MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

然修録 第1集 No.158

#### 貯金のための精神論 ヨッコ {然修録|158} ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 門人学年 **ヨッコ** 青循令{猫刄|みょうじん}

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 {武童|タケラ}たちは、みんな働いている。
 自然{民族|エスノ}のご先祖様は、会社も立ち上げた。
 今では、大きなグローバルな会社になっている。
 スピアたちが疎開したヒノーモロー島に、大きな工場を持っている。
 オオカミ君が疎開したザペングール島にも、大きな工場がある。
 {何故|なぜ}か。
 電脳チップ率いる文明{民族|エスノ}と本格的な戦争ともなれば、戦費が{要|い}る。

 自称「スピア君の養母」のカアネエや、優秀なズングリ丸の船長オオカミ君が何度も難破漂着させた島々の一つで「ピアノの先生」と呼ばれている包帯を巻いた美しい女性も、本職は密偵……潜入捜査のプロフェッショナルだ。
 戦争も、密偵も、金が要る。
 寺学舎で学ぶことは、その{殆|ほとん}どが、精神論だ。
 でも、心を{強靭|きょうじん}にしただけでは、戦争には勝てない。
 戦争どころか、一羽の電脳{鴉|カラス}にも{太刀|たち}打ちできない。
 そう、太刀を買うには、金が要る。

 何度も教えられたことだけど、{武童|タケラ}の武の字は、敵の{戈|ほこ}を{止|とど}めさせるという意味だ。
 ならば、太刀など要らない{筈|はず}?
 答えは、歴然。
 こちらが太刀を持っているからこそ、相手に「戈を止めるかどうか」の考える時間を作らせることができるのだ。
 太刀の一本も持っていなければ、バッサバッサと切られて皆殺しにされてしまうだけだ。
 だから、交渉の場に{於|お}いて、武器は必要なのだ。
 (交渉を断ったら、相手は、刀を抜くに違いない)……と思わせるような抑止力のための精神論も、もっと学ぶべきだと思う。

 そして、もう一つ。
 戦費が掛かる。
 {則|すなわ}ち、お金が要る。
 猛烈に貯金……あたいら民族の内部に、多額の軍資金を留保しておかなければならないという{訳|わけ}だ。
 そこで、精神論から脱線しない範囲で、お金との{賢|かしこ}い付き合い方について、読書してみた。

 あるフランスの有名な哲学者の語録。
 「歴史は繰り返さない。繰り返すのは常に人間である」

 大人たちは、何故、借金を繰り返すのか。繰り返しているのは、借金ではない。繰り返すのは、常に人間である……みたいな。
 借金を繰り返す理由を知りたければ、人間の欲望や不安や楽観主義が引き起こした数々の事象や事件の歴史を学びさえすればよい。

 お金を増やす*プロ*であるはずの投資家が、下げはじめた相場の底で資産を手放してしまう? 何故? 家族を路頭に迷わせたくないという不安が、そうさせるのだという。
 心理を学ぶというのなら、そういう極限に置かれた人間の心理を学ぶべきだと思う。それなら、戦うにせよ、戈を止めさせるにせよ、相手の心理を読むという意味で、役に立つ。

 フランスの有名な革命家の語録。
 「天才とは、周りの誰もが正気を失っているときに普通のことができる人である」

 イギリスの有名な推理小説の主人公(架空の探偵)の語録。
 「世界は、たまたま誰もまだ気づいていない明白な事実に満ちている」

 一九三〇年代……世界大恐慌。
 一九四〇年代……{聖驕頽砕|せいきょうたいさい}(第二次世界大戦)。

 どんなに歴史を学んでも、どんなに想像力を{膨|ふく}らませても、直接体験した人と同じ恐怖とか不安とかを実感することは、出来ない。
 だから、それが体験者の心にどれほどの傷を負わせたかなど{解|わか}る筈もなく、それを学んだり想像したりしたところで、己の行動が変わるほどの影響を受けることは、無いか精々{稀|まれ}かのどちらかなのではないだろうか。
 所詮、人間はみんな、「{僅|わず}かな経験」という固有のレンズを通してでしか、世間を見ることが出来ていないんだってこと。
 なので、あたい思うに、他人のレンズからも、自分のレンズから見えているものと同じものを見せようとする{所謂|いわゆる}「交渉」とか「説得」とかいうものは、「そう見えると思わなければ、我が身も危うく家族も露頭に迷わせてしまう」と、思わせるしかないのではなかろうか。

 低賃金、長時間労働、劣悪で不衛生な労働環境……「そんな職場、直ぐに辞めてしまいなさい!」と、親切心で言う。
 でも、もし、本当にそうしたほうが幸せなら、他人に言われなくても、とっくの昔に辞めてしまっている筈……じゃない?
 ということは、「他に職が無いから辞めれない」とか、「前職が身売りのような心身を{搾取|さくしゅ}される日々だったから、今のほうがまだずーっとマシなのよん!」だとか、苦境に{喘|あえ}いでいる人たちの事情は様々で、それこそ想像したってその人の心の{傷|いた}みが解る{由|よし}もないってこと。
 どんな土壌で育って、どんなところに立っているか……そして今、どんなレンズであたいらを眺めているのか……白か黒か、赤か黄色かなんて、そう簡単には決めつけられるものではないのかもしれない。

 情報を集めたり判断をしたりするときもそうだ。
 結果が悪くても、言い訳になるから口には出さないとしても、心の中では、意味を持った物語を作って、自分を納得させている。

 買っても当たらないから、宝くじは買わない?
 買わないと当たらないから、外れても外れても宝くじを買い続ける?
 海外での調査によると、宝くじを買い続けている人たちの殆んどが、貧困層なんだそうだ。
 しかも、貧困層が一年間に宝くじを買う額は、同じく貧困層の人たちが一年間に貯金できる最高額に匹敵するそうだ。
 正に、正気の{沙汰|さた}ではない。
 本当に、そうだろうか?
 貧困層の人たちだって、富裕層の{豪奢|ごうしゃ}な生活を夢見ている。
 その唯一の方法と可能性が、宝くじなのだ。
 そう考えれば、確かに、買うよね?

 {尤|もっと}も、そこには、富裕貧困に関係なく、十人十色の「物語」が存在するわけなんだけれども……。

_/_/_/ 『然修録』 第1集 _/_/_/
美童(ミワラ) ムロー学級8名

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい……
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 A.E.F. Biographical novel Publishing