MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

後裔記 第1集 No.146

#### ツボネエの{後裔記|146}【実学】バカ*チン無し*の{役務|えきむ}【格物】ソクラテスの弟子にように ####

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。
 少女学年 **ツボネエ** 齢8

実学
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バカ*チン無し*の役務

 大人になっちゃってしまうと、何か解らないことがあっても、誰にも{訊|き}けなくなってしまう……って、誰かが言ってたけどーォ!!
 そんなに不便なんなら、大人になんか、なりたくない。どうしてもならなきゃなんないんなら、そんな大人には、なりたくない。
 ……てか、でもさァ。どんな大人になったかは、アタイが感じることじゃない。他人の目に映って、その他人が感じて、決めることだ。だから、どうなりたいとか、どうなったらイヤだとか、そんなことは、一切思わない。なったらなったで、それでよし。ならなきゃならないで、それでよしさァ♪
 で、……LDP指定地区?
 みんな、知らないはずなのに、誰も、誰にも、何も、訊こうともしない。
 無関心? だったら、最悪だ。
 で、ヨッコの姉貴に、訊いたのさァ。
 「ねぇ、ねぇ。LDPって、なにーぃ??」
 マザメの姉御の目が、{何故|なぜ}か優しい♪
 ヨッコの姉貴が、応えて言った。
 「あんただけだね。正常なのは……」
 「ほかの人は、誤動作ってことォ?」と、あたい。
 「それは、正しくないね。動作しないんだから。『{錆|さ}びつき』ってところかなァ?」と、ヨッコねーさん。
 「納得ーぅ♪ で、LDPはァ?」と、あたい。
 「そうだったね。『レベル・ダウン・ア・ペニンソラ』の略さァ」と、ヨッコねーさん。
 「なッなッ! なーんじゃそりゃ!」と、久々に出ましたよん♪ サギッチだ。
 「あんたら、すぐに噴火すっからさァ。あんまり、{絡|から}みたくなかったって言うか……それ、過去形じゃなくて、常に現在進行形なんだけどさァ♪」と、ヨッコの姉貴。
 「わけわかんねぇから、噴火でぎねぇ。安心して、ツボネンちゃんの問いに、応えてやれッ!」と、意外と*短期*集中*短気*のムロー先輩が言った。
 「あッ、そお! じゃあ……。半島を切り崩して、平野にしちまうってことさァ」と、ヨッコしゃん♪
 「開発予定の、国有地……ってところかァ。詮索が過ぎると、みんなに危険が及ぶからなッ! 俺たちも、その『みんな』の端くれって訳なんだからさァ。危なっかしい動きは、休み休みにしてくれよなッ!」と、日焼けしたジュシにぃ。
 「はいはい。{腑|ふ}に落としとくよォ♪ 『大きなお世話』っていう索引を貼ってさァ!」と、ヨッコねぇ。
 「その索引に、イメージ記憶を張っとくのも、お忘れなくーぅ!」と、オオカミ先輩。
 ヨッコねぇ、無言!
 スピアの兄貴が、言った。割といつも、唐突! てか、脈絡無視。言い換えると、自分勝手! でもそこが、スピアの兄貴のいいところーォ♪
 「うどんを作ってたってことはさァ。山小屋みたいなのがあったってことだよねぇ? 今そこ、どうなってるのォ?」
 「危なっかしい詮索は、しない主義だ……って、言ったろッ?」と、日焼けしたジュシにぃ。
 「言ってないと思う。休み休みだから、休んでないときは、詮索したり危なっかしいことしてたんでしょ?」と、スピアの兄貴!
 「{面倒|めんど}っちい奴だなァ!
 俺とペアじゃなくて、良かったぜぇ♪
 山小屋っちゅうかさァ。屋根と壁が付いた炊事場って感じかなァ。今でもあそこに建ってるとしても、誰も居ないよ。うどんのおかんが、鍵をかけて、下山しちまったからなァ。開発の指定地区になったからじゃないんだ。元々、山菜のシーズンしか、おかんは、山に登って来ないから。夏は暑いし、冬は、寒い。秋は……面倒っちいから……たぶん!
 まァ実際、忙しいんだろうけどさァ……」と、日焼けしたジュシにいやん。
 「俺ん{家|ち}じゃなくて、どうしても森に入って寝泊まりしたいって言うんなら、そのおかんっちに行って、屋根付き壁付きの炊事場の鍵を借りてこなきゃなッ!」と、マザメねーさんとペアの、ミスター・クーラーボックス! モクヒャのおっちゃんが、言った。なんか、どうでもいいみたい!
 「要らねぇ! 掘りゃいいのさァ。猪みたいにさッ!」と、マザメねーさん。
 「そんなに、{頑|かたく}なになることもないさァ。その屋根付き壁付きの炊事場とかいう山小屋も、モクヒャさんの家も、そんなに変わったもんじゃないからさァ。なんでもかんでも木で作んなきゃ気が済まない人だからさァ。森の中に丸太ん棒が積み重なっててさァ。その下に{埋|うず}もれてんのが、モクヒャさんの家って訳さァ。
 だから、わざわざLDPの危険な森に入らなくっても、似たような生活が出来ちゃうって訳さァ♪」……と、{渡哲|ワタテツ}サングラスの姉御! ファイねーさんが、言った。
 「{下手|ヘタ}こいて都市部にふらふらっと出かけて行って、逮捕でもされたら、{後|あと}が{面倒|めんど}っちいからなァ。おまえ、そのモクヒャさんの山小屋で、大人しく軟禁されてろッ!」と、オオカミ先輩。失礼な話だけど、アタイも、そう思う。失礼!
 「都市部に入りたくても、子どもも、大人だって、一人じゃ入ることがでぎねーぇから、心配は、要らんよォ♪」と、レジ{袋|タイ}のタケゾウおやじいさん!
 「なんでぇ?」と、アタイ。
 「五人組を作らないと、街へは、入れないんだ」と、{細長|さいちょう}顔のテッシャン。スピアの兄貴とペアのオッチャンだ。
 「なんで、五人なのォ?」と、そのスピアの兄貴!
 「五人に、大きな意味はないさァ。歴史的に、三人とか五人とかの奇数が、何かと都合が良くて上手くいくことが多かったンだろうさァ。肝心なのは、大人数で都市部に、{自|みずか}ら入るってところなんだ。一人ずつ拘束して捕虜すんのって、面倒っちいじゃん! だから、『グループを作って、街に入って来てちょうだい!』って、言ってるって訳さァ」と、細長顔を長ァーくして、テッシャンが言った。
 「さっきの町内放送のことォ?」と、スピアの兄貴。
 「御明察♪」と、ジュシにぃ。
 「覚えてないよッ! なんて言ってたっけぇ? なァ、記憶マシーン♪ 教えろよッ!」と、サギッチ。
 「出番?」と、スピアの兄貴。
 「ゴメン札ーぅ♪」と、アタイ。
 「じゃあ……えっとーォ!!
 『五時を過ぎました。大人は、おうちに帰りましょう。週末です。みなさん♪ 五人のグループを作って、街に遊びに行きましょう。安くて美味しいもの、素敵な物や楽しい事が、いっぱいです。
 さァ! 善い子も悪い子も、笑顔で明るく元気よく、街でいっぱい楽しみましょう♪ 広報、半島西』
 ……みたいなァ。
 だったっけぇ?」
 「完璧! 恐れ入る」と、タケゾウのおっちゃん{爺|じぃ}。
 「どこもかしこも、物騒ってわけだァ。この島は……」と、オオカミ先輩。
 「普通さァ。次の瞬間、生きてるっていう保証は、どこにもない。どこに居たって、{同|おんな}じさァ。この大宇宙に居る限りはねぇ」と、ファイねーやん。
  「じゃあ、どうやったら、その物騒な大宇宙から脱出できるんだァ?」と、ワタテツ先輩。まさかの、真顔! よりによって、この場面で……普通、訊くぅ?
 「まァ、掃除、洗濯、炊事の一切合切をしなくて済むんだ。そこを差し引いたら、ちょっとはマシってことさァ! ……そう思って、妥協しろって言いたいのさァ。だろッ?」と、マザメの姉貴。
 「しないつもりかい!」と、目を{鴉|カラス}にして、モクヒャのおっちゃんが、言った。
 「アタイも、その条件なら、オーケーィ♪」と、アタイ。
 「ぅーんなわけ、ねーぇだろッ! このバカ*チン無し*がァ!」と、ファイねーやん!
 (チンナシーィ??)と、思うアタイだった。

格物
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ソクラテスの弟子にように

 「どんな大人になったかは、アタイが感じることじゃない。他人の目に映って、その他人が感じて、決めることだ。だから、どうなりたいとか、どうなったらイヤだとか、そんなことは、一切思わない。なったらなったで、それでよし。ならなきゃならないで、それでよしさァ」……と、書いた。
 でもこれは、変わらない、変わりたくない自分への*言い訳*なんだそうだ。久々に、目的主義……積極主義の心理学の対話本の続きを、読んだ。

 人間も、この世の中も、本当は、実に{単純|シンプル}なのだ。アタイ自身が、自分の人生を複雑にしているから、いろんな可能性が、{悉|ことごと}く困難に陥ってしまう。フロイトのような過去の自分の体験や思考が未来のすべてを左右するみたいなマイナス思考ではなく、アドラー先生が説いたように、未来の目的や夢に立脚して、今や、これからの未来を考えて、自ら変わっていかなきゃならないということ……。
 今の自分も、変わらない自分も、すべてが、自分で決めたこと。当然だッ! 他人に、決められる*ワケ*がない。アタイは、{何故|なぜ}、変わらないって決め込んでるんだろう。それは、変わりたい、目的や夢を実現したいっていう意志の力が、足りないから……{則|すなわ}ち、「勇気がない!」からだ。言い換えれば、「{意気地|いくじ}なし!」ってこと。

 どうすれば、その勇気が、持てるのか。
 それを持つためには、先ずは、今の自分を、やめるってことだ。それが、第一歩となる。
 「……一切、思わない」「……それで、よし!」「もし、何々だったら……」「アタイは、何々じゃないから……」と、これらは全部、変わらない自分……変える勇気を持てない自分への、*言い訳*なのだ。
 これを、「可能性の中に生きているうちは、変わることなどできません」と、アドラー先生は、言っている。やらない、行動しない、変わらないことによって、「もしやれば、もし行動すれば、もし変わることが出来れば、必ず、自分にも出来る」っていう*可能性*を、常に{某|なにがし}か、残しておきたいのだ。
 何故かッ!
 他人の悪評に{晒|さら}されたくない。「自分には、出来なかった」っていう現実に直面して、{自尊心|プライド}を傷つけたくない。もし、時間がありさえすれば……。もし、表舞台に出る機会を与えられさえしていれば……などと、可能性を残し続けて生きていると、{何|いず}れは、もう若くないから、もう家を買ってしまってローンがあるから、もう出世は望めないから、もう……と、直接的な言い訳を、恥も外聞もなく、おっ{始|ぱじ}めてしまうことだろう。

 「自分を変える」ということは、失敗しないためにあるんじゃない。失敗し続けることも、自分を変えることになる。「失敗しないために、何もしない」ということが、*変わらない*ということなのだ。何度失敗しても、何もしないよりは、前に進んだことになるし、どうしてもダメだと判断して、もし他のことを初めたとしても、それはそれで、やっぱり、一歩前に進んだことにはなる。
 一つの夢や、生涯一大事として大切にしてきた自尊心は、ぶっ壊れて、砕け散るかもしれない。でも、出来ない自分、変われない自分の言い訳を常に考えながら、何もせずに生き続ける{窮屈|きゅうくつ}さや苦しさに比べれば、よっぽど幸せな人生を歩むことができるのではないだろうか。

 やっぱり、どう考えても、変わらないことのほうが楽ちんで、変わることは、厳しいことのように思える。実際、そうだろうと思う。でも、大事なことは、この星、この世界、この大宇宙……そして、身近な世間との関りや意味を、自ら変えてしまえば、世間や他人との関わり方や、日々の行動も、変えなくてはならない必要が、出てくる。
 それ……則ち、「変わらざるを得なくなる」と、いうことだ。
 だから、アタイも、ほかのみんなも、世間との関りや意味……{所謂|いわゆる}ライフスタイルを、ただ選び直しさえすればいいということなのだ。新しく選び直したライフスタイルのほうが、きっと厳しいに決まっている。でも、それで、アタイの人生は、すっごく単純! 「シンプル・イズ・ベスト♪」になる……と、いう訳だ。

 ソクラテスと、その弟子たちとの語らいが、「対話の理想」と言われているそうだ。驚くほど素直で明け透けな言葉と態度で、大師匠に接する弟子たち……読んでみたい!
 {何故|なにゆえ}にぃ?
 決まってるじゃん!
 そんな、ソクラテスの弟子みたいになりたいからァ♪ 

_/_/_/_/ 『後裔記』 第1集 _/_/_/_/
寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名

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未来の子どもたちのために、
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 東亜学纂学級文庫★くまもと合志
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