MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

EF ^^/ 然修緑 第2集 第9回

EF ^^/ 然修緑 第2集 第9回

 一、想夏 (8)

 門人学年 エセラ (美童 齢十三)
 「息恒循」齢 立命期・少循令・鐡将

       闘いから、戦いへ

 一、心を鍛える イコール 闘い
 二、敵を亡ぼす イコール 戦い

 亜種記にあったムロー学級の先輩たちは、闘った。
 それで、よかった。
 でも、ぼくらは、戦わなければならない。
 時間は、止まってはくれないからだ。

 {日|ひ}の{本|もと}最古の兵書、『闘戦経』を読んだ。

 兵者は{稜|りょう}を用ふ。

 兵を使う者は、鋭気や威厳といった気力がなくてはならない。

 動機付けの質に{因|よ}ると思う。
 その目的が、世のため人のためで崇高であり、強い使命感が{漲|みなぎ}らない限り、真の気力を備えることなどできないと思う。

 兵を使う者とは、兵隊の上に立つ者のことだ。

 稜は、山の稜線の「稜」の文字。
 物の{角|かど}の意味だ。
 そこから、鋭い鋭気、動じない心、威厳、士気などが連想される。

 上に立つ者は、気力に溢れている。
 何も言わずとも、部下たちは、上の者の背中を見てついて来る。

 ある神話がある。
 日本人は、本当に不思議なもので、お人好しで、しかも、さぼることをあまり考えない。
 だから、上に立つ者が気力に溢れていると、激怒、{叱咤|しった}、激励などしなくても、部下たちは、一所懸命に働いてくれる。
 神話は崩れ、我らは亜種に分化し、退化が止まらない。

 ニーチェの語録に、こんなのがあるそうだ。
 「情熱の矢となって飛べ」
 確かに、飛び出した矢は気力に溢れ、鋭い稜線を引きながら、飛んで行く。
 まさに、「兵者は矢を用ふ」だ。

 でも、鋭いだけではダメだ。
 速く飛ばなければ、意味がない。
 速ければ速いほど、{同胞|はらから}たちは、気力のままについて来る。
 遅いと、道草をしたり、挙句は離脱、最悪は、離反する。

 ヒト種のため、すなわち人類のためなんだから、世のため人のためのであることは、疑いようもない。
 これ以上、崇高な目的はないと言っていい。
 それでも、使命感が漲らないとしたら、退化の進行に負けたということだ。
 だから、速さが大事なのだ。

 ぼくらの退化は、すでに仕上げの工程に入っている。
 完成させてはならない。
 万が一完成を見て、それが世に出荷されたら、人類は、今度こそ亡びる。

 ぼくらの代から、変わったのだ。
 闘いは、戦いへと。
 
2024.3.9 配信
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発行 Ethno Fantasy 東亜学纂