MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

然修録 第1集 No.155

#### 異国にて現存古代国家を想う ワタテツ {然修録|155} ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 門人学年 **ワタテツ** 青循令{嗔猪|しんちょ}

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 近況は、ヨッコの後裔記に{譲|ゆず}る。

 信号を守って止まる、一列にならんで順番を待つ……これ、常識である。言い換えれば、道徳。但しそれは、珍しい習慣だったようだ。
 規則を守る礼儀正しい民族と、規則を無視して我先にと競い合う民族……その両者が戦で激突したとしよう。
 「攻め込まれたら、{護|まも}る」という規則を礼儀として、またそれが正しい道徳だと信じて規則を守り続ける我らが民族……攻め込まれた時点で、もう負けである。
 国体も、民族一人ひとりの基本的人権も、国家のすべてが崩れ散る。

 その東亜の道徳について、少し、読書してみようと思う。

 {僅|わず}かな間に、時局は、目まぐるしく変化する。しかも、変化し{膨張|ぼうちょう}しているのは、どれもこれも{厄介事|やっかいごと}ばかりだ。
 このような厄介事ばかりが*どんぶらこっこ*と流れ来る厄介な時局にあって、一番大事なことは、やはり見識と信念である。
 言わずもがなだが、内容は異なるものの、ヨーロッパの狩猟民族や海賊どもも、深い見識を持ち、非常に強い信念を持っている。
 その異なる*内容*とは、攻めるが先か、護るが先か……のような違いによるものだ。
 問題なのは、その違いではない。見識の深さと信念の強さの違いが、知命的な大問題なのだ。

 では、どうやってその見識や信念を養えばよいのか。
 それは、先人に学ぶしかない。言い換えれば、歴史である。
 歴史とは、時代時代の民族が実践してきた経験による事実のこと。そこには、先覚者たちの活きた教訓が、詰まっている。
 江戸、明治、大正、そして昭和初期の民たちは、「四書五経」を読むことを、学びの代名詞のように重んじていた。
 『大学』『中庸』『論語』『孟子』を通読し、「嗚呼、この問題と似たようなことが、あの書のあそこらへんに書いてあったなッ!」と思い出し、その*あそこらへん*を調べてみると、ちゃんとそこに、今に通ずる適切な答案が書かれている……と、こんな具合である。
 読破すれば、現代の厄介事の問題を解決するための根本原理を、身に着けることができる。
 なんとも古典というものは、実に、味がある。
 その権威には、脱帽して一礼するしかない。

 {然|しか}し、どんなに権威のある書が世界中に{溢|あふ}れているとしても、読み手が{居|い}なければ、ただのリサイクルゴミである。
 読んだとしても、それを*こなして*己の実戦に取り込むだけの人間力がなければ、ゴミ屋敷の一助以上の効果は望めない。
 だからこそ、四書を読破することによって、先人たちの経験に浴し、その教訓に{肖|あやか}ることが、有効な手立てとなるのだ。
 加えて『易』を読み、循環する{六十四卦|ろくじゅうしか}を考察すると、あることに痛感するという。
 「人間がやっていることは、{殆|ほと}んど今も昔も、変わらない」と、いうことだ。

 では、具体的に、現代の問題とは、どのようなものなのか。
 その一例を、読む。

 {欧州連合|EU}の全身である{欧州諸共同体|EC}の内部、その{一幕|ひとまく}である。
 副委員長が、委員長に宛てた書簡。
 欧州の連合に向けての真剣な警告と提案。
 先ずは、警告。
 このままGNP重視の経済政策や科学技術の革新、それに伴う工業の発展や大規模事業の推進を続けていると、ヨーロッパは{亡|ほろ}びる。
 次に、提案。
 今後は、GNPではなく{GNH|グロス・ナショナル・ハッピネス}……{則|すなわ}ち、国民総幸福に重きを置くことに、最善を尽くさなければならぬ。

 今世紀末、世界人口は、七〇億にまで膨らむという。なんと、概ね現代の二倍。しかも、先進諸国の人口は{漸減|ざんげん}。逆に、発展途上にある貧困民族の人口は激増する。
 食糧生産者の人口も減り、その生産のための田畑や海域も削られ、次第に{窮迫|きゅうはく}を告げる次第となる。
 併行する工業のほうは発展を続け、文明に浴した民は{奢侈|しゃし}、{享楽|きょうらく}、{遊惰|ゆうだ}に{溺|おぼ}れ、その{醜|みにく}さを濃くしてゆく。
 資源は{枯渇|こかつ}し、環境の汚染は、{最早|もはや}取り返しがつかない……これ、*手遅れ*という。

 古代国家である我が国「{日|ひ}の{本|もと}」が現存する理由は、ただ一つ。
 その国民である我ら日本人……神話で言うなら{青人草|あおひとくさ}たち一人ひとりが、{勤倹力行|きんけんりっこう}だったからである。
 則ち、我ら日本人は、先祖代々、よく働き、{慎|つつ}ましい生活をし、何事にも精一杯努力をしてきたのである。
 そこに立ち返れば、{自|おの}ずと社会福祉政策や租税政策というものも激変し、大転換の末に改善と相成ること間違いなし。

 詰まるところ、ヒト種が分化や退化を乗り越えて種の存続を果たそうとするならば、勤倹力行、耐乏生活、質実剛健に努める以外に、方法は*無い*ということだ。
 分化した亜種の一つである我ら自然{民族|エスノ}は言わずもがなの合格、和のエスノも、文明の道具を使いこなしているという違いがあるだけで、その精神は、我ら自然の民に通じるところがある。
 ……で、箸にも棒にも掛からぬのが、文明{民族|エスノ}の野郎どもだ。

 ただ明るい望みが残されていない{訳|わけ}でもない。
 電脳チップを埋め込まれ、人工知能に操られている奴らは論外にしても、俺たちに救いの手を差しのべてくれたクラースメン島の港湾事務所のおにいさんたちなどは、まだまだ充分に俺たち自然や和の人たちに通ずる心の持ち主である。

 東亜の古典は、世界を救う。
 イターリア国ネイポー海賊狩猟民族{自治区|コミュン}にて思う。

_/_/_/ 『然修録』 第1集 _/_/_/
美童(ミワラ) ムロー学級8名

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい……
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