MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

然修録 第1集 No.130

#### ワタテツの{然修録|130}【1】座学「対人心得」【2】息恒循〈遺伝〉心象記憶 ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 門人学年 **ワタテツ** 青循令{猛牛|もうぎゅう}

【1】座学
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対人心得

 相手に{好|よ}く見られるために、暗示を掛ける……。
 ヨッコは、その会得に努力し、その体得が、ムロー学級六名の命を救った。確かに、競争社会に{於|お}ける社会活動では、有効な手段だ。よく耳にする言葉で、「法に触れなければ、何をやってもいい」というものがある。「暗示」と言えば、少しは聞こえはいいが、要は、嘘で固めて相手を{騙|だま}すということだ。
 古来悠久、日本人は、{戦|いくさ}に対しても{或|ある}いは競争社会に在っても、「勝つためなら、法に触れない範囲で、なんでも有り♪」ではなく、「日本人として、どうあって、人間として、{如何|いか}に**道**を{全|まっと}うするか!」を思い、考え、行動してきた特異{稀|まれ}な民族である。
 {故|ゆえ}に、この特異稀から{逸脱|いつだつ}してしまうと、日本人ではなくなってしまう……それ{即|すなわ}ち、人間ではなくなってしまうことを意味する。
 俺は、不器用と言われようが、要領が悪いと言われようが、戦列から離脱して役立たずと言われよう(……というか、事実そうなってしまった)が、日本人で在り続け、人間としての道を、最後まで全うしたいと思うのである。

 **下位者に対する心得**

 我ら{日|ひ}の{本|もと}の国は、「神の国」とか「霊薬が{生|む}す国」などと言われ、今に現存する神聖なる古代国家として知られていた。過去形で書かざるを得ないところが、なんとも残念である。では、その神聖の源……根の部分には、何があったのか。それが、「〈和〉であっただろう」と、言われている。事実、「和の国」とも呼ばれていた{所以|ゆえん}でもある。
 その和を生み出すためには、先ずは{長|おさ}……{延|}いては、上位の立場に在る者すべてが、*無私*の精神と*公平な意見や態度*が不可欠となる。
 どんなに競争力があっても、どんなに効率よく動けても、「自分たちだけは……」とか、「あいつだけは……」と、そんな個人的な都合で立ち振る舞っているような先輩や上司には、(どうも人間としては、信服できないな)と思ってしまうのが、本音というか、現実ではなかろうか。
 こうなってしまうと、{弛|たる}んだ組織がウジャウジャと湧いて出てきて、まったく統一性とか連携といったものが、実現不可能になってしまう。これでは到底、和の国とは呼んでもらえまい。
 故に、長たるもの、上位に値する者は、従える者たち一人ひとりの人間としての真価を、しっかりと見定めて、それを尊重しなければならない。それが、{所謂|いわゆる}度量の大きな人間であり、思い遣りがある人間であり、即ちそれが、*日本人らしい*人間ということになるのではないだろうか。

 **同位者に対する心得**

 恐らく日本人は、元来、縦の{繋|つな}がりには強いが、横の繋がりには弱い……というか、苦手である。事実、維新や安保闘争のころの志士を観れば、同盟や横の繋がりを維持することに、{如何|いか}に苦慮していたかが{窺|うかが}えよう。
 何故か? {況|いわん}や!
 {自我|エゴ}、{面子|めんつ}、{沽券|こけん}とか{面目|めんぼく}とか……そして何より、{嫉妬|しっと}心だ。
 どうなに心根に筋金を入れたような人間であっても、自分の存在を脅かすような競争相手が出現すると……内心、嫉妬の念無きを得ないに違いない。それを、どれだけ心の底に留め置くことができるかというところで、人間の真価が分かれるだけのことであって、大なり小なり、心の動揺が{露|あら}わになってしまうものである。
 この真価を決定づける習慣的態度が、学問でありまた、それによって身に着く教養というものではなかろうか。その素養たる心得が、現実を知り認める……即ち、自分自信や相手の実力や徳の{如何|いか}ほどかを、そのまま素直に受け容れるという態度にあるのだと思う。
 この素直な態度の具現を見るためには……まさしく、無私でなければならない。和の国とは、受け容れの社会のことなのだ。

 **上位者に対する心得**

 以前、マザメが珍しく、然修録に{真面|まとも}なことを書いていた。
 皆、覚えているだろうか。
 これだ。

 一に、「一切、理屈は言わない。ただひたすらに、師匠の教えを、そのまま受け入れます」と、心の中で誓約する。
 二に、貢献できることに、集中する。
 三に、成果を上げる方法を、考える。

 要は、「上位者の命には、忠実に従うのが基本だ」ということだ。更に、余程のことが無い限り、批判がましいことは口に出さない。何故かと言うと、真面な上位者であれば、それなりの責任を負って、広く全体を見渡しているものだ。そのごく一部分を切り取っただけに過ぎない下位者とでは、立ち場が違う。ものの見方や考え方が違っていても、「それは、当然!」というものなのだ。
 但し、{諫言|かんげん}という言葉を聞いたことがあると思う。武士道の一つであり、{曲者|くせもの}と呼ばれる{所以|ゆえん}の一つが、この諫言でもある。即ち、もし上位者から意見を徴せられたならば、率直{坦懐|たんかい}に、己の所信を述べなければならないということだ。
 {尤|もっと}も、だからと言って、己の狭い了見を意気揚々と言えば良いかというと、それは、違う。自分の立場や視野の狭さを自覚した上で、上位者の心情への配慮も忘れてはならない。
 ある分野の創始者たる先人が残した{言乃葉|ことのは}に、こんなのがある。

 「上位者に喰って掛かって、自ら{快|こころよ}しとする程度の人間は、真の大器ではない」

 正に、この言葉通りだと思う。但し、陰口を叩くくらいなら、正々堂々と喰って掛かるほうが、よっぽどマシだとは思うが……。
 その反対もある。
 これも、よく聞く話だが、上位者に{媚|こ}び{諂|へつら}う者が、なんと多いことか。実に、{卑|いや}しい! こういう人間が、実は、上位者から最も軽んじられるのだ。そんな簡単な現実が、何故判らぬのか。
 まったく、不思議でたまらん!

【2】息恒循
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〈遺伝〉心象記憶

 不思議な話を耳にした。
 人間学の本を、精神疾患を抱えている患者さんにお渡しすることにより、患者さんに改善の傾向が見られたというのである。人間学を学ぶことで、脳を使って何かが{甦|よみがえ}り、幸せに生きるための力が{具|そな}わるのではないか……。そう、考えられないだろうか。

 何が、甦ったのか?

 先人たちの心……我らが祖国、{日|ひ}の{本|もと}に住んでいた日本人の心ではないかと思うのである。 
 その{論的証拠|エビデンス}の一つとして、千年、二千年という長い年月に{亘|わた}って風雪に耐え、人間学を伝える種々の書物が生き残ってきた……という事実がある。
 その教えは、推察するに、先人英霊たちが、人間……自分たちの{後裔|こうえい}である日本人の心の持ちようを、改善……即ち、「自ら自分を変えてもらいたい」という願いが込められているように思えてくる。
 これが、{所謂|いわゆる}大陸の人びとが言う**霊薬**……西洋医学が持て余して個人が抱え込んでしまっている脳の問題の根本的な解決に繋がる、先人〈日本人〉たちの叡智なのではないだろうか。

 日清戦争が{俄|にわ}かに始まろうとしていた頃、西洋で、ある本が話題となり、よく売れたそうだ。無論、英語。でもそれを書いたのは、なんと意外や意外、{生粋|きっすい}! こてこての日本人……彼の名は、内村鑑三。
 その本の名は、そのまんまズバリ、『{日本及び日本人|Japan and Japanese}』。この本を読んで、正に西洋の人びとは、日の本の国の台地には、霊薬が{生|む}し、そこに古来悠久住まい続ける日本人には、その霊薬が、遺伝的に具わっている……と、確信したのではないだろうか。
 それが、言葉では言い表せない、生まれながらにして具わっている{心象|イメージ}記憶であり、それを、脳裏に映し出す力……それこそが、人間力なのだろうと思う。その力を修めるための学問が、人間学……即ち、「古典を読む」ということなのではなかろうか。

 《以下……後年、後裔による追記》

 この『日本と日本人』が、著者本人によって改訂されたとき、その著者の{言乃葉|ことのは}が、〈はしがき〉として、今に残されている。無論、英語。この改訂版を、その精神を受け継いだ現代の{翁|おきな}が、監訳してくれている。
 そこには、日本語で、{斯|こ}う訳されている。

 本書は、……(中略)
 若き日の熱い愛国心はとうに冷めてしまったが、それでも日本人のもつ素晴らしい特性に目をつぶってはいられない。
 それに、日本が私の祖国であることに変わりはない。
 日本は、私が「わが祈り、わが希望、わが無償の奉仕」を捧げる唯一の国だ。
 わが同胞のよき特性――しばしば日本人に帰せられる盲目的忠誠や血塗られた愛国心*とは別な特性*――を、外なる世界に伝える一助となること。
 それが本書の目的である。
 おそらく、……(後略)
(Ver.2,Rev.0)

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寺学舎 美童(ミワラ) ムロー学級8名
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