MIWARA BIOGRAPHY "VIRTUE KIDS" Virtue is what a Japanized ked quite simply has, painlessly, as a birthright.

後裔記と然修録

ミワラ〈美童〉たちの日記と学習帳

然修録 第1集 No.165

#### 提督外港を眺め{遣|や}る ヨッコ {然修録|165} ####

 {会得|えとく}、その努力に{憾|うら}みなかりしか。
 門人学年 **ヨッコ** 青循令{猫刄|みょうじん}

 「世界最強の{美徳|バーチュー}!」……かァ。
 ワタテツの顔からは、想像もつかないけど。
 あたい的には、やっぱり吉田松陰かな。
 間違いなく、世界最強の{美徳|バーチュー}だ。
 余計なことは、書かないことにする。
 松陰先生の語録を説いた書を、読む。

 弘化三年、西暦でいうところの一八四六年。
 松陰先生、十七歳のとき。

 題して、「{志|こころざし}を立てる」

 「道の{精|せい}なるとならざると、
 {業|ぎょう}の成ると成らざるとは、
 志の立つと立たざるとに{在|あ}るのみ」

 「精」とは、雑念を交えず一筋に実行し生きるさまのこと。
 「業」とは、己の目指した学問や仕事のこと。

 高い志さえあれば、何事もできないことはないと、十七歳にして言いきっている。
 迫力に、満ちている。

 次。
 題して、「気の{漲|みなぎ}り」

 「{夫|そ}れ志の在る所、
 気も{亦|また}従ふ」

 確固たる志があれば、気力も漲り、勢いも生じてくる。
 続けて{斯|こ}う言う。

 「志気の在る所、遠くして至るべからざるなく、
 {難|かた}くして{為|な}すべからざるものなし」

 強い志と気力があれば、{如何|いか}に目指す目的が遠くにあろうとも到達できないことはなく、如何に困難と思える仕事でもできないことはない。

 そして、斯う題して……。

 「物を{玩|もてあそ}ばず」

 物を玩び
 志を{喪|うしな}ふなり
 位に{素|そ}して行ふ

 ある物を{愛玩|あいがん}し過ぎると、志を失ってしまう。
 現在置かれている立場や地位を基にして、最善を尽くすべきである。

 続いて、『書経』や『中庸』に出てくる言葉を我がこととして、地位や立場といった現実に{居|い}る自分の思いを、次のように{顕|あらわ}している。

 「人生の処し方としては仁を目指し、
 志を錬磨するには正義を貫くことを心掛け、
 治世には{盾|たて}となり城となって国を守り、
 乱世には{爪牙|そうが}となって外敵と戦って国を守る」

 治世とは、乱世の対義、平時のこと。
 爪牙とは、頼みになる家臣のことだ。  

 あたいら{美童|ミワラ}に残された時間は、意外に少ないに違いない。
 {何故|なぜ}、あたいらが置き去りにされたかの理由は、大方のところは{解|わか}る。
 では、何故、{武童|タケラ}タケゾウ組の先輩たちは、その地をイタリアと定め、ワタテツとあたいを、その地に割り当てたんだろう。

 カラッチョーラ提督外港を遠くに眺めながら、サッカーボールを蹴りながら上り坂を駆け上がって行く幾人かの大人たちの歓声を聞き流しながら、夕陽が沈むことと自分が今まさに生きていることの奇跡と危うさを、ただ不思議に思うばかりだった。

 
 第一集 了


 _/_/_/ 『然修録』 第1集 _/_/_/
 ミワラ<美童> ムロー学級8名

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 吾ヒト種  われ ひとしゅ
 青の人草  あおの ひとくさ
 生を賭け  せいを かけ
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 ルビ等、電子書籍編集に備えた
 表記となっております。
 お見苦しい点、ご容赦ください。

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