は……。
ゾッとする!
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