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_/ 3 /_/ 然修録 第1集の子どもたち
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名
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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい……
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_/ 1 /_/ 『亜種記』 電子書籍
亜種に分化した子どもたちの闘戦物語
全12巻、第1~2巻発売中
_/ 2 /_/ 「後裔記」 メールマガジン
亜種記の諸書、子どもたちの実学紀行
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_/ 3 /_/ 「然修録」 メールマガジン
亜種記の諸書、子どもたちの座学日誌
週1回、夕方5時配信
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※電子書籍編集のための記号を含みます。
お見苦しい点、ご容赦ください。
#### ムローの座学日誌「東洋哲学……学問の究極へ。その道とは」{然修録|128} ####
『心理学の暗示よし。哲学の会得もよし。{何|いず}れにせよ、進むべきは、*道徳*の〈道〉。誰から、何を学ぶべきか』
● 驚愕! 松陰先生の学問……その姿勢
● 意外! 陽明先生の秘話……その真相
学人学年 **ムロー** 青循令{猫刄|みょうじん}
{会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
**{主題と題材と動機|モチーフ}**
■□■ {主題|テーマ}
心理学の暗示よし。哲学の会得もよし。何れにせよ、進むべきは、*道徳*の〈道〉。誰から、何を学ぶべきか。
□■□ その{題材|サブジェクト}
驚愕! 松陰先生の学問……その姿勢。
意外! 陽明先生の秘話……その真相。
□■□ この主題と題材を選んだ{動機|モーティブ}
ワタテツの後裔記より。
一つ目……。
〈● 裏街道! 内舎の薄暗い牢屋、謎の内舎監理当直室〉より。
「{怪|あや}しまれ、自由度の少ない内舎にて監禁という判断が、下された。恐らく、幕末に吉田松陰が投獄されたときの牢屋よりはマシな造りだろうとは思うが、そこはやはり牢屋は牢屋……ということで、狭く薄汚れた内装と粗末な便所にチャンガラ寝台がポツン♪……と、いったところだ」
松陰先生……その、学問に対する卓越した姿勢! {逸話|いつわ}を一つ、思い出した。ここは、己を恥じ、今は、素直に反省すべきときなり。
二つ目……。
**{格物|かくぶつ}**より。
「修練の成果……好感度バツグンのヨッコと、元々偽善に満ちた好感度を身に着けた六人が、ここにやって来る。「感度よーしぃ♪」と、暗示を掛けることに成功した七人は、ほどなくズングリ丸に帰着すべく、ここを{発|た}つ。
そして、疑惑満載で{仏頂面|ぶっちょうづら}の俺は、何事も無かったかのように、内舎の牢屋へと、連れ戻される。
演技、暗示を掛ける……{即|すなわ}ち、自分を変える。{所謂|いわゆる}一つの、超不得意分野!
でも、その苦手意識を克服しなければ、ムロー学級から脱落……その、第一号になってしまう。
まったく……難儀だ。
たいぎーぃ!!」
食わず嫌いで学問の{類|たぐい}の{某|なにがし}かの分野に背を向けることは、無論! よくない。
……なので、心理学で相手に暗示を掛ける手法と、その{蘊蓄|うんちく}を学ぶことには、反対はしない。だが、その暗示の手法を身に着けることが、{何故|なにゆえ}に自分を変えたことになろうか!
我々{美童|ミワラ}は、息恒循を会得するために、学問とは呼べないまでも、東洋哲学や原始仏教の断片を学び、{延|ひ}いては、それを体得すべく、四苦八苦行動に努めてきたではないか。
相手に思い込ませるための演技が、何故に自分を変える……{即|すなわ}ち、何故に学問と成り得ようか!
ところで、自分を変えるための学問とは、なんだろう……。
**題材の{講釈|レクチャー}**
◆◇◆
驚愕! 松陰先生の学問……その姿勢
「{凡|およ}そ人一日この世にあれば、
一日の食を喰らい、
一日の衣を着、
一日の家に居る。
なんぞ一日の学問、一日の事業を励まざらんや」
言わずもがな、松陰先生の語録である。
文章の意味は、{解|わか}る。でも、誰に何を解ってほしくてこんなことを言ったのか……、それによって、解釈が違ってくる。
まさか、「一日一日、食ったり着たり寝っ転がったりするのと同様に、一日一日、学問や事業にも、励まにゃならん!」……みたいな、単純で薄っぺらい意味ではない{筈|はず}だ。
吉田松陰……改めて、どんな人物だったのか。この語録の{言乃葉|ことのは}が発せられた{経緯|いきさつ}について、読書してみた。
こんな感じのことが、書かれていた……。
吉田松陰と金子{重輔|しげのすけ}が、海外密航を企て、伊豆半島の下田に停泊していたアメリカの軍艦に乗りつけた……が、よく知られるように、これに失敗して牢に入れられる。その牢屋に入って早々……安政元年三月二十八日のこと、吉田松陰が、牢番に話しかけた。
「一つ、お願いがある。それは他でもないが、実は昨日、{行李|こうり}が流されてしまった。それで、手元に読み物がない。恐れ入るが、何かお手元の書物を貸してもらえないだろうか」
牢番は、ビックリこいた! そして、応えて{斯|こ}う言った。
「あなた方は、大それた密航を{企|たくら}み、こうして捕まっているのだ。何も檻の中に入れられてまで、勉強などしなくてもいいではないか。どのみち、重いおしおきになるのだから……」
すると松陰先生、応えて斯う言った。
「ご{尤|もっと}もです。
それは、覚悟しているけれども、自分がおしおきになるまでは、まだ時間が多少あるであろう。
それまでは、やはり一日の仕事をしなければならない。
人間というものは、一日この世に生きておれば、一日の食物を食らい、一日の衣を着、一日の家に住む。
それであるから、一日の学問、一日の事業を励んで、天地万物への御恩を、報じなければならない。
この儀が納得できたら、是非、本を貸してもらいたい」
この言葉に感心した牢番は、松陰に本を貸す。
松蔭と金子重輔は、一緒にこれを読んでいたけれども、そのゆったりとした様子は、やがて処刑に{赴|おもむ}くようには全然見えなかったということだ。
更に松蔭先生……牢の中で、重輔に向かって斯う言ったという。
「金子君。今日このときの読書こそ、本当の学問であるぞ」
松陰は、牢に入って刑に処せられる直前になっても、学問による自己修養を{止|や}めようとはしなかった。
「無駄な努力だッ!」と言われれば、確かにそのとおりかもしれない。人間は、動物。所詮、いつかは死ぬものである。いくら成長しても、最後には死んでしまうことに変わりはない。だが、そんなことを考えていると、すべての努力が、無駄に思えてきてしまう。
では、「人間は、どうせ死ぬのだ」という当然、当たり前、判りきった結論を前にして、どんなことを考えるべきなのだろうか。
松陰先生は、どうせ死ぬと判っていても、最後の最後……その{最期|さいご}の一瞬まで、最善を尽くそうとした。それが、立派な生き方の教科書として、今に語り継がれている{所以|ゆえん}なのだと思う。
◆◇◆
意外! 陽明先生の秘話……その真相
大陸は、明の時代。
王陽明……言わずもがな、陽明先生のこと。
その男、学問にも事業にも、徹せねば{已|や}まぬ性格。
当時日本は、応仁の乱のあと、非常な動乱期であった。
「一日の学問、一日の事業を励んで、天地万物への御恩を報じなければならない」……という言乃葉をの残した松陰先生も、この陽明先生の生き{様|ざま}から、何かを学び取ったのではないだろうか。
{何故|ばぜ}なら、陽明先生は、逆境を耐え忍び、修羅場から{這|は}い上がりしながら、この言乃葉の意味するところを、実際に日々、絶え間なく貫き通した人物だからだ。
その陽明先生の生誕の秘話が、面白い。
母の胎内に{居|お}った陽明先生……これがなかなか、出てこない。十四ヶ月も{経|た}ったころ、ある夜、陽明先生の婆ちゃんの夢の中に、神人が現れた。五色の雲の中から現れたその神人は、一児を抱き、音楽の先導で、婆ちゃんの{傍|そば}まで降りて来た。そして、言った。
「この子を、おまえに授ける」
驚いた婆ちゃん、{咄嗟|とっさ}に応えて斯う言った。
「自分には、もう子があります。私よりも幸いに嫁が孝行してくれますから、どうか{佳|よ}い{児|こ}を得て孫としたいものであります」
神人、これを{諒承|りょうしょう}。
すると途端に、{呱々|ここ}の声があがる。{即|すなわ}ち、赤ん坊が産まれて、オギャアと泣いたのである。婆ちゃん、驚いて目を覚ます。耳に覚えのある音楽が、中庭のほうから聴こえてくる。見ると、夢で見た赤ん坊が、{現|うつつ}の姿で泣いているではないかッ!
これを不思議に思った爺ちゃん、天からの授かりものを表すものとして、五色の雲間から現れた神人に{因|ちな}んでか因まんでか……{兎|と}にも{角|かく}にも、その{赤子|あかご}に、〈{雲|うん}〉と命名する。ところがこの雲ちゃん、五歳になっても、口を{利|き}かん! さて、困った……。
そんなある日のこと。
雲ちゃんは、群児に混じって、{嬉々|きき}として遊びに{耽|ふけ}って{居|お}った。すると、雲ちゃんの傍を通りかかった神僧が、雲ちゃんを見つめながら、斯う言った。
「この児は{好|よ}い児だが、惜しむべし。道破す」
神僧というのは、神秘な法力を持った僧を意味する。その神僧が、{可惜|あたら}、{道破|どうは}した……即ち、「秘しておけばよいものを、惜しいことに、ズバッと名に表してしまった……」と、言うのだった。
また、道士……道教を修めた偉人も、わざわざ爺ちゃんの家を訪ねて、こんなことを言って爺ちゃんを{戒|いまし}めた。
「天の機を洩らしてはいけない。神秘な経験なんだから、出してはいかん」
爺ちゃん、これらの苦言を悟り、陽明先生の名を〈{守仁|しゅじん}〉に改め、以後、婆ちゃんが見た不思議な夢の話も、一切、口にしなくなった。
その効験、あらたかなり……ある日のこと。
守仁、爺ちゃんが読み聞かせていた書を、スラスラと{復誦|ふくしょう}してみせた。驚いた爺ちゃん、守仁に訊ねた。
「どうして、それができたかァ!」
孫、応えて言う。
「お{祖父|じい}様の読書を聞いて、口では言えませんでしたが、ちゃんと暗記しておりました」
この驚異の暗記は、奇跡でもなんでもなく、幼児に備わった当たり前の能力である。
百年ごとに起こる大動乱……その前回、昭和の時代に起こった{聖驕頽砕|せいきょうたいさい}以前、少なくとも明治期以前の親たちは、この恐るべき幼児の能力を、知っていた。
その当の{幼子|おさなご}たちも、儒学を中心とした東亜の哲学のみならず、西洋の言語で書かれた書物に到るまで、頭の中に{在|あ}る底なしの胃袋に、放り込んでいったのである。
**{自反|じはん}**
世界の歴史に登場する偉人たちが起こした奇跡の数々は、幼いころから早々に教えられるか覚醒して自ら悟るかして、ただひたすらに、自然に、当たり前に大努力した結果だったのだ。
これを青年期……{況|ま}してや晩年に自覚し、その願望や目標を達成した先人{先達|せんだつ}の精神力とその努力のほどは、{如何|いか}ほどだったであろうかッ!
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