MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

然修録 第1集 No.163

#### どう変わる? スピア {然修録|163} ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 少年学年 **スピア** 少循令{悪狼|あくろう}

 今思っていることは、二つ。
 一つ、ムロー学人が書いた然修録のこと。
 二つ、ヒト種を漢字で書くと、「{一|ヒト}種」。

 一つ目、ムロー先輩の然修録から……。

 「お馴染み、ドラッカー。
 ドラッカーさんの人生で、何度となく精神的な節目が訪れた。
 その回数は、実に奇遇なことに、息恒循の基本でもある*七回*。
 その七回の節目の中で、最初の二つ。
 そこで得た教訓」

 (へーぇ。
 なるほどね。
 で、なんで二つだけなんよォ!
 しゃーない。
 ぼくも、読んでみるかのーォ♪)

 ……という{経緯|うきさつ}に{因|よ}り、以下の通りとなります。

 **三回目の節目……ドラッカー先生、記者時代の体得**
 夕刊紙の記者時代。
 朝の六時に働き始め、原稿が印刷に回される午後二時十五分まで働く。
 午後の残りの時間……そして夜の時間も、何がなんでも徹底的に勉強した。
 国際関係、国際法、制度や機関のこと、歴史、金融、等など。
 やがて、一つのことに集中するという型が出来上がり、習慣となる。
 新しいテーマを決め、{一刻|いっとき}、その一つに集中して勉強する。
 修得は無理でも、理解はできるようになる。
 時流に即した新しいこと……体系、アプローチ、手法などを、素直に受け{容|い}れることができるようになる。
 どんなテーマにも、勉強した以外に別の前提や仮定、そして方法論などがあることを知る。 

 **四回目の節目……ドラッカー先生、編集長からの教訓**
 編集長主宰の年中行事。
 半年に一度、土曜日の午後と日曜日を使って、半年間の仕事ぶりについて話し合う。
 優先順位の一番は、{優|すぐ}れた仕事。
 二番は一生懸命にやった仕事で、三番は一生懸命にやらなかった仕事。
 最後は、お粗末な仕事や失敗した仕事で、痛烈な批判を受ける。
 残りの二時間、これから半年間の仕事について話し合う。
 一に、集中すべきことは何か。
 二に、改善すべきことは何か。
 三に、勉強すべきことは何か。
 記者を{辞|や}めて十年後、大学の教授やコンサルティングの仕事に就いていたころ、その編集長主宰の年中行事のことを思いだす。
 以後、夏になると、二週間をかけて、同じ要領で一年の反省と、次の一年間の計画や優先順位を決めることが習慣となる。
 完全を求める人生の、再始動。

 **五回目の節目……ドラッカー先生、老経営者からの教訓**
 証券アナリストからエコノミストに転向。
 二つの顧問先から{賞讃|しょうさん}を受けるなか、もう一つの顧問先の老経営者から極評される。
 「期待してはいなかったが、ここまで{呆|あき}れるほど駄目だとは思わなかった」
 {呆気|あっけ}にとられる。
 その経営者が、「{何故|なぜ}駄目なのか」を語る。
 「証券アナリストとして評価が高いことは、聞いている。
 証券アナリストをやりたいのなら、そのままやっていればよかったではないか。
 今君は、経営者の補佐役だ。
 それなのに、相も変わらず、証券アナリストの仕事をやっている。
 いったい、何を考えているのかッ!」
 世界中で、昇進した有能な人たちのうち、その大半が、役に立たない仕事しか出来なくなってしまっている。
 その理由は、有能な人たちが無能になったからではなく、間違った仕事をしているからだった。
 以後、新しい仕事を始めるたびに、新しい仕事で成果をあげるためには、何をしなければならないか……{則|すなわ}ち、新しい任務が要求しているものを、徹底的に考え抜くことが習慣となる。
 新しい任務で成功するために必要なことは、新しい任務が要求するもの、新しい挑戦、仕事、課題に関する重要なことに集中することだったのだ。 

 **六回目の節目……ドラッカー先生、宗教機関からの教訓**
 近世初期のヨーロッパ社会に関することを新しいテーマとして、集中して勉強に励んだ。 
 キリスト教の二大社会的機関、カトリックイエズス会と、プロテスタントカルヴァン派。
 そのカトリックの修道士とプロテスタントの牧師たちが、まったく同じ方法で学習をしていた。
 何か重要な決定をする際に、その期待する結果を、必ず書き留めておく。
 何か月かの後、実際の結果と期待していた結果を見比べる。
 すると、自分にとって最も重要な能力を、自ら知ることができる。
 一、何がよく行えるのか。
 二、何が強みなのか。
 また、課題も見えてくる。
 一、何を学ばなければならないか。
 二、どのような{癖|くせ}を直さなければならないか。
 三、どんな能力が欠けているのか。
 四、何がうまくできないのか。
 何が必要かも、見えてくる。
 一、何について改善する必要があるのか。
 二、いかなる改善が必要なのか。
 更には、教訓も見えてくる。
 一、自分ができないことはなんなのか。
 二、うっかりやろうとしてはいけないことはなんなのか。
 ついには、自分の学習の{要|かなめ}を知ることができる。
 一、自分の強みをいかにして強化するか。
 二、自分には、何が足りないのか。 

 **七回目の節目……ドラッカー先生、経済学者からの教訓**
 父親と親友だった有名な経済学者が若い頃、ある言葉で話題になったことがある。
 「ヨーロッパ一の美人を愛人にし、ヨーロッパ一の馬術家として、そしておそらくは、世界一の経済学者として知られたい」
 そして、その経済学者が{亡|な}くなる五日前、「自分が何によって知られたいか、今でも考えることはあるか?」と親友に問われ、彼は、{斯|こ}答えた。
 「その質問は今でも、私には大切だ。でも、むかしとは考えが変わった。今は一人でも多く優秀な学生を一流の経済学者に育てた教師として知られたいと思っている。
 私も本や理論で名を残すだけでは満足できない歳になった。人を変えることができなかったら、なんにも変えたことにはならないから」
 この経済学者と親友である父との会話から学んだこと……。
 一、人は、何によって人に知られたいかを自問しなければならない。
 二、その問いに対する答えは、歳をとるにつれて変わっていかなければならない。
 三、、本当に知られるに値することは、人を素晴らしい人に変えることだ。

 最後に、二つ目に思っていること……。
 ヒト種を漢字で書くと、「{一|ヒト}種」。

 一つになれる……一つに戻れるから、{一|ひと}種なんだ。
 祖国「{日|ひ}の{本|もと}」に戻るまでに、ぼくは、変われるだろうか。
 他人の教訓ではなく、自分の教訓を得て、{武童|タケラ}となり、{戈|ほこ}を{止|とど}めさてせるような強みに磨きをかけることができるだろうか。
 それが、期待する結果?
 期待どおりの結果にならなければ、ぼくら自然{民族|エスノ}は、{亡|ほろ}びる。
 ぼくらだけじゃない。
 和の人たちも、文明の人たちも……。
 期待せざる結果が、現実となる。
 そう、期待せざる結果……それが、ヒト種の絶滅。

 もうすぐ、北欧の夏が終わる。
 ぼくたちの旅も、幕を下ろす。

 _/_/_/ 『然修録』 第1集 _/_/_/
 ミワラ<美童> ムロー学級8名

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 吾ヒト種  われ ひとしゅ
 青の人草  あおの ひとくさ
 生を賭け  せいを かけ
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 ルビ等、電子書籍編集に備えた
 表記となっております。
 お見苦しい点、ご容赦ください。

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