MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

EF ^^/ 然修緑 第2集 第20回

EF ^^/ 然修緑 第2集 第20回

 一、想夏 (19)

 門人学年 カズキチ ({美童|ミワラ}・{齢|よわい}十二)
 「息恒循」齢 立命期・少循令・石将
   
 学舎、一族、会社、軍隊、お役所……だから?

 組織の指導者が、充分に時間をかけて先のことを考えていない。
 結果、その組織は破綻する。
 大事なことが、もう一つ。
 これをないがしろにすると、手痛い報いを受ける。
 それが、奉仕の精神。
 地域のため、社会のため、納税によって基本的人権を保障してくれている祖国のため。
 それらすべての最終的な目標となる貢献が、すべての生物を{随|したが}える巨大組織……そう、大自然のため。

 これくらいのことは、先人先達は寺学舎で学び、おれらは浦学舎で学んだ。
 でも、目先の問題より将来や未来のことを考えることのほうを優先して思い、考え、行動している指導者なんぞ、生まれてこのかた十余年、一度も見たことも聞いたこともない。
 だから、この地球上で破綻の恐れがない組織なんて、一つもないのだ。
 どの組織も、いつ{亡|ほろ}んでも不思議はない。
 おれは、そう思う。

 そこで、「ほいじゃあ、どうすりゃあえんねぇ!」という嘆き問いかけに答えてくれる本を探して、読んでみた。

 指導者が未来を考えない、考えられない……その言い訳の金言集は、世に溢れている。
 目先のことを片づけないと、先に進めないから?
 本気で言ってる?
 もし、そんな言い訳を真顔で吐いている指導者がいたとすれば、それはもう立派な病気で、その口から出る言葉や行動のことを、病状という。

 ……で、その病魔の原因は?
 一、知識が無い。
 二、方法論を持たない。
 よって、手も足も口も頭も、何も前に出ない!

 みんな、今日やるべきことで精一杯で、それさえも上手くいかないことが少なくない。
 みんな、そんな情けない現状に気づいている。
 気づいてはいるけど、毎日が同じことの繰り返し。
 だったら、今日やるべきことを短時間で成功させて、残った時間で明日・未来・将来のことを考えるほかに、方法はない。

 ところで……。
 今日やらなければならないことって、なにーぃ??
 全世界から、その答えが集まって来る。
 一、催促されていること。
 二、期限が迫っていること。
 三、やっとかないと怒られそうなこと。
 では、答え合わせ……無論、大間違いだ!
 これくらいのことなら、子どもにだって判る。
 じゃあ、本当の正解は?

 一、今日やるべきことを成功させる。
 二、見えていないチャンスを見つけて、具現化(可視化)する。
 三、明日・未来・将来のために、新しいことを開拓する。

 この三つが、今日やるべきことだ。
 この三つは、いずれも異質だけど、深く関係し合っていて、しかも、同時に進めていかなければ成果には結びつかない。
 さらには、異質だからといって、何か特別なものが用意されるわけでもない。
 人、知識、お金、時間……どれもこれも、今日現在の手持ちの{弾|たま}で、戦わなければならないのだ。

 未来は、明日になっても、明後日になっても、やってこない。
 未来は、今日、自分で作るものなのだ。

 では、どうすればこの三つを、同時に進めることができるのか。
 そのために必要なのが、「統合戦略」だ。
 この「統合」とは、何か。
 それは、己を知ること。
 指導者にとっての己とは、自分が随えている組織のこと。
 すなわち、その組織の経済的なことから道徳的なことまで、ありとあらゆる資質や急所を知り、しかも理解していなければならない。

 「うちは、家族でやってる{小|ち}っちゃな組織だから、当て{嵌|は}まらないよォ♪」……ですかァ?
 残念でした。
 これは、その組織の目的や大小に拘わらず、この星すべての組織に共通なのだ。
 なぜぇ?
 どうしてぇ?
 はい、お答えします。
 一、資源が何もなければ、そもそも組織にはならない。
 二、成果を求めないのであれば、そもそも組織とは呼べない。
 三、何も活動していなければ、そんなもんは組織なんかじゃない。

 ここまで書いてきたことは、読めば確かに、その読んだ人の大半が、(そりゃそうだーァ♪)って思うことばかりじゃないかと思う。
 まさに、(そりゃそうだろう)って、思う。
 でも、「今日やるべきこと」の全体を見渡しながら事を進められる人は、多くない……というか、きっと、予想よりもっと少ないんじゃないかと思う。
 経験や知識を言い訳に使わず、自ら行動して結論へと邁進できる人は、もっと少ないに違いない。
 きっと、限りなくゼロに近いくらい、めっちゃ少ないんじゃないかと思う。

 その希少な「真の指導者」になりたいのなら、先ずは己の経験や知識の現実を知り、そこから様々な可能性の仮説を立て、その仮説を目標に行動することを、日々の活動の基盤に置かなくてはならない。
 つまり……結論。
 それをやる人が、希少なのだ。

2024.5.26 配信
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発行 Ethno Fantasy 東亜学纂