MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

然修録 第1集 No.154

#### ひとつの種、それがヒト種 ツボネエ {然修録|154} ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 少女学年 **ツボネエ** 少循令{猫刄|みょうじん}

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 どうしてみんな、電脳チップを「驚異!」って思うのか。
 みんな、{解|わか}る? アタイは、解らない。
 なので、長い長い航海中、アタイらの脳ミソに関する本を、巻き巻きモニターで読んでみた。その中で、一つ。気に入った語録があった。

 「身体の主たる機能は、脳を持ち運ぶこと」 
 トーマス・A・エジソン……偉大なる発明家。

 一万二千年前、アタイらヒト種の祖先は、原始人と呼ばれていた。その頃から、アタイらの脳ミソは、一切まったく、進化していない。アタイらの脳ミソは、原始人のままなのだ。
 でも、生活スタイルは、激変した。特に、この百年。アタイらヒト種は、動かなくなった。対して原始人は、よく動いた。当然だ。動かなければ、獲物を得て食い物にありつくことができなかったからだ。動かなければ、食べることが出来ない……{則|すなわ}ち、死ぬってこと。
 動くほうが脳の老化が遅いことは、マウスの実験でも、{磁気共鳴断層撮影装置|MRI}による人間の脳ミソの調査研究によっても、実証済みだ。……ってことは、アタイらの脳ミソは、一万二千年前の原始人よりも、老化し、劣化し、退化してしまっているってことだ。
 じゃあさァ。原始人に一番近いアタイら自然{民族|エスノ}は、そんなに劣化も退化もしていないってことじゃない? 逆に、殆んど身体を動かさなくなった文明{民族|エスノ}は、劣化退化が{凄|すさ}まじいってことじゃん? だから、電脳チップを頭ん中に埋め込まなきゃ、食べてゆけない……即ち、生きてゆけないってことなんじゃないのォ? 違う?

 電脳チップには、半導体が、*おしくらまんじゅう*みたいにいっぱい詰まってる。でも、{怖|おそ}れることなかれ。アタイらの脳ミソには、{神経細胞|ニューロン}ってのが、宇宙の星の数にも負けないくらい、いっぱい詰まってるんだって。光を感じるニューロン、色を感じるニューロン、動きを感じるニューロン……って感じで。
 だから、平面の絵が立体的に見えるのは、立体ニューロンが働いたから。動いていない絵が動いているように見えるのは、動きを感じるニューロンが働いたから。ピンク色の丸がピンク色に見えるのは、ピンクに見えるニューロンが働いたから。
 そのピンクの丸がいっぱい並んで円になってる絵の中心を見ていると、ピンク色の丸が緑色に見えたり、ピンク色の丸そのものが消えてしまったりすることがある。それは、緑色に見えるニューロンが働きだしてしまったり、ピンク色を感じるニューロンが働くのを{止|や}めてしまったりするからなんだそうだ。

 そう考えると、外界にピンク色や緑色や丸という形が存在するわけじゃなくって、アタイらの脳ミソの中に、どんなニューロンがあるかによって、ピンク色に見えたり緑色に見えたり、それが消えて見えなくなったりするってことなのだ。これって、何かの話に似てるって思わない? そう、原始仏教の{唯識|ゆいしき}。
 外界に、実際にピンクや緑や丸が存在するっていう考え方を、「外界実在論」という。対して「唯識二十論」では、この物理的なピンク色とか緑色とか丸のような原子のことを{極微|ごくみ}といい、この極微は、心を離れた外界には存在しないと説いている。
 脳科学では、ニューロンが外界の物理的なものを映していると言い、原始仏教唯識では、心が外界に極微という物理的なものを映していると言っている。これって、脳科学原始仏教も、似たようなことを言ってるって思わない?

 汎用コンピューター、ワークステーション、パーソナルコンピューター、スーパーコンピューター、ノートパソコン、タブレット……そして、電脳チップ。
 それが、なんだって言うのーォ?!
 アタイらの脳ミソには、1000億もの細胞が{犇|ひし}めき合っている。しかも、その1000億の細胞の一つひとつが、ほかの何万個もの細胞と結び付いている……ってことは、その{繋|つな}がりの総数は、100兆本を超えていることになる。その数は、銀河系の星の数の何千倍にも及ぶ。
 そう……アタイらの頭の中は、正に、小宇宙なのだ。しかも、小宇宙なのに、数に{於|お}いては、大宇宙よりもでっかい。しかも、アタイらの脳ミソは、常に変わり続けている。古い細胞は死に、その代わりに、新しい細胞が生まれる。使われなくなった繋がりは消滅し、代わりに、新しい繋がりが結ばれる。

 アタイら子どもの誇りは、生まれ持った美質だ。でも、アタイらの脳ミソは、変化し続ける。新しい経験さえし続ければ、常に新しい思考、新しい感覚、新しい発想が、生み出され続けるのだ。
 今日の脳ミソは、もう、昨日の脳ミソじゃない。だから、今日のアタイは、もう、昨日のアタイじゃない。でも、電脳チップは、一度造られれば、変わることはない。だから、アタイらの脳ミソは、{諦|あきら}めなければ、必ずや、電脳チップに勝てる。

 勝たなければいけない……確かにそれは、現実だ。でも、アタイらが生まれ持った美質は、「武」の文字……即ち、{戈|ほこ}を{止|とど}めさせるという{貴|たっと}き能力なのだ。自然の一部であり続ける限り、ヒト種……人間は、これからも生き続けるべきだと思う。自然の一部であり続ける限り、どの亜種かなんて、関係ない。

 文明{民族|エスノ}も、和の{民族|エスノ}も、アタイら自然{民族|エスノ}も、みんなみんな、*ひと*つの種、*ヒト*種なのだ。

_/_/_/ 『然修録』 第1集 _/_/_/
美童(ミワラ) ムロー学級8名

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい……
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