MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

然修録 第1集 No.156

#### 続・アドラー心理学の学び方 スピア {然修録|156} ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 少年学年 **スピア** 少循令{悪狼|あくろう}

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 まァ、「なぜか上海」……ではなくて、なーんでか、スウェーデン!
 北欧……まァ、{所謂|いわゆる}一つのヨーロッパ。

 欧州で東亜の哲学を語るのも、どうかな……とはいうものの、西洋の哲学には、どうも興味が湧いてこない。
 ヨーロッパといえば、ぼく的には、やっぱり心理学だ。
 寺学舎でお馴染みだったのは、フロイトと{対峙|たいじ}した西洋の二大心理学者の一人、アドラー先生だ。
 アドラー{則|すなわ}ち、古典。
 しかも、誰に{訊|き}いても「難解!」……らしい。

 ずいぶん前だけど、誰かが、然修録に書いていた。
 「アドラーを正しく理解するためには、対話形式の解説本を読むのが良い」と。
 そこで、その続きについて、読書してみた。
 太陽が昇る{遥|はる}か東の{彼方|かなた}の祖国で読むより、ヨーロッパの北の端っこで読んだほうが、少しはマシな感じ方をするんじゃないかと期待しながら、読んでみた。
 こんな感じ……だった。

 アドラーを正しく理解するための方法……その、二つ目。
 「悩み相談」の形になっている解説本を読む。

 質疑応答の記録も、正しく理解するために役立つだろうと思う。
 でも、もし、その質問が更に「悩み相談」だったとしたら、どうだろう。
 立場が違っても、それを聴いた人は、自分に置き換えて、何か自分が抱える悩みの解決のためのヒントにすることが出来る。

 アドラー先生自身も、公開カウンセリングを、よくやっていたそうだ。
 どんな悩みを解決するのか、その目的を明確にして、じっくり一時間以上をかけてカウンセリングを行う。
 講演後の質疑応答が、もし「悩み相談」の形になっていたとしても、カウンセリングほど目的を明確に出来るわけでもなく、{況|ま}してや、一時間も掛けられない。
 それでも、質問者や、それを周りで聞いている聴講者たちは、ある悩みを解決するための「洞察の一例」を、目撃することが出来るのだ。

 そこで、アドラーのテーマの一つでもある「人生を変える勇気」について。
 それを、心のどこかに常に置いておけば、日常の様々な場面で遭遇する問題や悩みに対して、その答えなり解決策なりを見出すという体験を通じて、アドラーの教えを{某|なにがし}か理解することが出来る。
 それが、「実践への手引き」となる。

 自分には関係のないことのように思える他人の問題や悩みも、必ずどこかで、自分の問題や悩み事と{繋|つな}がっている。
 老いの問題は、ぼくら子どもには関係ないけれど、少なくとも、じいちゃんやばあちゃんが何を考えているかが、{解|わか}る。
 悩み相談を受けた教師が、その生徒の親の立場に我が身を置き換えて考えることが出来れば……{或|ある}いは、面倒見のよい会社の上司が、その部下を見るような目で我が子を見れば、父親が家庭で{蔑|ないがし}ろに扱われるようなことはない{筈|はず}だ。

 実は、アドラーの心理学は、たいへんシンプルなのだ。でも、それを日常の生活に当てはめて、困ったり悩んだりする場面でどう応用すればいいかが、判り難い。
 それは、じっくりと時間をかけて、行動と実践を重ねるしかない。
 そこで大事なのは、悩み相談の一例の答えを、「公式が{如|ごと}く暗記してはならない」ということだ。
 {飽|あ}くまで、その都度その都度、原理原則に沿って理解に努めることが肝要なのだ。

 アドラーを正しく理解するための方法……その、三つ目。
 「アドラーの原著に、立ち返る」

 アドラー先生の目的心理学は、誤解され、{紆余曲折|うよきょくせつ}を歩んで来た古典である。
 学び方を間違えば、ますます誤解を深めて、{挙句|あげく}は敬遠して、背を向けてしまうことだろう。

 アドラー先生の処女作は、一九〇七年の『器官劣等性の研究』。
 如何にも難しそう!
 以降、生涯で十五冊を刊行している。
 時代も違えば、文化や社会の有り様も大きく異なる。
 翻訳者が、どんな思いで、{如何|いか}に噛み砕いて翻訳してくれるかによっても、大きな違いが生じるだろう。

 そこは、聖書や原始仏教にも通じる理屈を、思い出せばいい。
 時代時代の事実は異様に思えても、その中には、時代を超越し、一貫して存在するものがある。
 それが、**真理**というものだ。
 その真理があるからこそ、古典が悠久、今に読み継がれてきたんだと思う。

 アドラー心理学に精通したある哲学者の先生は、{斯|こ}う言う。
 「アドラーの著作は、他の思想家が書いたものと比べて、読み{易|やす}い」と。
 また、アドラーは、プラトンのスタイルにも似ているらしい。
 プラトンは、ソクラテスと対話するとき、ソクラテスが解り{難|にく}いことを言うと、「もう一度説明して欲しい」と、頼んだそうだ。

 {故郷|ふるさと}を離れ、へんてこりんな島々を巡り、{挙句|あげく}アースタロリオという南半球の大国に流れ着き、果ては北欧、スウェーデン……てなわけで、寺学舎で学んだアドラー先生の目的心理学や王陽明先生の行動哲学のことを、すっかり忘れてしまっていた。
 でも、ぼくら{美童|ミワラ}は……やぱり、アドラー先生や王陽明先生の教えを、学び続けるべきだと思う。

 *戦い*の前線は、直ぐそこまで迫って来ている。
 その*闘い*の一つとして、身体を鍛えることも大切だ。
 でも、それだけでは、{脆|もろ}くも{木|こ}っ{端|ぱ}にされてしまうと思う。

 相手の{戈|ほこ}を{止|とど}めさせるという「武」の字に由来する我が民族の精神のことを、改めて心に置かなければならない。
 ヒト種を再び一つにするために、一番大事なことは、心を鍛えることだと思う。

 終わりが宜しいようで……なので、終わります。
 以上。  

_/_/_/ 『然修録』 第1集 _/_/_/
美童(ミワラ) ムロー学級8名

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい……
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