MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

後裔記 第1集 No.123

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい。
そのために、働く! 読む! 書く!
今とここのみ、知命{是|かく}が如く。
南内 彬男
なんだい! あきお
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_/ 1 /_/ 『亜種記』 *電子書籍
息恒循を学ぶ子どもたちの闘戦の旅
_/ 2 /_/ 「後裔記」 *メールマガジン
亜種記を構成する諸書(実学紀行)
_/ 3 /_/ 「然修録」 *メールマガジン
亜種記を構成する諸書(座学日誌)
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_/ 2 /_/ 後裔記 第1集の子どもたち
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名
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※電子書籍編集のための記号を含みます。
  お見苦しい点、ご容赦ください。

#### ツボネエの実学紀行「直感が訴える疑念! NEWヨッコに密着」{後裔記|123} ####

 《再会の疑念……{莫|まく}妄想に{臥|ふ}す》
 《中継……新型!「ヨッコ先輩」》
 少女学年 **ツボネエ** 齢8

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。

 《 再会の疑念……莫妄想に臥す 》

 (ヨッコたん?)と、そう思った途端、なんだかアタイが知ってるヨッコ先輩と違う……って。なんかさァ、別人みたいに見えてきたんだよね。それは、{兎|と}も{角|かく}なんだけど……あのさァ、そのヨッコ先輩を、「ヨッコたん」って呼んだ、外舎の庭に現れた少女の話。
 アタイと歳が同じくらいの、あの少女さ。アタイらの年頃の女の子って、あの少女みたいに、無邪気で屈託がなくって、毎日が笑顔で明るく元気がいい……みたいな、そんな感じでいいんじゃないのかなァ。
 それなのに、アタイときたら、久しぶりに再会できたヨッコ先輩を、{怪訝|けげん}な{面持|おもも}ちで見ていた。……たぶん、そんなブスッ!っとした顔を、していたと思う。

 たった今、ある言葉が、頭に浮かぶ。
 (莫妄想!)
 アタイの悪い{癖|くせ}……妄想。
 そいつを排除する莫妄想が、今のアタイにも未来のワタクシにも、必要なのだ。でも、もう一つだけ……(ポリポリ)。この島で再会したヨッコ先輩は、{偽|にせ}物だと思う。

 《 中継……新型!「ヨッコ先輩」 》

 でもさ。
 また、思っちゃった。
 (こんな旅、{嫌|いや}だァ! {止|や}めたい、止めたい、浦のアタイらの町に、帰りたい)
 ……なんて、思わずに、もし、観念して前向きに旅をしていたとしたら、今と違う自分が、今ここに{居|い}たかもしれない。大人の人にも{解|わか}り{易|やす}い世間の例で言うと、{斯|こ}うなる……と、思う。

 (あーァ、こんな会社、嫌だァ! 辞めたい、辞めたい、もっと{真面|まとも}な会社に、変わりたい!)
 ……なんて、四六時中思いながら仕事を続けた結果、結局辞めていない自分がそこ{在|あ}るのだとしたら、もし、もっと前向きなことを考えるか、少なくとも莫妄想で後ろ向きな妄想を排除できていたら、まったく今とは違う自分が、今そこに居たかもしれない……みたいな(ポリポリ)。
 
 なので……って{訳|わけ}でもないんだけど、前向きに、その新型♪「ヨッコ先輩」を、観察してみることにした。

 ……で、お風呂が沸いていなかった事件の現場。
 外舎……古い二階建てのよくありげな家……というか、古民家って言うのかな。玄関を入ると土間で、その土間は、炊事場になっている。その両脇には風呂場と居間があって、玄関前は、ちょっとした庭になっている。花とか野菜とか、ハーブもォ? ……が、植わっている。
 で、その庭に、例の少女が、笑顔で突っ立ち、規定に{順|したが}って風呂を沸かさなかったあの*馬鹿野郎*の少年が、土間でアタイらに背中を向けて、歩き去ろうとするそのとき……新型ヨッコねえさんが、言った。

 「ゴメンなさい。
 わたしの指示の言葉が、舌足らずだったみたい。紹介は、夜のお風呂の前にしましょう。ムロー学級総員八名、現在員七名。ひとまず、脱衣場で待機♪ ……(ペコリ)」
 (脱衣場? 居間っしょ! 普通……)と、思うアタイ。
 その脱衣場での滞留時間……水を張ること十数分。沸かすこと、二十分を要さず……都合、概ね三十分待たされた。その{間|かん}……新ヨッコさんの、この言葉から始まった。

 「ちょうどいいわね。みんな歩き疲れて、{陸|ろく}な話も出来なかったから、ここで少し、お話しタイムにしましょう。じゃあ、どうぞーォ♪」
 「いやいや……そこは、逆っしょ!」と、サギッチ。
 「そうそう♪ あんたとスピアと、ツボネエちゃんは、ここで小学校の勉強を、おやんなさい。オオカミ君とマザメちゃんは、中学校。ムローのオッサンは、高等学校の勉強ねぇ♪
 ここは、和のエスノの人たちが、子どもたちを集めて勉強させていたところなの。だから、ここに居る限りは、安心安全ってわけ。当時{此処|ここ}は、{私|わたくし}立村営学校法人{五省徒|ごせいと}學舎って呼ばれていた。私立の私ってのは、当時のこの村の村長さん。百歳の一歩手前まで生きたんだってぇ!」
 「一歩手前ってぇ?」と、アタイ(ツボネエちゃん♪)。
 「九十九歳のとき、浜辺をジョギングしてて、転んで頭を打って即死! 葬式は、この村始まって以来の大宴会で、大騒ぎになったんだってぇ♪ そんな死に方が出来るんなら、長生きも、悪くないかなァ……みたいな。
 まァ……それは、兎も角。
 これからみんな、ここでは、五省徒って呼ばれるの。息恒循にある五省のこと。ヒノーモロー島の幽霊のおにいさんが大事にしていた……あれ、海軍五省さ。毎日、五つの反省をしながら、学問に{勤|いそ}しむってことね。
 元々在った平屋のここ一階で、和の子どもたちと、衣食住と学問のすべてを伴にする。ここは、{外|がい}の間って呼ばれてる。上級生たちが、「よし!」って言えば、進級♪
 次は、増築された、この上の二階。{内|ない}の間って呼ばれてる。そしてまた上級生が、「よし!」って言えば、次が{上|じょう}の間。裏に、離れの平屋があるんだけど、そこが、上の間ね。
 こんな感じで、*あたいの*素晴らしい働きで、あんたたちが連れてきてもらえた此処〈外舎〉は、わりと自由なの。内舎と上舎とは、ちょっと違うってわけさァ」
 「『ちょっと』ってぇ?」と、アタイ。
 「内舎は、簡単には、外に出られない。上舎は、逃げたら殺される。たった、これだけ。だから、ちょっとさァ♪」と、NEWヨッコさま。
 「内舎と上舎は、話がややこしくなるから、ここまで。
 兎に角、心の中に外と内と上の間を置くことで、進級への道が、{拓|ひら}ける。愚者、幼児、賢者の三段階で、世間の物事を思い考え……そして、その一つひとつすべてを行動に移す。それが、この村の和の人たちが考えた学問の道筋ってやつさ」
 「要は、和の連中の収容所ってことだろォ?」と、オオカミ先輩。
 「珍しく大人しく聴いてると思ったら、{何気|なにげ}に出た言葉が、命取り! あんたの無神経な言葉は、敵を作るんだよッ! まァ、愚者からスタートだねぇ♪ 幼児と賢者は、他人を喜ばせてくれる。あんたとは、大違いさァ」
 「要は、賢い男が好きなのよねーぇ?! ヨッコねえさんは……」と、これは、マザメちゃん♪
 「まァ……誰かに{譬|たと}えられても{判|わか}んないだろうけど、そんなところさァ」
 「シューベルトなんでしょ? 好きな男の子のタイプーゥ♪」と、アタイ。
 スピアの*ほうれい線*が、ヒクヒクッ!っと、動く。
 これが、長話が始まる合図。
 オオカミ先輩が、スピアの兄貴を、{鹿十|しかと}する。

 (小鹿ちゃんの顔、可愛いのに、なんで鹿なのかしらん!)と、思うアタイ。
 これより、妄想開始!
 即ち、以後の話は、風呂から上がるまでの間、アタイの頭の中に存在しているらしいイメージ記憶の天然倉庫の中には、一切何も、納められていない。
 これ、人類の脳ミソの神秘!

 **{格物|かくぶつ}**

ヨッコ先輩は、何を考えているか判らない。歳の差が大きいのもあるけど、それだけじゃない。人間力の差が、途方もなく大きい。

 だって、こんなことを、言われたんだ。
 あの、寺学舎の、地獄の野外実習……。
 淡々と反省文を{諳|そら}んじた、アタイ。
 その裏で、ちょっとした話……エピソードが、展開していたのでした。

 その野外実習を終えて、前{屈|かが}みで家路に{就|つ}こうとしたとき、背後から、ヨッコ先輩に、声をかけられた。

 「善行……善いことは、{他人|ひと}が見ていないところでおやんなさい。
 誰も居ない公園。でも、お友だちみんなが使う公園。空き缶が、一つ。公園の隅っちょに、転がっていました。ゴミ箱は、無し。拾って持って帰るぅ? それとも、{放|ほ}ったくっとくぅ?
 善いことは、みんなが見ている前では、誰も真似してくれない。でも、誰も見ていないところでやった善いことは、不思議なことに、一人、二人と、みんなが真似をし始める。誰も見ていないはずなのに、不思議でしょ?

 これから、{闘戦|とうせん}の時代が始まるの。男も女もない。心の強い者が、勝つ。人が見ていないところで善いことをする人が、心が強い人さ。だから、強い人が勝てば、世の人はみんな、世のため人のために生きるようになる。
 心が弱い人……即ち、人が見ているところで善いことをして、見られていないところで悪いことをする人たち……が、もし勝てば、あたいら民族は、あたいらの国は、みんなのこの星は、どうなると思う?
 だから、壊れないように、必ず勝つために、世のためこの星のために、心を鍛えなきゃダメなのさ。
 ムロー学級、総員七名。総員八名に変更するって、ムロー先輩に言っとくよ。あんたは、ムロー学級の副班長。だらしない男どもの尻を、後ろからバシバシ{叩|たた}く役さ。
 ぶん{殴|なぐ}るのに、善行なんだァ♪
 どォ?
 悪くないだろッ?」

 ヨッコ先輩とは、偽物の集合体なのかもしれない……{故|ゆえ}に、心が強い! 
 
_/_/_/ ご案内 【東亜学纂学級文庫】
Ver,2,Rev.8

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