MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

然修録 第1集 No.157

#### {優|すぐ}れた脳になりたい! サギッチ {然修録|157} ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 少年学年 **サギッチ** 少循令{嗔猪|しんちょ}

■□■□■□

 スピアの野郎は、スウェーデンに行ってしまった。
 スウェーデンって、どこだァ?
 まァ、いい。
 {奴|やつ}が{居|い}なくなったことに、なんの問題も無い。
 でも、あやつの頭脳が{傍|そば}に存在しないということは、大いに問題だ。
 (あいつの脳ミソを、そっくり記憶してしまえば、おれも、あいつと同じ記憶力を、発揮できるじゃーん!!)……無論、そうは{問屋|とんや}が{卸|おろ}さない。
 問屋って、誰だァ?
 どうして、卸してくれない?
 ……てな{訳|わけ}で、記憶について、読書してみた。

 「脳はウソをつかない」……イギリスの有名な脳研究者の言葉。
 確かに、ウソか本当かは、頭を割って脳の中を覗けば{判|わか}るだろう。
 光り輝いていた「A子ちゃんを見つめる{神経細胞|ニューロン}」の活動が停止してしまったら、(嗚呼、コイツ、A子ちゃんに飽きたんだなァ)って、判断することができる。
 個々のニューロンの観察が無理でも、ウソをついているときに脳のどの部分が活動しているかを{核磁気共鳴画像法|MRI}で調べておけば、MRIで測定しながら質問をぶつけて得られた答えがウソか本当かが判る。
 これは、実験で立証済みだそうだ。
 MRI VS 懸賞金目当てのウソつき名人たち!
 結果……ウソつき名人たちの完敗。

 面白い実験も、紹介されていた。
 結婚してる女の人の手にビリビリ!って電気を流すと、目の前のランプが{灯|とも}る。
 そのとき、脳のある部分が活動する。
 {嫌悪|けんお}を感じると、脳の{島皮質|とうひしつ}という部分が活動するのだ。
 それを繰り返していると、そのオバチャンは、ランプが灯っただけで怖がるようになる。ビリビリっとして痛いのが、{嫌|イヤ}なのだ。
 でも、そのオバチャンの旦那さんが、もう片方の手を握っていると、島皮質の活動が{衰|おとろ}えてしまう。実際、ビリビリの痛さも、そんなに感じなかったという。
 これと同じことを、旦那さんじゃなくて赤の他人のオッサンに代えてやってみると、なんの変りも無く、やっぱりビリビリ痛くて島皮質が遠慮なく活動したんだそうだ。
 愛情も、記憶によって{賜|たまわ}る物らしい。
 でも、愛情の実態が記憶だったら、忘れたり飽きたりするじゃん!
 まァ、それはいい。

 「要領を覚える」……って、言うよね?
 覚えるってことは、記憶じゃん!
 オオカミ先輩の専売特許(本人の要領の良し{悪|あ}しは別として)の要領も、所詮は記憶に過ぎない?
 「だいたい要領は{解|わか}ってますから」とか、「要領は知ってます」とか、そういう言い方をするってことは、やっぱり記憶に違いない。
 でも、「忘れる」というのも、人類共通の脳の特性だ。
 言葉を記憶する大脳皮質の左半球と、イメージを記憶する同じく大脳皮質の右半球とは、無数の糸によって関連付けられている。
 それが、プツン、プツンと切れる。それが、自然の一部である{証|あか}し。それで、生態系が成り立っているのだ。
 ……ということは、スピアの野郎には、その生態系の機能の一部が欠けているということにならないかァ?
 あやつは、自然の生態系を、乱している!

 スピアの脳と、おれの脳。
 どこが違うんだろう。
 スピアの脳のほうが大きくて、脳細胞も多い?
 どうやら、それは、関係ないらしい。
 男の脳の平均の重さは、1350グラム。
 超天才!アルベルト・アインシュタインの脳の重さは、1230グラムだ。

 では、言葉とイメージを{繋|つな}ぐ左右の糸の本数が違うから?
 これも、関係ないようだ。
 幼児の脳細胞の繋がりは、大人より{遥|はる}かに多い。
 ところが、成長につれて、1日に200億もの繋がりが切れてしまう。
 これは、使っていない回路を切断して、新たな回路を作るための場所を空けるためなんだそうだ。
 そして、{神経細胞|ニューロン}たちが、新たなる回路を生み出す。
 忘れる……脳細胞の繋がりが切れるということは、老いたその道のベテランが、後進に道と居場所を譲るようなもので、それが頭の働きや記憶力の良し悪しを左右する{訳|わけ}ではない。

 神経細胞が単語なら、熟語や文章だってある{筈|はず}だ。
 例えば、上手に自転車に乗るとか、早く泳ぐとか、それらは、記憶というよりも、一種のプログラミングだ。
 これは、左脳の言葉と右脳のイメージを繋ぐ一本の糸だけでは、どうすここともできない。様々な領域の脳細胞と繋がったり関わったりして、やっと実現できるのだ。
 {則|すなわ}ち、脳の良し悪しとは、複雑にして{緻密|ちみつ}な連携を実現出来るか{否|いな}かに{懸|かか}っているという訳だ。

 しかも、その複雑に繋がり合ったプログラムは、結びつきを強くして、繋ぎ目が目立たないくらい一体化させたり、逆に、ブツブツと繋がりが切れて、その場所を明け渡さなければならなくなることだってある。
 例えば、楽器の演奏。
 練習を地道に重ねれば、演奏は滑らかになり、上達する。
 {然|しか}し、その練習を{怠|おこた}れば、どの弦を押さえたり、どの鍵盤を叩いたりすればいいかという基本的なことさえ、忘却してしまうのだ。

 結論。
 {優|すぐ}れた機能を持つ脳とは、幅広い連携を持ち、日夜練習を重ね、その連携の繋がりの緻密さが一筆書きのように滑らかになっている状態のことを言う。

 めでたしめでたし。
 ……と、ここで終わって、以後思い出そうともしないから、おれの脳ミソは、いつまで経ってもボンクラなのだ。
 「わかっちゃいるけーど、ボーンクーラだーァ♪」
 お粗末さまでした。 

_/_/_/ 『然修録』 第1集 _/_/_/
美童(ミワラ) ムロー学級8名

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい……
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