MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

東亜学纂学級文庫

『息恒循』を学ぶ

一息95 ミワラ<美童>の後裔記 R3.6.4(金) 夜7時

#### 一息サギッチ「{猥雑|わいざつ}と残酷を秘めた包帯の女。その魅惑の正体」後裔記 ####

 自然と自然に遊ぶ幼い子どもたち。その自然を自然に操る和の人たち。美しい女先生が奏でるオルガンの音。それに合わせて歌う無邪気な子どもたち、女先生自慢のの精珍料理! 包帯とマスクで隠された女先生の正体。
   少年学年 サギッチ 齢9

 一つ、息をつく。

 (まったく、{爺|じじい}が好きな{奴|やつ}だッ!)
 ……と、{半|なか}ば呆れて、残りの半ばも{諦|あきら}めながら、おれは、今入ったばかりの玄関から、また外に出た。{瓦礫|がれき}で囲まれている花壇には……まァ、今はまだ烈冬の時令。その{寂|さび}れた有り様は、知れたこと。
 それでも、よく見ると、{種|しゅ}ごとに縄張りを作って、芽吹いたり、くしゃくしゃの葉っぱが、背伸びをしようとしていたり、かと思えば早速、その葉っぱを無心で食ってるテントウムシが{居|い}たりする。
 そんな、{強|したた}かな自然の営みに感動していると、{何某|なにがし}かの妄想が、「プクゥ♪」っと、まるでシャボン玉が浮き上がるように、おれの脳裏の海面に頭を覗かせる。
 ……と、そのときだった。
 おれの両の耳の鼓膜が、セッションに参加した。
 どこからともなく流れてきた音が、おれの鼓膜を、叩いている。

 ……いーりーひうすれーぇ♪
 ……かーすーみふかしーぃ♪
 ……そーらーをみればーぁ♪
 ……のーほーいあわしーぃ♪

 まさに、自然の法則!
 まさに、自然の一部!

 段々長屋のてっぺんの庭を、一つ横切る。そのまた、隣りの庭……ではなく、そこでは、まだツボネエよりも幼い{子等|こら}数人が、可愛らしい馬を作って、〈馬とび〉遊びをしていた。
 それを見て取っただけで、おれは、そのまま前を向いて、やっぱりそこも横切り、次の段々長屋との間の狭い石段を、下りはじめた。
 (こっちには、花壇は、無いんだなッ!)と、{何故|なぜ}か不満げに思いながら、何気に振り返る。そして、馬とび遊びをしている子等を、見{遣|や}った。
 すると、その先……。
 見事な{立ち上がり花壇|レイズド・ベッド}が、目に飛び込んで来た。斜面を切り土して、子等の胸の高さくらいの天然の花壇が、雑木林を割り入るように、延びている。自然を、自然に操り、自然に溶け込んだ、和の人たち……。
 (じゃあ、自然の一部だと豪語するおれら{民族|エスノ}……自然の民は、一体全体、どうだって言うんだッ! 和の人たちと、どこが違うんだッ! そもそも、{違|たが}えることが、正しいのかッ!)と、そんな妄想の渦に巻き込まれるかのように、狭い石段を、歌声が聴こえるほうへと吸い込まれていった。

 すると、衝撃!
 以下、その{委細|いさい}。

 中連窓、全開♪
 長机は、{宛|さなが}ら寺学舎そのまんまで3列。
 幼い{子等|こら}が、歌っている。
 その奥。
 頭と両手首と左足に、真っ白い包帯をグルグル巻きにした若い女の人が、オルガンを弾いている。そのすぐ右手の壁には、{杖|つえ}が一つ、立て掛けられていた。
 目の下から{顎|あご}まですっぽりと、真っ白いマスクが、その女の人の顔を{覆|おお}っている。そして、曲が終わった。
 次は、書き方のようだ。幼い子等の迅速な行動が、それを裏付ける。その幼い子等の中に、一際目立つ、みすぼらしい身なりの男の子が一人と、女の子が二人……。
 なんとなく、情況が、見えてきた。手を休めながら{俯|うつむ}いているその包帯の若い女の人が、ぼくの心を捕らえて放さない。すると、彼女が言った。

 「隣りの島に疎開してきた、地上住みのミワラさんでしょ?」と、包帯の女先生。
 これが、直感というものなのか……考える前に、言葉が、突いて出てきた。
 「カアネエに、聞いたんですかァ?」
 「そう言うあなたは、ジジサマに聴かされたのかしらん?」
 そう言って、包帯のおねえさんは、首を縦にも横にも振らず、ただニコニコと{微笑|ほほえ}んでいるだけだった。
 おれも、頭を縦に振るのが、なんか子どもじみているみたいに思えて、なんか、自分でも判ってしまうような不気味な笑顔を作って……てか、全身が固まって、唇を横に広げるだけで、精一杯だった。

 「半年ぶりに、あなたも、この子たちと一緒に座学……{如何|いかが}かしらん?」と、包帯の女先生。
 (おれの素性を、知り尽くしている!)と、確信するおれ。

 確信は、もう一つあった。
 そっちの確信のほうだけで、もうおれの頭ん中も、そして、身も心も、もう、パンク寸前だった。パンクというより、それは、太陽の大爆発! その爆発が連鎖を起こし、銀河系のすべての星が、次々と大爆発を起こす! ……みたいな。

 カアネエさん、ヨッコ先輩、マザメ様、ツボネエちゃん……ゴメンなさい。あなたたちと、{幾度|いくど}となく、メッチャいっぱい触れ合ったのに、こんな感情は、一切一度たりとも、抱くことは{疎|おろ}か{湧|わ}いてくることすらなかった。
 これ、マジでおれの本当の本音なんで、素直に謝ります……(ペコリ!)。

 で、結局おれは、長机の末席に、落ち着いた。
 隣りには、みすぼらしい身なりの例の{子等|こら}が3人……{既|すで}に書き方の練習を、はじめている。おれの頭の中は、妄想で、はちきれんばかりだった。それを見事に察したかのように、包帯のおねえさんが、言った。

 「お昼も、一緒に食べて行ってね。質素だけど。言われなくっても、解ってるわよね? 今日の献立は……。

   〈 高野豆腐のおから載せ 〉
 高野豆腐を、水道水のお湯で戻して軽く絞ってから網焼きにしたものに、*おから*のペーストを、らっきょう酢と{味醂|みりん}に水道水を少々加えて煮炊きしたものを、ただその焼き高野豆腐上に載せただけ!

 そして、もう一品。

   〈 {鱠|なます}もどきの一夜漬け 〉
 アロエと白ニンニクとキャベツの芯とイリコに、らっきょう酢と味醂と、それから原木椎茸と魚介の乾燥粉末と七味とオルガノを混ぜて、それがただ、一夜を明かしただけ!

 包帯のおねえさんが、もう一つ、付け加えて言った。
 「以上の二品に、今日は、有難いことに、白いご飯。あなた……サギッチくん! 君、運がいいわねッ♪」

 そのときのおれは、まさに、〈まな板の上の鯉〉だった。そのあと、おねえさんのマスクの下から漏れ{出|い}でた{言乃葉|ことのは}の数々を、おれは、正気で{捉|とら}えることが出来なかった。でも、{徐|おもむろ}には、記憶に残っている。
 こんな感じで……。

   《 要約……と言うより、ただの断片……その数々 》

 みずぼらしい3人の子等は、{船住居|ふなずまい}の自然{民族|エスノ}。地上住みの自然人に会うのは、おれが初めてらしい。そして、おねえさんが生まれ育ったオンボロの家船で、おれたちは、旅に出ようとしている。
 続けておねえさんは、こんなことを言った。

 「あの、思い出が詰まった家船が、現役に復帰して、また海へ乗り出すのかと思うと、なんだか不思議と、嬉しい。
 でも、両親の遺品……ちょっと大きいけど、わたしにとっては大切な形見だから、もしぶっ壊したら、あなたの頭、この杖で百叩きにしてやるからァ♪
 ……てかこれ、マジだから!」

 文明{民族|エスノ}との戦いは、100年ごとの宿命の動乱を待っていたのでは、もう手遅れになってしまう。おねえさんを襲ったのは、文明エスノの、電脳チップを頭に埋め込まれた、試験人間。
 おれら{鷺|さぎ}助屋の後裔たちは、話が早い。直ぐにでも、戦える。でも、{戈|ほこ}を{止|とど}めさせる武の心に入信している座森屋の後裔たちは、みんな{危|あや}うい。もっと正直に、更に正確に言えば、目障りで耳障りなだけの邪魔者だ。
 その、座森屋の切り札が、スピア!
 包帯の女先生の予測では、おれは、近い将来、スピアと、お互いの一族の存亡を掛けて、運命の決戦を交えることになるのだそうだ。
 そんな話をしている間の包帯のおねえさん……それは、カアネエの親友、自然エスノの海住みの漂海民、潜入班の優秀な女調査員……。その実態は、まさに{黄泉|よみ}の国のイザナミの神に取り{憑|つ}かれた怖ろしい使者。そんな、恐い目をしていた。

 やっとこさで集めた記憶の断片……以上(アセアセ)。

 長い長い(と感じた)〈書き方〉の時間割が、やっと終わった。
 次は、やっと、待ちに待った給食ーぅ♪
 片手に杖、片手に*おぼん*を握って、一人で配膳する、包帯のおねえさん。その目は、おれの心をトロトロに溶かした、窓枠に納まってニッコリ微笑んでくれた、あのおねえさんの優しい目に戻っていた。
 配膳が終わると、包帯のおねえさんが、みすぼらしい三人の子等を見{遣|や}りながら、おれに言った。

 「その子たちはさァ。家船で産れて……でも、その半分以上の子たちは、海に落ちて死ぬんだよ。読み書きも知らないうちにさ。だから、生き残った子等だけでも、ここで、和の子たちと一緒に、読み書きを覚えたり、一緒に歌ったり、一緒に陸の上の子等と同じものを食べさせてもらったりしてるんだ。

 この子たちはさ。陸で住む誰よりも、人間が好きなんだよ。その人間の正体、誰なのか、解るよねッ? そう、自然さ。わたしたち自然エスノは、先祖代々、そんな自然を大事に思って敬いながら生きてきた和の人たちを、ずっと{護|まも}ってきたのさ。
 なんでそんな面倒を、しかも{何故|なぜ}自ら引き受けたりなんかしたのか……。君も、自然エスノの{美童|ミワラ}なら、その{訳|わけ}、解るよねッ?

 そう……。
 また、一つになるためさ。
 だからさッ! だから、闘うのさ。文明の奴らとは、もう、一つには戻れない。それどころか、奴らは必死で、一つに戻ることを阻止しようとしている。しかも、あろうことか、手段を選ばず!

 文明エスノは、奴らが自慢して{已|や}まない科学ってやつを駆使して、わたしたち自然エスノも、そして、わたしたちにとって{同胞|はらから}も同然の和のエスノの人たちも……みんな、一人残らず、殺そうとしてるのさッ!」

 包帯の女先生が作った猥雑魅惑の精珍料理……なんと意外と、めっちゃ{美味|おい}しかったのであります(ポリポリ)♪

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Ver.,1 Rev.,6
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