MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

東亜学纂学級文庫

『息恒循』を学ぶ

後裔記 第1集 No.149

#### サギッチの{後裔記|149}【実学】マザメ、渾身の演技!【格物】奇行は真の修行 ####

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。
 少年学年 **サギッチ** 齢9

実学
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マザメ、渾身の演技!

 おれらは、電脳チップを埋め込まれた{鴉|カラス}に、襲われた。今ごろになって、恐ろしく感じる。でも、もっと、本当に{怖|こわ}いのは、自然のままの、自然の動物たちだ。たとえば、{狼|オオカミ}。{奴|ヤツ}らは、種の存続のために、生きものを襲って、食う。{正|まさ}に、自然だ。自然だけに、その執着執念の力は、{強靭|きょうじん}で恐ろしい。
 奴らに、罪は無い。
 でも、そのために、おれたちは、殺されて喰われる。
 それが、自然なのだ。
 それが、自然の一部のおれたちの、宿命なのだ。
 宿命……それを変えるのが、運命だ。
 おれたちは、ヒト種存続のために、生きなければならない。
 「蛇足」という名の余談……以上。

 その音は、おれたちにも感じることができた。ただそれは、背中にだけだった。でも、マザメ先輩には、遠くの{彼方|かなた}の四方八方から針が飛んでくるように、全身で感じていたみたいだ。いつもふざけて魔性の{鮫|サメ}{乙女子|おとめご}だなんてジャレごとを言っているけれど、いざ自然の現実に{晒|さら}されて{窮地|きゅうち}に立つと、本当にマジで、マザメ先輩は、頼りになる。
 美人で、こんなに頼りになるのに、男から避けられるのは、{何故|なぜ}なんだろう。そういうおれも、正直、生まれてこの{方|かた}ずっと、マザメ先輩のことを、苦手に思っている。まァ……{閑話休題|それはそれ}。

 日焼けした浅黒い顔が、この森によく似合っているジュシにいさんが、言った。
 「樹木の枝が、{軋|きし}む音……にしては、低いな。それに、何故、近づいて来るんだァ?」
 「地面に落ちてるから、低いのさ。それを踏み締めながらこっちに進んでるから、近づいてくる音になるのさァ」と、{何気|なにげ}にサクッと、マザメ先輩。
 「タケゾウさんの{贅肉|ぜいにく}、{脂|アブラ}がのって、{旨|うま}そうだもんなァ♪」と、ジュシにいさん。
 「{生贄|いけにえ}には、若い女の肉と、相場は決まっとる!」と、タケゾウさん。真顔!
 「ファイねーさんを生贄にしたって、食うとこないじゃん!」と、ツボネエ。相変わらず、怖いもの知らず……。
 「必要なところには、必要以上に肉がついてるさァ! {魅|み}せてあげられないのが、残念だけどねぇ♪」と、ファイねーさん。マジで、見たい♪……まァ、それもそれ。

 「ちょっとォ! 黙っててくれない?」と、マザメ先輩。
 そうだ。今、頼るべきは、マザメ先輩なのだ。
 総員、マザメ先輩を、見守る。
 マザメ先輩が、{呟|つぶや}いた。
 「宮、商、角、微、羽……」
 「なーんじゃ、そりゃ!」と、言わずもがな、おれ。
 「占ってるのさ。あたいらの、武運。森から、五つの音階を、拾ったのさ。その音色が、あたいらの君、臣、民、事、物を、暗示してる」と、マザメ先輩。真顔。声が、真剣!
 「てか、占ってるバヤイかうよッ!」と、オオカミ先輩。
 「そっちのオオカミ君は{兎|と}も{角|かく}さァ。この森に狼がいるだなんて、聞いたことないぜぇ! 狼と決まった{訳|わけ}じゃねぇけどさァ……」と、ジュシにいさん。
 「あのさァ。マザメ先輩は、自然児女子なんだからさァ。そっち系の話は、誰よりも得意分野ってことでしょ? だよねぇ? だったらさァ。ここは、素直に、マザメ先輩の判断に{順|したが}うべきところじゃないのォ?」と、スピアの野郎。こんなとき、なんで冷静でいられるんだかァ……? まったく!
 「ここで判断を誤れば、みんな、狼に喰われてしまう。狼を刺激しないように、物音一つ立てず、静かにさえしておけば……それでもやっぱり、みんな、食われる! ダメじゃん! マザメーぇ!! なんとかしなさいよォ! 狼って決まった訳じゃないんだけどさァ」……と、ヨッコの{姉御|あねご}。

 暫し、{莫|まく}妄想よろしく沈黙していたマザメ先輩が、なんの前触れもなく、唐突に、渾身の大声で、吠えたッ!

 「スッゲーぇ!!
 オッチャンたちさァ、女運だけで生きてきたんじゃん!
 仕事運なし! 金運なし! 人望なし! 待ち人来たらず! 水難の相あり!
 えーぇ?!
 このオッチャンたちの不幸って、伝染するのーォ?!
 このオッチャンたちを喰ったバカな四つ足動物たちは、みーんな、{咽喉|ノド}がカラカラになって水を飲むんだってさァ。すると、飲んだ水が激流となって、喰われたオッチャンたちの肉片がある胃袋になだれ込む。まァ、そりゃそうだろうさァ。だから、どうだってのさァ!……って、話さァ。
 えッ? えーぇ!! マジ? うっそーォ!!
 喰い{千切|ちぎ}られたオッチャンたちの肉片が、胃袋の中で苦しみ{踠|もが}いて、なんとしても喰い千切られた{憾|うら}みを晴らそうとして、胃袋を喰い千切り、食道を噛み切りながら{喉元|のどもと}まで{這|は}い上がって、己の肉片を喰らった四つ足動物を{呪|のろ}って、容赦なく血みどろズタボロの死骸にしてしまうんだってさァ。
 そして、這い出た肉片たちは、寄り集まって、{歪|いびつ}な格好をした{怨霊|おんりょう}となって、この森に{棲|す}み続け、呪った四つ足動物を根絶やしにしちまうんだってさァ!
 嗚呼、恐ろしい! 嗚呼、おっそろしーぃ!! 逃げてーぇ!
 四つ足動物は、あたいの仲間なんだァ。むざむざと殺させてなるものかーァ!! 早く、お逃げなさい! あたいが愛する、森の四つ足動物たちよォ。愛しい、愛しい、あなたたち……だから、早く、逃げてちょーだーぃ!!
 あたいのことは、心配しないでぇ♪
 あたいは、自然エスノ。これでも、自然の一部の端くれさァ。それより、どうか、届いておくれぇ。森の、愛しい{同胞|はらから}たちに……。このひ弱なで{病|や}んでる骨と皮だけの食べれそうな肉がまったくない{可哀想|かわいそう}な小さな小さな{乙女子|おとめご}のか細い声は、この小屋の板壁のすぐ外にまでしか届かないかもしれない……。
 でも、もし、その壁のすぐ外で、四つ足の誰かが、この切ない救いの叫びを聞いていてくれたなら、早く、早く、森の狂暴な……でも頼もしい四つ足の仲間たちに、早く、早く、この命懸けの{健気|けなげ}な警告を、早く早く直ぐに届けて欲しい!
 そして……それより何より、あたいの声が聞こえるところまで来ちゃってる仲間が本当に{居|い}るんなら、あんたたち! 早く、早く、逃げてちょうだい。死んじゃダメよッ!
 自然界のすべての生き物が、あんたたちの仲間なんだよ。森を守り抜いてきたあんたたちを、決して、見捨てはしない。あんたたちが無事に逃げれるように、みんなが、助けてくれるはずさ。あたいが、保証する! あたいは、森の妖精♪ 森に逃げ込んで生き延びた、{獰猛|どうもう}な{鮫|サメ}の化身。
 その名も、{海|アマ}の{魔鮫|マザメ}の女神さァ♪
 覚えときなァ!」

 途中で、誰に言ってるんだか、なんとなく{判|わか}るには判ったけど、{鳥獣|トリケモノ}や{爺|じい}さんとの会話が大好きで得意分野になっちまった*某スピアの野郎*なら{兎|と}も{角|かく}、でっかい声を出したからって、そう{易々|やすやす}と伝わるもんじゃない。
 ……てか、伝わったにしても、狼が、信じるんかい!

 まァ、祈るしか{術|すべ}を知らないおれたちが、偉そうに批評なんか失礼{千万|せんばん}なのは、{解|わか}っちゃいるんだけんども……。
 嗚呼、南無阿弥陀仏
 嗚呼、アーメン♪  

格物
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奇行は真の修行

 マザメ先輩の{渾身|こんしん}の演技の目的は、直ぐに判ったけれど、それが成功するって信じていたのは、恐らくたぶん絶対に、マザメ先輩ただ一人だったと思う。それでも、マザメ先輩は、目的をすり替えようとはしなかった。

 以前、何人かが、然修録に、*要領*のことを書いていた。弓道の修行をしていた外国人の青年は、「弓道を通じて禅の精神を探る」という目的を、「{如何|いか}にして矢を的の真ん中に当てるか」に、すり替えてしまった。青年は、的の真ん中に当てる要領を修得したけれど、師匠は、それを{褒|ほ}めるどころか、なんとォ! 怒って青年を、怒鳴りつけた。{況|いわん}や、目的をすり替えてしまったからだ。
 少年時代、商売を営む家で{丁稚|でち}をしていた松下幸之助翁は、客が来るたびにタバコを買いに行ったのでは効率が悪いと思い、自分の給金を注ぎ込んで買いだめをして、客が来たら直ぐにタバコを出せるように工夫した。まさに、思い考え行動して得られた要領だ。でも少年は、褒められるどころか、これまた主人から、{叱|しか}られてしまった。{何故|なぜ}か……。
 少年の目的は、「お客様に、能率的にタバコを出す」ことではなく、「商人道」を学ぶことだったのだ。その目的からすると、松下少年が苦心して代償まで差し出して{会得|えとく}した要領も、ただの*手抜き*にしかならなかったという{訳|わけ}だ。
 まったく逆の例もあった。宮大工のオッチャンが、仮の住まいの家を建てているときの話だ。数年住むだけなんだから、不要な細工は省略した。これも*手抜き*には変わりないけれど、当初の目的に、{適|かな}っている。だから、こちらは*手抜き*ではなく、*終始一貫した目的に適った上等な要領*なのだ。

 然修録で、{O|オペレーションズ}{R|リサーチ}的な問題追跡法も、学んだ。その最初に出てくるのが、「目的・目標を決める」だ。学問にしても、仕事にしても{闘戦|とうせん}にしても、要領よく本来当初の目的を達成するためには、この最初に行うべき「目的・目標を決める」ことが、最も大事なのだ。
 仕事とか何事もそうだけれど、慣れてくると、効率を考えて、良い意味での手抜きを考える。弓道を修行していた青年も、松下少年も、ただそれに{順|したが}っただけなんだと思う。でもそれは、「まだ早い!」のであり、本来当初の目的・目標を達成するためには、効率が悪いと判っていても、「修行の手段や習わしを、バカ正直に守ること」こそが、必要だったのだ。そこで初めて、本来の目的の要領を、体得することができる。
 体得……? そう、{正|まさ}しく修行とは、{身体|からだ}を動かすことで、頭を回転させることではないのだ。{則|すなわ}ち、「文句を言わないで、黙ってやる!」ことなのだ。確かに、要領という観点から見れば、バカバカしく映ることが多いかもしれない。でも、身体を使わずに頭だけで要領を会得しようとしたら、それは、悪い意味での要領……そう、*手抜き*になってしまうのだ。
 悪い要領は、そのときは周りから賞讃されるかもしれないけれど、あとから必ず、馬脚を現してしまう。{怠慢|たいまん}、横着という化けの皮が、剥がれてしまうという意味だ。「バッカじゃなーぃ!!」とか、「わけわかんねーぇ??」とか言われるような奇行にこそ、本当に意味のある{脚|あし}……要領が、隠されているのだ。

 だとすれば、懲りずに時おり見せるマザメ先輩の奇態や奇行は、真の修行、上等な要領ということになる……が、正直、どうなんだかァ……(アセアセ)。 

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寺学舎 ミワラ〈美童〉 ムロー学級8名

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