MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

一息 43【オオカミの後裔記】汽艇着岸!再会と想定を超える出会い『離島疎開10』

東亜学纂の電子バイオグラフィー v(´▽`*)
『後裔記』

エスノキッズ 心の学問「自伝編」
令和2年10月31日(土)号


 一つ、息をつく。

 やっと、後裔記を書く暇(時間、削って良しとする命)を、得た。
 オオカミです。

〔 汽艇着岸! 再会と想定を超える出会い 〕

 おれが降ろされた島のことは、ひとまず置く。
 対岸に行ってみようと島を西へ東へと動き回ったが、どうしてもその対岸に辿り着けない。

 「ひょっとして、別の島? 足下(そっか)から対岸を隔てる岸辺の海は、水道? 瀬戸?」
 と、徐々に、疑念が確信へと変わってゆく。

 スピアは、快調に後裔記を書き綴っている。
 まァ、それはそれで、良し。

 島で養殖水産業をしている並み居るオッサンたちの一人に、汽艇を借りた。
 一人で離着岸できるのは、精々30フィートくらいまでだ。
 と、思った。
 借りれた。
 誰の手も借りず、午後3時以降に離岸し、翌朝5時までに元通りに舫(もや)っておく。
 それが当初、実際には最初のみに適用された、無償レンタルの条件だった。

 で、愈々(いよいよ)その日、午後3時の5分前。
 桟橋で、汽艇が仕事から戻るのを待ち受けた。
 海の営みは、時間に正確だ。
 午後3時ピッタシ!
 おれは、汽艇に乗り込んだ。
 操船術がどうのとか、海技免許はどうしたんだいとか、そんな、目的を阻害するような俺的に猥雑(わいざつ)に思える類(たぐい)〉の話も無論、置く。

 まさに、漂海民!
 対岸に接近。
 直ぐに、一つ目の新たなる発見。
 入江が、見えてきた。
 南西の方角、つまり、おれ住みの島の南端の方に、その口を開けている。

 沿岸は、見渡す限り、手付かずの岩場といった感じ。
 入江の一番奧まった辺りから、獣道(けものみち)とも林道ともとれる人道らしきものが、森の中に向かって一筋延びている。
 入江の奥へと進む。
 向かって左側、入江の西側に、公団住宅のような廃墟が見えてくる。
 心当たりがある風景。
 スピアの後裔記を、思い出す。

 「こんな近くにぃ? まさかなッ!」
 と、独り言(ご)ちてその反対側、入江の東側に目を移すと、何やらどこかで見た風な少年が一人、ほっつき歩いている。
 ふざけたような、投げ遣りかどうかまでは見て取れないまでも、やっぱり投げ遣りな歩き方......。

 (あいつだ。 スピア)
 と、何気に思う。

 不審な挙動。
 汽艇のエンジン音を聞いて、咄嗟に身を隠そうとするような動き。
 あいつが身を隠す理由とは、一体全体何だろう。
 身を隠してでも護るべきものを、何か身に着けたのだろうか。
 そんなものは、あるはずもない。
 寧(むし)ろ、まだあいつは、何かを護るどころか、誰かに護られて生きている身だ。

 減速する。
 入江の中は、まさに油壺。
 三角波も、盛り上がって攻めてくる引波もない。
 ゴロついた手ごろな大きさの岩を空積みしただけのような、古(いにしえ)漂う突堤が、岸部からちょこんと鼻先を出している。
 まさに、着岸。
 元い、着岩!
 借り物の汽艇を傷付けまいとするあまり、その無様(ぶざま)なアプローチは、度(たび)を重ねる。
 汽艇の長さは、2トントラックほどもある。
 仕方がない。
 舫(もや)いロープを、突堤に向かって放り投げる。
 一見、慣れた身のこなし。
 自画自賛。
 
 (あいつの齢(よわい)って、たしか五つ下だったよなァ?)
 それがどうしたという訳でもないが、なぜか何気に、そんなことを思う。
 スピアの服装は、その服にも靴にも、見覚えがある。
 おれは、軽装だけど一応は、防寒着を纏(まと)っている。
 白い長靴!
 背丈は、世間並みの大人の女のヒトくらいはある。
 まァ、痩せ型だな。
 動きは、隆々♪

 「どこでもいいよッ!
 とにかく、どっかに括れ」
 と、スピアに声をかける。

 うろうろするスピアの背後に、鳥。
 気のせいか、どことなくふくよか!

 (カモメ? なんだろうけんども、可愛げのないんやつだな。
ユリカモメとは、大違いだ。
寧ろ、ふてぶてしい)

 と、ただ思っただけなのに、そのときだった。
 そのカモメもどきが、矢庭に応えて言う。

 「なんだろうねぇ。
 みんな、唯(ただ)のカモメでいいじゃないのさァ ♪
 なんであんたたちは、細々(こまごま)と分類したがるんだろうねぇ。
 『新種のカモメ発見!』
 とかさ。
 そんなことばっか考えってるから、何でもかんでも、どんどん細分化されてっちまうんだろうねぇ」

 生意気にも、ほどがある。
 また何気に、(おまえらは知命しないから、いつまでも平明としてられるんだ)と、思う。

 カモメもどき、また応えて言う。

 (平明の、どこが悪いんだい!
 平明じゃない、あんたたちの方が、よっぽど問題じゃないかァ。
 あたいたちゃねぇ。
 生まれつき、立命してんのさ。
 七養、六然(りくぜん)、大努力。
 油断したら、死ぬからさ。
 だから、油が切れないように、自然の一部となって、気と身を養ってるのさ。
 あんたたちこそ、知命しなきゃ、平明そのものじゃないかァ。
 ナイーブ!
 お人好しで自然知らずの、唯の鼻たれ小僧じゃないのさァ ♪ )

 (言いたい放題だな。
 おまえの言うその細分化をしないってことは、無関心ってことじゃないかァ!
 無関心は、おれたち種の精神に反する)
 と、思ったそのとき、やっとスピアが、舫いロープを括り終える。

 スピアが、言った。
 「ねぇ。
 その種って、ぼくらのことォ?
 精神ってぇ?」

 (おまえまで、ややこしいことを言うな! まったく)
 と、思ってしまって、案の定......。

 (あらァ!
 それは、失礼じゃない?
 この子、面倒臭いことは言ったけど、べつに、ややこしいことは言ってないわよ)
 と、またもやカモメもどき! と、思ってしまった。
 無意識!

 (またまたで、悪かったわねぇ。
 ところでさ。
 どうでもいいんだけど、あんたさ。
 何で、風下からロープ投げんのさッ!)

 (はァ?)
 見ると、汽艇が、突堤と直角を為している。

 (大丈夫よ。
 待ってれば、ちゃんと反対側の舷縁(ふなべり)を接岸できるから。
 それより、その精神ってやつ。
 あたいも、聴きたいねぇ ♪ )

 (だから、めんどっちいんだってばァ!
 おまえに思って、スピアに言って、二度手間ちゅうもんじゃねぇかッ!)

 (それも、大丈夫よ )
 と、モドキカモメ。

 (ぼく、大丈夫だよッ ♪ )
 と、スピア、思う。

 (ほらね。
 あんたたち、新種の亜種だね。
 そんじょそこいらのヒト種より、あたいらに近いってことさ。
 あッ!
 わかってるでしょうけど、一緒にしないでねぇ♪
 あんたたちとあたいらは、大違いだから。
 で、何なのよォ。
 その、精神ってやつ!)

 おれ、観念する。

 (わかった!っちゅうにぃ。
 まったく。
 おれたちの精神は、和だ。
 結ぶことだ。
 その反対は、ほどく。
 小さい〈つ〉を入れると、〈ほっとく〉。
 放(ほ)ったらかすことさ。
 それが、無関心。
 和に反する。
 だから無関心は、おれたちの精神に反するのさ。
 黙ってろ!みたいな物言いは、たしかに失礼だった。
 謝る。
 スピアにだ。

 それから、もう一つ、言っておく。
 おれもスピアも、ナイーブなんかじゃない。
 お人好しでも、自然知らずでもないってことさ。
 たしかにおれたちは、まだ知命前だ。
 子供さ。
 でも子供は、ナイーブなんかじゃないんだ。
 子供っていう字は元々、子供偏(こどもへん)に亥(イノシシ)と書く漢字だった。
 まァ、可愛いウリ坊みたいなもんだな。
 誰かさんと違って!
 母親の保護下で、タケラ〈武童〉(大努力する大人)へと成長することを期待されつつ、育つ。
 だから、『まだ子供だから』とか、『まったく、子供なんだから』って言われたら、誇らしく思えばいい。
 それが、おれたちミワラ〈美童〉さ )

 モドキカモメが、言う。
 (あたしゃ無関心じゃないから、訊くんだけどさァ ♪
 目の前に居る二人がミワラっていうやつなんだろうから、それは置いといて。
 で、タケラって、何さッ!)

 (互いに結びついて、力を合わせて、何事(なにごと)かを為す )
 と、おれ。

 (じゃあ、カモメさんたちの立命はァ?)
 と、スピア.

(まァ。
 あいつの言う、タケラみたいなもんだよ。
 そのことに、自ら尽くす)
 と、モドキカモメ。

 (じゃあ、知命はーァ?)
 と、スピア。

 おれ、少々呆れてくる。
 (おまえ!
 然修録のネタ集めてるじゃないだろうなァ!
 まァ、いっかァ。
 何を尽くすのか。
 何(なん)のために尽くすのか。
 それを、知ることさ )

 (どうやって知るのォ?)
 と、スピア。

 (シンジイに訊け!)
 と、おれ。

 (カモメじゃないのね?)
 と、モドキカモメ。
 矢庭に、有事斬然が如く、飛び立つ。

 立命とは、是(かく)が如く。

 
2020年10月31日(土) 活きた朝 1:36
学徒、オオカミ


令和2年10月31日(土)号
一息 43【オオカミの後裔記】汽艇着岸!再会と想定を超える出会い『離島疎開10』

◎ 東亜学纂の電子書籍

《今後の発行予定(仮題)》

VIRTUE KIDS Volume 1
ヒト種分化時代の感奮学級日誌(1)
南内彬男

- 第一部「スピア等(ら)8人組学級」上巻 -

Motto : Japanize Destinies Distribution
Concept : Adventure, Ethnokids, Fantasy
E-zine , Biography Editing :
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E-zine, Education and Learning Editing :
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VIRTUE KIDS Volume 1 to 12
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