MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

東亜学纂学級文庫

『息恒循』を学ぶ

後裔記 第1集 No.148

#### スピアツの{後裔記|148}【実学】{美童|ミワラ}の血【格物】{亡|ほろ}びゆく万物の霊長 ####

 体得、その言行に恥ずるなかりしか。
 少年学年 **スピア** 齢10

実学
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{美童|ミワラ}の血

 (ぼくらミワラの誰か一人を主人公にした物語なら、もっと面白い読み物になるのになーァ!!)と、{何気|なにげに}に思いながら、遠巻きに、横たわったままのマザメ先輩やタケゾウさんたち五人を、眺めていた。ムロー学級のミワラたち七人は、ぼくだけじゃなく、{何故|なぜ}かみんな、遠巻きに突っ立っていたのだ。

 ぼくらは、ぼくら自身も驚いてしまうくらい、信じられないような衝動に駆られることがある。親の愛に{殆|ほとん}ど触れることなく育ってしまった{所為|せい}だろうか。そうとばかりは言えないということは、ぼく{等|ら}はみんな、判っている。

 (寧ろ、**血**だ……)と、そう思っている。

 マザメの{姉御|あねご}も、ぼくを含めて他の七人も、少し落ち着いてきたようだった。モクヒャさんが、必ず肩から{提|さ}げているクーラーボックスの中に入っている飲み物や食べ物を、ぼくらに配給してくれた。その栄養が、生の脳ミソに届いて浸透して、少し正気になれたんだと思う。

 マザメ先輩が、言った。
 「ねぇ。それ、なんて曲?」
 「I Still Haven't Found What I'm Looking For」と、ジュシさん。日焼けした、いつも健康そうな顔……。
 「知らない! 誰の曲?」と、マザメ先輩。
 「Petteri Sariola」と、ジュシさん。淡々と……。
 「知らない! 随分、小さい人なんだね。その中に入って歌ってるんだからさァ。それ、窓は、ついてないのォ? きっと、汗だくで弾き語りやってるんでしょうね。だって、たまに、苦しそうな声で歌ってるじゃん! まァ、どうだっていいけどさァ。その人が、それで納得してるんならねぇ♪」と、マザメ先輩。
 確かに、ぼくらが持っている携帯端末より大きいけど、その中に小人が入っていて、しかも弾き語りをしているだなんて……でも、マザメ先輩、真顔って言うか、間違いなく、大真面目に言っている。やっぱりまだ、正気が足りない!
 「こういう曲は、あまり好みじゃないみたいだねぇ」と、ジュシさん。
 「そういう気分じゃないだけさァ。ねぇ?」と、ファイねーさん。どうして、{渡哲|ワタテツ}サングラスを、外さないんだろう……。
 「好きさ。いつだって、そういう気分さァ♪ 気にかかったから、訊いただけ。だって、森にはさァ。いっぱい、音楽があるんだからねぇ♪」と、マザメ先輩。
 「そっかァ! 確かに、そうだなァ」と、テッシャン。いつ見ても細長顔の、中年のオッチャン。
 「てかさァ……って言うかさァ。そこに突っ立って{居|い}られると、なんか、落ち着かないんだけどーォ!! 伏せるか出て行くか、どっちかにしてくれない?」……と、マザメ先輩。

 炊事小屋の厨房の{対面|といめん}の板壁の脇に、掘り出された土が、盛り上がっている。タケゾウさんたち五人は、その土の山の周りに腰を下し、そのまま土の山の肌に{凭|もた}れかかった。仰角四〇度。心は{俯角|ふかく}で、下向きにやっぱり四〇度……みたいな(アセアセ)。
 「その板壁、破ってしまっても良かったんじゃないかなァ? ここを出る前に、{塞|ふさ}いで修繕しときゃいいんだからさァ♪」と、ジュシさん。ぼくらムロー学級のミワラは、絶対にそんなことは言わない。ブチッ!っと切れられたら、本当に大真面目に面倒なことになるので……。

 案の定、矢庭に……マザメの姉御が、斯う言い返した。
 「それが、あんたたちさッ!
 和だか自然だか文明だか知らないけどさァ。要は、それが{大人|オトナ}……退化して分化して{亡|ほろ}びゆく腐り果てたヒト種の心の根さ。文明エスノは、ただその心根に、素直に{順|したが}ってるだけさ。{人跡未踏|じんせきみとう}の自然を、次々とぶち壊し、コンクリートの台地に造り直す。自分たち亜種にだけに都合が良ければ、ただそれで良し!なのさ。
 最悪なのは、その腐った心根に、自反は{疎|おろ}か、自覚すら無いってことさ。それどころか、{飽|あ}くことを知らない探求心を、誇ってやがる。ところがさ。誇ってる割には、自然の本当の偉大さも、恐ろしさも、何一つ探求できちゃいない。
 それでさァ。生きものが{棲息|せいそく}出来る限界の地まで行き着いたとき、文明の野郎たちは、地の果ての最前線に身を置いて初めて、はたと気づくんだ。退化して使いものにならなくなった己の五感と、壊れて何に対しても反応しなくなった喜怒哀楽の情動にさァ。
 そこで{慌|あわ}てて、耳を澄ませる。でもさァ。腐って濁ってるんだから、そんな簡単に澄むわけがない。何も、聴こえやしないのさァ。だから、結局、金属の機械と電気だけで脳の代わりをする電脳チップを頭に埋め込むしか、生きるための{術|すべ}がなくなってしまう。でもさァ。そうじゃないヒト亜属……ホモ種の残党が、まだこの星には、絶滅を待ちながらだけど、{息衝|いきづ}いてんのさッ!
 {峻険|しゅんけん}な山にしがみつく森、深海、地底、そしてこの星に、大宇宙……。{茫漠|ぼうばく}たる自然界に漂う自然の一部、ヒト種が分化した孤独な絶滅危惧種……その三つの亜種人間たちが、五感を先鋭化し、喜怒哀楽を躍動させることによって、厳しい自然の一部として、今まさに生き延びてるって{訳|わけ}さ。
 あたいはさァ……。
 森で育ったんだけど、{産|うま}れたのは、地底。森の奥深くにも、台地の底深くにも、音楽が、流れてる。森に住まっていると、地底の音楽が、{蘇|よみがえ}ってくることだってある。狭い{坑道|こうどう}の暗闇のなかで、岩が{軋|きし}る。岩盤が、崩れ落ちる。それらすべての音に情動があって、音楽を奏でるのさ。
 岩が{呟き|つぶや}き、岩盤が、独り{言|ご}ちる。断続的な、混成曲。その蘇った音楽が、この森から、聴こえてきたのさ。大木が{撓|しな}い、{撓|たわ}み、そして、{裂|さ}ける。その音楽の情動が、誰のものか……判るかい? 台地の怒りさ。天地を創造したご先祖さまからの、警鐘なのさ。五感を退化させ、{傲慢不遜|ごうまんふそん}になちまった、あたいらに対してのねぇ!」

 それから暫く、静寂が続いた。
 建屋の外……森の奥のほうから、何かの音が、聴こえてきた。
 一つ、二つ、三つ……それが、音楽になった。 

格物
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亡びゆく万物の霊長

 {鳥獣|トリケモノ}が、自然の一部で{在|あ}り続けられているのは、自由自在な記憶だけで、自然に順応しているからだ。人間の脳の中にも、そんな動物系の{心象|イメージ}記憶が存在する。人間だって、言葉を一切使わなければ、{莫妄想|まくもうそう}だなどという七面倒臭い修行なんかしなくったって、自然に、自然の一部で{居|い}られるに違いない。
 人間は、直観だけで、上手く自然に順応しながら生き続けることができる能力を、生まれ持っているのだ。

 昔の有名な川柳に、こんなのがあるそうだ。
 「魂がなければ
 この世
 面白し」

 魂は、言葉で表現される。だとすれば、「言葉がなければ、この世は、面白い」という意味にもなる。言葉が無ければ、義理人情に{縛|しば}られることもない。義理を無視し、気遣いもせず、食いたいときに喰らう。眠たくなったら、いつでもどこででも寝る。確かに、そんな生活ができたら、楽しいだろう。
 禅の一派にだって、これに似た思想があるそうだ。
 ……{自然法爾|じねんほうに}。
 お釈迦様が、{斯|こ}う言ったそうだ。
 「{一切衆生悉有仏性|いっさいしゅじょうしつうぶっしょう}」
 一切の生きとし生けるものは、すべて仏性を持つ……と、お釈迦さまは、言っているのだ。だとすれば、人間も、鳥獣と同じように、自然のままに振る舞えば、人間が本来持っている〈仏性〉を、明快に発現できるはずだ……と、いう{訳|わけ}だ。なるほど確かに、生きるうえで言葉など、必要無いのかもしれない。
 大人だって、無邪気に幼い子どもたちと遊ぶことだってある。これが正に、自然法爾なんだと思う。
 ところが人間は、言葉を創り、覚え、運用し、それを武器に、進化発展を続けてきた。{挙句|あげく}、万物の霊長と自称自負して、威張りはじめたのだ。実に言葉とは、人間にとって、都合がよくて、便利なものだったのだ。でも、都合が良いものには、必ず、落とし穴がある。
 言葉を{棄|す}てようとしても、それはもう、無理なのだ。五感が感じたものは、暑いとか寒いとか感じるだけではなく、それは、コトバ記憶と結びつき、あらゆる過去の記憶を、呼び戻す。その熱い寒いの新たなる記憶も、様々な{忌々|いまいま}しいコトバ記憶と連鎖を交わし結びつきながら、{心象|イメージ}記憶へと格納される。
 その心象記憶もまた、未来から連なるコトバ記憶の連鎖によって、再び、呼び起こされてしまうのだ。こうなると、もう、自然では居られない。{自我|エゴ}が働き、計算高く悪意に満ちた{作為|さくい}が、始まってしまうのだ。  

_/_/_/_/ 『後裔記』 第1集 _/_/_/_/
寺学舎 ミワラ〈美童〉 ムロー学級8名

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未来の子どもたちのために、
成功するための神話を残したい……
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