東亜学纂の電子バイオグラフィー v(´▽`*)
『後裔記』
エスノキッズ 心の学問「自伝編」
令和2年10月31日(土)号
一つ、息をつく。
やっと、後裔記を書く暇(時間、削って良しとする命)を、得た。
オオカミです。
〔 汽艇着岸! 再会と想定を超える出会い 〕
おれが降ろされた島のことは、ひとまず置く。
対岸に行ってみようと島を西へ東へと動き回ったが、どうしてもその対岸に辿り着けない。
「ひょっとして、別の島? 足下(そっか)から対岸を隔てる岸辺の海は、水道? 瀬戸?」
と、徐々に、疑念が確信へと変わってゆく。
スピアは、快調に後裔記を書き綴っている。
まァ、それはそれで、良し。
島で養殖水産業をしている並み居るオッサンたちの一人に、汽艇を借りた。
一人で離着岸できるのは、精々30フィートくらいまでだ。
と、思った。
借りれた。
誰の手も借りず、午後3時以降に離岸し、翌朝5時までに元通りに舫(もや)っておく。
それが当初、実際には最初のみに適用された、無償レンタルの条件だった。
で、愈々(いよいよ)その日、午後3時の5分前。
桟橋で、汽艇が仕事から戻るのを待ち受けた。
海の営みは、時間に正確だ。
午後3時ピッタシ!
おれは、汽艇に乗り込んだ。
操船術がどうのとか、海技免許はどうしたんだいとか、そんな、目的を阻害するような俺的に猥雑(わいざつ)に思える類(たぐい)〉の話も無論、置く。
まさに、漂海民!
対岸に接近。
直ぐに、一つ目の新たなる発見。
入江が、見えてきた。
南西の方角、つまり、おれ住みの島の南端の方に、その口を開けている。
沿岸は、見渡す限り、手付かずの岩場といった感じ。
入江の一番奧まった辺りから、獣道(けものみち)とも林道ともとれる人道らしきものが、森の中に向かって一筋延びている。
入江の奥へと進む。
向かって左側、入江の西側に、公団住宅のような廃墟が見えてくる。
心当たりがある風景。
スピアの後裔記を、思い出す。
「こんな近くにぃ? まさかなッ!」
と、独り言(ご)ちてその反対側、入江の東側に目を移すと、何やらどこかで見た風な少年が一人、ほっつき歩いている。
ふざけたような、投げ遣りかどうかまでは見て取れないまでも、やっぱり投げ遣りな歩き方......。
(あいつだ。 スピア)
と、何気に思う。
不審な挙動。
汽艇のエンジン音を聞いて、咄嗟に身を隠そうとするような動き。
あいつが身を隠す理由とは、一体全体何だろう。
身を隠してでも護るべきものを、何か身に着けたのだろうか。
そんなものは、あるはずもない。
寧(むし)ろ、まだあいつは、何かを護るどころか、誰かに護られて生きている身だ。
減速する。
入江の中は、まさに油壺。
三角波も、盛り上がって攻めてくる引波もない。
ゴロついた手ごろな大きさの岩を空積みしただけのような、古(いにしえ)漂う突堤が、岸部からちょこんと鼻先を出している。
まさに、着岸。
元い、着岩!
借り物の汽艇を傷付けまいとするあまり、その無様(ぶざま)なアプローチは、度(たび)を重ねる。
汽艇の長さは、2トントラックほどもある。
仕方がない。
舫(もや)いロープを、突堤に向かって放り投げる。
一見、慣れた身のこなし。
自画自賛。
(あいつの齢(よわい)って、たしか五つ下だったよなァ?)
それがどうしたという訳でもないが、なぜか何気に、そんなことを思う。
スピアの服装は、その服にも靴にも、見覚えがある。
おれは、軽装だけど一応は、防寒着を纏(まと)っている。
白い長靴!
背丈は、世間並みの大人の女のヒトくらいはある。
まァ、痩せ型だな。
動きは、隆々♪
「どこでもいいよッ!
とにかく、どっかに括れ」
と、スピアに声をかける。
うろうろするスピアの背後に、鳥。
気のせいか、どことなくふくよか!
(カモメ? なんだろうけんども、可愛げのないんやつだな。
ユリカモメとは、大違いだ。
寧ろ、ふてぶてしい)
と、ただ思っただけなのに、そのときだった。
そのカモメもどきが、矢庭に応えて言う。
「なんだろうねぇ。
みんな、唯(ただ)のカモメでいいじゃないのさァ ♪
なんであんたたちは、細々(こまごま)と分類したがるんだろうねぇ。
『新種のカモメ発見!』
とかさ。
そんなことばっか考えってるから、何でもかんでも、どんどん細分化されてっちまうんだろうねぇ」
生意気にも、ほどがある。
また何気に、(おまえらは知命しないから、いつまでも平明としてられるんだ)と、思う。
カモメもどき、また応えて言う。
(平明の、どこが悪いんだい!
平明じゃない、あんたたちの方が、よっぽど問題じゃないかァ。
あたいたちゃねぇ。
生まれつき、立命してんのさ。
七養、六然(りくぜん)、大努力。
油断したら、死ぬからさ。
だから、油が切れないように、自然の一部となって、気と身を養ってるのさ。
あんたたちこそ、知命しなきゃ、平明そのものじゃないかァ。
ナイーブ!
お人好しで自然知らずの、唯の鼻たれ小僧じゃないのさァ ♪ )
(言いたい放題だな。
おまえの言うその細分化をしないってことは、無関心ってことじゃないかァ!
無関心は、おれたち種の精神に反する)
と、思ったそのとき、やっとスピアが、舫いロープを括り終える。
スピアが、言った。
「ねぇ。
その種って、ぼくらのことォ?
精神ってぇ?」
(おまえまで、ややこしいことを言うな! まったく)
と、思ってしまって、案の定......。
(あらァ!
それは、失礼じゃない?
この子、面倒臭いことは言ったけど、べつに、ややこしいことは言ってないわよ)
と、またもやカモメもどき! と、思ってしまった。
無意識!
(またまたで、悪かったわねぇ。
ところでさ。
どうでもいいんだけど、あんたさ。
何で、風下からロープ投げんのさッ!)
(はァ?)
見ると、汽艇が、突堤と直角を為している。
(大丈夫よ。
待ってれば、ちゃんと反対側の舷縁(ふなべり)を接岸できるから。
それより、その精神ってやつ。
あたいも、聴きたいねぇ ♪ )
(だから、めんどっちいんだってばァ!
おまえに思って、スピアに言って、二度手間ちゅうもんじゃねぇかッ!)
(それも、大丈夫よ )
と、モドキカモメ。
(ぼく、大丈夫だよッ ♪ )
と、スピア、思う。
(ほらね。
あんたたち、新種の亜種だね。
そんじょそこいらのヒト種より、あたいらに近いってことさ。
あッ!
わかってるでしょうけど、一緒にしないでねぇ♪
あんたたちとあたいらは、大違いだから。
で、何なのよォ。
その、精神ってやつ!)
おれ、観念する。
(わかった!っちゅうにぃ。
まったく。
おれたちの精神は、和だ。
結ぶことだ。
その反対は、ほどく。
小さい〈つ〉を入れると、〈ほっとく〉。
放(ほ)ったらかすことさ。
それが、無関心。
和に反する。
だから無関心は、おれたちの精神に反するのさ。
黙ってろ!みたいな物言いは、たしかに失礼だった。
謝る。
スピアにだ。
それから、もう一つ、言っておく。
おれもスピアも、ナイーブなんかじゃない。
お人好しでも、自然知らずでもないってことさ。
たしかにおれたちは、まだ知命前だ。
子供さ。
でも子供は、ナイーブなんかじゃないんだ。
子供っていう字は元々、子供偏(こどもへん)に亥(イノシシ)と書く漢字だった。
まァ、可愛いウリ坊みたいなもんだな。
誰かさんと違って!
母親の保護下で、タケラ〈武童〉(大努力する大人)へと成長することを期待されつつ、育つ。
だから、『まだ子供だから』とか、『まったく、子供なんだから』って言われたら、誇らしく思えばいい。
それが、おれたちミワラ〈美童〉さ )
モドキカモメが、言う。
(あたしゃ無関心じゃないから、訊くんだけどさァ ♪
目の前に居る二人がミワラっていうやつなんだろうから、それは置いといて。
で、タケラって、何さッ!)
(互いに結びついて、力を合わせて、何事(なにごと)かを為す )
と、おれ。
(じゃあ、カモメさんたちの立命はァ?)
と、スピア.
(まァ。
あいつの言う、タケラみたいなもんだよ。
そのことに、自ら尽くす)
と、モドキカモメ。
(じゃあ、知命はーァ?)
と、スピア。
おれ、少々呆れてくる。
(おまえ!
然修録のネタ集めてるじゃないだろうなァ!
まァ、いっかァ。
何を尽くすのか。
何(なん)のために尽くすのか。
それを、知ることさ )
(どうやって知るのォ?)
と、スピア。
(シンジイに訊け!)
と、おれ。
(カモメじゃないのね?)
と、モドキカモメ。
矢庭に、有事斬然が如く、飛び立つ。
立命とは、是(かく)が如く。
2020年10月31日(土) 活きた朝 1:36
学徒、オオカミ
令和2年10月31日(土)号
一息 43【オオカミの後裔記】汽艇着岸!再会と想定を超える出会い『離島疎開10』
◎ 東亜学纂の電子書籍
《今後の発行予定(仮題)》
VIRTUE KIDS Volume 1
ヒト種分化時代の感奮学級日誌(1)
南内彬男
- 第一部「スピア等(ら)8人組学級」上巻 -
Motto : Japanize Destinies Distribution
Concept : Adventure, Ethnokids, Fantasy
E-zine , Biography Editing :
https://www.mag2.com/m/0001131415.html
E-zine, Education and Learning Editing :
https://www.mag2.com/m/0001675353.html
Web Log : http://www.akinan.net/
E-book plan :
VIRTUE KIDS Volume 1 to 12
Electronic Mail : switchgigi@gmail.com
© _/_ AeFbp _// 東亜学纂
A.E.F. Biography Publishing