MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

後裔記 第1集 No.122

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい。
そのために、働く! 読む! 書く!
南内 彬男
なんだい! あきお
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_/ 1 /_/ 『亜種記』 *電子書籍
息恒循を学ぶ子どもたちの闘戦の旅
_/ 2 /_/ 「後裔記」 *メールマガジン
亜種記を構成する諸書(実学紀行)
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亜種記を構成する諸書(座学日誌)
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_/ 2 /_/ 後裔記 第1集の子どもたち
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名
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※電子書籍編集のための記号を含みます。
  お見苦しい点、ご容赦ください。

#### マザメの実学紀行「イメージ記憶、攪乱! 原っぱから外舎へ」{後裔記|122} ####
 《歩学談議、自発的に生み出すコトバ記憶の威力!》
 《外舎到着、明かされる七つの循令の{根源|ルーツ}》
 学徒学年 マザメ 齢12

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。

 《 歩学談議、自発的に生み出すコトバ記憶の威力! 》

 「この原っぱって、終わりあんのかァ? あーァ??」と、おバカのオオカミ君!
 終わりのないものなんて、この世にはない。宇宙だって、必ずどこかで終わって、その先は、巨人だか大魔神だかの住まいの神棚の端っこかもしれない。なんて妄想をしながら、ひたすら歩く。
 オバカッチ・サギッチが、言った。
 「今さらなんだけどさァ。燃料の石炭、あんなにいっぱいフロートに吊るして苦労して引き上げなくても、{牡蠣|カキ}{筏|いかだ}みたいなのに吊るして{曳|ひ}いて行けば、あそこまで苦労すること無かったんじゃないのォ?」
 オオカミの野郎、単細胞をよく表した頭で、即反応。高等なコトバ記憶の検索を素っ飛ばして、勝手に浮かんできたイメージ記憶を、そのまま言葉にする。正に、動物的!
 「アホかァ! カキ筏ってのは、竹を歩幅の間隔で並べて、そこにまた竹を渡して針金で{括|くく}ってるだけなんだぞッ! 体操選手でもない限り、直ぐに素人がその上を歩けるってもんじゃないんだ。
 それになァ! どうやったって、知命的に舵{利|き}きが悪くなるんだ。カキ筏なんて四角くって平べったくってバカでっかいもんを曳いてみろッ! 曳き船のズングリ丸は、{面舵|おもかじ}を取りゃあ直ぐに右に船首を向けるけど、カキ筏は、ウントモスントモさァ! 筏の四角い頭が向きを変えるまでに、何分何十分かかると思ってんだァ!
 だから、曲がりたい側の船尾から{延|の}びてるロープを送り出して、反対側のロープを引っ張り込む。そうすりゃあ、ボンクラ頭の{奴|やつ}に仕事を言いつけてやっとこさで動き出すみてぇな早さで、曳き船に{追随|ついずい}して向きを変えてくれるって寸法さァ。
 海は、障害物だらけさァ。人間が近くに住んでりゃ、尚更のことだ。この場合の人間ってのは……無論、文明の奴らのことだけどなッ!」

 なんか、男どもの会話って、かったるい……っていうか、どっちゃーでもいい!
 {堪|たま}りかねて、あたいが言う。
 「どうでもいけどさァ。他人の言葉に無意識に反応したイメージ記憶を垂れ流すみたいに、ダラダラとだらしなく{喋|しゃべ}るの、いい加減に{止|や}めてくんない? みんな、歩き疲れてんだからさァ。頭、右側ばっか使わないで、たまにゃあ気を{遣|つか}って、右っかわの脳ミソも、使えッつーのォ!
 まァ……使おうとしても、塩漬けでカチカチの冷凍の{撒|ま}き{餌|え}みたいになってんだろうけどさァ♪」

 サギッチ……やっぱり、無意識に浮かんできたイメージ記憶を、{撒|ま}き散らす。
 「おれらの頭ん中、オキアミが、ウジャウジャーァ♪ ……ってことォ?」
 ここで、当然スピアが口を挟んで、面倒っちい感想を述べることが予想されるんだけれども、自発的に意識することを怠ったあたいのボンクーラ・ノーミッソは、それを予期することができなかった。
 結果……スピア様が、言った。
 「そっかァ。だから人間の脳ミソ、オキアミ色っていうか、赤茶のレンガ色なんだァ♪」
 まったく、呑気。
 (おまえも、自分のこと言われてんだろがァ! 怒れよ、ちったーァ!!)と、思うあたい。
 それに追い撃ちをかけるように、ヨッコねーさんが、言った。
 「そっかァ。だから、オキアミって、『レンガ』って、呼ーぶんだね、アミちゃーん♪ ……みたいな。{小粋|こいき}じゃん!」

 ここで{既|すで}に、どうでもよくなってきてたんだけど、そのあとでの会話の最初の一言だけ、{括|くく}りとして記しておく。
 ツボネエちゃんが、言った。
 「てか、イメージ記憶ってぇ?」
 いつも一言多く、自滅する女。
 意外……でもないかァ。ツボネエちゃんと一番付き合いの長いムロー先輩が、応えて言った。
 「おまえ、先輩たちの然修録、読んでないのかァ! というか、せっかく読んでも、イメージ記憶に放り込むだけじゃあ、読むだけ無駄だぞッ!」と、ピシャっと締め括る……と、書いて欲しかったところなんだろうけど、いつもながら、(ムロー先輩は、)詰めが甘い。
 そう書きたかったからかどうなんだか、口を出させて{戴|いただ}いたのは、何を隠そう……あたい!
 「コオ島の婆ちゃんの爪の{垢|あか}でも、ミソ汁ん中に入れて、飲むんだねッ! そこにいらっしゃる、そんじょそこらの男どもさんたちーぃ♪」
 「婆ちゃん、なんて言ってたのォ?」と、スピア君。
 いつもながら、爺さん婆さんネタには、直ぐに反応する。応えてあげよう、ホッチョチョギスーゥ♪ ……みたいな(ポリポリ)。
 で、あたいは、{斯|こ}う言った。
 「外から入って来た言葉に{慌|あわ}てふためいて、どの言葉にも{繋|つな}がっていないイメージ記憶を{搔|か}き集めて、その外からの言葉に無理矢理に繋げたって、もう、手遅れなんよーォ!! ……って、言われたのさ。
 サギッチ、どうぞーォ♪」
 「わけわかんねーぇ!!」と、サギッチ。
 「ありがとう」と、あたい。
 「で、*わけわかる*ほうの話はァ?」と、スピアの野郎。
 ({訊|き}いてくるんじゃねぇよッ! くたくたなんだから、まったく)……と、思うあたい。仕方なく、極力{手短|てみじか}に{努|つと}めて、イメージ記憶を厳選して、話す。
 「『優しく大回転♪ 前{搾|しぼ}り!』って、訳さ。
 サギッチ、どうぞーォ♪」
 「いいよ。早く話せよォ!」と、サギッチ君……。
 (……)と、思いながらも、{健気|けなげ}に語りはじめる見少女、あたい♪
 こんな感じでーぇ……。

 「要はさァ。
 自発的に、記憶の中のどの言葉とも繋がっていないイメージの記憶をいくつか集めて、それを{一纏|ひとまと}めにして、その一纏めにしたグループに相応しい、まったく新しい言葉を作る。そして、その自発的に作られた新しい言葉を、同じく自発的に集められて一纏めにされたイメージ記憶のグループに、結び付ける……それ{即|すなわ}ち、{所謂|いわゆる}……*命名*ってやつさァ。
 婆ちゃん、{曰|いわ}く……。
 自発的に意識しないと、乳首を強く{拭|ふ}いて蹴られたり、{捻|ひね}りが足らなくって、汚れが残って、{搾|しぼ}った乳に汚れが混じったりなんかして、バケツにいきなり乳を搾ってるもんだから、薄い乳や、ドロンとした乳や、血まで混じったりなんかして、売りもんにならんようになったりするわけよねぇ。
 ほんじゃけんさァ。乳の下にバケツを受ける前に、ちゃんと美味しい乳が出とるかどうかを確認できるまで、前搾りいうもんをせんとういけんのんよねぇ。
 ほじゃけぇいうて、周りから言われて、「あッ!」っと思って、言われた言葉と、自分のボンクーラ頭の中の正しいイメージ記憶を結び付けたところで、もう、手遅れいうもんなんよォ。
 ほじゃけぇ、手遅れにならないように、周りから注意を受けんように、ちゃんと{上手|うま}げにやれるように、自発的に、正しいイメージ記憶を搔き集めて、それを、正しい順番に並べて、{一纏|ひとまと}めにして、そいつに{相応|ふさわ}しい新しい言葉を、考える。
 脳ミソん中で、新しい言葉を生み出すって訳さァ。その新しいコトバ記憶には、どこにも繋がっていないけど最適な正しいイメージが、順序良く並んで、{一纏|ひとまと}めになっている。
 それが、正に、『優しく大回転♪ 前搾しぼり!』……ってわけさァ。解ったーァ?!」……と、あたい。

 長いなッ! あたい的には、不満……(アセアセ)。

 《 外舎到着、明かされる七つの循令の根源 》 

 それでねーぇ!!
 外舎……とやらにて。

 ヨッコねーさんの、第一声♪
 「どうでもいいけどさァ。あんたち、さっさとお風呂だねぇ! あんたらさァ。どんだけ汚い顔と身なりしてるかァ……自分で、わかってるーぅ?? 着替えは、用意してあるから。但し……というか、当然、レディーファースト!」

 で、ヨッコねーさんの、第二声……。
 「あらーァ?! ムネさん! 将棋、出来るんだーァ♪ 驚きーぃ……って、失礼かァ(ポリポリ)。てか、それって、将棋だよねぇ?」
 ここで、メンドッチ・スピアッジャが、口を挟む。
 「循令じゃん♪」
 ムロー学級……総員、八名。現在員、七名。{雁首|がんくび}揃えて、将棋盤を、覗き込む。「ムネさん!」って呼ばれて振り返りもしないそのオッサンの横顔が、新たな〈イメージ記憶〉としてあたいの脳ミソに収納される。一生忘れないけど、一生思い出せない、どのコトバ記憶とも繋がらないイメージ記憶として……。
 で、その(見た目は……まァ、四十代だけど、その居住まいは、正に還暦超え!)のオッサンが、{何気|なにげ}に言った。
 「大将棋さ。昔の将棋。だから、{駒|こま}の名前が、違うんよォ♪」

 確かに、スピアの言うとおり、七年間の循令……一年目が{飛龍|ひりゅう}、二年目が{猛牛|もうぎゅう}、三年目が{猫刄|みょうじん}、四年目が{嗔猪|しんちょ}、五年目が{悪狼|あくろう}、六年目が{石将|せきしょう}、七年目が{鐵将|てっしょう}……と、そのまんまの同じ漢字が、駒に彫られている。
 このことを、誰かが然修録か後裔記に書いていたかもしれないけど、それは、記憶の中のどの言葉(=コトバ記憶)とも{繋|つな}がっていない。何億とあたいらの脳ミソに記憶されている忘れ去られたイメージ(=イメージ記憶)の一つに過ぎない。要は、書いた本人も、覚えていないに違いない。ただそれを、言いたかっただけ。……{嗚呼|ああ}、スピア症候群!
 問題は、『{息恒循|そっこうじゅん}』を考案したあたいらのご先祖さまが、これら七つの駒に、どんな道徳を{見出|みいだ}したかだ。でもそれは、決して口に出してはいけない。{何故|なぜ}ならば、スピアの野郎の長い話が、始まるからだ。でも{何|いず}れ、然修録には、誰かがちゃんと、その解を{説|と}いておいて欲しい。無論、出来るだけ短く、しかも当然、解り{易|やす}くねぇ♪……(ポリポリ、ペコリ)。

 今の問題は、そこじゃない。一番風呂だッ! ツボネエも、女だね。あたいと、同じ目をしている。(一緒にお風呂、入ろうねーぇ♪)と、そのツボネエちゃんの目に、合図を送る。無論、会心の返礼を意味する満面の{笑|え}み♪

 ……で、ヨッコねーさんの、第三声!
 たまたまそこに居合わせたように突っ立ってる少年が、一人。オオカミの野郎と同年代くらいの、サギッチ{風情|ふぜい}を{戦|そよ}がせた、(絶対に、無愛想に違いない!)と、思わせるその少年に向かって……。
 「お風呂、沸いてるわよねぇ♪」
 「まだ」と、その少年。
 「『お風呂よろしくーぅ♪』って、言ったわよね。わたし……」と、ヨッコねーさん。
 「聞いた。だから、ちゃんといつもの夜の時間には、間に合わせる」と、その少年。
 笑顔、無し。愛想笑いの気配も、ゼロパーセント!
 「そうね。それでいいと思う♪」と、ヨッコはん。
 (いいんかい!)と、思うあたい。

 ……と、そのとき、外の庭のほうから、幼い少女の弾けるような快活な声が、鳴り響いた。
 「あッ! ヨッコたんだーァ♪」

 **{格物|かくぶつ}**

 他人から言われて、納得して従うってことは、その新しい言葉が、脳ミソに入って、それこそ新しい〈コトバ記憶〉となって、納得するための〈イメージ記憶〉を{搔|か}き集めて、それを{一纏|ひとまと}めにして、無理矢理にその外から入って来た新しい〈コトバ記憶〉と結び付ける……って、ことだよねぇ?

 それって、本当に、「納得した」って、言えるのかなァ!?
 あたいは、納得できないけどねーぇ!!
 
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